看護師&シンガーソングライター・瀬川あやかの本質に迫る 看護と音楽を通して感じた“音楽の力”
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瀬川あやか
瀬川あやかが、3月15日に“原点が詰まった”1stアルバム『SegaWanderful』をリリースする。昼は看護師、夜はシンガーソングライターとして活躍する彼女は、なぜそのように活動しているのか。今回のインタビューでは、その本質に迫るとともに、新アルバムについてを紐解く。
「きれいごとって思われてしまうかもしれないけど、それが私の本心」――そう語る真意とは。
――1stアルバム『SegaWanderful』を聴かせていただくと、瀬川さんの歌力と、いかに歌が好きかという想いをひしひしと感じるわけですが、やはり子どものころから歌が好きでしたか。
そうですね。物心ついたときから歌が大好きで。テレビの歌番組を観ては、真似して歌ったり踊ったりしていました。
――そのままいくと、将来は歌手を目指して一本道を走っていきそうですけど、瀬川さんは現役の看護師でもあるんですよね。驚きです。
確かに歌手になりたいなと思ってはいたんですけど、母親が看護助手をしていて。学校帰り、母の勤め先の病院によく立ち寄っていて、看護師さんたちと触れ合ううちに、「こんな素敵な看護師さんに私もなりたいな」と思うようにもなったんです。そして、中学に上がると……「歌手になりたい」って言えなくなっちゃったんですよ。(北海道)富良野ってすごく田舎なので、「そんな夢みたいなこと言ってるの?」って言われそうな気がしていたし、ダンス教室に行きたいと思っても片道2時間くらいかかっちゃうし(苦笑)。表向きの夢は看護師で、内に秘める夢が歌手という感じになっていきました。
――普通なら、そのまま心の灯は小さくなっていってしまいそうですけど、瀬川さんの場合は違ったんですよね。
「本気で目指してみたいな」と思うようになったきっかけは、今の事務所の社長との出会いで。東京の大学の看護学科に進んだんですけど、1年生のときに誘われて出場したミスコンで、「芸能界に興味がある?」って声をかけてもらって。後日、「芸能界というより歌が好きなので、やるとしたら歌いたいです」という話をしたら、「今からカラオケに行こう」って言われて、そのままカラオケに行ったんです。
――いきなり!?
もう、あんなに緊張するカラオケはないですよ!(笑) でも、そこで「じゃあやってみようか」っていうことになって。
――ただ、大学には通い続けてたんですよね。
そうです。看護学科って授業と実習ですごく忙しいので、まったく歌の活動をしていなかった時期もあるし、半年くらいかかる実習と重なって大きなオーディションに落ちたときは、「看護師になれ、歌手の夢は諦めろって神様に言われていると思うので、もう事務所はやめさせていただこうと思います」って言ったりもしたんですね。でも、社長が「実習が終わって気持ちが変わったらまたおいで」と言ってくれて。その後、実習をする中で、自分ではもう動けない認知症の患者さんが「ソーラン節」が好きだと言うので、私が歌ったら……ひとりで起き上がることができたんですよ。
――音楽の力ですね。
認知症で思い出せないこともたくさんあるけど、好きな曲を聴いて元気だったころの自分のパワーを思い出したのかなって。誰かを想ってなにかをするという意味で、看護もシンガーソングライターも違わないはずだし……そこで「音楽ってすごい、やっぱりやりたい。自分もそういう曲を作りたい!」と思ったんです。
――確かに、看護も音楽も本質は同じ。
だったら、どっちにしようって悩むんじゃなくて、両方するにはどうすればいいかっていうことを考え始めて。
――そう思うだけでなく実行に移すには、相当の意志の強さが必要だと思います。
私、負けず嫌いだし、諦めも悪いし。我ながら、欲張りなんですよね。やってみてダメだったら諦めがつくんですけど、やってもいないのにできないだろうとは思えないっていう。
――そして、今現在も病院勤務をされているんですよね。
今日も、午前中は病院で働いてきました! 看護のお仕事も本当に好きなので。好きだけで言ってはいけないのかもしれないですけど……
――そういう純粋な想いがないとできないお仕事だとも思いますし。看護の現場で得るものもたくさんありそうですね。
いろいろな患者さんと向き合う中で、人として学ぶことは本当に多いです。
――ちなみに、作詞・作曲を始めたのは先ほどお話に出た事務所の社長さんと出会ってからということで。そのことにも驚いております。短期間でどれだけ急成長するのかと。
小さいころピアノを習っていたので、その経験は多少活きているかなとは思いつつ……私は本当に経験も浅いし、知識も圧倒的に少ないので。アンテナを張ってとにかくがむしゃらに生み出していくしかないわけですけど、そう言っていただけるのは本当に嬉しいです。
瀬川あやか
――1stアルバム『SegaWanderful』の曲たちにしても、どの曲にもドラマがあるし、キャッチーだし。聴いてきたものの影響や自分の感性をそのまま表現すると、そういうものになるのでしょうか。
今回の収録曲は、すべてデビュー前の曲で。瀬川あやかの原点でもあるんですけど、昔からJ-POPが大好きなので、いい影響が出ていればいいなと思います。
――いろいろな表情を見ることもできて、「声」の愁いをたたえた歌声なんかにはドキっとさせられますし。
「夢日和」から急にですよね(笑)。曲順はだいぶ迷いましたけど……。
――結果、素敵な流れになりましたよね。歌詞に関しては、「恋の知らせ」「ベストフレンド」「未熟なうた」なんかは心情をストレートに描いているなと思いつつ、「妄想スニーカー」「夢日和」では、空想的な描写もあったりして面白いなと。
たとえば「ベストフレンド」は、ある友達からもらった手紙がきっかけでできた曲で、対象がはっきりしているから歌詞もストレートになっているんですけど、「妄想スニーカー」「夢日和」は悩み事から始まっている曲で。それも、なにに悩んでいるかもはっきりしなかったりするし……漠然と哀しいとき、落ち込んじゃうときってあるじゃないですか。だから、フワフワしていたりもするんだと思います。
――なるほど、すごく正直に作っているんですね。
そうですね。空想とか想像力もアーティストの表現力の一つだと思うから、そこはそこで極めていきたいです。実体験とかリアルなものも書きたいですし。どちらにせよ、飾らずに正直に書いているし、これからもそうでありたいなと思います。
――リアルというところでは、「夢日和」の<争いや悪口に惑わされたくない 聞こえてこないようにと手で耳を塞いだ>とか、多くの人が共感してしまいそうです。
私、すごく惑わされるタイプだし、落ち込みやすいんですよ……。でも、切り替えは得意で、ネガティブからポジティブに自分を持って行くのは早いんです(笑)。「悪口もありがたい意見だ」と思うようにしていたりします。
――そう思えるのは、もともとの気質に加え看護のお仕事を通して人間力が磨かれている、ということも関係ありそうです。
今の勤め先は入院病棟はないんですけど、実習中は終末期の患者さんも多くいらっしゃって。そういう方たちとの触れ合いは、自分の考え方に大きく影響しているとは思います。
――だからこそ、心動かす音、言葉、歌が生まれるのでしょうね。「未熟なうた」の<次は私の番なんだ いつか誰かに届くように 歌を歌い続けるから>という決意にもグっときます。
誰かの明日の辛さが少しでも和らげばいいなと、歌を歌っていても看護をしていても思うので。心や体の痛みを消すことはできないけど、感じ方を変えることはできると信じているし。そういう初心を忘れないでね、と自分に向けている歌でもあります。
――なにしろ、『SegaWanderful』には多くの人の人生に長く寄り添ってくれる歌が詰まっていますね。でも、音楽活動と看護のお仕事、両立させるのは大変だし忙しいと思うわけですけど……くじけそうになることはないのでしょうか。
歌手も看護師も自分がなりたかったものなので、基本的にツラいと思わないんですよ。前日まで地方にいて、病院勤務のためだけに帰ってきて、また地方に行くとか、確かに体が疲れたりはしますけど……やめたいと思ったことはないです。人生なにが起きるかわからないので、たとえば急に歌が歌えなくなるかもしれない、看護師の仕事ができなくなるかもしれない、そう思ったら好きなことができる今がすごくありがたいなと思うので。きれいごとって思われてしまうかもしれないけど、それが私の本心なんです。
――考え方ひとつでポジティブに生きることができるのだとあらためて痛感しますが……そんな瀬川さんの息抜き法は?
友達と会ったり、散歩が好きなので行き先を決めずにどんどん歩いてみたりとか。
――すると、初めて見た景色から浮かぶイメージやフレーズが、曲になったりもしそうです。
そうなんですよ。あと、圧倒的に人と話すのが好きなので、偶然見つけたコーヒー屋さんに入ってお店の人に話しかけて、いろいろおしゃべりしたりとか。初対面の人にもどんどん話しかけちゃうんです(笑)。そういう時間が自分にとってはなによりも息抜きになります。
――人好きな瀬川さんらしいですね。では、アーティストとしての夢は?
看護師をしているときに感じたことは歌になるけど、歌で看護の仕事に還元できているかというとまだまだできていないところがあるので。『SegaWanderful』をリリースしたあとは、もっともっといろいろなところに行きたいし、活動の幅も広げて歌を届けていきたい。それが、今の私の夢です。
取材・文=杉江優花
発売日:2017年3月15日
『SegaWanderful』初回限定盤
『SegaWanderful』通常盤
◇CD
1.妄想スニーカー
2.夢日和
3.声
4.いつでも恋はカメレオン
5.恋の知らせ
6.ベストフレンド
7.未熟なうた
●「妄想スニーカー」Music Clip
●Making of 「妄想スニーカー」、他
■4月28日(金) 東京 恵比寿Creato
OPEN/START:18:30/19:00
対象席種&料金:オールスタンディング 3,900円(税込)ドリンク代別 500円
問い合わせ:ポニーキャニオンライヴエンタテインメントDiv 03-5521-8077(平日13:00~18:00)
■4月30日(日) 大阪 hillsパン工場
OPEN/START:16:30/17:00
問い合わせ:SOGO大阪06-6344-3326(平日 11:00~19:00)