ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』でサーカス団のエイモス団長に扮するROLLYが、作品への想いを語る!

インタビュー
舞台
2016.11.25
ROLLY

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「とんでもなく巨大な魚を釣り上げたことがある」など、大げさなホラ話にしか思えない冒険譚ばかりを吹く父と、成長するに従いそんな父親に反発するようになった息子。長らく理解し合えなかった父子の姿を中心に、ファンタジー色たっぷりに描かれる感動作『ビッグ・フィッシュ』。ティム・バートン監督による映画版で世界的に広く知られるこの物語、2013年にはブロードウェイでミュージカル化され、多くの観客の胸を打った。今回、その日本版の舞台で、物語をカラフルに彩る登場人物のひとりでもあるサーカス団のエイモス団長に扮することになったのがROLLYだ。もともとティム・バートン作品を愛していたというROLLY、映画版『ビッグ・フィッシュ』(2003年)は最も好きな作品だそう。今回のミュージカル版への参加にあたって、意気込みや作品への思い入れを語ってもらった。

――ROLLYさんは、いかにもティム・バートン作品がお好きそうだなと思っていました。

『シザーハンズ』、そして『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』、そのあとの『エド・ウッド』や『マーズ・アタック!』……。これらすべてのティム・バートンの作品に共通して流れる、一般社会からはちょっとはみ出している変わり者の哀愁と、その異端者への愛情にものすごくシンパシーを感じていましたのでね。『ビッグ・フィッシュ』は初めから最後まで「この感動を誰かに伝えたい!」と思いながら観ていまして、最後のシーンでは大泣きに泣きました。今の世の中、みんながこういう風にすれば幸せで愉快な世界になるんじゃないかと思えるような作品なんです。要するに「同じことを言うのでも少し面白く言ってあげる」ことが大事だというね。それがまるで嘘だったらダメなんだけど。

――すべてが嘘では成立しない、ということですね。

少しだけ、その出来事を面白い感じに言うっていうのは、おこがましいですが自分も子供のころからそうありたいと思ってきたことなんです。それは私の父も同じでね。私も、作品と同じ様に父とは関係性が悪く、いつもいがみあっておりましてね。父は私が1日中ギターを弾いていることをよく怒っていましたから。「一雄(ROLLYの本名)、そんなにギターばかり弾いてて、そんなんで飯が食えるんか」ってね。だけど、そこで父の言うことを聞かずにギターばかり弾いていたので、最終的に今ここにいるんですけど。うちの父親は、実に『ビッグ・フィッシュ』のお父さんみたいな人だったんです。

――そうだったんですか。

父親がよくしていた自慢話があってね。自分は子供のころに車の運転を覚えたって言うんですよ。父のおじいさんとおばあさんがドイツ料理のレストランをやっていたらしいんだけど、そこに来た進駐軍が食事中にジープをチェーンでつないで盗まれないようにしていたんだって。でもそのチェーンの長さに余裕があったから、父親はこっそりジープに乗りこんで勝手にエンジンをかけてクラッチ操作を覚えて、誰にも教わらずに車の運転ができるようになった、と。だから教習所に行った時、教官に「あなたみたいに運転がうまい人は初めてだ!」と言われた、というんです。子供心に「本当にそんなことやるかなあ、もし見つかったらとんでもないことになりますよ?」と思ってはいたんだけど。そうしたら父親が亡くなったあと、父の兄弟が集まった時に「そういえば一雄くんの父親はとんでもないやつだった。子供のころに進駐軍のジープを勝手に操作して逮捕されたことがあった」って言われて。

――えっ、逮捕までされていたんですか?

そうなんですよ。「え、その自慢話は何度も聞いてたけど、逮捕されたなんて聞いてなかったよ!」って(笑)。うちの父にはそういう話が、他にもたくさんあるんです。

――まさに『ビッグ・フィッシュ』じゃないですか!

ホント、この物語に出てくるお父さんみたいな人だったんです。

――じゃ、映画をご覧になった時、お父様のことを思い出されたのでは。

思い出しましたね。それと同時に「父親がこんな人間であったように、そういえば自分もそんな人間だよなあ」とも思いました。

――振り返れば自分も同じだと?

「自分も、まさに今そうなっとるやん!」と(笑)。そして、実にこの作品は父親と息子のありかたがうまく描けているなあ、とも思いました。

――他のティム・バートン作品に比べると、『ビッグ・フィッシュ』はちょっと雰囲気が違いますが。

そうですねえ。でも主人公やお父さんに関してはそうかもしれないですが、そういう意味では私が演じさせてもらうサーカス団の団長エイモスは、いかにもティム・バートン作品に出て来そうな、変な人ですよね。

――奇妙な世界の住人担当、みたいな。

ええ。ですから、この話をいただいた時には本当にうれしかった。もし、自分がこの作品に誘われていなかったら、今ごろ悔しくて仕方がなかったと思います。

――しかも、ROLLYさんとも馴染みの深い、白井晃さんの演出ですし。白井さんとご一緒するのは、かなり久しぶりですよね。

最後に白井さんの演出に出たのは『三文オペラ』(2007年)だったと思いますから、10年ぶりですね。でもちょこちょことお会いすることもあったので、そんなにすごく離れていた感じはなくて。そういえば、かつて出させていただいた、やはり白井さん演出の『星の王子さま』の時には、私は宇宙で一番自分のことが大好きな“うぬぼれ男”と、そしてさびしい“キツネ”の役だったのですがね。この時の『星の王子さま』に出てくる変な登場人物たちも、ちょっとティム・バートンの世界に近いものがありました。まあ、そのあとも白井さんの作品は拝見していますが芸術性が高くて、いつも「ああ、素晴らしいな」と思っていました。今回も勿論いいものになるのはわかっているのですが、そこに到達するまでの苦悩は、また大変かもしれませんなあ!(笑)

――これまでの経験を振り返ると、大変になりそうですか。

いつも、自分のことが大嫌いになりますから。でも最終的には必ず「やってよかったなあ!」って思えるんですけどね。

――苦労しても、最後には報われる。

私の場合、苦労して報われなかったことが今まで一回もないんです、実を言うと。有難いことです。「ああ、自分はなんてところに来てしまったんだ、毎日が辛い!」と思っていても、最終的には毎回「ああ、やって良かったな」ってなるので。この53年間、すべてのことについてそう思っています。

――それは、幸せなことですね。

そう、幸せなんですよ、僕って(笑)。自分のことを本当に幸せな人間だなと思います。もちろん自分でも努力はしてまいりましたが。

――ROLLYさんから、ぜひお客さんに向けてお誘いのメッセージをいただきたいのですが。

私はいつも舞台を観に行く時は、千穐楽を選ばずになるべく公演の前半に行くことにしているんです。絶対に一回しか観に行かないと決めているならともかく、それがものすごく素晴らしい作品で「もう一回観たい!」と思った時に、千穐楽だとそれが叶わないじゃないですか。そうならないためにも、まずは早めに一度観に来ることを強くお薦めします。ぜひ、二回観たくなる舞台にしたいですね。そんなこと言うと、初日と千穐楽をという極端な人も出て来そうですが。

――それはそれで、前半と後半で変化が楽しめるかもしれませんけどね。

いや、でも演じる側としてはいつ観ていただいてもちゃんとしたクオリティでできるようにしたいです。特に、今回は公演回数が多いのでね。稽古から本番にかけての2カ月間は禅寺に入ったような気持ちで、とにかく声だけは潰さないようにしたいと思っています。

(取材・文:田中里津子  撮影:岩間辰徳)

公演情報
ミュージカル『ビッグ・フィッシュ』
 
■日程:2017年2月7日(火)~2月28日(火)
■会場:日生劇場

■出演:
川平慈英/浦井健治/霧矢大夢/赤根那奈
藤井隆/JKim/深水元基/鈴木福(Wキャスト)/りょうた(Wキャスト)/鈴木蘭々/ROLLY ほか

 
■脚本=ジョン・オーガスト
■音楽・詞=アンドリュー・リッパ
■演出=白井晃
■公式サイト:http://www.tohostage.com/bigfish/

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