LOVE PSYCEDELICO、GLIM SPANKYら70'sテイストとコンテンポラリーなグルーヴが共存する3組の共演、イベントをプロデュースするクリス・ペプラー大いに語る
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クリス・ペプラー 撮影=鈴木 恵
クリス・ペプラー。ご存知、魅惑の低音と軽妙トーク、深い愛情と知識をもって、約30年にわたって国内外のグッド・ミュージックを紹介し続けているナビゲーター。そんな彼の名前を冠した初の音楽イベント『SAISON CARD presents J-WAVE the Chris Peppler Show“JAM-O-RAMA”』が、4月22日、Zepp Tokyoで開催される。テーマは“音楽の普遍性”で、70’sロックに多大な影響を受けた3組のアーティスト、GLIM SPANKY、LOVE PSYCEDELICO、そしてオーストラリアのガールズバンド・STONEFIELDという、魅力的な顔ぶれが集結。イベントの趣旨、時代の音、そして未来への展望とは? J-WAVEのスタジオにて、魅惑の低音大いに語る。
70'sテイストとコンテンポラリーなグルーヴとの共存。
全組楽しめることを保証します。
――今の若い世代の音楽ファンって、いろんな時代の音楽を同時に聴いてますよね。今の音楽と、ルーツ音楽を並べて、まとめてYouTubeでチェックしたり。そういった若い世代のアーティストと話をすると、どんなことを感じますか。
うーん、そうだな、今はまた、その矛先が変わってきてると思うんですよ。ミュージシャンというのは、自分たちがやりたいことをやっていって、確信犯もいれば、一発当てようというのもあれば、純粋にあるスタイルが好きな連中もいるけれども。売れ線というものが、またちょっとシフトはしてますよね。
――シフトですか。
一時期は、日本の旋律というか、歌謡曲に近いというか。KANA-BOONとか、日本的な和のメロディを取り込んだポップ・ロックが主流だったんだけれども、またちょっとシフトして、Suchmosとか、Nulbarichとか、ジャズファンク系が来るかな、という気はしてますね。
――それは時代の流れなんでしょうか。
何なんでしょうね。流れみたいなものは、あまり感じないですけどね。インターネットがあるし、もうだいたいアーカイブ化されちゃってるんで、音のトレンドみたいなものが……流行りは当然あるけれども、いわゆる音楽の進化みたいなものはあんまり感じない。流行りはありますよ。じゃあそれが、一つのものの上にあって、それを踏まえての展開なのか?というと、全然違うと思う。じゃあ振り子のように揺り戻しなのか?というと、あながちそうでもない。
――直線的な進化ということではなさそうですね。確かに。
やっぱりインフラってでかいんですよ、音楽の聴かれ方において。基本的に音楽コンテンツというものは、媒体やインフラに、ものすごく影響を受けるんで。たとえばアナログのLP盤というものができた時も、アメリカでAMとFMを差別化するために、サイマル(同時並行放送)はやらないということがあったんで、AMは2~3分のシングル盤をかけるけど、FMではもっと長くて音のいいLPをかけるということがあったり。今だとインターネットでダウンロードだったり、そういうものに左右される部分はでかいのかなという気はします。
――はい。なるほど。
それと僕らの時代だと、たとえば僕が高校生の頃は、2~3年前の音楽は、古いと思ったので聴かなかったんですよ。自分は若いし、自分の世代というものを強く意識していたけど、今はあんまり、そういう新旧というものはないんで。だから今回のイベントのテーマは“新旧問わず”というところかな。今の音楽には、新しい・古いということは、あまりない気がする。よく使う表現なんですけども、ある女の子が、今YouTubeでジャニス・ジョプリンを発見したとしたら、ジャニスが一番新しい音楽かもしれないので。そういうことかもしれないですね。
クリス・ペプラー 撮影=鈴木 恵
――その、クリスさんが立ち上げた新しい音楽イベント。『SAISON CARD presents J-WAVE the Chris Peppler Show“JAM-O-RAMA”』は、どんなふうに始まったんですか。
今回は、考え方としては、国内の音楽も洋楽も含めて、願わくば世界に通用するような、新しいスタンダードでありたいという思いがあります。一見ガラパゴス化した印象はすごくあるんだけども、日本の音楽は今、そういう方向に向いていると思うんですよ。たとえばJ-WAVEが開局した頃、僕がやっている『TOKIO HOT100』では、100曲中90曲以上が洋楽だったんですね。邦楽は4~5曲だった。それが1988年の暮れのことで、90年代の初頭になって、CDセールスがガーンと上がって、渋谷系が出てきたり、日本の音楽も海外と差別化できないぐらいになってきた。向こうの音楽にも、いいものもあれば悪いものものあるし、だんだん邦楽が増えてきた。それはすごくいいことだと思うんですよ。やっぱり海外の文化よりも、自国の文化だと思うので。それで音楽が、だんだん国内に向いてきた。映画は違うかなと思ったら、映画もやっぱり邦画を観る人たちがが増えてきた。
――そうですね。そういう流れはありました。
僕はアメリカ人だけども、母親が日本人で、いわゆる舶来の、アメリカのものがすべてかっこいいみたいな、そういう時代だったんだけれども、アメリカや他の海外に対する憧れというものが、1990年代頃から薄れていってしまった。自国の文化に対するプライドみたいなものも、すごく出てきた。そういうところで、どんどん国内のカルチャーに向いていったと思うんだけれども、今はまた、インターネットのおかげで、違う展開が出てきているなと。それはミュージシャンの側から特に出てきていて、Suchmosだったり、WONKだったり、世界を見据えているバンドがすごく多くなってきているんですよね。ONE OK ROCKとか、BABYMETALもそうだけど、“世界に行けるじゃん”みたいな感覚が、特に若い世代は感じてきている。そうなってくると、今度は一般の若い音楽リスナーも、どんどんそっちに目を向けていくんじゃないかな。今は、海外のロックなんか聴かないわけですね。今一番集客されているといわれるのは、『ROCK IN JAPAN』とかじゃないですか。
――そうですね。
J-WAVEで、日本のロックを主に扱っている番組のナビゲーターがいて、彼に聞いた所、日本でも英語で歌うバンドが多いので、それをきっかけに洋楽ロックも流行ってくるんじゃないの?って聞いたら、「いや、それはないです」って。彼が若いロックリスナーに同じことを聞いた時に、「なんで外国の音楽を聴く必要があるんですか?」って、そういう回答が帰ってきたんですって。そういうふうに、インナーを向いていたけれども、逆に今度は、自分たちがファンであるミュージシャンたちが、どんどん世界にマーケットを広げていくと、視点が変わってくるんじゃないか。今は世界のどこにいても、インターネットで情報を得られるので、そういった意味で、国際的なミュージックシーンが出てくるんじゃないか?という気が、僕はしてますね。世界的にもアジアの音楽は、まだ物珍しい部分はあると思うので、興味を持ってくれるだろうし。そうやって世界のスタンダードになっていけば、日本の音楽も海外で受け入れられるチャンスがいっぱい出てくると思うので。今回のイベントのコンセプトは、そういったところも見据えているんですね。
――はい。なるほど。
国内だけじゃなくて、海外でも行けるんじゃないか?と。それと、コミュニケーションを育むことによって、情報の交換とか、ライブにおける国際的な展開もできるのかな?と思ってます。今回はしょっぱなだったので、いろんな案があったんですけども、鉄板の案もいっぱい出したんですよ。これは絶対人が入るだろうという。でも「それはクリスじゃないな」と言われちゃいまして。
――クリスじゃない(笑)。
鉄板だからいいんじゃないのかなと思ったんですけど、「今回はスピリット重視だから、もっとオリジナルなものを」と言われて、そうかと。そこでいろいろアイディアが出て、70'sの音楽スタイルが……たとえばGLIM SPANKYとか、LOVE PSYCEDELICO とか、70'sロックに影響を受けているバンドを集めるのも面白いんじゃないの?ということになった。それと、今回のコンセプトとして、海外からダークホースを入れたいなと思ってるんですよ。普通だったら、日本初登場だったら、小バコですよね。100人や200人から始めるところを、いきなり2000人でいっちゃおうと。GLIM SPANKYと、LOVE PSYCEDELICOという、みなさんが知っているサウンドがあるので、そこにSTONEFIELDをぶちかますと、「この2組が好きだったら、絶対これもお薦めできますよ」と。そういうダークホースを毎回入れて行こうと思っていて、今回はこの3組になったんですけどね。
LOVE PSYCHEDELICO
GLIM SPANKY
STONEFIELD
――STONEFIELD、チェックしましたけど、かっこいいですね。
いいと思いますよ。おっさんたちには受けると思うし、若い子たちにも、きっと気に入ってもらえると思う。
――クリスさんは、当日は司会進行を?
たぶんそうですね。ステージに上がって、何かやるでしょうね。
――どういう方に来てほしいですか。
なるべく多くの人に来てほしいですけど、基本的に、そういったサウンドに興味のある方じゃないかな。GLIM SPANKYやデリコに引っかかる人たちは、来てもらいたいなと思いますね。サウンド自体がエージレスな感じなので、客層もエージレスでいいんじゃないか。70'sと言いつつも、今どきの子たちがやってるんで、フレッシュなんですよね。70’sテイストと、コンテンポラリーなグルーヴとが共存していると思うので。STONEFIELDが面白いのは、サウンドはブルースがベースのハードロックなんですけども、ニューアルバムを聴くとどんどんサイケデリックになってきていて、ピンク・フロイドっぽい幻想的なサウンドも展開していたり。レッド・ツェッペリン、ブラック・サバス的なハードロックでもあり、ピンク・フロイドを彷彿させるような曲もあり。僕自身が、非常に気に入っているグループなので。
クリス・ペプラー 撮影=鈴木 恵
――このイベントは、今後も定期化していくと聞いています。
そのつもりです。今後もグローバルな見地は変わらずに、国内だけを見据えるのではなく、海外でも通用するようなラインナップは考えていきたいですね。それと、ひとつ言えるのは、ライブに足を運ぶのはお金もかかるし労力もかかるので、なるべく満足度の高いものにしたいんですよ。そこでインターネットのように、“あなたはこれも好きかも”って、お薦めしてあげることが大事だと思うんですよ。リスナーに無駄弾を撃たせたくない。誰もが千差万別の趣味嗜好をしているわけだから、そこでポイントを絞って、全組楽しめるようにしたいんですよね。大勢アーティストが出るイベントって、出順を言わないケースがあるじゃないですか。
――ありますね。
なぜかというと、それがわかっちゃうと、見たいバンドの時しか来ないから。でも今回のイベントでは、絶対にそういうことはないと保証しますと。これが好きだったら全組楽しめますよ、というところかな。そこは今後、押していきたいところですね。それと新しい発見と。さっきも言ったように、ミュージシャンたちの志が海外を向いてるんですね。特に若い子たちほど野望が大きいんですよ。Yahyelとかもそうだし、そっちを向いてる子たちが多いですね。もしかしてそれが、日本の音楽のガラパゴス化の反動なのかもしれない。あまりにも島国感が出すぎてるというか、馴れ合いの関係になっちゃってるじゃないですか、音楽業とファンの関係が。それを仕切り直して、リアルな感覚でやることが大事なのかなと。
――楽しみにしています。最後に、今回のイベントのタイトルについて。最初は“the Chris Peppler Show(仮)”だったらしいですね。
そうなんです。ただ、いくらなんでも“the Chris Peppler Show”だと、能無しだなと(笑)。あまりにも何のひねりもない。もうちょっと思い入れのあるタイトルがいいかなと思って、ずっと仮タイトルのままにしてあったんだけど。ほかに考えることもいろいろあったんで。で、この間、いざスポット(CM)を収録する時に、急に思いついて“JAM-O-RAMA”とつけたんですけどね。
――“JAM-O-RAMA”は、造語ですか。
そうです。RAMA というのは、パノラマのRAMAで、“三昧”とか“オンパレード”とか、そういう意味です。パノラマというと全域にという意味なので、いろんなジャムをするとか、ジャム三昧とか、そういうことかな。ジャムという言葉がすごく好きなので、みんなと一緒に“JAM-O-RAMA”をしていきたいなと思います。
取材・文=宮本英夫 撮影=鈴木 恵
クリス・ペプラー 撮影=鈴木 恵
会場: Zepp Tokyo
出演アーティスト:LOVE PSYCHEDELICO / GLIM SPANKY / STONEFIELD
MC:クリス・ペプラー(J-WAVEナビゲーター)
※別途ドリンク代500円が必要。
※未就学児童(6歳未満)の入場は不可。
ライブ公式サイト:http://cpshow.jp/
企画・制作:Zeppライブ.
特別協賛:クレディセゾン
協力:クリエイティブマン・プロダクション
お問い合わせ:クリエイティブマン・プロダクション03-3499-6669 (平日12:00~18:00)