SHISHAMO 移り変わる季節の中で放たれた未発表曲の数々――約1年ぶりのライブハウスツアー開幕

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SHISHAMO ワンマンツアー2016秋
『夏の恋人はもういないのに、恋に落ちる音が聞こえたのはきっとあの漫画のせい』
2016.11.11 Zepp Tokyo

SHISHAMO

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SHISHAMO ワンマンツアー2016秋「夏の恋人はもういないのに、恋に落ちる音が聞こえたのはきっとあの漫画のせい」』の初日、11月11日のZepp Tokyo。1月4日の武道館から始まって、春のホールツアー、大阪城ホール、日比谷野外音楽堂、夏フェスと2016年も精力的なライブ活動を展開してきたSHISHAMOだが、ライブハウス・ツアーは約1年ぶりとなる。おそらく彼女たち自身も新鮮な気持ちでステージにのぞんだのではないだろうか。フレッシュな感覚と積み上げてきた経験と成長とが絶妙のバランスで混ざり合うことで、音楽の楽しさが詰まった空間が出現した。つまり彼女たちは見事なスタートを切ったのだ。

宮崎朝子

宮崎朝子

“もう夏は終わった”と歌われるTheピーズの「夢のリーゼント」のBGMが「夏の恋人はもういないのに、恋に落ちる音が聞こえたのはきっとあの漫画のせい」というタイトルのツアーの予告のように響いてきた。まるで集合時間に遅れそうになって、必死で駆け付けたかのような勢いの走りで吉川美冴貴(Dr)、松岡彩(Ba)が登場。続いてややゆったりめの速度で宮崎朝子(Gt&Vo)が姿を現した。“待っていたよ”と言わんばかりの熱烈な歓声に包まれ、宮崎が手を上げて合図をし、吉川がスティックでカウントしてライブが始まった。その瞬間に歌の世界の中にググッと引きづり込まれた。漫画に例えるならば、いきなり怒濤の展開! 宮崎の描く歌が抜群にいい。平易な言葉を使いながらも、人間の感情の微妙な揺れや機微やヒダをみずみずしいタッチで描いている。そしてその繊細な歌の世界を、バンドが振り切った演奏によって、ダイナミックに表現しているところが素晴らしい。ソリッドなのにキュート。エッジが効いているのにしなやか。ナイフの鋭さとふかふかの毛布の柔らかさが共存する感触に包まれていくのが気持ちいい。宮崎の歌声も奥が深い。キュートでナチュラルなのだが、その背後に芯の強さや肝の太さや切れ味の良さが見え隠れして、“タダモノじゃない感”も滲んでいる。

松岡彩

松岡彩

「中庭の少女たち」ではZepp Tokyoのスタンディング・ゾーンが歌の中の中庭の景色と重なるかのようだった。少女たちだけでなく、少年たちも大人たちもいたわけだし、中庭にしてはあまりにも密集しすぎてはいるのだが、同じ場所、同じ瞬間に集った人々がつかのまの楽しさを共有するという共通点を感じたからだ。こぶしを突き上げたり、ハンドクラップしたり、コール&レスポンスしたり、ともに歌ったり。共感を呼ぶ歌の数々がバンドと客席の距離をさらに近いものにしていく。

吉川美冴貴

吉川美冴貴

「半年くらいあいたのでドキドキしていたんですが、いいね、ワンマンは」と宮崎。ちなみに彼女はトレーナーを着用していたのだが、会場内の温度が予想以上に高くて、失敗だったようだ。「この服じゃ暑かったな。しかも裏起毛だもん。秋ツアーの雰囲気を出したかったんだけど……」とのこと。が、腕まくりして、テレキャスターを弾く姿もなかなかサマになっていた。吉川はこの日のリハーサルでドアを間違えたエピソードを披露した。「“先にリハに行くね”って言って、ステージのドアだと思って開けて、“お願いします!”って言おうとしたら、外に通じるドアで、誰もいなくて、あまりに恥ずかしくて、“ああヤベえ、外だった”と誰に聞かせるでもなく言い訳をしてしまいました」とのこと。松岡は「すごく緊張していたんですが、こんなにたくさんの人がいて、うれしくて」と笑顔を浮かべていた。そうしたMCからはツアーにかける彼女たちの思いも伝わってきた。

SHISHAMO

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ライブハウスの特徴としてまず上げられるのは“距離の近さ”だが、ステージ中央から客席に向かって花道が伸びていて、さらにその距離が縮まる演出も施されていた。間奏で宮崎がギターを弾きながら花道を歩いたり、MCコーナーで3人が揃って出てきたり。涙を流している少女がいて、宮崎が握手したり、たくさんの笑顔を観て、松岡も笑顔を返したり、吉川が客の反応にツッコミを入れたりと、双方向のコミュニケーションも円滑だ。トーク・コーナーも新設されており、会場で募集した人生相談にメンバーが回答する企画なのだが、3人の率直かつ辛辣な発言が楽しかった。バンドと観客とのフラットな関係性も心地良かった。上から見下ろすのではなくて、同じ高さのまなざしで、一緒にライブを作っていく姿勢が根底にある。観客の反応をしっかり受けとめて、演奏にフィードバックさせていると感じる瞬間もあった。

松岡彩

松岡彩

未発表の新曲もいくつか演奏された。その中の1曲はモータウン調の跳ねるリズムが特徴的なポップなナンバー。もどかしさやせつなさが共感を呼ぶだろう魅力的な曲だ。跳ねるリズムではあっても、あえてあまり跳ねさせない選択肢もある。曲にとって適正なグルーヴとはなんなのか。その答えはツアーの中で見えてくるのだろう。疾走感あふれるパンキッシュな新曲も披露された。起伏があって、せつなさまでもが炸裂するようなナンバーだ。ライブの中でとてつもない曲へと成長していく予感が濃厚に漂う、スケールの大きさも備えている。どちらの曲でもバンドの多彩な表現力が発揮されている。バンドはまた新たなライブの武器を手に入れたところだろう。

宮崎朝子

宮崎朝子

宮崎がエレキピアノを弾き、松岡が座ってベースを弾く場面もあった。キーボード、ベース、ドラム編成での演奏では会場内の空気の色合いが変わり、歌詞とメロディの良さが際立って、歌が染みこんでくる。1曲ごとに観客の感情のスイッチを切り替えていくような演奏が展開されていく。曲と曲との繋がりから漫画のストーリーにも通じる流れを感じた瞬間もあった。彼女たちがこんなにも豊かな表現力を持っているのは、歌の世界をメンバーそれぞれが消化して歌心あふれる演奏を展開しているからだろう。最新シングルのカップリング曲にしてツアー・タイトルの一部にもなっている「恋に落ちる音が聞こえたら」ではハッピーな空気が会場内に充満した。観客が一体となってSHISHAMOの歌を共有しているのがまんま視覚化されていたのは「タオル」だ。松岡が説明して、手本を見せてのスタート。宮崎が“ぐるぐる”と歌い、観客はタオルを手で回して、同じようにその“ぐるぐる”を全身で表現していく。

宮崎朝子

宮崎朝子

SHISHAMOのライブの魅力のひとつは歌を共有する楽しさにあると思うのだ。「みんなのうた」はなぜ“みんな”のうたなのか。それは彼女たちの音楽が多くの人に共有される普遍性を備えているからだろう。共有とは歌の世界を一緒に生きる気分になるということ。彼女たちのライブを観ることは恋愛や友情など、人生のいろいろな局面を疑似体験することにも通じるのではないだろうか。ときめいたり、せつなくなったり、舞い上がったり、傷ついたり、嫉妬したり、別れを告げたり。宮崎のアコギで始まった「夏の恋人」はそうした様々な感情をもたらす曲たちを受けとめる懐の深さを備えた曲だ。途中からストリングス・サウンドも融合しつつの演奏となって、深い余韻が残った。いつだって成長と訣別とはセットになっているということも伝わってきた気がした。ライブをやることだって、出会いと別れの繰り返しの縮図みたいなところもありそうだ。

吉川美冴貴

吉川美冴貴

ライブハウス・ツアーの初日、彼女たちはバンド・ストーリーの新しいページをめくったところなのではないだろうか。「今日は始まるまでどんな感じかなと思っていて、ホールとライブハウスじゃ、感覚や距離感が全然違うのでドキドキしていたんですが、いいなと。思い出したというよりも、今までよりも好きになれたような気がして、みなさんのおかげでいいツアーになる予感がしてます」という宮崎の言葉は彼女たちの成長の証しでもありそうだ。「セミファイナル、ファイナルと帰ってきます。“ただいま”“お帰り”という挨拶が出来たらいいなあと思える空間になりました」と吉川が語っていたが、彼女たちは1か月かけて全国を回り、そしてまたこのZepp Tokyoへと戻ってくる。秋から冬へと季節が移り変わっていく中で、彼女たちは毎回、その瞬間にしかないフレッシュな景色を見せてくれるだろう。


取材・文=長谷川誠 撮影=上山陽介

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ライブ情報
SHISHAMO ワンマンツアー2016秋
『夏の恋人はもういないのに、恋に落ちる音が聞こえたのはきっとあの漫画のせい』

11.11(金) 東京 Zepp Tokyo OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
11.20(日) 札幌 Zepp Sapporo OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:WESS 011-614-9999
11.23(水・祝) 仙台 PIT OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:GIP 022-222-9999
11.26(土) 愛知 Zepp Nagoya OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
11.27(日) 愛知 Zepp Nagoya OPEN 15:00 / START 16:00
問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
11.29(火) 熊本 B.9 V1 OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:キョードー西日本 092-714-0159
11.30(水) 福岡 DRUM LOGOS OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:キョードー西日本 092-714-0159
12.03(土) 大阪 Zepp Namba OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
12.04(日) 大阪 Zepp Namba OPEN 15:00 / START 16:00
問い合わせ:GREENS 06-6882-1224
12.06(火) 高松 festhalle OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:DUKE高松 087-822-2520
12.08(木) 広島 CLUB QUATTRO OPEN 18:30 / START 19:00
問い合わせ:夢番地 広島 082-249-3571
12.10(土) 東京 Zepp Tokyo OPEN 16:00 / START 17:00
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
12.11(日) 東京 Zepp Tokyo OPEN 15:00 / START 16:00
問い合わせ:ディスクガレージ 050-5533-0888
 
チケット代:前売 ¥4,400 (税込・1DRINK代別)
※3歳以上チケット必要
 

 

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