すべての人に贈る希望の人生賛歌! THE CONVOY SHOW vol.32 『asiapan』ゲネプロレポート
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1986年の結成以来、国内エンタメシーンのトップを走り続けるTHE CONVOY。その最新作、THE CONVOY SHOW vol.32『asiapan』が2月25日(土)の東京公演を皮切りに、札幌、愛知、大阪、福岡と全国を駆けめぐる。それに先立ち、2月24日(金)、マスコミ向けの公開ゲネプロが実施された。
今回の注目は、新たに加入した荒田至法、後藤健流、佐久間雄生、本田礼生の4人。全員20代という新星と、50代を迎えた今村ねずみ、瀬下尚人、石坂勇、舘形比呂一、黒須洋壬、トクナガクニハルの6人がどんな化学反応を起こすのか。30周年を経てなおも進化し続けるTHE CONVOYの新時代の幕開けをここにレポートする。
さあ、人生という名の旅を楽しもう!
本作の舞台は、東南アジアのとある国。そこでゲストハウス「sweet home SAKURA」を営むオーナー(今村)と、人生の黄昏時を迎えた宿泊客の男たち(瀬下、石坂、舘形、黒須、トクナガ)の交流にスポットが当てられる。
冒頭からテンポの良い台詞の応酬が続く。この掛け合いの軽快さは、長い年月を経て培ったTHE CONVOYならではの楽しさ。男たちは、ぼったくりなど旅ならではのトラブルに見舞われつつも、遺跡見物に繰り出したり、めいめい異国での日々を楽しんでいる様子だ。
しかし、本作は単なるアジア見聞録では終わらない。徐々に浮かび上がってくるのが、それぞれの男たちが抱える人生の憂いと悩みだ。
生きていれば、困難はつきもの。それは、どれだけ年齢を重ねても変わらない。賑やかに旅を楽しんでいるかのように見えた男たちは、家庭に、仕事に、小さな、けれどくっきりと濃い影を落としたまま、煩慮から逃れるようにして、この国に来た者ばかりだった。
そんな中年男たちの苦悩と悲哀を、ユーモラスに、そして切実にTHE CONVOYは演じていく。
そこで絶妙なアクセントとなるのが、荒田、後藤、佐久間、本田ら新メンバーたちだ。彼らはゲストハウスの従業員をはじめ、現地の人々をコミカルに次々と演じ分ける。発展途上国で暮らす彼らの生活は、決して物質的に豊かではない。中には、生活のために日本人観光客を騙すことを厭いもしない者もいる。恵まれているのはどちらかと聞かれれば、多くの人は私たち日本人だと答えるだろう。
だが、若手メンバーが演じる現地の人々の何とイキイキしたことか。彼らはみな陽気で、チャーミングで、人生を一点の曇りもなく謳歌しているように見える。劇中、投げかけられる「日本人はなぜ幸せそうに見えないの?」という問いに、観客は思わず答えに窮してしまう。
本作は、作・構成・演出の今村が、アジアの国々を旅したときに感じたことが出発点になっていると言う。その言葉通り、日本人であることのアイデンティティを、今村は観る者に問いかける。かつてアジアの希望の星だった日本。今、同じようにアジアの人々に誇りをもって日本という国を語れるか。
日出ずる国に生まれたんだから、沈んでばかりではいられない——そんな今村のメッセージに、多くの人が今一度奮い立たされるはずだ。
この物語は、人生の締めくくりを考えるにはまだ早すぎるし、かと言ってもう夢と希望に満ちあふれているとは言いがたい中年期の人々に贈る、THE CONVOYからのエールだ。きっとそのエールに、THE CONVOYと共に生きた同年代の観客は胸揺さぶられることだろう。
そして、新メンバーと世代を同じくする20代の観客が観ても、やるせなさを抱えつつ力強く生きていく中年オヤジの姿に憧れを抱くに違いない。
また、THE CONVOYのトレードマークである歌とダンスも、4人の新メンバーが加わることで、新たな魅力を放っている。
何と言っても4人の新メンバーのダンスの鮮やかなこと! そのジャンプは、観客の心臓が止まるほど高く。そのターンは、空気を切り裂くほどにシャープだ。特に中盤に披露される4人のストリートダンスは圧巻。若さ弾けるエネルギッシュなダンスは、歓喜と興奮に満ちている。
ライブステージを主戦場とするパフォーマーであれば、自分がいったいいくつまで最高のパフォーマンスをしていられるかは、重大な問題のひとつだ。特にダンスは身体の衰えが顕著に出る。年齢を重ねるほどに、徐々に自分の頭の中で思い描いている理想のパフォーマンスと、実際のそれが乖離をはじめ、もがき苦しむこととなる。
だが、この日、ステージに立った6人は、そんな苦悶とは別次元に立っているような気がした。もちろん若手メンバーのようなエネルギー迸るパフォーマンスとは少し違う。ジャンプも、ターンも、高さやスピードという点だけで見れば劣るのかもしれない。
だが、ちょっとした間の外し方、力の抜き具合に、熟練の味がにじむ。同じ振り付けのはずなのに6人それぞれまったく違う個性を見せるから、観客はつい視線を奪われてしまう。
舘形はどんな身のこなしにも知性と品があふれ、石坂は野性的な色香をむき出しにする。トクナガは洒脱な枯れ感を身にまとい、黒須はフレンドリーで親しみやすく、瀬下はオーセンティックな輝きがある。そして今村はいついかなるときも心の底から楽しそうに踊り歌う。
その姿を見ていると、なぜか胸が熱くなり、視界が涙でにじみはじめる。気づけば観客は微笑みをたたえ、劇場がまるごと多幸感に包み込まれていた。
日本がかつてアジアの国々の希望であったように、THE CONVOYもまた観客にとっての希望なのだ。それは決して錆びつくことはない。30年を経てもなお、彼らは空高く駆けのぼるライジングサンのままだ。
そして4人の仲間を得て、新たな水平線に辿り着いた彼らは、きっとこれからも眩い太陽として、私たちの航路を明るく照らし続けてくれるだろう。
作・構成・演出:今村ねずみ
出演:瀬下尚人 石坂 勇 舘形比呂一 黒須洋壬 トクナガクニハル/
荒田至法 後藤健流 佐久間雄生 本田礼生/今村ねずみ
<東京公演>
日時:2017年2月25日(土)〜3月1日(水)
会場:TBS 赤坂ACTシアター
<札幌公演>
日時:2017年3月5日(日)
会場:札幌市教育文化会館 大ホール
<愛知公演>
日時:2017年3月8日(水)〜9日(木)
会場:東海市芸術劇場
<大阪公演>
日時:2017年3月11日(土)〜12日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール
<福岡公演>
日時:2017年3月14日(火)
会場:ももちパレス