北村想の無茶振りから始まった!? avecビーズ久々の新作公演
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avecビーズ『And in the End 〜つまりそういうこと〜』チラシ表
沈黙の2年で培われたスキル、その成果が終盤で明らかに!
名古屋を代表する劇作家・北村想の意欲的新作を発表する場として、役者の金原祐三子が代表を務める劇団・avecビーズ。2004年の旗揚げ以来、ほぼ年に1作のペースで公演が行われてきたが、前作『トワイライト アット タイム 〜この黄昏よ〜』から2年─久々となる新作公演『And in the End ~つまり そういうこと~』が、2月16日(木)から「損保ジャパン日本興亜人形劇場ひまわりホール」で開幕する。
なぜ丸2年もの間、公演が行われなかったのか? その理由を尋ねると、北村の提案により、メンバーがそれぞれ楽器を一から習得していたというから驚きだ。
「ハーモニカとかカスタネットとかトライアングルとかじゃなくて、生演奏ができる楽器を皆さんに習得してもらおうと思ったんですよ。それが最初の動機で、生演奏が入る芝居を考えたということです」と、北村。
この提案に劇団内には衝撃が走り、「びっくりですよ。何を今更この歳からと(笑)」と、演出を手がける小林正和が言えば、代表の金原も「最初はみんな猛反対でした。絶対無理だから劇団を辞める、と言い出す人も。お客さんに聴かせられるものになるはずないから、想さん目を覚ましてくださいって(笑)」と、当時の様子を語った。
しかし、「そんなにきちんとやらなくていいから。やってみたかった楽器がみんなひとつくらいはあるでしょう」という北村の説得を受け、全員がこれを快諾。中島由紀子はヴァイオリン、金原祐三子はクラリネット、たなかちさはコルネット、スズキナコはドラムス、小林正和はアルトサックスと、それぞれ好みの楽器を2年かけて訓練を積みマスターしたのだ。客演の2人は偶然にも元々楽器が扱えたそうで、こつじまさのりはアコースティックギター、うちだしげのぶはウッドベースを担当し、劇中、この7人でオリジナル曲2曲を披露するという。
『And in the End 〜つまり そういうこと〜』イメージ写真
また北村は、「avecビーズのチラシには、evolution(進化)と書いてありますよね。私は芝居を始めてからいくつも名前を変えて劇団をやってきましたけど(T.P.O師★団→彗星’86→プロジェクト・ナビ)、あれは順々にまずここまで、次の集団はここまで出来るようにしよう、とやっていったんですよね。それと同じようなことをavecビーズでもやっていて、どういう風に進化させていけば良いかという中での道程のひとつなんです。自分の生きる時間…人生というとオーバーだけど、密着してやってますからね。一緒に進化していきたいっていうのがあるわけですよ。楽器が演奏できるということは、芝居のホンが無くても皆さんで集まって演奏会とかできるじゃないですか。そういうことが将来的にもできるということは、ひとつの財産にもなりますからね」とも。
稽古風景より
そんな思いのもと構想された本作は、ネイティブ・アメリカンの死生観を軸とした人生哲学が叙事詩の形で書き綴られ、かつて世界的ベストセラーとなった「MENY WINTER」(ナンシー・ウッド著 1974年出版/1995年に邦題「今日は死ぬのにもってこいの日」で日本語訳が出版)がベースになっているという。
稽古風景より
「ネイティブ・アメリカン…インディオたちは、森とか木々とかいろんなものに精霊が宿っていることを信じていて、スペインの侵略で改宗させられるわけですけど、アニミズムっていうものが残っている。日本の八百万の神々と通じるものがありますよね。そういうことが書かれているのが非常に面白いなと思って、この中の詩を私なりに意訳して使ってるんです。
もうひとつは状況的なことですけど、今はテロとの戦いで空爆をするわけじゃないですか。空爆される国の子ども達にとっては、他の国と戦争をしてるわけじゃないですから何が自分の街で起こってるかわからないと思うんですよ。なんだか知らないけど飛行機が飛んできて爆弾を落としていっちゃう。そういう日常にいるわけですよね。だからこの物語でもいきなり空爆が始まっちゃいます(笑)。人々はある施設に入れられるんですが、それは機能していない国家であるという、比喩と揶揄を含めたかったんですね。
一種のおとぎ話みたいなことですけど、なんで空爆されてるかわからない。で、逃げるでしょ。逃げたところに楽器があるんですよ。最初はなんで楽器があるか書こうと思って書いてたけどやめた。バカバカしくなって。どっから何が出てくるかなんてわかんないから、わかんないままで楽器が出てきたら弾いてみたくなるのが人情だから、楽器を弾いておしまい。っていう感じで(笑)」
稽古風景より
なぜ空爆があり、人々のいる施設とはいったい何なのかは明かされぬまま、設定だけがあり物語のない本作は、わけもわからず空爆を受けている戦時下の子どもたちの視点で描いたという。この謎の作品をどのように演出したのか小林正和に尋ねると、「まぁ、そのままやるしかないという感じで。普通に喋る言葉とはちょっと違う詩の言葉が多いので、それを大事にしっかりと伝えよう、ということだけはやってます」とのこと。
稽古風景より
詩的な言葉とメンバー渾身の生演奏はもちろん、咲田とばこ(劇団ジャブジャブサーキット)のナレーション、そして名古屋を拠点に活動するバンドEttのVo. 西本さゆりが歌うテーマソングなど、それぞれ絶妙な味わいを醸し出す“音”に注目して観たい作品だ。
前列左から・金原祐三子、北村想、こつじまさのり、小林正和 後列左から・中島由紀子、たなかちさ、スズキナコ、うちだしげのぶ
■作:北村想
■演出:小林正和
■出演:中島由紀子、金原祐三子、たなかちさ、スズキナコ、小林正和、こつじまさのり(人形劇団むすび座)、うちだしげのぶ(劇団うりんこ)
■日時:2017年2月16日(木)19:30、17日(金)14:00・19:30、18日(土)14:00・18:00、19日(日)14:00 ※16日(木)19:30と18日(土)14:00の回予約分は満席(いずれも当日券は若干あり)
■会場:損保ジャパン日本興亜人形劇場ひまわりホール(名古屋市中区丸の内3-22-21 損保ジャパン日本興亜名古屋ビル19階)
■料金:前売2,800円、当日3,000円 中高生前売1,500円(avecビーズでの電話予約のみ)
■アクセス:名古屋駅から地下鉄桜通線で「丸の内」下車、4番出口から東へ徒歩約4分
■問い合わせ:avecビーズ 080-3627-3833
■公式サイト:http://www.geocities.jp/avec_beads/