TOTALFAT、新年自主企画『PUNISHER'S NIGHT』・東京で175R、ENTHと大激突

ライブ後に楽屋挨拶に行くと、Shun（Vo/B、TOTALFAT）は「久しぶりのライブだったんで……」と謙遜していたが、今のTOTALFATはバンドの状態が非常にいい。それは本人の口から直接聞いたわけではない。今日のライブを観て、そう確信した。

9回目を迎えるTOTALFATの新年自主企画『PUNISHER'S NIGHT』。バンド自体も今年初ライブという形になり、2017年を占う意味でも重要な位置を占めるステージだ。この日は東名阪3公演の初日にあたり、トップはなんと昨年12月に6年の活動休止から活動を再開した175Rが務めた。１曲目「ハッピーライフ」で火蓋を切ると、豪快なサビに早くも観客が拳を突き上げ、ブランクを感じさせない盛り上がりを記録。SHOGO（Vo）、KAZYA（G）、ISAKICK（B）、YOSHIAKI（Dr）のメンバー４人は、休止前と変わらないエネルギッシュな演奏を繰り広げていく。SHOGOは今日対バンのENTHのメンバーが初めて自分で買ったが175Rだったと聞いて嬉しかった、という楽屋裏話を挟みながら、ラスト曲「空に唄えば」でエモーショナルな熱い歌声を轟かせた。この日彼らは新曲も披露していたが、それらの曲も初耳の観客の心もガッチリと捉えていた。新作にも期待したいところだ。

次は名古屋の次世代メロディック・シーンを担う3人組のENTHが登場。「渋谷、躍るぞ！」とdaipon（Vo/B）が煽ると、パンク、スカ、ラウドと様々な要素を盛り込み、一筋縄ではいかない曲展開でフロアを魅了する。また、ブルージーなハードロック調のフレーズを弾くNaoki（G/Cho）はコーラスでも大活躍。3ピースのカタマリ感を発揮した衝動的なライブを見せつけた。途中、「中２の時に初めて175Rの買って、ライブを観た。で、高校の時の彼女がKuboty（G/Cho、TOTALFAT）が好きで……」とdaiponが喋って場を和ませると、TOTALFATに呼ばれたことに感謝しつつ、一番を獲りに来た！と宣言する負けん気の強さも頼もしかった。

そして21時4分、今日の主催者であるTOTALFATのメンバー4人がステージに立ち、「Room45」で勢いよくスタートダッシュを決める。初っ端から＜OH! OH! OH!＞の大合唱に沸き、フロアはカオスな熱気に包まれていく。「サークル・モッシュ見せてくれよ？」とJose（Vo/G）が言うと、イントロからKubotyの超絶ギターが火を噴く「Ride Your Life」をプレイ。さらに会場を焚き付けた後に「X-stream」が拍車をかけ、頭３曲で完全に自分たちの空気を作り上げていた。

Bunta（Dr/Cho）が思わずドラムの椅子から立ち上がり、力強いビートを叩き込むと、ここで早くも「宴の合図」を披露。現場は宴の合図どころではない騒ぎだが、ちょっぴり哀愁を感じさせるお祭り曲はいいフックになっていた。観客の心を内側から刺激するシンガロング・メロディも効果的で、Shun、Joseのツイン・ヴォーカルのコンビネーションも抜群だ。それから祭り本番！と言わんばかりに「夏のトカゲ」にバトンを渡す。Joseが情感を込めてゆっくりと歌い上げた後、寝た子も叩き起こす怒濤の展開で、観客は頭上でタオルを回して大フィーバー。

「今日は特別な日、「夏のトカゲ」「PARTY PARTY」を超える曲」と前置きすると、新曲「Delight!! feat.J-REXXX」をここで放つ。J-REXXXを呼び込み、レゲエ色を取り込んだアッパーなロック・チューンを響かせる。起伏に富んだ展開で、ランシドっぽいニュアンスを忍ばせた曲調にアガッた。

Shunがハンドマイクで歌い上げるピースフルなミドル曲「We Sing Everyday For Hometown」へ繋ぐと、後半戦に突入だ。速いの、激しいの行くぞ！という号令と共に「DA NA NA」でサークル・モッシュが勃発。その流れをしっかり受けとめるように、ストレートな日本語歌を用いた「Just Say Your Word」～「Good Bye,Good Luck」の流れにも胸が熱くなった。

そして、約２年ぶりに8thアルバム『FAT』を４月26日に発売することを告げ、その新作を引っ提げた全国ツアーを全カ所ワンマン（！）で行うことも発表。それ耳にしたオーディエンスは、思わず「すげー！」と零していた。それからこの日２曲目になる新曲「スクランブル」を披露。特徴的なギターリフ、言葉数が詰まった早口パート、耳に飛び込んできた＜オリジナル人生＞という歌詞。曲調はTOTALFATらしいロック・チューンに仕上がっているので、こちらも期待していいだろう。 

本編を「ONE FOR THE DREAMS」で終えると、アンコールの「PARTY PARTY」ではSHOGOが飛び入り参加。歌詞をちゃんと歌いこなす見事なコラボレーションで、「ハッピーパーティーだったね！」とShunが言うほど異常に盛り上がった。最後は「Place to Try」で締め括り、1時間強のライブはあっという間に終了。

今のTOTALFATは、目の前の霧がパッと消え去ったような豪放な勢いに富んでいる。器用なバンドだけに、いろいろと頭を巡らせる時期もあったかもしれないが、自分たちがやるべき方向性が見えた上で、前へ前へと直進するパワーに圧倒されてしまった。

「心も体も熱いニュー・アルバムができた」とJoseは自信満々に言っていた。ある意味セルフタイトルとも言える『FAT』が、今から待ち遠しくて仕方がない。

取材・文＝荒金良介　撮影＝Azusa Takada

※初回掲出時にフォトクレジット表記に誤りがありました。お詫びして訂正いたします（編集部）。