Kan Sano×向井太一の奇跡の対談は気鋭のクリエイター二人による”実現されるべき”邂逅だった

2017.2.18
インタビュー
音楽

Kan Sano/向井太一

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来る3月11日(土)に心斎橋SUNHALLにて開催されるイベント「Magical Echo 2017」にて共演が決まっている、Kan Sanoと向井太一。双方対談の経験は少ない中、お互いへ対しての興味も含めて、今二人のコラボでの対談はとてもワクワクするものだった。気鋭の音楽家二人が”音楽”を語る。

Kan Sano/向井太一

――お二人は初対面というだけではなく、対談形式の取材も初めてとお聞きしました。

向井:そうなんですよ。

Kan:僕も対談はほとんどやった事がないと思います。

――今すごく注目されているお二人ですが、今まで持っていた印象と、今日こうして会ってみての印象と、そしてそれぞれの音楽についてお聞きしてもいいですか。

Kan:写真で拝見するよりも、さらに若くて爽やかです。

向井:そんな事ないですよ

Kan:太一さんのインスタをちょこちょこ見ていて、やっぱりその見た目と歌のギャップがあっていいですよね。結構歌はゴツゴツしていて、めちゃくちゃ男っぽい。それがまたこうして会った時の雰囲気と全然違って、カッコイイなと思って。

向井:ありがとうございます。

Kan:久々に芯のあるボーカリストに出会った感じがしました。僕は結構色々なアーティストの方のレコーディングやライブでサポートしていますが、去年からUAさんのツアーのバックで弾いていまして、向井さんはUAさんにも近い気がします。声のタイプは全然違いますが、UAさんって、バンドがどういう状態でも、どんなサウンドを出していても、歌い始めるともう絶対UAさんなんです。その揺るぎがないところ、どういう状態、状況でもビシッと歌える、そのブレのなさが凄いと思いますが、太一さんにもそういう雰囲気を感じます。自分が太一さんの年齢の時の事を考えると、びっくりです()

――様々なジャンル、音楽性のアーティストと数多く共演、サポートしているKanさんの言葉だけに説得力があります。それにしてもKanさんはサウンドプロデューサー、サポートミュージシャンとしてUAさんの他にもChara、大橋トリオ、RHYMESTER、須永辰緒、藤原さくら他、様々なジャンルのアーティストを手掛けています。

Kan:色々な現場に顔を出していると鍛えられます。みなさんに成長させてもらった部分もすごく大きいと思います。

向井:しかも、みなさんいい意味でクセの強いアーティストの方ばかりじゃないですか。

Kan:そうなんですよね。でもやっぱりキャラが濃い人とやる方が楽しいんですよね。自分もアーティスト活動をしていますが、やっぱり染められたい願望はあって。だからサポートは全然違うマインドでやっています。

向井:舞台にも出演したり、色々な事に興味があるのは、昔からなんですか?

Kan:そうなんです。ずっと音楽をやってきましたが、ジャンルも色々で、器用貧乏だなと自分ではずっと思っていました。でも、そう思いながらもそれぞれを頑張ってやっているうちに、最近ようやくやってきた事が、ひとつひとつ形になり始めてきている感じがしています。

Kan Sano/向井太一

――向井さん今日初めてKanさんにお会いになって、Kanさんから感じるオーラと、作り出す音楽とに、何か通じるものを感じますか?

向井:結構イメージ通りでした。ポップスのシンガーのサポートもやりつつ、やっぱり僕の中でKanさんはブラックミュージックで、揺るぎない地位を確立してる感じがあって。音楽を色々聴かせていただいて、Kanさんのサウンドってブラックミュージックをルーツに持ちつつ、もっと幅広く音楽性を広げている印象があって、今回のアルバム『k is s』も、ドリーミーな感じというか(笑)。ブラックミュージックが好きな人も絶対引っかかるし、かつそれ以外の人のアンテナにも引っかかるような、そういう音楽性を感じました。僕の中ではブラックミュージックって、もちろん大好きなんですが、そんなに万人受けしない音楽だと思っていて。普段聴かない人達にとっては、なんていうかどこかハードルがあるというか。でもKanさんが作り出す音楽は、そういうのを超越した音楽性だと思います。ご本人のイメージも、僕の想像していた感じと近かったです(笑)だから、これですごいゴリゴリの人だったらどうしようって思っていました()

Kan:いやいや。でも僕は中学生の時に聴いたスティービー・ワンダーをきっかけに、どんどんブラックミュージックにはまっていきました。マービン・ゲイ、ダニー・ハサウェイ。ディアンジェロにもハマりました。それとジャズですね。マイルス・デイビスとか。ジョン・ゾーンのような現代音楽も聴いたり、なんでも聴いていました。

向井:僕は物心が付いた時から中学校まで、ブラックミュージックしか聴いていませんでした。

Kan:マジで?早いですね()

向井:両親の影響で、シャギーとかマキシ・プリーストとかレゲエを聴いていて、実家という言葉で思い出すのはレゲエです()。それからR&Bだとボビー・ブラウンとかTLCをずっと聴いていまして、高校に入ってから幅広く色々なジャンルを聴くようになりました。それまではすごく生意気な、くそガキでした(笑)。

Kan:親御さんの影響という事は、レコードで聴いていたんですか?

向井:いえ、もうCDで、親も音楽をやっているとかではなく、ただの音楽好きで、家でCDがずっと流れていました。やることがそれほどなかったんですよね。僕が育った所がすごく田舎で、本当に田んぼと山しかなくて

Kan:出身はどちらですか?

向井:福岡県の那珂川町というところで、周りもそういう音楽を聴いている人達がいなくて、でも「別に周りにこの音楽の良さはわかってもらわなくてもいいけど」と、プライドが高い勝手な少年でした(笑)。

――日本の音楽はあまり聴いて来なかった感じですか?

向井:ガッツリ聴いていたというよりは、耳にはしていましたが、僕はそこから日本の音楽を掘り下げるようになりました。坂本九さんとか。あとは弘田三枝子さんとか。歌謡曲が大好きでした。

――J-POPではなく歌謡曲に興味があったんですね。

向井:昭和3040年代の歌謡曲って、洋楽をそのまま日本語詞にしたり、わかりやすくブラックミュージックの要素が入っているものも多く、ブラックミュージックを聴いていた延長で、日本の昔の音楽を聴くようになりました。あの時代の歌詞とか世界感が、すごく好きでした。

Kan:昭和歌謡が好きというのは、DJっぽいですよね。

向井:歌唱の力強さにもひかれました。何か時代性もあると思いますが、ヒリヒリ感とか生々しさを感じさせてくれる歌が、自分にはずっしり来ました。当時の歌い手の方の歌は演技で、入り込む力が凄いです。

Kan:それは自分の歌にも影響を受けているんですか?

向井:そうですね。今回のアルバム(2ndEP24)も、全部日本語で詞を書いていて、若干英語を織り交ぜてたりもしていますが、僕が日本のアーティストとして、このサウンドを日本語で歌いたかったという事は、その影響もあると思います。

Kan:やはりそこが素晴らしいと思います。僕が24歳の頃って、完全に洋楽志向で日本語で歌を作ろうとは全然考えていなかったです。だから向井さんが色々な音楽を経験し、全部経て、日本語でちゃんと向かい合っているのが、すごいと思います。

向井:僕の中で日本の歌というのは、やっぱり歌詞に重きを置いているというか、そこを大事にしたかったんです。 元々ブラックミュージックにハマる前は、ずっとMr.ChildrenさんとかJ-POPを聴いていたので歌詞の重要性は感じています。ただ、もう10年位そこから離れていて、だからこそ今何かまたその頃の感覚に戻って来たというか、今もう一回言葉と向き合っている状態です。Kanさんはサウンドに重きを?

Kan:そうですね。ずっとサウンド志向というか、音から入っていくタイプなので、あまり言葉そのものの意味というよりは、言葉の響きとか、歌っている時の鳴りを大切にしていました。でも今回のアルバムでは自分でも歌っていまして、そうなるとやっぱり言葉と向き合う事になりますよね。

Kan Sano/向井太一

――メロディに合う響きを、言葉に求めていたという感じですか?

Kan:そういう感じが近いかもしれないです。

向井:でも僕も曲作りはメロディが先です。歌詞は別もののような感じで、書くのは苦手です()。最初は適当な英語でメロディを作っていって、歌詞は一番最後です。

――メロディと歌詞が一緒に降りてくる、という感じではないんですね?

向井:そうですね、降りてくる時もありますが、歌詞を最後に書く場合が多いです。でも最初にサウンドを聴いた時に、タイトルだけ決まる事があります。

Kan:他のアーティストがどうやって詞を書いてるのかすごく興味があります。みなさんやはりメロディが出てきても、詞は最後までできなくて苦労してる人が多いみたいですね。

向井:英語で歌うと、日本語にした時に譜割りが難しかったり、全然合わなかったりしてレコーディングしていくうちに曲の雰囲気がどんどん変わっていったり。そこが今回の作品の制作では一番苦労しました。

――今、音楽業界は色々言われていて、過渡期だと思いますがこれからどうなっていくと思いますか?

向井:すごく前向きに捉えていて、それは僕の事務所(MIYA TERRACE)のメンバー、先輩アーティストを見てそう思います。みんなどんどん自由になってきているというか、もっと音楽を楽しもうという気持ちが強くて、最新の音楽をいち早く取り入れたりしています。周りにそういう音楽に前向きな先輩がいますので、今すごく楽しいですし、楽しみです。僕は自分一人ではまだ何もできなくて、曲作り、音作りでも助けが必要ですし、サポートしてくれるメンバーが近くにいるのが嬉しいです。なので、これからの音楽シーンも楽しみです。

Kan:今というよりも、あの3・11以降、みんな結構気が引き締まったというか。僕もそうですが何か覚悟を決めた人が多いと思います。それでも音楽でやっていくしかないんだという決意をしました。そういうミュージシャンが多いと思います。実際、今音楽業界は大変ですが、良いアーティストはどんどん出てきているんですよね。例えば特に太一さんの世代の、D.A.N.とか水曜日のカンパネラとか、いいアーティストが毎年出てきています。だから、逆にそういう大変な時ほど面白い人が出てくるのかなという気もするし、そこは全然前向きですけどね。

――Kanさんも若手ですよね?

Kan:どうなんでしょう?()。でもやっぱり太一さんとか20代のアーティストの活動を見ていると、やっぱり自分と全然違うというか、フレッシュですよね。

向井:今はジャンルで括るのって難しいんですよね。自分でも何のジャンルをやっているのか、わからなくなる時があります(笑)。

Kan:あまり気にしていないですか?

向井:僕は自分の音楽をJ-POPと言っています。メディアで自分の音楽が紹介される時は、「R&Bをベースに」と書かれる事が多いですが、自分の中では好きな音楽とか聴く音楽もどんどん変わるので、その時その時に自分のフィルターを通して、噛み砕いて自分の音楽にできればと思っていて。だからあまり自分がR&Bシンガーとか、ブラックミュージックをやっているという意識はなくて、J-POPですと言っています。J-POPって、色々な音楽がすごくミックスされたジャンルですが、フリーな、もっと自由な音楽だと感じています。

Kan:僕もジャンル分けは苦手というか嫌いです。本当に何でもいいやって思っていますが、ただ、僕が所属しているorigami PRODUCTIONSというレーベルは、スタッフとみんなで団結してやっているので、そうなるとジャンル分けしにくいものを作ったら、スタッフが売りにくいだろうなとか、人に説明しづらいだろうなとか、そういう事は考えますね()。申し訳ないなと思いながら作っています()。でも最終的には自分が作りたいものを作るしかないんで。なんで、ジャンル分けしにくいものになるのかを考えると、今まで聴いてきた色々な音楽が自分の中で違和感なく共存していて、僕自身がジャンル分けできないバランスを持った人間だからだと思います。自分のミュージシャンとしてのバランス感覚が、そのまま作品に出るんですよね。でも今の若いアーティストは、そういう事すら気にせず、自然にやっている感じがいいなと思います。

向井:僕らの世代ってネットが盛んになった事が大きいです。新しいジャンルを取り入れやすいというか、すぐに聴けるという環境が、一番大きかったと思います。

――Kanさんはこれからも音楽だけではないフィールドに、チャレンジし続けていくというスタンスですか?

Kan:そうですね、同じ事をやっているのが苦手なタイプというか、どんどん変化していきたい。変化するのは全然怖くないんです。新しい事にチャレンジしてみたいですね。今までバンドをやった事がないので、今バンドにすごく興味があって。

向井:見てみたいです。

Kan:なかなかメンバーがいないんですよ。ここのところサポートとソロ活動ばかりだったので、ちょっと違う事もやってみたいです。やっぱり根がミュージシャンなので、バンドって楽しいんですよね。もちろん部屋に一人で籠って曲を作っているのも楽しいですし、多分僕はどっちもないとダメなんです。両方やっているのがちょうどいいのだと思います。

Kan Sano/向井太一

――Kanさんの元にきた依頼は、全部受けているんですか?

Kan:ほぼ受けています。その幸いにもというか、わりと自分が興味がある人、共感できる人から話しが来る事が多いです。

――誰もが羨む仕事の仕方です。

向井:本当にそう思います。僕がやりたい事をKanさんはずっとやられている感じです(笑)。

Kan:本当ですか!?

向井:はい。もうすごい方です……よろしくお願いします()

一同 (笑)。

Kan:確かにシンガーではないので、いわゆる裏方にも回れる人間なので、それは自分の強みというか面白い部分ではありますよね。

――でもアルバム『k is s』では歌っていますし、七尾旅人さんをボーカリストとしてフィーチャリングしたり、今日も最初に向井さんの歌を絶賛していましたが、一番興味があるもの、肝になるものは歌ですか?

Kan:そうですね。特にピアノってソロ楽器でもあると同時に、伴奏楽器でもあるので、歌い手がいないと成立しないじゃないですか。だからシンガーがフロントに立ってステージで歌っていて、その人の伝えたい思いがあって、それを後ろで伴奏して支えているというのが、自分の喜びでもあるんです。自己実現というか、自分がやりたい事とは別に、そっちにも生きがいを感じています。

――Kanさんのピアノは風景が見えてくるというか、心にスッと入ってくる優しさを感じます。11歳からピアノを始め、18歳で米・ボストンのバークリー音楽大学に留学したとお聞きしました。

Kan:はい4年間行っていました。

――今思うと留学して良かったと思いますか?それとも4年間、ライブを重ねて腕を磨く時間にあてた方がよかったとか考える事はありますか?

Kan:考えますね。僕、東京に行かずに地元・金沢からボストンに行ったので。

向井:それすごいですね。

Kan:ははは、そうなんですよ。だからもっと早く東京に出てきていれば、また違ったのかなとか、色々思いますけど、でも留学していた4年間は、やっぱり必要な時間だったと思います。

向井:でも東京に行っていたら、タイミングを見失っていたかもしれないですよね?

Kan:確かに。だから早いうちに行っておいて良かったと思います。高校卒業してすぐに留学したので、やっぱりいきなり世界を見せられて、レベルの差に愕然としたし。バークレーは、とにかく世界中からすごい演奏家ばっかりが集まっているので。日本人だし、自分に何ができるのだろうとかすごく考えて、追いつめられました。だから留学して最初の1年が、人生で一番練習した時期でした。

向井:羨ましいです。僕は全然意志とかなくて、とりあえず東京だろうみ、たいな感じで。仕事も決めずに、住むところだけ決めて、身ひとつで上京しました(笑)。最初はバンドを探して、ベーシストの人と知り合って、最初の1年間はバンド活動をやっていました。その時は今とは全然違う音楽をやっていました。

Kan:バンドでどんな音楽をやっていたんですか?

向井:ファンクとかジャズをベースにして、インストと歌もの両方やっていました。2年位で抜けてソロ活動を始めました。

――バンドを経験している事は大きいですか?

向井:そうですね、勉強になりました。やっぱりその現場感というか、スタジオに入って生音でやるというのは、今となってはすごくいい経験でした。

――ソロでやり始めてバンドと比べると、やはり自分にはソロが合っていると思いますか?

向井:そうですね。僕は音楽的にもそうなんですが、アートワークも映像も色々なものをひっくるめてやりたいタイプなんです。そうなると一人の方がすぐ動けるという意味では、身軽ではありますね。あと、男のソロボーカリストって、今僕らの世代にはそんなにいないので、おいしいかなって()

Kan Sano/向井太一

――これからバンドをやってみたいというKanさんと、バンドを経てソロボーカリストがおいしいと思っている向井さんと、今日は面白い組み合わせです。お二人は今日初対面という事ですが、同じイベントに出てすれ違ったりはしているんですか?

向井:なかったと思います。

Kan:いやー、ないんじゃないですかね。

――では3月11日に大阪 SUNHALLで行われるイベント『Magical Echo 2017』で、初めて共演されるんですね。

向井:むちゃくちゃ楽しみです。

Kan:楽しみですね。

向井:大阪ではアコースティックライブしかやった事がなく、こういうCDの世界感を披露するのは初めてです。

Kan:あ、そうだったんですか。

向井:もう初めての事だらけで(笑)。今年は東京以外でたくさんライブをやりたいと、あちこちで言いまくっていたのでそれが実現します。本当にありがたいです。

―― Kanさん、向井さんの他にもYasei Collective BimBomBam楽団 jizue、そしてゲストプレイヤーが 門田”JAW”晃介さんと、むちゃくちゃ楽しみなメンツが揃いました。

Kan:最高ですね。この組み合わせが大阪で観られるのが面白いと思います。

――いわゆる対バンスタイル、プラス、コラボもありそうですか?

Kan:何かやってみたいですね。

――Kanさんと向井さんの絡みも観てみたいです。

向井:是非やりたいです!僕もジャズのスタンダードを歌っていた時期があって、Kanさんのピアノとジャズを演ってみたいですね。普段やっていない事に挑戦したいです。

Kan:いいですね。歌とピアノだけで何かやってみてもいいですし、でもトラックも作ってみたいですね。それと太一さんのアコースティックスタイルも見たいですね。

向井:僕は、サウンドは結構クラブミュージックの要素を入れているのですが、メロディはそんな感じではなくて。アコースティックも意外にしっくり来る感じの曲が多いです。

Kan:確かにそれは想像がつきます。やっぱり歌の芯が強いから、どんな伴奏になってもぶれない、向井太一になるんだろうなって。

向井:ありがとうございます。

Kan:歌ってその人の人柄がすごく出ると思っていて、だから太一さんも一見柔らかそうな雰囲気ですけど、結構男っぽい性格なんじゃないかなあと思っています。

向井:そうかもしれないですね。特にこのEP(24)は、僕の内面的な人間臭い部分を意識して出したつもりです。

Kan:うんうん。

向井:サウンドが無機質な分、歌詞とか歌は少し生々しい部分を出したくて。そういうところを出す事ができたのかなと思います。

Kan:なるほど。向井さんの歌を聴いてるとトラックメーカーとしては……

Kan Sano/向井太一

――音を作りたくなってしまいますか?

Kan:そうなんですよね。多分どんなトラックでもちゃんと歌い上げる事ができるから、逆にこれで歌えるのか、みたいなむちゃなトラックを作ってみたくなります()

向井:むちゃくちゃ恐ろしいですね(笑)。

Kan:クリエイター魂をくすぐられるというか。

向井:是非是非よろしくお願いします。

Kan:今回のアルバムは色々なプロデューサーが参加していて、タイトル曲の「24」はDJ Kou-G(Grooveman Spot)が手掛けていて、すごく良かったです。

向井Grooveman  Spotさんとは、ベーシックな事をやりたいですねという話をして、ちょっとロウで、あのけだるい、でも開いてる感じが、僕が一番表現したかった世界感です。

Kan:いいですよね。彼はトラック職人ですからね。

向井:本当に素晴らしかったです。

Kan:素晴らしかったです。

――Kanさんは誰かにプロデュースを依頼するという事はこれからありそうですか?

Kan:毎回セルフプロデュースですが、たまにはプロデュースされたいですね。

向井:それはどうなるのか楽しみです

――みんな恐れをなしそうですが()

向井:そうですよね。逆にKanさんが俺ならもっとこうできるとすごいのを作って、結局セルフプロデュースになっちゃうみたいな(笑)。

Kan:でもずっと一人でやっていると、息詰まることもあって。ちょっと視点を変えて、状況を変えてやってみたいというのは時々思います。結局一人でやっちゃうのかもしれないけど、やっぱり全然見たことない世界を見てみたいです。でもそういうのって出会いだと思うので、誰かと出会う事ができれば嬉しいです。

――今後向井さんとのコラボも見る事ができるかもしれませんね。

Kan:是非やりたいですね。

向井:本当に良いんですか?()

Kan:やりましょう本当に。

向井:今回のアルバムもそうなんですが、トラックメーカーと一緒にやっているという意味合いを濃くしたいんです。

Kan:そうやって色々な人とどんどんできるというのは、太一さんの良いところですよね。

Kan Sano/向井太一

 

取材・文=田中久勝 撮影=yu-yukko

 

イベント情報
Magical Echo 2017​

 日時:2017/3/11(SAT)
 会場:Shinsaibashi SUNHALL
 出演者:Kan Sano/Yasei Collective/BimBomBam楽団/jizue/向井太一
​                Guest Player:門田“JAW”晃介(BARB/ex.PE'Z)