川本成ら6人のキャスト&作・演出 細川徹の本読み&炸裂座談会! 時速246億『バック・トゥ・ザ・ホーム』
時速246億『バック・トゥ・ザ・ホーム』 撮影=福岡諒祠
川本成が2007年に立ち上げたクリエイティブユニット『時速246億』(旧名称・時速246から2011年に改名)。公演のたびに個性的な作家・演出家を招き、役者、声優、芸人など様々なジャンルで活躍するメンバーを川本自らがチョイスしている。過去13公演のうち直前の2015年11月と2016年7月は川本のソロ公演が続いたが、再びチームを組んで待望の本公演を打ち上げる。
今回、作・演出に招くのは『男子はだまってなさいよ!』の細川徹。出演には、川本をはじめ、若手有望株の和田琢磨や高橋良輔、平子悟、お笑いトリオ・鬼ヶ島のアイアム野田、声優の小野坂昌也が名を連ね、あまりの共通点のなさに「何事!?」な座組となっている。川本は何を基準にこの面々を呼び寄せたのか、そして細川はどんな芝居を作ろうとしているのか……。
この日が3回目という本読みの稽古場に潜入し、そのまま男7人の座談会へとなだれ込んだ!
本読みの様子 撮影=福岡諒祠
稽古場と聞いて赴いたが、案内されたのは事務所の立派な応接室。 細川が上座に着くと、テーブルを囲むソファそれぞれに陣取っていた役者たちがおもむろに読み合わせを始めようとした……直前、「まだセリフは覚えなくていいですよ」と細川が一言。
和田がいきなりぐすんぐすんと泣き出した。隣の川本が困惑する。が、すでに芝居がはじまっていたのである。全員がそれぞれソファの上で可動域の許す限り首や上半身を動かし、声も本気で張り上げる。
アイアム野田 (鬼ヶ島)、小野坂昌也 撮影=福岡諒祠
自分以外のおもしろいセリフが来るたびに「へへっ」と声を漏らして笑うのは野田だ。そんな野田はどうも滑舌が順調でないらしく、必死に読めば読むほど「カミカミじゃん」とツッコまれ放題(もちろんセリフ外で)だった。
物語の舞台は宇宙。川本、和田、高橋、小野坂が演じる地球人たちが酔った勢いで、野田と平子が演じる宇宙人たちのUFOに乗ったところ、目が醒めてみると「ここはどこ!?」状態に陥る。
川本成、和田琢磨 撮影=福岡諒祠
細川は身を揺らして笑いながらも鋭い視線を役者たちに走らせ、手を休めず台本に次々と書き込んでいく。「いまのセリフ変えます」と変更も随時指示する。稽古場レポートなので初めは気になることをメモしながら聞いていたが、途中からおもしろすぎて完全に観客化してしまった。思うがまま笑っていたら、野田の「離陸します」のセリフをきっかけに「……ここまでです」といきなり終了!
和田琢磨、高橋良輔 撮影=福岡諒祠
川本:本読みは3回目ですが、やるたびに細川さんが作り直してきてくれるんで、毎回“第一稿”なんです。結構、試行錯誤してくださってますよね?
細川:ああ、この人は、こういうことをやるんだぁって本読みで見て、もっとやりやすいように、みなさんがおもしろく見える形を探り探りなんですよ。
なるほど、全員で作り上げるとはまさに。この流れに乗って、出演者と細川の7名にお話を伺った。
――役名は本名でしたが?
細川:僕はだいたいそうしちゃうんです(笑)。
野田:宇宙人なのに“野田”(笑)。
小野坂:仮、じゃないんだ?
細川:何人かは変わるかもしれないけど、わりとそのままにしちゃう。名前にこだわる作品もあるけど、この舞台は……(笑)。
小野坂:地球人が日本人に寄りすぎじゃない(笑)?
作・演出:細川徹 撮影=福岡諒祠
――本読みの感想と、ご自分の役について一言。
和田:川本さんとは共演2回目ですが、ちゃんと会話させていただくのは初めてなんです。出演者が少ないのでこれからどんなことが起きるのかと……(キョロキョロ)。
川本:どうしたの!? 和田くん(笑)!
細川:和田くんはカッコいいから。カッコいい役はほかでやるからいいよね? ここではカッコよくない和田くんをやりたい。
川本:かわいいんですよ。
細川:普段からかわいいからね。この可愛さがもっと出るといいかな、と。
和田:30になって言われても……。
川本:40になっても言われたいよ! 僕らみんな言われたいんだから(笑)。
全員:和田くんかわいい~!
和田琢磨 撮影=福岡諒祠
――高橋さんはいかがですか?
高橋:楽しんでやろうと思います。与えてもらった言葉でみんなと会話するのが楽しくて。役的には川本さんやタク(和田)とは違う目線にいるのでそこもできたらと思っています。
細川:高橋くんもカッコいいから。カッコいい人は、なるべくカッコ悪くしていきたい。ほかだと、だいたいカッコいい役でしょ?
高橋:個性的な役もありますよ。
細川:本当? じゃあ、カッコよくしようか(笑)?
高橋:いやあ……。カッコいいのって恥ずかしくなるというか。顔がビクビクして、むずがゆくなるんです。
川本:結構三枚目をやるよね。普段がそうだし。
細川:高橋くんはね、カッコ良すぎておもしろいんですよ。
高橋良輔 撮影=福岡諒祠
――本読みではずっとトイレを我慢していましたが……(高橋のセリフはトイレがらみがいまのところ中心)
高橋:ですね。どこまで我慢しているのか? 最後、……漏らす?
川本:漏らしたものが宇宙人の大好物とか(笑)。
――野田さんはどうでしょう。
野田:僕は二役やるんですが、使い分けるようにしたいなと思っています。
小野坂:そんなこと考えてたの? すごい。たとえば宇宙人と人間の違いは?
野田:宇宙人は、スーッとしつつも人間に害されておびえているんです。人間は宇宙にもう2日間もいるってことで、その極限状態を出したいな、と。
小野坂:どっちもダミ声だったけど、治るんだよね(笑)?
野田:治ります、治ります。夜になったら喉は開く!
川本:昼公演はどうするのよ(笑)!
細川:野田くんも今回が初めてですが、ぐちゃぐちゃしているのがおもしろいんです。
野田:舞台はちゃんと伝えなきゃいけないじゃないですか。伝えたい気持ちだけは、ちゃんと自分なりに一生懸命に! カッコいい僕を見せます。(前の2人だけじゃなく)カッコいい部分が僕にもあるんだよと!
細川:大丈夫?そこを見られても(笑)。
アイアム野田 (鬼ヶ島) 撮影=福岡諒祠
――小野坂さんは普段は声優のお仕事をされていますね。
小野坂:今回知っているのは成くんだけなので、ほかの人になにを言われるか、どの程度までやっていいのか、失礼のないように……。知っている人だと、だいたいこうくるってわかるけど、知らない人ばかりだから。すごい人見知りしています。
川本:そんなことはないでしょ!
小野坂:業界の違う人は楽しいですね。もう、一切、みんなが違うことをやる。
細川:小野坂さんって上手いじゃないですか。この上手さをふざけたことに使わないと。そこを探っているところです。せっかく呼んでいるんだから、失礼のないように、ちゃんと失礼なことをします……(笑)。
小野坂:言っときますが僕は一切怒りません! なにをやってもいい。
細川:小野坂さんは、「さすがにこれはないだろう」っていうスレスレのところを狙いたいなあ(笑)。
川本:声優界にいないでしょ? 小野坂さんみたいな人。
小野坂:そうですね。自分と同じ感覚でいじっちゃってたまに怒る人がいて、いじるのが怖くなる(笑)。
川本:すげえ噛むんです。前に噛まれたときは歯形が1カ月くらい消えなかったから。殴るのもマジで、めっちゃ痛い。
小野坂:お笑いさんだから、リアクションが上手いでしょ。お客さんにも伝わるし、成さんおもしろいってなるけど、そうじゃないんだ、肉をガっと食いちぎって……。
細川:マジなリアクションがほしいってこと?
小野坂:本当がほしいんです、本物が。だから、成くんのいる舞台は安心です、安心して人が嚙める。
川本:ダメだから! スレッスレをやるんですよ。普通ならNGです。
野田:いつ噛んでくれるんですか?
小野坂:仲良くなれたと思ったら。
野田:それ複雑! 仲良くなれてうれしいのに、痛いのか。直後に怒りが湧くかも……!
小野坂昌也 撮影=福岡諒祠
――平子さんも初共演の方が多いですか?
平子:僕もほとんど初めての方ばかり。
川本:僕が欽ちゃん劇団の1期生、彼が4期生だから直結の後輩。20年以上の付き合いだけど。
平子:ガッツリ共演するのは初めてです。ホント、どうなるか。もうお気づきでしょうが、今回はヒロイン不在で野郎ばかりなんですよ、それも逆に楽しいんですけど。
細川:平子さん、おもしろいんですよねー。お笑いなのにお笑いっぽくないというか。
川本:飄々としているけど、狂言師の役をやると本物の狂言師からスカウトされるくらいなんですよ。
野田:変態だと思うんですけどね。予想です、あくまで僕の見解で!
川本:スイーツ好きだしね。
細川:どういうこと?
平子:お酒は飲めないけど甘いものがすごく好きで、高校生くらいから自分で作ってるんです。なんでも作りますよ。作れないものは本を見て作って、失敗してまた作って成功してを繰り返してます。
野田:おかしいでしょ? なんか、タテを作ってる。
細川:タテ?壁でしょ! スイーツの仮面かぶって自分を隠しているみたいな。
川本:野田くーん、しゃべればしゃべるほどゴミが出ちゃってるよ(笑)。
平子悟 撮影=福岡諒祠
――細川さん、すごいことになっていますが(笑)。
細川:もうね、普段がおもしろいんですよ。だから本でもっとおもしろくしなきゃ。本読みのたびに、「あっ、まだ普段のほうがおもしろい、まだダメだ」って思ってしまって。僕が、「セリフ覚えてください」と言ったら、普段よりおもしろい本になったってことになるかなと。
平子:僕らの読む姿を細川さんはずっと見ていますよ。僕らに近いようにと上手いものを作ってくださっているんです。
細川:笑い中心の舞台だから、自分にあるものでやるほうが笑いを作りやすい。作った役で硬くなるより、なるべく、みなさんの持ってる要素を組み合わせておもしろくしたいんです。
川本:スーパーあてがき、ってことですね。
作・演出:細川徹 撮影=福岡諒祠
――主宰者として川本さん、まとめてください!
川本:僕は、もう楽しい。自分が飲み会の幹事で、飲みたい人を誘って、酒とつまみは持ってきてね、と言っているようなものですから。もう楽しくて、有難くて、うれしくて。細川さんは、積年の憧れなんです。出会ったのはずいぶん前ですが、当時僕はそれほど芝居をやっていなかったし話しかけられる状態じゃない、遠目で見ているだけでした。
それが4年ほど前、和田くんも一緒の舞台で細川さんとご一緒し、これはご縁だと勝手に思って、自分から『男子はだまってなさいよ!』に出してくださいと言ったんです。憧れている人と一緒にやりたい、飲みに誘いたい、誘ったら来てくださったというのが今回です。
川本成 撮影=福岡諒祠
――本読みでは途中で終わっていました、どうなっていくのか楽しみです。
細川:最悪、ここで“完”。
川本:二部はトークショー(笑)。
全員:(大爆笑)
――ええ!?
川本:乞うご期待で(笑)。いろんなジャンルの人が出ますから、見に来る方もバリエーションが広がる。そこもおもしろいところなんです。楽しみにぜひ見に来てください!
時速246億『バック・トゥ・ザ・ホーム』 撮影=福岡諒祠
稽古場に潜入してもなお全貌がつかめなかった「時速246億」新作公演『バック・トゥ・ザ・ホーム』。細川と役者たちのオモシロが刺激し合い、生き物のように日々形を変える本作。完成形はどうなるのか!? 絶対に見届けねば、と誓う帰り道であった。
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