電波少女 真冬の日本列島をヒッチハイクで走破して掴んだメジャーデビュー! メンバーは何を思い、何を得たのか?
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電波少女 撮影=樋口隆宏
電波少女的ヒッチハイクの旅。元ネタを知る人も知らない人も、誰もが驚き、呆れ、笑い、そしてうっかり感動した無謀な企画。真冬の日本列島をヒッチハイクで走破し、滝行やバンジージャンプなど謎のミッションをこなし、全都道府県でストリートライブを敢行し、その模様をLINE LIVEで中継し続け、ついにつかみとったメジャーデビューというご褒美。ミュージシャンがやることではないと思われる過酷すぎる旅の中で、ハシシとnicecreamは何を思い、何を得たのか。いつものように照れ笑いを浮かべつつ、明らかにたくましく成長を遂げた二人が、長い旅の顛末とメジャーデビューに向けた心境を大いに語る。
――最初にヒッチハイクの企画を聞いた時はびっくりしましたよ。だって、言い方はアレだけど、ちょっと微妙なアイドルがやるようなことじゃないですか。達成したらメジャーデビューとか。
ハシシ:そうですね(笑)。
――何やってんだろうと思ったんですけどけどね。結果的に、楽しんで、苦しんで、見事にやり遂げて、ここにいるわけで。やってきたことは正解だったと思うんですけども。ぶっちゃけ、ヒッチハイクの企画を始める時って、二人の意思はどれぐらい入ってたんですか?
ハシシ:ひたすら“やだな”と思ってました(笑)。少なくとも2か月以上は帰ってこれないとか、生活も投げ銭のみとか、わかんないことだらけだったんで。さすがに死ぬことはないだろうけど、どうなるのかわかんなくて、ひたすら“やだね”って話してました。
――断る余地はなかったの?
ハシシ:やったほうがいいのかな、という部分もあったりとか。苦労したほうがいいのかなって思う自分もありつつ、本心は“やだな”というところですね。“押すなよ!”って言ってる感じ。
nicecream:ダチョウ倶楽部の。
――アハハ。本当は押してくれという。
ハシシ:そう言ってる感は、正直ちょっとありましたけど。実際やったら、本当に押さないでくれ!っていう感じでした(笑)。
――どこかで自分を、客観的に見ないとできないですよね。ナイスくんは、始める時の心境は?
nicecream:“マジすか?”っていう感じでした。冗談だと思った。基本、方針は任せてるんで。こいつがやると言ったから、やるという感じですね。
電波少女ヒッチハイク
電波少女ヒッチハイク
――あらためて数字を見ると、びっくりですよ。札幌から宮崎まで9,222キロ走って、96台の車に乗せてもらって。
ハシシ:帰りを含めると、10,000キロ超えてます。
nicecream:車も、100台超えてる。
――乗ったほうも偉いけど、乗せるほうも偉い。
ハシシ:乗せてくれる人って、基本的にいい人なんで。あと、エネルギーが多いなと感じました。スポーツをやってる方だとか、元ヒッチハイク経験者とか、そういう方が本当に多くて。そういうエネルギーがある人のほうが、乗せてくれやすいんだなって、この旅を通して思いました。おたくっぽい方でも、どっちかというと陽気な方だったりとか、そういう人しかいなかったです。でもトラックは一台も乗ってないです。
――あ、そうなんだ。
ハシシ:トラックは、業務中は乗せちゃだめという方針になってるらしくて。だから普通の車ばっかりですね。たまに仕事中の方もいて、営業中とか。なのでカメラはちょっと、という方はいましたけど。
――優しいですねみんな。
ハシシ:平和だなと思いました。けっこうな方が、途中で何か食べ物を買ってきてくれたりとか、降りる時にお金をくれる方もいて。捨てたもんじゃねえなと思って。捨てようとしてたんですけど。
――電波少女だと、わかっていた人はいた?
ハシシ:いないです。あと、ルールとして、この企画を知ってる人はだめというルールだったので。たまにいたんですよ。車を止めて「ハシシさんですよね?」って。でも、それは「乗れないんです」って。正直乗りたかったんですけど、放送していたので、できなかったですね。
――真面目ですねえ。
ハシシ:いや、叩かれるほうが嫌なんで(笑)。真面目というよりは、もうちょい不純です。
電波少女 撮影=樋口隆宏
こいつ、なんでこんな堂々と飯食ってんだ?って、前半ではそんなこと1ミリも思わなかったんですけど。葛藤してるんです、“むかつく”“いらついちゃダメだ”“やっぱりむかつく”みたいな。(ハシシ)
――旅の最初はまあまあ、元気だったんでしょう。
ハシシ:いや、元気だったのは、関東に入るとこらへんだった気がします。最初はほんと何も見えてなくて、憂鬱のほうが勝っていて。始めてみたらばんばんつかまるんで、ヒッチハイク自体は全然苦戦しなかったんです。雨の中に何時間もいたとか、ちっちゃい苦痛はあるんですけど、1日1台もつかまらないとか、そこまでのことはなくて。で、(関東に入る頃は)ちょっとコツをつかみだした頃だったんで、その頃のほうが、モチベーション的には一番高かった気がします。“これ、すぐ終わるんじゃね?”って。
――その後、どのあたりから、暗い影がさしてくるんですか(笑)。
ハシシ:俺らとカメラマンがいたんですけど、たぶん同じ速度でテンションが下がっていった(笑)。それを一番表に出すのが俺なんですけど、みんな同じようにテンションが下がって、イライラしやすくなっていって。1回、俺がピークを迎えたのが、石川とか北陸らへんで。中国地方あたりからはずっと、1日でも早く帰りたさがピークでした。もう最悪でした。
――ドクターストップがかかったのは、どのへんでしたっけ。
ハシシ:横浜で入院しました。滝行をやって、路上ライブをやって、次の日に扁桃腺が腫れて。
――滝行のせいで(笑)。
ハシシ:入院しないといけないわけでもなかったんですけど、早く復帰するためにしたって感じです。
――その頃はまだモチベーションも高いから。
ハシシ:そうですね。でもそのタイミングで東京に戻った時に、1回家に帰ったんですよ。別のミッションのご褒美で、自宅に帰れるというのがあって。1回帰っちゃったんで、また出る時は足が重かったです。
電波少女ヒッチハイク/ハシシ体調不良
電波少女ヒッチハイク/滝行
――ナイスくんは、旅の間、どんな感情曲線が?
nicecream:北海道、東北は、果たして止まってくれるのか? みたいな感じなんで。止まるたびにテンション上がっていて、関東まではぽんぽんと行けたんですけど。だんだん止まってもらうことに慣れてきた部分があって、逆に止まらないことが負担になるというか、なんで止まらないんだ?ってなってきて。石川あたりとか、関西とかは、けっこうきつかったですね。そこからの、中国、四国、九州も。たぶん最後、ゴールしてうれしくなって、忘れかけてたんですけど、最近九州の映像を見ていたら、けっこう辛そうだったんで。関西以降は、ずっときつかったですかね。
ハシシ:後半は、ピリピリしてるんですけど、あんまり記憶がない。考えないようにしているというか、考えちゃうんですけど。瞬間瞬間でピリピリしてるんですけど、その前のことは覚えてないみたいな、そういう状態にしているというか。
――相当ギリギリですね。もう生存本能のレベル。
ハシシ:誰とも会いたくないという感じでした。
電波少女ヒッチハイク/トンネル
電波少女ヒッチハイク/バンジー
電波少女ヒッチハイク/日南駅着
――渋谷WWWの凱旋ライブ(2月4日)の時に、言ってたじゃないですか。“あと3日長かったら解散してた”って。
ハシシ:冗談ではあるんですけど、本当にそういうものがよぎるぐらい、追い詰められてました。疲れてましたね。
nicecream:ピリピリしてましたね。普段だったらスルーできることにも、いら立ってたりとか。それはお互いだと思います。本当にあと何日か長かったら、ケンカしてたなと思いました。めっちゃギリギリだった。お金が尽きなかったのが良かったのかな。
ハシシ:普段考えないことを、すげえ考えちゃうというか。お金の面も、尽きなくてすごいありがたかったし、感謝でしかないんですけど。そのお金を使っていく中で、この電波少女というグループで、フロントマンは俺で、やっぱ俺のほうが人気あるよなと思っていて。この金の分配で、絶対俺のほうが貢献してるって考えちゃうんですよ。どうしても。横でこいつが、普通に当たり前のように飯を食ってるのも、むかむかしてきて。
nicecream:(笑)。
ハシシ:こいつ、なんでこんな堂々と飯食ってんだ?って。前半ではそんなこと1ミリも思わなかったんですよ。けど、どんどんそういうものがよぎったりとか。でも、そういうふうに考える自分を、ダメだと思う自分もいるんですよ。飯食ってる時も、みんな黙ってるんですけど、葛藤してるんですよ。“むかつく”“いらついちゃダメだ”“やっぱりむかつく”みたいな。
――それは相当な極限だなあ。
ハシシ:グループとしてやっていく上で、当然じゃないですか。自分のほうが前に出てるし、好きにやってるから、というのもあるんですけど、それでもむかつく。“こいつ、俺に感謝してるのかな?”って。“俺にごちそうさまと言え”みたいな。
――隠していた、どす黒い心が(笑)。
ハシシ:普段じゃ絶対ないと思うんですけど。人間、そういうふうになってくるのかなって。完全に飲まれてましたね。
――良かった。無事乗り越えて。すごいなあ。
ハシシ:こいつの後輩のアベノリという奴が、カメラマンとしてついていて。そいつも、かなり節約しながらやってたんですよ。生活の水準を合わせてくれていて、飯も一緒だし、一緒に漫喫に泊まったり、ビデオボックスに泊まったり。前半とか、俺らがホテルに泊まる時には、一緒に入れてやったりして。本当はいけないんですけど、内緒で入れてやったりしてたんですけど。“こいつ、そういう恩をちゃんと感じてるのかな?”とか。
――アハハ。やっぱりそこか。
ハシシ:自分たちのお金で、食うものも買ってあげたりとかしてて。“ありがとうって言えよ”って、心の中で。
電波少女 撮影=樋口隆宏
ハシシが作って、ハシシが歌ってたから、リスナーはハシシのファンってたんですけど。この企画を通して、俺たちのリスナーというふうに見れるようになったというか。(nicecream)
――各県でのストリートライブそのものは、順調に? まあいろいろあったでしょうけど。
ハシシ:警察には相当注意されたりとか、近くのお店の人に怒られたりとか。移動が多かったりしました。一回、酔っ払いに絡まれたり。
――写真を見ると、どこもかなり人が集まってますよね。
ハシシ:俺ら、世間的な知名度はないですけど、この企画をやる上では、知名度はあったほうなのかな?と。ルールを簡単にしちゃったな、というのはありますね。もっと過酷なルールにするんだったら、もうちょい知名度がないほうがおいしかったような。嫌ですけど(笑)。なので、お金の面とか、ヒッチハイクに関しては、そんなに苦労はしなかったです。
nicecream:どこの地域でも、想像している以上の人数が必ず来てたので。“あ、こんなにいるんだ”って実感できたのが大きかったですね。こういう企画だからこそ来れたという、お子さんを連れたお父さんお母さんだったりとか、そういう人は印象深かったですね。
電波少女ヒッチハイク/LIVE1
電波少女ヒッチハイク/LIVE2
電波少女ヒッチハイク/LIVE3
――まとめましょう。今回の旅で、何を得ましたか。
ハシシ:こういう企画は、やっちゃいけない。
――アハハ。それかい! せつないなあ。
ハシシ:何ですかね。形として残ったものが、なさすぎるんで。今後この経験を、自分たちがどう生かしていくかだと思うんですけど。たぶん自分もそうだし、お互いもそうだし、いいところ、悪いところが見えた旅だったと思うんで。自分の場合は歌詞を書くので、そこらへんはうまく反映したいなと。自分の悪い部分も、いい部分も。
――これから形になっていく。していく。
ハシシ:そうっすね。
nicecream:僕的に、こいつにはない、僕の中でちょっと変わったことがあって。今まで電波少女の音源は、ハシシが作って、ハシシが歌ってたから、リスナーはハシシのファンで、僕もそう思ってたんですけど。この企画を通して、こいつのリスナーというものが、俺たちのリスナーというふうに見れるようになったというか。
ハシシ:おまえ、それでさっきの飯の話をチャラにしようとしてるだろ。
nicecream:違う違う(笑)。
ハシシ:まあでも、それはあると思う。ふたりが活躍できる場所として、ずーっと回ったんで。
nicecream:あと、ライブでは僕のダンスとか、よく見えないと思うんですけど。今回は明るくて、俺が何をやってるのかがよく伝わって。そういうところは、ちょっと自信になったかなと思います。
電波少女 撮影=樋口隆宏
――さあ、そして、いよいよメジャーデビューが見えてきましたよ。まず5月8日に「Re:カールマイヤー」を配信リリースして、これがメジャー一発目ということになるのかな。
ハシシ:いや、正式に言うと、先行配信という感じです。その次に出す、メジャーデビュー作の先行として、3か月連続で出すやつの一発目です。
――「Re:カールマイヤー」は、以前のものを新しく録音し直したということ?
ハシシ:はい。元のやつが、3人の時代の曲なので。それを俺が全部歌いきってるバージョンにしたって感じです。
――着々と、メジャーデビューに向けて進んでいると。今は、大きな扉を開けた気分ですか。それとも、やることは今までと変わりないですか。
ハシシ:今までの延長の中での、新しいスタートだなという感じですね。ここから景色が変わるのかな?と思ってる感じです。……わかんない。変わらないかもしれないし。
――どうなりますかね。
ハシシ:自己満に近い感じはあります。自分の中で目標にしていた部分があって、でも聴き手には関係ないよなというのがあるので。逆に、ハードルが上がるじゃないですか。メジャーというと逆にネガティブな、コアな人たちほど、“メジャー行って変わったな”とか、イメージがあるじゃないですか。
――セルアウトね。
ハシシ:そういうのがあると思うんで。でもやっぱり自分は憧れてて、そのメリットに対しても、望んでいるものだったので。なので、制限は前よりは多少あるのかもしれないですけど、そのぶんできることも増えると思うし。どこへ行っても楽しませられる奴にならないとな、というのは思ってます。どこへ行ったからダメになったとか、それは自分の力不足だと思うんで。頑張りたいです。
nicecream:聴いてくれる層も、新しい層が増えていって、比べられる人も変わってくると思うんで。負けないように頑張ろうと思います。気を引き締めたいと思います。
――真面目だなあ。ビッグマネーとか、ナンバーワンとか、ヒップホップ的なコメントはないですか(笑)。
ハシシ:日本一似合わないんで、そういうのが(笑)。
――いや、でも、電波少女の独特の良さは、そこらへんにあると思います。何が目標ですか、今後は。成功するって、どういうイメージですか。
ハシシ:すごいちっちゃい物差しなんですけど。そこでちゃんと生活ができたりとか、地元に帰った時に有名人になれてるかどうか、みたいな部分はありますね。もっと、知らない人が寄ってくるような。たまにいるんですよ、知らないけど馴れ馴れしい奴が。そういうのがあると、うざいなと思う反面、自分たちがやった結果かなと思うんで。目安になる、うざい人たちだと思うんで。
nicecream:(笑)。
ハシシ:地元に帰った時に、よくわかんない親戚が増えてたりしたら、売れたって思うのかもしれないです。
――らしいなあ。セールスとか、動員とかではなく。
ハシシ:数字も当然そうなんですけど、地味に増え続けてはいるんですよ。微妙に右肩上がりで、ずーっと来てるんで。でも今のところ、あんまりそこまで人が増えたなあとか、変わったなあとか、思うことはないんで。たいして自分の中では変わんないのかな、と思っているので。今後はそういうものが目安になりそうですね。
取材・文=宮本英夫 撮影=樋口隆宏
電波少女 撮影=樋口隆宏
日程:6月18日(日)
場所:Shibuya WWW X
開場/開演:17時/18時
金額:前売り¥3,500-(ドリンク代別)
denpagirl.com
第1弾デジタルシングル「Re:カールマイヤー」
2017年5月8日(月)配信開始