あの戦国武将が現世に降臨!? 佐野大樹が語るWBB『リバースヒストリカ2016』の魅力
佐野瑞樹・佐野大樹兄弟によるプロデュースユニット・WBBの第10.5回公演『リバースヒストリカ2016』が7月27日(水)より品川プリンスホテル クラブeXにて上演される。
『リバースヒストリカ』とは、大樹がリーダーを務める演劇ユニット・*pnish*の作品。本能寺の変を題材とした映画を撮影しようとしていた自主制作映画チームが、ひょんなことから戦国武将を降臨させてしまったことにより巻き起こる騒動を描いた良質なアクションエンターテイメントだ。*pnish*のみならず、様々な団体によって上演されてきた人気作に、WBBが満を持して挑戦する。その全貌を、佐野兄弟の弟・大樹に聞いた。
――この『リバースヒストリカ』が生まれたきっかけについてなんですけど、初演は07年。そのときは*pnish*の協力作品というかたちで上演されたんですよね。
そうなんです。まず僕たちの中で時代劇をやりたいという気持ちがあったんですね。でも、07年のときはあまり予算がなくて、時代劇だとどうしても衣裳やカツラにお金がかかってしまう。それで、どうしたらいいかと悩んでいたとき、ふっと「武将が降臨したら現代の服装でもやれるんじゃないか」って思いついたんです。
――なるほど。降臨というアイデアは、そんな切実な事情から生まれたんですね(笑)。
おかげさまで作品自体すごく好評で、次の年に*pnish*プロデュースとして上演しました。そこからは予算もできたので、今みたいにしっかりとした武将の衣裳も用意できるようになったんです(笑)。
――以降、*pnish*だけじゃなくて、いろんな団体でも上演されていますよね。それだけ人気の理由はどこにあると思いますか。
ひとつはキャストがみんな男性だけというところ。その熱量が面白さなんじゃないかなって思います。それも、この作品は2.5次元というわけじゃない。オリジナルの作品で、男たちがバカをやりながらも、熱をこめてエンディングまで駆けぬけていく。そこから生まれるパワーや爽快感が、戯曲としての魅力なのかな、と。
――ストーリーもテンポが良くて、笑えるところをたくさん散りばめつつ、終盤はギュッと締まっていて、メリハリが効いていますよね。
そうですね。本能寺の変自体が、いろんな謎が秘められた題材。実はこの人物が陰で裏切っていたとか、そもそも信長は死んでいなかったとか、小説でも映画でも諸説ありますよね。それを僕たちは、こういう切り口で勝負してきた。お客さんにも、そのドラマ性も楽しんでもらえたらと思っています。
――佐野さんは、*pnish*時代に続き、脚本家の松浦と秀吉を演じます。今回は、この2役をどんなふうに演じてみようと。
秀吉は、三枚目をメインにしつつ二枚目としての面も持ち合わせたキャラクター。そのギャップをより強く打ち出していこうと考えています。お調子者らしいコミカルなところをより強調しつつ、秀吉特有の武士道もしっかり表現できれば。主君であった信長亡き後、天下を取った秀吉が、降臨した信長と対面したときに見せる、「天下を取るとは何か」という心のせめぎ合いを丁寧に演じたいと思います。
――この作品では、広く世に知れ渡っている秀吉の軽いイメージとはまた違う、人間的な苦渋がきちんと描かれていますよね。
降臨したのが、死後の秀吉。つまり、もうおじいちゃんですからね。だからこそ、背負っているものもあると思います。あとは、松浦とのギャップがポイント。この演じ分けは、僕だけではなく、武将を降臨させる役者はみんな苦労しています。ラストで武将から再び現代の人間に戻ったとき、ちゃんとお客さんに「そうそう、こういうキャラだった」と思ってもらえないとまずい。そのためにも、しっかり個性をつけていかないといけないので大変です。
――共演のみなさんはいかがですか。
すごくいいキャスティングだと思っています。みなさん、地のキャラクターと合っているんですよね。(川本)成くんはバランサ―。いてくれるだけで舞台がキュッと締まります。他にもこれまで共演した人が何人かいるので、その成長ぶりも見ていて楽しいです。たとえば小笠原(健)くんは『RADIO KILLED THE RADIO STAR』(13年)で共演したときはすごく真面目な役だったんですね。でも、今回の役は全然違う。「え? 小笠原くんってこんなポジティブだったっけ?」っていうくらい明るくて(笑)、稽古場を盛り上げてくれています。あと、今回、自主制作映画チームの衣裳に関しては、それぞれの役者から自前で提案してもらっているんですよ。
――衣裳を、ですか。
劇団で予算がない頃は当たり前のようにそうしてたんですけど、今回は劇団公演というわけでもないし、どうなんだろうとは考えたんですね。でも、それを面白がってくれるメンバーばかりで、持ってきた衣裳に僕からまたオーダーをし、必要であればこちらが用意する、という流れになっています。最初からこちらで全部用意した方が楽は楽なんですよ。ただ、役者に提案をしてもらうことで、役についてどう考えているのがよくわかる。特に今回はこれからさらに伸びていく若いキャストが多いので、せっかくだし、そういうやり方もいいかなと思って試してみることにしました。
――その他、WBBならではの演出面でのこだわりは。
やっぱり殺陣と所作ですね。今回は、武士道にこだわりたいと思っているんです。ファンタジーではあるけれど、刀の扱い方や立ち居振る舞いに関しては、その道のプロがご覧になっても嘘がないと言っていただけるようなものを目指したいな、と。
――そう考えるようになったきっかけは何かありますか。
監修で入っている兄(佐野瑞樹)からのアドバイスが大きいですね。兄は*pnish*でやってきた『リバースヒストリカ』も見てくれてますから、これまでと同じじゃつまらないだろうと言っていて。ただの再演ではなく、WBBとしてやるなら何に力を入れるかということに関してはかなり意識をしました。
――それが、嘘のない殺陣なんですね。
立ち回りに関しても、たとえば片手で刀は振らないとか徹底していますね。本来の刀は2キロの鉄の塊です。そう易々と振ることなんてできないですから。殺陣師の先生とも、一刀の重みを大事にしたいとは話し合っています。あとは無闇に刀を抜かないとか。そもそも鞘に手をかけた時点で臨戦態勢なんですよ。だから、まずは目で相手を制する。鞘から抜くにしても、抜く意味を大事にしていきたいと思っています。
――その分、刀を抜いた瞬間の臨場感も高まりそうですね。
そうですね。特に今回は舞台が円形ですから、対面の舞台よりもずっと近くに感じてもらえると思っています。円形って、役者にとってはどこに立っても正面になるから油断ができないんですよ。立ち位置によっては、メインで話している役者の演技を遮ることもある。そこでお客さんに邪魔だと思われたら絶対にダメ。だから、芝居では極力無駄なことはしないようにしているし、自分勝手なことをして芝居が崩れてしまわないよう、みんながチームワークを持って作品をつくっている感覚はありますね。
――では最後に今回の作品にちなんだ質問を。佐野さんが降臨させるなら、どの武将を降臨させたいですか。
うーん…。この作品では出てこないですけど、徳川家康かな。家康ってすごく頭が良いと思うんですよ。知恵と策略で内情を操り、豊臣家を追いつめていく。実際に家康がどういう人だったか知りたいですね。
――佐野さんご自身は戦国武将なら誰に近いですか。
えー、誰だろう…(笑)。
――家康ではない?
ではないです、そんなに頭良くないです(笑)。僕はやっぱり弟気質なんですよね。だから戦国時代なら、愚直に上を支える忠義に厚い家臣タイプだと思います。
1979年1月22日生まれ。静岡県出身。“気軽に観る事ができて、楽しい舞台”を理想に、97年、*pnish*を結成。01年より活動を開始する。以降、*pnish*作品に携わる傍ら、11年より兄・佐野瑞樹との兄弟ユニット・WBBとしての活動もスタート。WBBとしては年2回のペースで公演を重ねている。16年の出演作に『リビング』『トラベルモード』(脚本・演出)がある。
◆作:*pnish*
◆演出:WBB
◆出演:小笠原 健、高崎翔太/吉岡 佑、佐川大樹、高根正樹、櫻井圭登/Ry☆、長谷川哲朗、小野友広/川本 成/佐野大樹
◆日程:2016年7月27日(水)~7月31日(日)
◆会場:品川プリンスホテル クラブeX
◆料金:5,800円(前売・当日共/全席指定・税込)
◆公式サイト: http://www.w-b-bros.jp/
【アフタートーク出演者】
◆7月28日(木)19:00
小笠原 健 高崎翔太 Ry☆ 佐野瑞樹 佐野大樹
◆7月29日(金)19:00
吉岡 佑 櫻井圭登 Ry☆ 川本 成 佐野瑞樹 佐野大樹
◆7月30日(土)14:00
高崎翔太 高根正樹 川本 成 佐野瑞樹 佐野大樹
◆7月30日(土)19:00
佐川大樹 高根正樹 櫻井圭登 佐野瑞樹 佐野大樹
◆7月31日(日)12:00
小笠原 健 吉岡 佑 佐川大樹 佐野瑞樹 佐野大樹
※アフタートークは、本編終演後に開催いたします。
対象公演をご観劇のお客様は、のお座席でそのままご覧いただけます。
※出演者は予告なく変更になる場合がございます。予めご了承ください。