熊谷和徳の故郷・仙台が世界とつながる「東北タップダンス&アートフェスティバル2017」
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熊谷和徳
「東北タップ&アートフェスティバル2017」がいよいよ2017年3月10日(金)〜11日(日)に開催される。主催するのは国内外で活躍するタップダンサー、熊谷和徳と熊谷率いるKAZU TAP STUDIO、仙台市、設立30周年を迎える仙台市市民文化事業団などからなるTAP the FUTURE in SENDAI 実行委員会。2015年のプレイベントを踏まえ、試行錯誤を経て、満を持しての開催だ。フェスティバルに向けて奔走する熊谷に聞いた。
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
--TOHOKU TAP DANCE & ART FESTIVAL、いよいよスタートです。前回はプレを銘打っていらっしゃいましたが、開催して気づいたフェスティバルの力、課題について教えてください
前回は本当にやって良かったと思いました。タップダンサー同士がなかなか集まること自体が少ないですし、なによりやっている側の気持ちを高めるきっかけになりました。そしてタップ以外の絵を描くワークショップなども、このフェスの特徴としてすごく生きていたなと感じていますね。みんながクリエイティブにとても生き生きとしていました。
「フェスティバル」という言葉のイメージをどう捉えるか、さまざまな意味合いについて考えさせられています。一般的に日本では音楽フェスのようなお祭り的なイメージが強いと思いますが、僕らがタップダンスを通してやろうとしていることは、そのカルチャーについて学ぶこと、楽しむことの両方なんです。
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
--今年は、日程が3月11日にかかるようなスケジュールに設定されています。あえてそうされているのでしょう。もちろんそれは震災から立ち上がることへのエールなどいろいろな思いが込められていると思います。
3月11日に開催するというのは仙台市市民文化事業団さんからの提案だったのです。僕自身もこの日に本当にやるべきかどうかは悩みました。その結果、第1回目として、海外からもゲストを呼んでこの日にやることはとても意味深いものになると考え決断しました。ここまで準備していく段階ではさまざまな葛藤があり、まったくスムーズには決めていけず、決断に時間を要したことがたくさんあります。
今は、この日に、みんなで祈りの気持ちをもってタップを踏みたいと考えています。そしてみんなで純粋に楽しみたいと思っています。クリエイティブなエネルギーで見てくださるお客さんたちにもハッピーな気持ちが伝えられるように。
--今回は、Ted Louis Levy、Josette Wiggan、Gabe Winnsといった海外からのメンバーも参加しています。どんなタップの魅力を伝えられたらと思っていらっしゃいますか?
Ted Louis Levyは僕自身、もっとも影響を受けたタップダンサーの一人です。数々のブロードウェイ作品にも出演し、『JELLY`S LAST JAM』というショウではトニー賞にもノミネートされています。タップダンスの歴史を語る上で、とても重要なタップダンサーです。そしてテッドの踊りはとても音楽的であり、エモーショナルです。グレゴリー・ハインズをはじめ、さまざまな“HOOFER”と呼ばれるタップダンサーたちと同じ時代を生きてきただけあって、ジミー・スライドやバスター・ブラウンといったタップマスターたちが、テッドの踊りの中に生きているような感じがして、いつも彼の踊りを見ていると涙が出てきます。
そしてJosette Wiggan、Gabe Winnsは若手の素晴らしいタップダンサーたち。これからの未来の可能性を見せてくれるタップダンサーも呼びたかったのです。日本の若手のタップダンサーにとっても大きな刺激になるはずです。
タップ公演だけなく、トーク企画やワークショップ、アートや音楽と多彩に
--バリエーションに富んだ今回の見どころをお願いします。
1日目にはピーター・バラカンさんがいらっしゃって僕と対談をしてくれます。そして同じくリトルクリーチャーズというバンドでもおなじみのミュージシャン・青柳拓次さんが参加してくれてのセッションもあります。僕自身、この日本の音楽文化を引っ張っているお二人にオープニングの日に来ていただけるのはとても意味深いと感じています。
そして2日目には、海外からのゲストと日本の素晴らしいタップダンサーたちによるパフォーマンスがあります。また僕にとって、普段から親交のあるジャズ・ミュージシャンと弦楽四重奏もこのショウに参加し、華を添えてくれます。
3日目は、パネルディスカッションがありますが、仙台で活動するTAP THE FUTUREのみんなと福島でタップを頑張っているVOICE OF FUKUSHIMAのパフォーマンスもあります。
とにかく3日間を通して日立システムズホール仙台という会館のすべてを使ってタップダンスの魅力を伝える時間にしたいと思っています。建物に入った瞬間にリズムが聞こえて、そして帰るころにはみんなタップを踏みたくなるはずです!
--前回に引き続き、ワークショップ関係の企画がたくさん入っています。それから一般出演者の募集も行っていますね。そのへんは底辺の拡大の意味もあると思います。
特に拡大ということ意識しているわけではないのですが、とにかく観にきてくれた方みなさんが参加者でもあり、このフェスを一緒に創り上げる仲間であってほしいなと思っています。タップはもちろんですが、絵を描いたり、楽器を鳴らしたり、歌をうたったりとさまざまな参加の仕方があると思いますよ。
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
--10年目を迎えた「TAP THE FUTURE」、仙台市文化事業団と組んで後進の育成を行うというプロジェクトの活動があってこそのTOHOKU TAP DANCE & ART FESTIVALだと思います。10年という時間をどう考えていらっしゃいますか?
あっというまでした。ただ平坦な道のりではなく、さまざまな困難がありました。震災もその一つです。でもみんなで乗り越えてきたからこそ、そしてこれからもみんなで創り上げていきたいのです。
--熊谷和徳という存在を通して、仙台の子供たちが世界と直接的につながっているのが素敵だと感じます。彼らに何を見せ、何を感じてほしいと考えていらっしゃいますか。
仙台という、僕自身が育った場所でこのように世界から、東京や日本全国からもタップダンサーを呼んで、タップを純粋に楽しみたいというのは夢でした。そのような環境は僕がタップをはじめたころには考えれらなかったことです。今回まだまだタップという文化が根付いていない仙台という場所で、子供たちだけでなく、大人も含めて、海外で活躍するタップダンサーたちと出会う貴重な交流の場になるだろうなと確信しています。
子供たちもタップを踏むということを通して、コミュニケーションしていくことを学べると思います。なにより世界は広いけれどもタップのコミュニティというのは意外に小さいですから、自分がその気になれば世界中のタップダンサーと友達になることだってできるということを知ってもらいたいです。そしてそのコミュニティを大事にしていくこと、それが文化を大事にしていくことだということを感じてもらえれば幸いです。
2015年「東北タップダンス&アートフェスティバル プレイベント」より
--フェスティバルの規模や方向性として目指すものは?
フェスティバルの規模が大きくなれば僕もうれしいのですが、もっと大事なのは大きくすることよりも中身の濃さだと思っています。タップダンスは決してポピュラーなカルチャーではありませんが、その歴史や文化は、僕らに大事なことを教えてくれるんです。だから僕は大きな規模よりも良質で温かみのあるタップの本当の良さをみんなと共有していきたいんです。
取材・文:いまいこういち
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熊谷和徳 ピーター・バラカン 青柳拓次
JAM SESSON出演 : GUEST Tap dancers
熊谷和徳 Ted Louis Levy Josette Wiggan Gabe Winns
浦上雄次 細川慶太良 Yoshiko Nao Hashimoto 中山貴踏
Kaz Tap Company(谷口翔有子 加藤信行 安達雄基 米澤一平 米澤一輝)
ラティール・シー 青柳拓次
K.K. QUINTET & Strings
(池田潔 ”bass” 類家心平”trumpet” 吉岡大輔”drums” 中嶋錠二”piano” 高橋暁”violin”
梶谷裕子”violin” 田中景子”viola” 橋本歩”cello”)and Special Guest..
熊谷和徳 Ted Louis Levy Josette Wiggan Gabe Winns
みすみ"Smilie”ゆきこ 浦上雄次 細川慶太良 Yoshiko Nao Hashimoto 中山貴踏
Kaz Tap Company(谷口翔有子 加藤信行 安達雄基 米澤一平 米澤一輝)
DJ Mitsu the Beats(GAGLE /Jazzy Sport)
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