「ありがとう」を歌声に込めて 黒崎真音が6年間の活動でファンに伝えた気持ちと決意
黒崎真音
黒崎真音 LIVE TOUR 2016 2016.9.22(Thu)“Beautiful Resistance”supported by dアニメストア 川崎 CLUB CITTA’
「1人でも応援してくれる人がいたら、私は歌い続けます」
ラストスパート前のMCで黒崎真音が語った言葉が今でも忘れられない。アニソンアーティストの黒崎真音が川崎 CLUB CITTA’を皮切りに、自身最大規模の全国ツアーを開催した。11公演に挑む初日の川崎では、開場前から多くのファンがライブを楽しみに待ちこがれている様子。特に、9月22日は彼女にとっても、ファンにとっても大事な日だった。2010年9月22日は、黒崎がアニソンアーティストとしてデビューした日。会場に集まる全員にとって、重要な意味がある。6年の時を経て、様々なステージで歌声を披露してきた彼女のステージパフォーマンスをレポートする。
会場の照明が落とされ、荘厳としたピアノの伴奏が場内の空気を揺らした。直後、ステージを覆い隠していた白い紗幕が落とされ、中央ステージに白衣装を着てたたずむ黒崎真音が姿を現した。「初日、川崎いくぞー!」のシャウトと同時に、会場を一気に熱狂させ、ロックナンバー「刹那の果実」を歌う。身体の内側からたぎるような熱気から、黒崎の歌声に込められたストレートな気持ちを感じた。勢いを止めずに「さわげ川崎ー!」と一声放ち、「X-encounter」へ突入し、オーディエンスをあおり、さらに勢いを加速させる。ステージから奏でる黒崎の力強い歌声とフロアから返される掛け声。お互いの気持ちがシンクロし、一つになっていくのがわかる。開始早々、会場にいるすべての人が気持ちを一つにし、ライブを創り上げる光景は圧巻だ。彼女の号令に、右へ倣うかのように続くオーディエンスの統率力。アーティスト・黒崎真音の力量をオープニングから目の当たりにする。
黒崎真音
「今回は元気な曲を続けて歌おうかと思いますが、皆さん覚悟はできていますか?」
フロアに向けて呼びかけると、心配無用とばかりに歓声が響き、彼女の表情が笑顔になった。その笑顔を見て、思わず気持ちが高まりそうになったところに、彼女は「Brand new, standing wings」「Candy☆Evolution」「…Because, in SHADOW」「UNDER/SHAFT」「【dreamed wolf】」と、次々にロックチューンを歌い上げる。会場は一気に熱気に包まれていく。黒崎が「一緒に歌ってくれますかー?」と問いかけると、オーディエンスのシンガロングが場内に鳴り響く。初めて黒崎のライブを見て、圧倒されたのが場内の温度感だ。気がついたら観客全員が大声を上げて、こぶしを振り上げている。自然と自らのペースに惹き込ませるその佇まいはロックシンガーと呼んでも過言ではないものだ。
黒崎真音
さらに「黎鳴-reimei-」「”lily”」を歌い、これまでのロックナンバーから一転、スタンドマイクを使用し、感情を身体全体で表現するなど、舞台役者を連想させるかのような“観る”を意識したパフォーマンス。間奏で頭上を見上げる様子やおぼつかない足取りで悲しみを表現する。そして、一度ステージから姿を消すと、黒のドレス衣装に着替えた黒崎が再び登場し、「君と太陽が死んだ日」を奏でる。スタートとは打って変わっての曲調と雰囲気に、気付いたら彼女に見入っている筆者がいた。
この日は黒崎のデビュー日である9月22日。それに合わせて、デビュー曲「君と太陽が死んだ日」を自身のイメージに合わせた黒い衣装で歌い、初心の面持ちで歌ったことを告白する。そこから、自身のツアーでは初となるカバーソングを披露。この日はデビュー記念日ということもあり、自身のデビュー作として各話異なるEDテーマを担当した『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』のOPテーマ「HIGHSCHOOL OF THE DEAD/岸田教団&THE明星ロケッツ」をカバー。ファンにとっても感慨深いカバー曲に、大きな歓声が上がる。さらに新曲「VERMILLION」を初披露するなど、フロアを熱狂の渦へと変えていった。さらに加速度を増すように、「FRIDAY MIDNIGHT PARTY!!」「鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く」「DEAD OR LIE」とアッパーチューンを放つ。曲数を重ねるごとに、黒崎とオーディエンスがより一体感を増し、大きなうねりを作りあげてゆく。
黒崎真音
ラストスパートへ進展すると「VANISHING POINT」を繰り出し、パワフルで過激な空気を作り出す。場内の熱気も頂点に達し、大歓声が会場を包み込んだ。その後「最後はどんな迷いや悩みがあっても、その先にあるのは救いだと伝えたい」と語り、彼女の想いを託した「楽園の翼」で本編を締めくくる。すべてをさらけ出すような彼女の歌声は、聴く人すべてに “元気”を与えてくれる。
興奮冷めやらぬ観客の期待に応えるため、ステージに戻ってきた黒崎は「Red Alert Carpet」「Scanning resolution」を歌い、残された体力を出し尽くす勢いで歌う。ステージの両端まで移動し、奥にいるオーディエンスにまで手を振り続ける彼女から、ファンを大切にしたいという想いが垣間見える。そして、アンコールのラストに「メモリーズ・ラスト」をセレクトし、再びみんなと会いたい願いを込めて歌い切る。幸福感にあふれる黒崎の笑顔を見ると、思い出の中にステージの模様を刻み込むだけでなく、再び彼女と会いたいという気持ちになった。
ラストスパート直前のMCで、黒崎は「この6年を振り返ってみると、休むことなくいろいろな活動をさせていただき、アニソンのことを考えることができました。今日この日を無事に迎えられたことがホントに幸せです」と述べて、観客に対し深々とお辞儀をした。感謝の気持ちを前面に出す姿勢から、黒崎のライブに対する想いが伝わってくる。彼女が時間をかけて表現したかったこと、そのために自分が変わらなければならなかったこと、そして、ファンがいたからこそ今回のライブに臨むことができたこと。成長することができたのは、応援してくれる人たちがいたからだとお礼の言葉を述べた。そんな謙虚さを持つ彼女だからこそ、目の前に立ちはだかる壁を乗り越え、ファンの心に響くステージを生み出せたのだと思う。挑戦する姿勢を持つ彼女が、次はどのようなステージを私たちに見せてくれるのか、今後も目が離せない。
レポート・文=野島亮佑
M1. 刹那の果実
M2. X-encounter
M3. Brand new, standing wings
M4. Candy☆Evolution
M5. …Because, in SHADOW
M6. UNDER/SHAFT
M7. 【dreamed wolf】
M8. 黎鳴-reimei-
M9. “lily”
M10. 君と太陽が死んだ日
M11. fuss fuzz
M12. HIGHSCHOOL OF THE DEAD/岸田教団&THE明星ロケッツ
M13. VERMILLION
M14. FRIDAY MIDNIGHT PARTY!!
M15. 鳴り響いた鼓動の中で、僕は静寂を聴く
M16. DEAD OR LIE
M17. VANISHING POINT
M18. 楽園の翼
<Encore>
En1. Red Alert Carpet
En2. Scanning resolution
En3. メモリーズ・ラスト