壮一帆、紺野まひる、岸 祐二、泉見洋平、吉原光夫、一路真輝がSFサスペンス・コメディに挑む!『扉の向こう側』稽古場レポート

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2016.11.8


『扉の向こう側』(英題“Communicating Doors”)は、1995年にロンドンで初演。日本でもたびたび上演されている。イギリスを代表する喜劇作家アラン・エイクボーンによって書かれたこの戯曲は、SFのような、サスペンス・コメディ。「SF」「サスペンス」「コメディ」という3つの要素が並ぶと「???」となる方も多いと思うが、時空を超越するという大技を使いながらも、リアルに人間を描いた結果、笑いを生み、実に軽妙洒脱な大人の物語に仕上がっている。大胆な発想の中にある繊細さ、そこがアラン・エイクボーンのすごいところなのだ。

今回、このアラン・エイクボーンの原作をもとに、芦沢みどりの翻訳、板垣恭一の上演台本・演出により上演される。

この日の稽古は「小返し」と呼ばれる「抜き稽古」の後、「通し稽古」が行なわれた。キャストは6名のみ。メンバーを見てみると、壮一帆紺野まひる岸 祐二泉見洋平吉原光夫一路真輝、というミュージカル界で活躍する俳優陣が名を連ねている。しかし、これはストレートプレイ。歌ではなく、セリフで芝居が動いていく。

「会話のテンポを大事に。スピード感を出していくところと、しっかり見せるところの緩急をつけていきたい」という演出家・板垣のオーダーに応えるには、演じる方も相当な集中力が必要とされる。

稽古開始前は和気藹藹としているが、いざ稽古が始まると、その緊張感がこちらにも伝わってきた。

▲SMクイーン・フィービー(壮)はリース(吉原)に呼ばれてホテルにやってくる。

▲SMクイーン・フィービー(壮)はリース(吉原)に呼ばれてホテルにやってくる。

▲リースの元妻、ジェシカ(紺野)とルエラ(一路)は、ひょんなことから対面する。その騒動に巻き込まれる警備員のハロルド(泉見)。

▲リースの元妻、ジェシカ(紺野)とルエラ(一路)は、ひょんなことから対面する。その騒動に巻き込まれる警備員のハロルド(泉見)。

▲初めはルエラを不審者扱いしていたジェシカだが、ルエラのあまりにも自信たっぷりの説得力に押されながら、次第に打ち解けて行く。

▲初めはルエラを不審者扱いしていたジェシカだが、ルエラのあまりにも自信たっぷりの説得力に押されながら、次第に打ち解けて行く。

▲フィービー・ジェシカ・ルエラの女性3人が結託してなんとかお互いの不幸を食い止めようと奮闘するが…。

▲フィービー・ジェシカ・ルエラの女性3人が結託してなんとかお互いの不幸を食い止めようと奮闘するが…。

▲ジュリアン(岸)に連れ去られるルエラ。次々と身にふりかかる事件の数々。いったい物語はどのような方向に進んでいくのだろうか。

▲ジュリアン(岸)に連れ去られるルエラ。次々と身にふりかかる事件の数々。いったい物語はどのような方向に進んでいくのだろうか。

▲「通し稽古」終了後には、細かな動きの確認やセリフのタイミングを確認し合った。

▲「通し稽古」終了後には、細かな動きの確認やセリフのタイミングを確認し合った。

翻訳物なので、英語のニュアンスを日本語でいかに分かりやすく話し、なおかつ面白さを出すにはどうしたらいいのか?という内容でディスカッションしたのだが、その単語が少しエロい内容だったため、笑みがこぼれた。

単なるドタバタコメディにおさまらず、最後はじんわりと温かさが残る空気感。このキャストから滲み出るものを大事にしながら板垣さんが“ある方向”に導くことにより、それが作品自体の味わいになっているように感じた。

この物語では、ある「扉」を開くと時空を超えた空間に瞬間移動する。登場人物たちがなぜ、タイムワープする必要があったのか…。なぜこのメンバーが出会うことになるのか…。時空を行き来しながら、次第に謎が解けて行く。演劇ならではの面白さを感じられる舞台になりそうだ。

<あらすじ>
物語の舞台は、ロンドンの五つ星ホテル「リーガル」のスイートルーム。
実業家リース(吉原)はジェシカ(紺野)とルエラ(一路)、2人の妻を殺した過去を持つ・・・と言っても、手を下したのは彼自身ではなく、彼の共同経営者のジュリアン(岸)。しかし何故だか表沙汰にはならず、人生の成功者としての日々を送っていた。
70歳になり死を意識し始めたリースは、自ら制裁を下すかの様に、自分とジュリアンの悪事を告白する文書を書く。その文書を法的に有効なものとする為には第三者の署名が必要だった。
その為、リースは滞在するホテルのスイートルームに娼婦を呼ぶ。そこへやってきたのはSMクイーンのフィービー(壮)。リースの企みに気づいたジュリアンはフィービーも殺害しようとするが、身の危険を感じたフィービーは「コネクティングドア」を開け、隣の部屋へ脱出を試みる。
しかしその扉の向こうは過去と現在を繋ぐ不思議な空間となっていた。
殺害された筈の2人の妻・ジェシカやルエラと出会うフィービー。
お互いの立場を何とか理解し合った3人の女たちは、気のいい警備員ハロルド(泉見)を巻き込み、自分たちの殺人事件を未然に防ごうと奮闘するが、果たして・・・。

(取材・文・撮影:住川絵理)

◆稽古場から板垣恭一さん(上演台本・演出)のコメントが届きました↓
 
公演情報
『扉の向こう側』
 
■作:アラン・エイクボーン
■翻訳:芦沢みどり
■演出:板垣恭一
■出演:壮 一帆、紺野 まひる、岸 祐二、泉見 洋平、吉原 光夫、一路 真輝
■公演日程/会場
<兵庫公演>2016年11月11日(金)~13日(日)兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
<東京公演>2016年11月16日(水)~23日(水・祝)東京芸術劇場 プレイハウス
<名古屋公演>2016年11月28日(月)青少年文化センター アートピアホール
■オフィシャルサイト:https://tobira-no-mukogawa.amebaownd.com
■問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12時~18時)

 
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