majiko、起点となる新作『CLOUD 7』を詳細に語る 「“私の淀みの世界へようこそ”っていう感じ」
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majiko
“まじ娘”から名前を英字表記の“majiko”に変更し、デビューミニアルバム『CLOUD 7』を2月15日にリリースした。今作は、ストレイテナーのホリエアツシがプロデュースを務め、Laika Came Back・車谷浩司が楽曲提供、そしてその他の楽曲の作詞作曲をすべて自身が手掛けている。
「“私の淀みの世界へようこそ”っていう感じになってますな」――と話す今作を、いつもの愛らしくも独特な口ぶりで詳細に語ってくれた。
──名前の表記を“まじ娘”から“majiko”に変更されましたね。
“娘”という表記が、ここから年齢的に難しいところが出てくるんじゃないかっていう話もあって。“まじ娘”という名前を全然捨てたわけではないんですけど、ローマ字でもいけるように道を作ったっていう感じですね。
──この先もずっと歌っていきたいからその表記にしたと。
そうですね。歌は続けていきたいし、子供のままじゃいられないなっていう気持ちもあったのかもしれないですね、深層心理には……うははは! かっこいいこと言っちゃった!
──はははは(笑)。その第一弾としてリリースされるミニアルバム『CLOUD 7』ですが、このタイトルはどんなところから?
そもそもは、今回収録している「Lucifer」に、「CLOUD 7」っていうタイトルを仮でつけてたんですよ。“cloud seven”って“天国”の別の呼び方で、“cloud nine”っていう呼び方もあるんですけど、そっちはよく聞くから「CLOUD 7」にしようと。でも、最近作ってる曲に、なんか“神様系”が多いなと思って。
──神様系?
なんか、世界観が上めな感じ。そういう曲が多かったので、『CLOUD7』を曲じゃなくてアルバムのタイトルにしたら合うかなと思って。
──そういうことだったんですね。6曲入りなのになんで7?とか、いろいろ考えてました。
あ、実はCDで聴いてくださった方だけのお楽しみなんですけど、シークレットトラックがあるんですよ。そこもちょっと凝っていて、シークレットトラックまで13秒あけたんです。13って不吉な数字ですけど、実は良い意味もあるんですよね。日本だと「13=トミ(富)」って言ったり、女神の象徴みたいな意味もあるらしくて。最初は“13分あける?”っていう話もしてたんですけど、それはちょっと長いかもっていうことで、この間隔にしたんです(笑)。
──なるほど。“神様系”な曲が増えていたのは、特に意識していたわけでもなく、自然とそうなったと。
全然意図してなかったですね。Lucifer(=堕天使)とか、shinigami(死神)とか、あとは車谷(浩司/Laika Came Back)さんに書いていただいた「SILK」も、自然と繋がっていて。それで『CLOUD 7』は、ひとつの群像劇というか。天国から地獄へ落とされるまでの過程に、いろんな世界観が入ってくる流れにしました。だから、どんどん堕ちていく感じがあって。
──たしかに、どの曲にも通底してあるのは、寂しさとか孤独とか。
毎回「majikoの曲って暗いね」って言われますからね(苦笑)。
──でも、過去に歌われていた曲のチョイスや、作風的にも影があるものが多かったので、『CLOUD 7』はすごくmajikoさんらしい作品だなと思ったんですよ。そこに嬉しさもありつつ、こんなにもダウナーな音源でメジャーデビューするんだ!っていう気持ちもあって。
それ、めっちゃ言われます!(笑) そういう曲が昔から好きなんですよね。私、A面の曲が書けないというか、CDを買ってもB面ばっかり聴いているような人だったんです。A面よりもB面のほうが、そのアーティストの出したいものが見える気がしていたので。そうやって聴いているうちに、B面みたいな曲しか書けなくなっちゃって(笑)。
──そういう自分らしい楽曲を並べるということは考えてました?
そうですね。私が好きなものを出したかったし、たぶん、ここから成長していく過程で失っていくものもあると思うんですよ。何かに染まってしまったり、殺されてしまう感性みたいなものもあると思うんですけど。でも、“こういう曲も書いていたんだよ”って言えるものにしたいと思ってました。ダウナーなのも、全然わかりやすい曲がないのもすごくわかってはいるんだけど、ここが起点というか、個人的に帰ってこれる場所にしたいなっていう思いで作ったところはあります。
──先ほど少しお話も出ましたが、今作ではLaika Came Backの車谷さんが「SILK」という楽曲を提供されていて。かなりグランジーな曲ですけども。
AIR時代から大好きで、いつか絶対に書いてもらいたい!ってずっと話してたんですよ。それで今回スタッフの方が連絡してくれて、まず飲みにでもっていうので、スタッフ数人と行ったんです。もう超緊張しながら。で、「好きなのはこの曲とこの曲で、こういうところがめっちゃ好きで、えーっと、あのときのライブはこんな感じで、えーっと……」って話してたら、車谷さん若干引いてて(苦笑)。
──ものすごい熱量で喋り倒していたと。
はい(笑)。そのときに、私がAIRの「触れていたい」という曲が大好きで、そのことを熱弁していたんです。そしたら「SILK」に「触れていたい」と同じアプローチが入っていて、車谷さああああん!って、めちゃくちゃ感動しました。あと、歌詞も『CLOUD 7』にぴったりで。<あなたを 連れ出す 私は/蜘蛛の糸 紡ぐ人>という歌詞が好きだったんですけど、蜘蛛の糸も“神様系”じゃないですか。カンダタみたいな。
──芥川龍之介の「蜘蛛の糸」に出てくる。
ただ、曲をいただいたときはタイトルがついてなくて、“好きにつけていいよ”って言ってくださって。恐縮……!と思いながら考えていたんですけど、蜘蛛の糸なので「SILK」をタイトルにさせてもらったら、車谷さんが“ピーンときました。いいと思います”って。もうありがたい限りでした。あと、この歌詞は、日本語が分からない海外の人も気持ちよく感じる言葉の発音や響きを考えたものにしてくださっていたみたいで。もう本当に素晴らしかったです。
──他の曲はすべてmajikoさんが作詞作曲はもちろん、アレンジもされていて。
全部入れたくなっちゃうんですよね。ドラムもベースもギターも歌もコーラスも、私の中で完璧な状態にしないと気が済まなくて、変なところで頑固なんですけど。でも、最初から丸投げするより、自分の中でこういう世界観があるので、“この感じを再現していただいて、オカズとかは好きなようにいれてください”っていう、自由な環境でやらせてもらっています。でも、みなさんほとんどその通りにやってくださってますね。
──曲調としては、フォークトロニカ、ジャズ、サイケ、アンビエントと、かなり幅広いですよね。
なんか、いつのまにかこうなっちゃってたところもあって(笑)。「ノクチルカの夜」は、去年の夏の終わりに、舞浜の河原で飲もうとしていたときがあって。夜だったんですけど、コンビニでお酒とつまみを買って河原に帰ろうとしたら、その途中で転んじゃったんですよ。もう、つまみが全部バー!って出ちゃって、お酒もブシャシャ!ってなって、ボロボロの状態でとぼとぼ歩いていて。で、信号が赤だったんですけど、このままずっと赤だったらいいのになって、ふと思ったんです。
──なぜまた?
赤信号って、どういう理由があっても止まらなきゃいけないじゃないですか。止まらなきゃいけない時間だから。どんなにボロボロでも、青信号になったら進まなきゃいけない。けど、赤だったら止まる言い訳ができる。ずっと赤だったらいいのになって。で、その日はとりあえず帰って。そのことを曲にしたいなと思ったんですけど、シールドが壊れていたからギターが使えず……でも、これは曲にしなきゃいけない気がして。じゃあ、ギターが使えないならジャズっぽいアレンジにしようかなと思って、弾けないなりにピアノを弾いてみたんです。
──そのときに弾いた楽器がピアノだったから、この形になったと。
「Lucifer」もそういう感じでしたね。シールドが壊れていたから、5年ぐらいしまっていたモーリスのアコギを引っ張り出してきて。弦も変えてないし、手入れもしてないから埃が超かぶってたんですけど、手を真っ黒にしながらそれを弾いてた記憶があります。
──でも、お酒やつまみをぶちまけてしまったことが、ああいう曲調になるところがおもしろいですね。
私もまさかこういう曲になるとは思ってなかったです(笑)。でも、最高に皮肉な歌詞で、夜に散歩しているときに最高に聴きたくなる曲を一曲作りたいなと思っていて。それができた気がして、個人的にはお気に入りですね。
──皮肉、ですか。
皮肉というか、自己嫌悪だったり、それでも夜は明けてしまうんだぞっていうような、どうしようもない時間の経過とか。ひとことでいうのがちょっと難しいんですけど。
──「shinigami」は、タイトルとは裏腹にものすごく穏やかで綺麗なのですが、要所に入っているノイズがアクセントになっていて。
最初の英語詞の部分は、高校生のときに書いたんですよ。私、ドライブが好きなんですけど、夜中の高速を家族でドライブしていたことをよく覚えていて。私、そのとき引きこもっていたから、そのドライブぐらいでしか外に出ることもなかったんですけど。で、後ろに座って、車の窓から外をボーっと眺めていて、“壁だな……”と思っていたら、“あ、これって空だったんだ”ってハッとする出来事があって。そのことを当時書いたんですけど。
──でも、それがなぜ死神に?
なんか、どっちが地獄なんだろうっていうか。地獄かこっちか、どっちのほうがマシなんだよ、こっちだって地獄みたいなもんじゃないかって思っていたところがあって。とにかくめちゃくちゃネガティブだったんですよね。でも、曲としては結構ゆったりとしたリズムで、死神っていうものの印象を変えたいなと思って作ったところもあったりして。
──というと?
この曲は、“死神”と“死にたい人”の話で、死神がもしこっちの世界の人に、恋愛感情を持ったり友達がいたとしたら、それでもいざなおうとするのかなって。私の奥底にはそういうストーリーがあるんですけど、やっぱり誘っちゃうんだろうなぁ、でも、彼らなりの葛藤があったりするんじゃないかな……みたいな。そうやってぽろぽろっと感覚的に作った曲ですね。
──でも、なぜそういう影のあるものに惹かれてしまうんですか?
なんだろう。そこは生き方にも関わってくると思うんですけど、闇が深めなせいか……それこそ引きこもっていたときは、部屋の窓のシャッターを閉めて、すきまも全部テープで塞いでいて。朝なのか夜なのかもわからない真っ暗な中で、ニコニコ動画で自分が気持ちよく出せる歌を探して、それを延々と歌って、お腹がすいたら下に降りるっていう生活が半年ぐらい続いてたんです。そのときに何を考えていたのか全然思い出せないんですけど、とりあえず誰とも会いたくなかったし、何もしたくなくて、家族にかなり迷惑をかけちゃって。
──でも、歌は歌っていたんですね。
歌を歌ってはいたかったんですよ。だから……なんだったんだろうな、あれは。あのときは人間じゃなかったですね。
──そういう過去があったと……。あと、今回はアナザージャケットのイラストも描かれていますよね。
イラストを描いているうちに、私のなかでも『CLOUD 7』のストーリーが浸透していったところがあって。「SILK」に出てくる<蜘蛛の糸>から、他の曲を繋げていったんですけど、結局最後の「Lucifer」は、その救いの糸すらも自分がいる場所のせいで燃えてしまって掴めない……みたいな。これはめっちゃ頑張りました!
──そして、ストレイテナーのホリエアツシさんが、今回はサウンドプロデュースを務められていて。
「こうしたほうがいいんじゃない?」って言ってくださって、それに従ったり、「いや、ここは……」って言ったりとか……もう超恐縮で……。
──改めて自分が言ったことを思い出しちゃった、みたいな感じでしたけど(笑)。
いやもう本当に申し訳なくて! でも、自分の意見を言うのもすごく緊張していて。でも、そうやって意見を言ってくれるのがホリエさんは嬉しいらしくて……ああぁぁ……
──とはいえ……みたいな感じになってますね(笑)。majikoさんとしては、ストレイテナー、AIR、あとはSystem of a Downも……
(食い気味に)大好きです!
──ですよね(笑)。過去にコピーもされていたそうですが、他にはどんな音楽が好きなんですか?
なんだろう……フォーカスとか、クーラ・シェイカーとか、グランド・ファンク・レイルロードとかも好きだし、カーディガンズも好きだったりするし。あとは、チャカ・カーン、チック・コリア、ジャミロクワイ……なんか、いろいろ歌ってたんですよね。専門学校に通ってたときに、誰かが選んできた曲をみんなでまわして歌っていくっていう授業があって。そこでビヨンセとかも歌ったし、よくわからない海外の人の曲とかもいろいろ歌っていて。それが全部メソッドとして自分に入っているなと思いますね。ジャズは、母も父もジャズ畑の人で、ロックをジャズにアレンジするバンドを組んでいたから、家で練習していると聴こえてきてたんですよ。そういうのもあったのかな。
──さまざまな影響を受けたmajkoさんが、ここからどんな曲を作るのかかなり楽しみです。
自分でもどうなるかわかんないですね(笑)。どうしても重くなっちゃいがちですけど。なんか、そういうものが心地いいんですよね。
──でも、1枚通してすごく浸れるのがいいなと思いましたよ。たとえば、ライブを考えてアッパーなものを1曲は……みたいなバランスとかもあると思いますけど、とにかくこの世界に入り込めるのがいいなぁと。
ありがとうございます。“私の淀みの世界へようこそ”っていう感じになってますな。
──“淀み”って(笑)。濃い1枚が完成しましたが、ここからどんな活動をしていきたいですか?
成長はもちろん絶対にしたいですけど、ライブがしたいですね。ライブをするようになってから作る曲のニュアンスも変わってきていて。今回の収録曲以外にも曲は作っているんですけど、それはライブに影響を受けていて、アッパー系が多いんですよ。今回は敢えて入れなかったんですけど、今度はライブを意識したアレンジというか、制作してみるのもいいかもなって。
──明るい雰囲気の曲にも挑戦したりとか?
前に、アイドルのコンぺに誘われて、すっごい明るい曲を作ってみたことがあるんですけど、それはそれで楽しかったんですよ。でも、自分の曲となるとまた違うのかも。自分が歌うとなると、どうしても暗くなるというか、明るい歌詞ってどうしても綺麗事に聞こえちゃって。だからダメなんだな(笑)。
──いや、ダメではないかと(笑)。
でも、私下手するとすごい気持ち悪い民族音楽みたいやつを作っちゃうんですよ。それもそれでありなんだけど。
──今もメロディラインにはそういう民族音楽的なところがありますよね。
ぬぐいきれないところがありますね。“これを作ってたときって酔ってたの?”っていう曲ができたりするので、ちょっと危ないです。やばい……シラフであれはやばいです。
──でも、人間はそういう“やばい”ものに惹かれますから。
まだちょっとそういう力のコントロールが難しいんですけど、頑張ります(笑)。でも、なによりも、少しでも自分の持っているものを活かせるような活動をしていきたいですね。「できることはする」っていうのが家訓になるんじゃないかなと思います。
取材・文=山口哲生
2017年2月15日(水)発売
majiko『CLOUD 7』
価格:1,620円(税込)
収録曲(全6曲)
01.prelude
02.SILK
03.ノクチルカの夜
04.昨夜未明
05.shinigami
06.Lucifer
■majiko「CLOUD 7」販売店別 先着購入者特典
各販売店にて先着購入特典として、majikoオリジナル特典をプレゼント致します。
※特典に関する問い合わせは、各販売店へお問い合わせください。
majiko「CLOUD 7」販売店別 先着購入者特典 詳細ページ
http://majiko.jp/cloud7/present.html
majiko 描き下ろし「CLOUD 7」アナザージャケット6種
※6種を繋げると「CLOUD 7」をイメージした一枚絵になります
illustration : majiko
“prelude”
・TSUTAYA RECORDS(一部店舗除く)/TSUTAYAオンライン(予約のみ)
”SILK”
・とらのあな全店(一部店舗除く)、通信販売
”ノクチルカの夜”
・アニメガ
“昨夜未明”
・Amazon
“shinigami"
・TOWER RECORDS
“Lucifer"