躍進が続くH ZETTRIOのこれまでとこれから H ZETT Mに編集長が直撃インタビュー
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H ZETT M
昨年1年で目覚ましい活躍をみせ、シーンに刺激と驚きをもたらしたピアノトリオ・H ZETTRIO。圧倒的なスキルとパフォーマンスに裏打ちされたライブと、お洒落且つアーヴァンギャルドなクラブジャズを基盤にしつつROCKしているサウンド。そして連続MV公開など奇抜かつ大胆なネット戦略も交え、2016年はかなりの爪痕を残した。2017年、更なる飛躍が期待されるこのタイミングで、トリオの中心人物であるH ZETT Mへ話を聞いた。
――リキッドルーム(2016年12月28日)に伺いまして、僭越ながらライブレポートを書かせていただきまして、それが2016年の仕事納めでした。すごくいい仕事で締め括れたという感じなんですが、H ZETT Mさんはどんな2016年でした?
ありがとうございます。そうですね……もう少し忘れちゃってはいますけど(笑)、でもとても充実感があったような気がします。ライブを、わりとしましたかね。
――“わりと”っていうレベルじゃなかったですよ?(笑) H ZETTRIOとしてもソロとしても、もともと沢山動こうと思っていた年だったんですか?
具体的に決まっていたわけではないんですけど、気合はありましたね。こういう風になればいいなっていうのはありつつも、音楽的な気合いに関しては常にあるつもりなので、それが上手く作用して、色々なことが回り出すというのが一番いいなと思ってます。
――前回のリリース時、配信してライブをして8連続配信というタイミングでSPICEがインタビューをさせてもらったんですけど、ああいう大胆な仕掛けの後はどうだったんですか?
連続配信も今思うと“したなあ”っていう感じです(笑)。でも沢山聞いてもらえたなと、とてもありがたいと感じています。今年もやりますよ! 近いうちにTwitterで呟こうかな?(笑)
――多くの方に、バンドの音が響いている感じがします。曲を出すタイミングなどは意識していたり?
意識というか自然の流れですね。曲はもうボンボンできちゃいますよっていう感じではあるんですけど、どういうものをリリースしようというのは、曲ができた流れが殆どです。その場その場で考えてます。
――あえて、今こういうの作ろうという感じでもないんですか。
こういう感じで作ろうと意識したのは、「祝祭広場のクリスマスマーケット」ぐらいですかね。
――どんな意識で書いたんでしょうか。
うめだ阪急さんからのオファーでしたので、まず望まれている全体的な部分をお聞きして、今のH ZETTRIOだったらこうするな?っていうものをご提案しました。実は2方向性あって、最終的には選んで頂き、あとはクリスマスというイメージと、キラキラしている催し物が行われるということを意識しました。MVもそのようなイメージになってます。
――MVの中で好きなシーンがあって、おもちゃのピアノとドラムでやっているところ。あれ、H ZETTRIOなら本当にやれそうだなと(笑)。
本当ですか。それは嬉しいです! ただ、あの撮影は眠気がマックスでしたね。というのも、そのおもちゃのピアノやドラムの撮影が、百貨店の閉店後に撮影をしたので、ド深夜でして。よく見るとあれあんまり目が開いてない(笑)。
――ははは(笑)。でも、あの曲自体クリスマス・ソングのオマージュがいっぱい入っていたり、本当に素敵です。先ほどおっしゃっていた普段と作り方が違う部分は?
クリスマスの曲は、コンセプトを元に曲の要望などを踏まえて作っていった感じです。スタンダード曲のフレーズを散りばめたことで世代を超えて感じてもらえたらなぁと。普段はとにかくトリオでやったら面白いなという感じなのですが、クリスマスのは半分半分。コンセプトとかイメージしたものにめがけて作りました。でも新しさは意識したと思います。
――でもやっぱり、そういう風につくったとしても溢れ出るH ZETTRIO感。
出ていますか? そのお言葉、ありがたく頂戴いたします。
――溢れ出る何かは拭い去れないと思います(笑)。トリオでやったら面白いなっていうのはライブをめがけているんでしょうか。
ライブですね。でもライブと音源が分かれてるというよりは、鳴っている音として溢れ出る何かがあったらいいなという感じです。ライブというのは手っ取り早いというか、わかりやすいです。
――3人のアンサンブル的なものを想像しながら書いたりしますか。
3人ということは意識してやってますね。その上で、3人をイメージしてやっているというのと、3人を全くイメージしないでやるというのを合わせて、変なものを作るということがありますね。あんまりどっちかに縛られると良くないのかなって思っています。
――トリオのうまみを面白く使ってる「MESHI」などもありますよね。
あれはですね、最初から面白い曲にしようという狙いは特になかったんですけど、だんだん曲が完成するにつれて、この完成形が見えるにつれて、もうちょっと崩したいなというか、これじゃ普通だなと思いました。そしたらKOUさんとか、NIREとか、突拍子もない考えを持っている時があるので、それを注入した感じですね(笑)。
――突拍子もないですね割と。あのオシャレ感の中で、<飯食ってYEAH!>って出てくると。
ただ、あれはKOUさんのアドリブなんです。なんでもいいからマイクの前に立って、なんか言ってくださいって言ったら、ああなったっていう(笑)。
――で、採用。
採用ですね。
――Mさん的な採用の基準はなんですか。
意外性があるかないかです。勿論、意外性のない曲も好きですけど。
――全体的に良い意味で裏切りたい、天邪鬼なMさんがいるアルバムだし、ライブだなって思います。
裏に抜けるスルーパスが大好きなんです。気持ちいいですし、音楽でスルーパス出したいですよ。
――(パスを)出された、NIREさんとKOUさんが驚いてるぐらいの時がありますよね。そのパス、そこに出すんだ!みたいな。篠笛吹いたりとかっていきなりシュート打ってると思うんですけど、思いつきだったりするんですか。
篠笛はもともと去年のツアーで、岡山に行ったんです。僕はライブ前に街を散策したりするんですけど、誰もいない商店街に楽器屋があったんですよ。そこの楽器屋に入ったら篠笛があってですね、これ吹いたら面白いかなって思って……そんな感じです(笑)。
――飄々とシニカルに操っている感じがピエロみたいでいいんですよね。
意外にピエロってあんまり研究してないんですけどね。
――そういえば独演会もやられてましたが、前回のインタビューの時にベーゼンドルファーを弾くっておっしゃってましたがどうでした?
ベーゼンドルファーはデザインピアノというか、変わった形のピアノだったんですけど、それが面白かったんですよ。宇宙船のような(笑)。斜めになっているというか、脚も普通じゃなかったですね。
――どんな音がするんでしょうか。
珍しいらしいですけどね。音はそれらしいビンテージなものというか。……もう一回弾きたいですね。楽器としても全然問題はなかったですし、色々なプレイを思いついたし、もっと弾きたいなと思いました。
――独演会とトリオの時って、変えてます? スイッチとか。
独演会の方が、自由度は100%という感じです。トリオの時は2人に任せてるところがありますから、2人と一緒に3人で作り上げるというイメージですね。ちゃんとしてるところはちゃんとしないとグラグラしちゃうので。でも1人の時は、1人で積み上げるので、どんな方向に行っても大丈夫っていうか。
――自分の舵取りでいいわけだからということですね。独演会は来るお客さんも違ったりしますか。
どうなんですかね……。つい先日にやった独演会では、小さい子がギャン泣きしてましたね。曲を弾き始めたら、ウワーンって泣き始めてしまったんです。でもたまたまその曲とちょうど雰囲気があってたんで、「いいですね」ってMCしたりしてたんですけど、だんだんギャーギャーってなって退出されてしまったみたいですけどね。
――対応が実にMさんらしい。
ちっちゃい子は、雰囲気で泣いちゃったりするんだなって思いました。
――面白い弾きはじめだったんですね。そして2017年は早速『PIANO CRAZE CRAZY TOUR』が、これまたものすごい本数あります。既にソールドアウトの公演もありますが、去年と比べてどんなツアーに?
いい音楽をしたいなっていうのはありますね。3人で、高度な積み上げを見せたらいいなっていうのはありますね。それから、やっぱりお越し頂くお客さんには幸せな気持ちになってほしいです。いろんな場所に行って、街を散策して、篠笛見つけたみたいな感じで、いろんな発見があってまた新しい事ができたらいいなと思います。
――それはツアーの醍醐味でもあります。
どこに何があるのかわかりませんからね、そういうものも含めて街を巡るのが楽しいです。
――3人で結構プラプラしたりします?
3人バラバラです。KOUさんはずっと楽屋にいる感じですかね(笑)。楽屋担当です。NIREさんは、食事に外に出かけたり、走ったりもする。彼は不明なところが多いです。
――ライブを見ていると思うんですけど、H ZETTRIOのライブは相当体力を使いますよね。
結構ゼーゼーハーハーしていますね。最近体力つけなくちゃと思って、歩いたりとかはしてるんですけど。
――ピアノって指を動かしっぱなしで、Mさんの場合は普通のピアニストよりも高い打鍵率だと思うんです。
そこは大丈夫ですね。指とか、腕とかが疲れるというよりも、呼吸が疲れるというか。
――暴れまくってますもんね。だって、踊ってるもん。
でも昔はもっと踊ってたかなと思います。無理な格好とかを求められているのかなって思うと、やっちゃうっていうか(笑)。
――それもサービス系のスルーパスですよね(笑)。今回のツアーの中で、5月5日のライブだけ、全年齢入場可能だったり、ちょっと違う日だと思うんですけど、他のツアーとこの日と違いはどこなんでしょう。
ライブを色々やっていると、ちっちゃい子のお父さんお母さんも増えてきまして座ってゆっくり見られるライブもいいじゃないかという話になったんですね。子供達が僕らの音楽を聴いて、何かを感じてもらえると嬉しいです。
――やっぱり去年の評判が良かったということでしょうか。
去年は「ティアラこうとう」って会場でライブをやったんですけど、良かったですね。ちっちゃい子の声が響き渡り(笑)。全然雰囲気の違う所で皆さんがみてくれるというのがとてもよかったです。
――ライブの仕方も変わったり?
普段のライブとは差別化を図りたいと思っています。どんな感じにするかはまだこれからですけど。とにかく、全年齢が楽しめるライブにしたいと思ってます。
――手品をしたりとか。
(手品は)1人の時にやりましたね。まあ手品もありだと思いますし、とにかく楽しんでもらえるものを作りたいです。空気を読みながら。やはり今回はだいぶ違うと思います。……まあもちろん同じライブは無いんだろうと思いますけど。
――しかし、僕がいうのもおこがましいですけど、めっちゃグルーヴが上がってますよね。
いえいえ。僕もそこは心がけるようにしています。意識は上がっているというか。
――H ZETTRIOの良いところは、意識が上がって、すごいグルーヴなのに、きっちりちゃんと全部弾こうとはしていないですよね。しっかり弾く時と、熱にまかせて行ききるみたいな時のバランスが良い。
きっちりやりすぎてて、ハッとする時があります。こっちどうしようみたいな。二つあったらいいなっていうのは常にあります。“きっちりとぶち壊す”みたいな。どっちかだけだと、全体的に弱くなってくる。全体を強くするために、ぶち壊しつつ、きっちりする部分もどっかにあって欲しいなって。
――「Trio,Trio,Trio!!!」は、もうどんどんいったれ!で、「Another Sky」は、きっちり弾ききるみたいな。その中で、熱も意識されてるっていうのがライブっぽくていいですよね。世界観を出すのが巧みです。
ありがとうございます。そういうバランスは大切だと思います。世界観を作るというところで考えると、タイトルからのイメージがありつつも、とにかく音を丁寧に積み上げるというか、ストーリーや曲の構成とかっていう部分をどう展開していくのか?っていうことを真面目に考えています。そうするとちゃんと強度のあるものができるのかなって。それが世界観として現れているのかもしれないですね。
――音楽的にすごく積み上げている。
そういう意識はありますね。ちゃんとしたところというか、ベーシックみたいなものがちゃんとあってこそ、気負いなくできるみたいなところはいきたいです。そこが僕には重要なところです。
――根幹があって飛び道具もあるって理想です。今年は“こんなことをしてやろう”っていう考えはあるんですか。
具体的ではないんですが、ちゃんとしてるところはちゃんとして、世界を広げたいなっていうのはありますね。自分でびっくりするようなことがしたいですけどね。
――ファンタジスタですからね。
オーバー・ヘッド・ヒールとかしたいですけどね(笑)。
――比喩じゃなく物理的にみてみたいです(笑)。特に、去年と今年でご自身が差別化しようと思っているところはありますか。
どうでしょうね。音楽の世界に限らずいろんなものを見て、聞いて、いろんな世界が自分の中で広がったら。ピアノマンとしての技術もあげたいなと思いますし。
――まだ行きますか。
いや、まだ全然。常に上を目指す……もうまだまだ全然ですね。そんな感じで、2017年は生まれ変わりたいなと。過去、一切捨ててもいいです。あとなにか閃き続けたいですね。閃かないと面白くないなって。
――しかし、ピアノトリオじゃないですか。歌がないから国境がないなっていう感じがするんですけど、その辺は意識されていますか?
特にあんまり意識してないですけど、元々クラシックピアノから始めたので――クラシックって基本歌曲とか以外は歌がないんですよ。そういうものをずっと弾いてピアノを練習してて、そこからジャズとかのピアノを弾きつつ今に至る、みたいな感じなので、あまり特に何も考えてないです。
――クラシックからっていうのは意外ですけど、最初からグローバルだったんですね。
モーツァルトとか、相当グローバルですから(笑)。そうかもしれないですね。でも、海外のフェスはすごい魅力的です。日本とは違った空気を感じて、それをまたアウトプットしていけたら楽しそうです。
――去年も、一昨年も国内の夏フェス関係はかなりでていらっしゃいました。フェスとワンマンは違いますか。
全然違います。フェスはお祭りという感じ。でもやってることが違うのかって言われると、一緒のような気もしますけど、その場に応じてっていう意味において、違うことが出てきやすい場所だなとおもいます。何よりも燃えますし。
――「いつパス出そうかな」って考えてそうだもんなぁ(笑)。中津川(中津川 THE SOLAR BUDOKAN)でも拝見しましたが、どこか違う雰囲気でした。
あの時は大変で! キーボードスタンドに左足をかけて、キーボードに足を置いたんですよ、そしたら、キーボードスタンドが壊れちゃって、キーボードが落下したんです。かなり焦りましたね(苦笑)。
――どうしたんですかそのあと。
そのまま弾き続けました。
――(笑)。お客さんから見ているとトラブルだって思われてないんじゃないですか。
思われてないかもしれないですね(笑)。
――そういえば『スッキリ!!』にも出演されて、「Dancing in the mood」の尺八とのコラボがありました。今年は何かコラボとか考えています?
コラボは良い方がいればウェルカムですね。前に武田真治さんのラジオで、武田真治さんがサックス、あとバイオリンの岡部磨知さんと3人で、「Dancing in the mood」をやった時は結構ハマりました。
――最後になりますが、SPICEを見ている方にどんなツアーになるかメッセージを。
想像の斜め上をいくライブをしたいと思っているので、観に来てほしいなと思います。色んな人がH ZETTRIOを知って、ライブに紛れ込んでくれたらって。みんな僕が岡山をプラプラして偶然篠笛を見つけたみたいな感じで、頭空っぽにして、あいつ何やってるんだろう?っていう人や物と出会ってほしいな、そういう人間たちであってほしいなと思います。
――開放せよですよね。開放してきてくれると、きっと生活のいろんな場面に合う音楽が、H ZETTRIOにはあるような気がします。
そうなってくれると嬉しいです。僕は個人個人に任せるみたいなところがあるので、その人に聴いてくださいって干渉しないで、その人が自発的にこっちを気づいてくれたらいいなっていう思いで、静かにすごしているっていう感じですね(笑)。
――振り向いてくれるかな?って。
こっち来るかなって思ったら、ここにいたみたいな。そんな感じですかね。
取材・文=秤谷建一郎 撮影=風間大洋
会場:北とぴあ さくらホール
北区民特別先行販売:2/8(水)〜3/3(金)
北区民先行販売・北区民割引 前売¥3,600
特記:未就学児童は無料(大人1名につき、子供1名まで膝上可)。
但し、座席が必要な場合は
4/11(火)愛知 SPADE BOX
4/12(水)三重 M’AXA
4/14(金)福岡 BEAT STATION
4/15(土)大分 音楽館
4/16(日)宮崎 SR BOX
4/18(火)鹿児島 SR HALL
4/20(木)熊本 早川倉庫
4/22(土)山口 Jazz Club BILLIE ※LIVEのみ¥5,500 / LIVE+DINNER ¥7,500
4/23(日)岡山 Desperado
4/24(月)和歌山 OLD TIME
5/13(土) 石川 Million City
5/14(日) 福井 北の庄クラシックス
5/16(火) 香川 DIME
5/17(水) 高知 X-pt.
5/19(金) 愛媛 サロンキティ
5/20(土) 広島 BLUELIVE HIROSHIMA
5/21(日) 島根 LIVE&STUDIO 松江B1
5/25(木) 北海道 cubegarden
5/26(金) 北海道 cubegarden
5/28(日) 北海道 CASINO DRIVE
6/3(土) 群馬 DYVER
6/4(日) 栃木 悠日
6/8(木) 宮城 MACANA
6/9(金) 秋田 CLUB SWINDLE
6/10(土) 岩手 the five morioka
6/16(金) 静岡 窓枠
6/17(土) 山梨 桜座
6/18(日)長野 Sound Hall a.C
6/23(金) 兵庫 CHICKEN GEORGE
6/24(土) 京都 KYOTO MUSE
6/29(木) 神奈川 CLUB CITTA’
※詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。
website: www.hzettrio.info
you tube official:https://www.youtube.com/user/HZETTMOFFICIAL
H ZETTRIO / PIANO CRAZE
2016年9月7日(水)発売
-Bonus Track-「炎のランニング」¥3,000+税 (apart.RECORDS)