大塚 愛 2年9ヵ月ぶりの新曲「私」の話から子育て、アーティストとしての葛藤まで、“今の私”を語る

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2017.2.6
大塚 愛 Photo by Takao Sakai(aosora)

大塚 愛 Photo by Takao Sakai(aosora)

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大塚 愛がシングルとしては2年9ヶ月ぶりとなる待望の新曲「私」を2月15日にリリース。フジテレビ系ドラマ木曜劇場『嫌われる勇気』の主題歌になっている本作は、他人の評価にとらわれることなく“今、私が”前向きに生きる勇気を与えてくれるナンバー。印象的なサビのメロディや語感、グルーヴ感が聴けば聴くほどクセになる曲でもある。“私”と“嫌われる勇気”を軸に、SPICE初登場の大塚に話を訊いた。楽曲の話から子育て、アーティストとしての葛藤まで、こちらがハラハラするほどオープンに語ってくれた彼女は、とてもしなやかでみずみずしく、まさに“今、私”を生きていることが伺えた。

人気者になりたいとか、みんなに好かれたいっていうタイプでもなかった。
どちらかというと自分の作品に対してもアンチの目で見てるというか。

――シングルとしては2年9ヶ月ぶりのリリースになりますね。

そうですね。リリースが空いた理由は特にないんですけど(笑)。気がついたら空いたね、みたいな(笑)。私が一番に考えなきゃいけないことは“いかにいい曲を作るか”で、どうやって売っていくかっていうのは会社にお任せしているので、自分で“早くシングルを出さなきゃ”みたいなことはあんまり考えないんですよね。

――なるほど。今回の「私」はドラマ『嫌われる勇気』の主題歌になっています。これはどんなふうに作っていったんですか?

いただいた台本をまず読んで、そのあとドラマのプロデューサーさんとお会いして、向こうの方が求めていらっしゃることと、私の求めていることをすり合わせながら作っていきました。

――それぞれが求めていたことというのは?

向こうの方は最初、バラードを希望されていたんです。「ドラマの最後にバラードで、観ている人を前向きにさせてほしい」と。でもバラードで前向きにさせるっていうのは、ちょっと腰が重くなりそうだなぁと思って。私は今の時代、女性は逞しく生きていると思うし、もっと強く歩いていけるものだと思っているんです。で、そういう背中を押したい、そこに似合う楽曲がいいなと思って、バラードにはせずに、歩いていくシーンをイメージして、ちょっとグルーヴ感のある曲にしました。

――音的にはエレクトロなトラックですけど、その辺は前回のアルバム『LOVE TRiCKY』の流れから?

『LOVE TRiCKY』のあとにまた別のアルバムを作っていて、今回のお話はその途中でいただいたものだったんですよ。なので、いきなり方向性を変えるよりは、作っているアルバムから外れないように、っていうのと、こういう音の方が自分が歩いていくグルーヴ感に合うなと思って。

――歌詞はしなやかで凛とした女性像が浮かびます。大塚さんがこの歌詞に込めたテーマというのは?

それも最初、向こうの方から“勇気をテーマに”っていうご要望があったんです。でも私は真面目な言葉にすごい抵抗感があるんですよね。なんせ今まであんまり真面目に生きたことがないので(笑)。なので、全面的に勇気が出るものっていうよりも、聴き終えた時にそういう効果もあるような歌詞にしたいなと。そう思ってる時に、アドラーの『嫌われる勇気』に書かれている“他人を気にしすぎない”っていうのがリンクしたんです。例えば他人を必要以上に攻撃する人って、他人を気にしすぎてる証拠だと思うんです。人から何か言われたことを気にして生きてるって、結局、他人が軸になっちゃってる。でも自分の人生なんだから、いま自分はどうなのか、いま自分は満足できているのかとか、そういうところを意識しながら、いま、もっと自分を生きようよって。で、聴き終わった後にみんなが生きていく強さだったり勇気を持てたらいいな、という想いで書きました。

――大塚さん自身は“嫌われる勇気”って持ってますか?

私は昔から嫌われているので(笑)、あんまりそこに焦点を当てたことはないですね。

――(笑)、誰に嫌われてたんですか?

だいたい誰かには嫌われてました(笑)。

――なんで嫌われてたんでしょう?

たぶん、生意気だしワガママだし。男子に関しては、私が引かないので喧嘩になって、そこでまず敵がいっぱい(笑)。女子に関しては、例えば「○○くんが好きだから協力して」って言われて、協力するために○○くんと話してたら女の子から怒られるとか。逆に、ある女の子が××くんのことを好きだって知らなくて、その××くんと普通に話してたら、これまた怒られるとか(笑)。

――でも学生の頃って、それで悩みませんでした? 大人になると誰かに嫌われても“まぁ仕方ない”って思える部分もあるけど、学生の時って世界が狭いからダメージも大きいと思うんですが。

えーとね、私の場合、男子に関しては嫌われようが別にどうでもよくて(笑)、女子に関してはもう“触らぬ神にたたりなし”って感じでした。何か言われても“あ~、何か言ってるな~”みたいな。そんな人気者になりたいとか、みんなに好かれたいっていうタイプでもなかったし、自分が信頼できる仲のいい子がいればいいやって。それに、みんなが言ってることが間違ってるとも思わないんですよね。私はいまだにいろんなところでいろんなことを言われるんですけど、確かに言われてることは合ってるなと思うし。どちらかというと自分の作品に対してもアンチの目で見てるというか、何かしら揚げ足を取って、たぶんアンチ派の意見と一緒なんですよ。

――ほんとですか!? でも自分の作品に対してそういう見方をしていると、時々自信がなくなったりしませんか?

そう。だから自信がなくて「もうやめよう」って何回も言ったことがあります(笑)。

――でも、何度もそう言いつつ続けているのは、やっぱり音楽が好きだからなんでしょうね?

昔はそれ以外取り柄がなさ過ぎて、他にできることもないしなぁって。で、いまは娘が「絶対やめないでほしい」って言うんです。この仕事をしてると娘と一緒にいられない時間が増えたりもするじゃないですか? 「そういうこともあるんだよ」って言っても、「ママが歌をやめるぐらいだったら私は淋しい方を取る!」って。

――娘さんって今5歳ぐらいですよね? その年齢でそんなことが言えるってすごい!

「私はママの歌が大好きだから絶対やめないでほしい」って言われると、「はい! 頑張ります!」って(笑)。

――それは一番大きい原動力になりますね。

そうですね。

――娘さんはよく大塚さんのライブを観たりCDを聴いたりされてるんですか?

ライブもレコーディングも、いろんな現場にほぼ一緒に行っているので、本人は“ママのスタッフだ”と思ってるみたいです(笑)。前に「私はママの何なのか、立ち位置を教えてほしい」みたいなことを聞かれたことがあって、「じゃあアシスタントでお願いします」って言ったら、「わかった、すごく手伝う!」みたいな(笑)。

――可愛い~! 心強いアシスタントだ(笑)。実は仕事の傍ら、子育てはどうされてるのかな?と思ってたんですけど、ちゃんと両立されてるんですね?

なるべく本人に負担になるようなことは避けつつ、TPOに合わせてやっています。甘えさせてあげられる時は甘えさせてあげて、ここは子ども扱いすべきではないと思った時はとことん話し合ったり。家のことにしても“あれやれ、これやれ”って上から言うんじゃなくて、「あなたも家族の一員なんだから、掃除するのは当たり前だよね?」って、一緒にやったりとか。ただ、子育てって正解がないじゃないですか? 娘が大人になった時「いや~、小さい時は結構ツラかったよ」って言われるかもしれない。だから手探りではあるんですけどね。

――いまお話を聞いてて、子育てのこともナチュラルに話せる大塚さんって素敵だなと思いました。

え、そうですか?

――だって隠す人も少なくないですから。生活面はあまり出したくないってことで。もちろんそれも理解できるんですけど。

私はごく普通に生活しているので(笑)。

――そういう感覚がいいなと思います。で……またちょっと“嫌われる勇気”に話を戻すと、アーティストとして“嫌われる勇気”を考えた場合、そのバランスって難しいと思うんですよ。人にどう思われようと自己主張できないと表現者としての個性がなくなってしまうし、かといってある意味人気商売だから、みんなの共感が得られないとプロとして成り立たないし。

本当にその通りで、難しいなぁって、ここに来てすごく思ってます。自分は求められることをやっていくのか、自分が思うことをやっていくのか……。わかりやすく言うと、会社からは「売れる曲を出してほしい」と言われる。それはもっともなことだし、会社に属してる以上は恩も返していかなきゃいけないと思うんです。でも、それで自分の思ってることとちょっと違うものを出したとして、みんなはそれを私のイメージとして受け取るじゃないですか? 私が出してるわけだから。そういう中でやっていくのか、それとも……っていう。迷いはいっぱいありますね。

――それは音的なことも含めて?

いえ、例えばエレクトロか生音かとか、そういうことではなくて。いま自分が好きなもの、いいなと思えるものが、過去のものとはちょっと違ってきているということです。

大塚 愛

大塚 愛

――例えば今回の「私」は、大塚さんの今やりたいことが反映されていると感じたんですが、いかがですか?

そうですね。もちろんドラマありきなので、そこに背くことはできないし、寄り添ってはいるんですけど、会社から言われたことはたぶん返してない……返さない方を選んでいます(笑)。で、私がそういう決断をして、会社から何か言われたら、それはそれで「わかりました。ありがとうございました」っていう立ち去りをする覚悟でいまやっているんです。なので、いつまでやれるかわからないんですよね(笑)。

――その腹の括り方、潔いなと思います。そういう姿勢自体、今回の「私」のテーマに通じるものがありますね。そういえば今作はジャケ写も自分主体というか、大塚さんがセルフポートレートを撮ってるんですよね?

はい。間にカメラマンさんが入ると、その人の雰囲気が何かしら反映してしまうので、今回は自分で撮った方がいいかなと思って。で、このジャケ写ではちょっと風が吹いているんですけど、この風は娘がヒューッと当ててくれたんですよ。

――アシスタント、いい仕事をしてるじゃないですか!(笑)

そうそう(笑)。風もできるんだ?みたいな(笑)。

――あと、今作の限定盤に封入されているスタイルブック、このスタイリングも大塚さん自身が行なったんだとか。

そうなんです。女性の太陽の部分と月の部分を出せればいいかなぁと思って。

――洋服はお好きなんですか?

大好きです! 洋服屋の雰囲気自体が好きで、ショップとか行くと、ここに住みたい!って思うくらい(笑)。

――そこまで(笑)。

この数年、音楽をどんなふうにやっていくかっていうところで悩んだとき、じゃあ洋服屋に就職しようかな~って思ったり(笑)。

――いや、転職しなくていいですから(笑)。

でも若い頃って勘違いから入ると思うんですよ。勘違いから入って“お、これは行けるんじゃないか?”って、さらに勘違いして進んでいけるんですけど、ある時気づくんですよね。“これはいけない! 早く退散せねば!”みたいな。私は出産で一時活動を停止した時に色々と考えることがあって。今まで一人で生きてきて無責任だった部分に、急にドーンと責任が来た時、気づいちゃったんですよね、いろんなことに。

――でもそれって謙虚すぎるんじゃないかなと。例えば今作にしても私が改めて思ったのは、歌詞の凄さで。表題曲はもちろん、カップリングの「サクラハラハラ」では女性が服を脱いでいくシーンを隠喩で浮かび上がらせたり、かと思えば「女子シェルター」では男のこんな言動にだまされるな!っていう、女子が100%共感できることを書いてたり。やっぱりこれは大塚愛じゃないと書けない歌詞だなと思ったんです。

ありがとうございます! そうですね……今までも女性の気持ちを描いてきたんですけど、今回はほんとにもう、女ってものにパーン!とピントを当てて書いたんです。女性の逞しさだったり、ベッドの上でのワル~い感じとか、ねちねちした感じとか、だけどやっぱり可愛らしいなっていうようなところも、いろんな角度からの女性らしさっていうのかな? そういうものを1枚にギュッと詰め込めたなという気はしています。

――そんな本作が出る頃にはビルボードライブでのピアノ弾き語りライブ『AIO PIANO vol.4』もありますね?

はい。ビルボードライブはザ・シンプルな感じで。でもシンプルな中にもAIO PIANOならではのカバーだったり、近年ちょっとやり出しているピアノソロも入れながら、そして「私」も触りながら、そんなライブになると思います。

――楽しみにしています! では最後に、2017年の抱負も。こんなふうにやっていきたいっていうのはありますか?

サボっていきたいです。

――サボりつつ、やる時はやる、みたいな?

うまくやる、やってるふうに見せる、みたいな(笑)。

――大丈夫ですかそれ? さっきから“これ書いて大丈夫かな?っていう発言がいっぱいで、ハラハラしてるんですけど(笑)。

ははははは!(笑) 上手に肩の力を抜いていけたらなぁって思ってるんです。抜いて抜いて、なんかこう、抜け感のある人になりたいなぁって。

取材・文=赤木まみ


 
 
リリース情報
シングル「私」
2017年2月15日発売
※フジテレビ系ドラマ木曜劇場「嫌われる勇気」主題歌

【CD+STYLE BOOK】AVCD-83772 ¥2,300+税
大塚 愛 CD+STYLE BOOK

大塚 愛 CD+STYLE BOOK


【CD+DVD】AVCD-83773/B ¥1,800+税
大塚 愛 CD+DVD

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【CD】AVCD-83774 ¥1,200+税
大塚 愛 CD

大塚 愛 CD


【CD+グッズ】(FC&mu-mo shopのみ)AVC1-83775 ¥2,300+税
大塚 愛 CD+グッズ

大塚 愛 CD+グッズ


<収録内容>
01.私
02.サクラハラハラ
03.新曲
※DVDには「私」のMusic Video&Makingを収録
※CDのみには各インストを収録
商品詳細はこちら:http://avex.jp/ai/discography/
<シングル「私」リリース記念イベント>
2/16(木)19時半~ 都内某所 第一弾★スペシャル対談(村松亮太郎 NAKED INC.代表)
2/25(土)19時半~ 都内某所 第二弾★バンド編成のスペシャルライブ
2/26(日)15時~ 都内某所 第三弾★スペシャル公開インタビュー
※イベントの詳細は近日中に、ご案内致しますので、お問い合わせ等はお控えください。

 

ライブ情報
大塚 愛 AIO PIANO vol.4
・2017/2/7(火)ビルボード大阪
1stステージ 開場17:30 開演18:30 / 2ndステージ 開場20:30 開演21:30
・2017/2/13(月)ビルボード東京 [追加公演]
1stステージ 開場17:30 開演19:00 / 2ndステージ 開場20:45 開演21:30
・2017/2/14(火)ビルボード東京
1stステージ 開場17:30 開演19:00 / 2ndステージ 開場20:45 開演21:30
 
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