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花村恵理香(ヴァイオリン)「ヴァイオリン音楽独自の世界を楽しんでください」

2017.3.15
インタビュー
クラシック

花村恵理香(ヴァイオリン) Photo:Shigeto Imura


 桐朋学園と英国王立音楽大学で学び国内外で実績を重ねてきたヴァイオリンの花村恵理香の初アルバムは、タイトル曲のラヴェル「ツィガーヌ」を始めとする名曲集。

「どなたにも楽しんでいただけるようにと心がけて選曲しましたが、私の中では大きく3つのカテゴリーがありました。まず最初に祈りの曲。これは絶対になければいけなかったんです。次に、それと対極的なヴィルトゥオーゾ・ピース。そしてヴァイオリン名曲の小品。それぞれの世界に見合ったキャラクター作り、表現を楽しんでいただくことを目指しました」

 なかなか聴かれない曲も。

「J.ベンダは18世紀のドイツで活躍したチェコ出身の作曲家です。収録した『グラーヴェ』は彼の協奏曲の第2楽章ですが、ずいぶん前にレコードで聴いて以来よく弾いています。日本よりも、ヨーロッパで弾かれることが多いかもしれません。ジョゼフ・アクロンの『ヘブライの旋律』もあまり知られていませんが、ヴァイオリニスティックな魅力を醸し出している曲。純然たる西洋音楽の前に、中東からやってきた音楽の香りにとても惹かれるものがあり、こうした音楽に興味を持っています」

 その一方で、最も自分になじむのが、アルバムの最後に置かれたヴィヴァルディの「冬」の第2楽章ラルゴなのだそう。

「自分の感覚としてはすごく自然にヴァイオリンが鳴る曲なので、どうしても入れたかったんです。ありがたいことに、聴いた方々から『ヴァイオリンの音がこの曲では特にいい』といった感想をいただいています。変ホ長調という調性のせいなのかもしれませんが、弾いていて幸せに感じる曲です」

 ピアノは藤井一興。ロンドンから帰国してすぐに英国プログラムで共演して以来、久しぶりの再会だった。

「いろいろなアドバイスをいただきました。特にフォーレの『夢のあとに』ですね。私が歌の楽譜で弾いていたのが珍しいと思われたのか、『すごいですね』って(笑)。フランス語の響きやフレージングを生かすように、歌の旋律をそのまま弾いていています」

 愛器は1685年製のストラディヴァリ。

「ピュアで柔らかい音ですが、すごく正直な楽器で、確信を持たずに弾くと、何もない空虚な音が出てしまいます。その代わり、自分の持っている音があれば、その音が出る。ガット弦を使っているので、それも柔らかい音につながっているかもしれません」

 どの曲にも豊かな表情が与えられている、楽しい一枚だ。

取材・文:宮本 明
(ぶらあぼ 2017年3月号から)


CD
『ツィガーヌ〜ヴァイオリン名曲集〜』
マイスター・ミュージック
MM-4003
¥3000+税
2/25(土)発売