下野紘さん、津田健次郎さんが考える「スマートな男らしさ」とは? TVアニメ『ACCA13区監察課』声優インタビュー

2017.3.4
インタビュー
アニメ/ゲーム

下野紘さん、津田健次郎さんが考える「スマートな男らしさ」とは?

 絶賛放送中のオノ・ナツメ先生原作によるTVアニメ『ACCA13区監察課』。13区の自治区にわかれたドーワー王国を舞台に、巨大統一組織・ACCAで繰り広げられる、ドラマチック群像エンタテインメントです。

 最後までどうなるかわからないストーリーはもちろんのこと、作品に登場するスタイリッシュかつスマートな“カッコいい”男性キャラクターが魅力でもある本作品。演じている声優陣はキャラクターをどう見ているのでしょうか?

 そこで今回、ストーリーの要でもある“ACCA(アッカ)”の監察課副課長ジーン・オータス役・下野紘さんとニーノ役・津田健次郎さんのおふたりに、「スマートな男らしさとは?」というテーマでインタビューを実施。

 作品に対する印象やご自身が演じられるキャラクターの?スマートな男らしさ”、おふたりが感じる?理想的な男性像”までたっぷりと語っていただきました。おふたりが考えるスマートな男らしさとは一体どういうものなのか、ぜひご覧ください。

クールに見えて熱い! 静かに燃えている物語
──まず最初に、『ACCA13区監察課』はどんな作品だと感じましたか?

下野紘さん(以下、下野):陰謀めいた雰囲気を物語の軸にしていて、渋い男性から若い男性まで、個性的な男性がたくさん出てくる作品だと感じています。映像、音楽を含めスタイリッシュな作品でもありますが、ストーリーにはさまざまな伏線が張られていて、意外な方向にストーリーが展開していくので、何度も見たくなるような作品だと思いますね。

津田健次郎さん(以下、津田):序盤だけご覧になっている方は、“スタイリッシュでオシャレな作品”という印象を持っているのではないかと思います。終盤に向かって怒涛のような展開を見せていき、ストーリー自体も面白く引きこまれる作品です。ただの雰囲気アニメだと侮ってはいけません!

──まさにその通り! 一見、雰囲気・オシャレアニメだと感じますが、実は違うんですよね。

下野:そうなんですよ。徐々に、「あれ?」と思うことが増えていって、最後には一気にたたみかけるように重大な事実が発覚します。あちこちに「あれってそうだったの!?」と思う部分がたくさんありますからね。

津田:収録も終盤に進んでいるので、なおさらそのように感じます。カッコいいキャラクターが登場するクールな作品という感じがしますけど、蓋を開けてみると全然クールじゃない、熱い部分もあるんですよね。

下野:そうそう。静かに燃えているという感じがありますよね。

──収録を重ね、おふたりが演じるキャラクターはどんな人物だと感じますか?

下野:序盤の頃は、ジーンはクールで何事にも動じない、何を考えているのかわからないという大人っぽい印象がありました。だけど、話が進むたびに、ジーンは自分から何かをしようと行動する人物ではないのだと感じましたね。だからこそ、いろんな事件に巻き込まれ、気が付いたら周りや置かれている立ち位置がすごいことになっているんです。実際、アニメでニーノが言っている通り、“巻き込まれ型”であることが、後半に進めば進むほどみなさんにもおわかりいただけるかと思います。


──確かに、ジーンは周囲の流れに身を任せている感じがします。

下野:ただ、その中でもジーンは決して流されず、しっかりと自分の芯を持っていろんな人たちと接しているんだと思います。表面上、さまざまな場面で周りに振り回されているように見えていても、実はジーン自ら進む道を選び、進んでいる。ただ、それを口に出さないからこそ、流されているように見えてしまうんです。最後まで見ていただければ、本人の中でいろいろ考えて出した答えが見えてくると思います。

津田:確かに。巻き込まれ型のように見えるジーンでも、最後は大胆な行動を起こす姿にしびれますね。

──そんなジーンと仲良しで、ご飯も一緒に食べる機会が多いのがニーノです。演じる側として津田さんはどのように感じますか?

津田:序盤からずっとニーノとクロウという二面性を持つ、得体の知れない人物でした。なぜ彼は何も言わないのか、何のために行動しているのか、わからないことが多かったと思います。物語が進み、その真相がわかったときに、彼の深さが一層伝わったんじゃないかと思います。


──なるほど。少し、ジーンと似ている部分もあるような……。

津田:そうですね。ジーンと同じく、ニーノも多くを語らない分、行動で一貫した強い意志を持っているとわかります。ただクールなわけではなく、すごく大きなうねりや感情がニーノの中に潜んでいる。そういう意味では、ジーンとニーノが持つクールさや強さはまったく違うものですね。それぞれ違う強さを持っているからこそ、ふたりが合わさることで丸くなるんじゃないかな。

下野:お互いに補完し合っている感じがしますよね。ふたりとも、まだ大人になりきれていない部分があるんだと思います。

津田:すごく不器用なのかも。人とうまくやっていけないふたりです(笑)。

男らしさは作るというより重ねてきたもの
──それでは、今回のテーマに迫っていきたいと思います。“スマートな男らしさ”を感じたキャラクターや場面はどこでしょうか?

下野:原作を読んでいるとき以上にかっこいいなと思ったのが、ACCA本部監察課課長のオウル(CV:上田燿司さん)です。いろんな意味でスマートなキャラクターだと思います。ダメな課長っぷりを見せつつも、さりげなくロッタを気にかけているんです。歳の離れた子をスマートに気にかける大人の余裕を感じつつ、実際に行動しているのがすごいと思います。特に、第9話(※1)の姿がカッコいい!

(※1)ネタバレになるため掲載できませんでしたが、オウルが見せる行動について熱く語られていました。一体どんな行動を見せるのか、翌週の3月7日から順次放送となる第9話をぜひご覧ください!

津田:大人といえば5長官(※2)ですね。彼らが仕事をしているところを見たことがない(笑)。

下野:そうそう!(笑)

(※2)グロッシュラー(CV:諏訪部順一さん)、リーリウム(CV:遊佐浩二さん)、スペード(CV:大川透さん)、パスティス(CV:緑川光さん)、パイン(CV:安元洋貴さん)から成るACCA組織のトップ。

津田:談話室やカフェでくつろいだり優雅に会議をしていたりする姿しか見ないです し(笑)。でも、実は彼らは、各区から選出されたスーパーエリート集団で、そこまで登りつめるまでにすごい努力と優秀さを発揮してきたんだろうなと思います。そういう努力をまったく感じさせないですが、きっと談話室から離れたらめちゃめちゃ仕事をしているんだろうなと思います。そんな部分にカッコよさやスマートさを感じますね。

──スマートなカッコよさがありつつも、やはり長官ならではの雰囲気が漂っていますよね。

津田:ああ見えて、腹も据わっていますしね。ドーワー王国自体が考え方や文化・風習が異なる地区でできているので、大統領や首相に近いリーダーシップを持った人たちが集まっている印象があります。

下野:5人ともしっかり人を見ていて仕事ができる人たちだと感じています。

あと、国王様(ファルケ2世/CV:中尾隆聖さん)はすごいですよね。普通、国王様がふらっと街を訪れることはないですし。市民の暮らしをしっかり見つつ、壁をつくらずに一緒に生活しようとしている姿はすごいです。

津田:また、お付きのクヴァルム(CV:石塚運昇さん)が優秀なこと! 

下野:そうそう、本当にカッコいい!

津田:うん。全体的に見ても、カッコいい人がズラッと並んでいますよね。

下野:アニメを見ていて、“男らしさは作るというより重ねてきたもの”なんだなと思うんです。人柄や仁徳、能力が備わってできるものなんだろうなと実感しましたね。

津田:登場する大人の男性は渋く、クールでカッコいいんですけど、若い子たちもその予備軍だと思います。このまま頑張って走り続けるとカッコいい大人になっていくのかな。

下野:ACCA本部副本部長のポチャード(CV:後藤ヒロキさん)もいいですよね(笑)。

津田:あははは。ポチャードにはオノ・ナツメ先生の愛が詰まっているからね。名前がいいよね!

下野:そうそう! 名前がいい(笑)。スマートさはないけれど、仕事に対する熱心さは素晴らしいと思います。

津田:ACCAの各区のリーダーも責任のある立場についている若い子たちで、なかなかクセがあって面白いですよね。中でも、ACCA入局試験トップの成績で入ったロックス区のサンドパイパーが好きです。チャラチャラしているのにしっかり者という、こういう男がいたらいいなぁと思います(笑)。

下野:僕は、スマートさになるかはわかりませんが、ハレ区の人たちに惹かれます。

津田:地区によってカラーが違うので、その辺りも面白く楽しんでいただけると思います。

男は多くを語りすぎてはいけない……?
──さまざまなキャラクターが魅力でもある『ACCA13区監察課』ですが、キャラクターが醸し出す“カッコよさ”とはどんなものだと思いますか?

津田:みんな秘密を抱えていて、実はしんどい思いもかなりしている気がします。だから、僕はハードボイルドがベースになっていると思うんです。ハードボイルドは「やせ我慢」という意味もあるらしくて、やせ我慢をしているけどそれを絶対に表に出さない、そういう美学があるんじゃないかと。

原作のオノ先生も描きたいところを我慢して、あえてセリフにしないで絵やシルエットで見せているのかもしれません。例えば、ジーンがただたばこを吸う場面や、グロッシュラーがただたたずんでいる場面は、いろんなことを想像して描かれているように感じます。絵とセリフ、さまざまなものが融合して、それがスタイリッシュに消化されているのかな、という気がしますよね。

下野:基本的に多くを語らないところですね。視線や動きを激しくして伝えるのではなく、見ている側を考えさせるような、ミステリアスな雰囲気が滲み出てくるところがカッコよさにつながっている気がします。……やっぱり、男は多くを語りすぎちゃいけないんだなと(笑)。

津田:俺らはおしゃべりだからなぁ(笑)。

下野:ついしゃべっちゃうんだよなぁ(笑)。

津田:原作にもアニメにも、勝負に出ている場面があると思うんですよね。その場面を見落としたら物語の流れがわからなくなるかもしれない場面とか。逆に、大事なことは多くを語らないのに、余計なことはすごく語るんですよ。ジーンとニーノがお酒を飲んでいるときは、全然関係ない話をしていますからね。

下野:そうですね。

津田:大事なことは本当に言わないので、そこを汲み取れるかどうかが勝負ではないかと。そこは演出としても我慢しているところだと思います。

下野:ジーンの場合は特にそうですよ。すごく表情が動いているときに息を入れようとすると、「そこは入れないでもらえますか」と言われるんです。視線が動いたり、何かに気づいたりしているけれど、基本的に息は入れない方針でアフレコしています。原作や台本にも「……」が書かれているんですけど、そこはあえて何もしていません。

津田:でも、つい息を入れたくなるよね。

下野:そういう意味では、僕もやせ我慢をしているのかなと(笑)。

一同:(笑)。

下野:……全然スマートじゃないな今の(笑)。

ニーノとジーンのふたりの空気をどれだけ作れるか
──オープニングとエンディング映像もカッコいいですよね。

津田:実は、オープニング映像でニーノのサングラスにお父さんが映っているんですが、アフレコ現場で見せていただいたとき正直わからなかったんです。わかりやすい演出にすることもできるはずなのに、ギリギリのところをあえて隠している部分に、スタッフの意気込みと勝負する気持ちを感じました。

下野:エンディング映像も、ロッタ(CV:悠木碧さん)が誰を想って踊っているのかわからないですよね。

津田:確かに、わからないね!

下野:踊っている理由をあえて説明しないところ。楽しそうに踊っているようにも見えるし、どこか寂しげにも見えるし、「なんだろうなぁこれ。」と考えさせられますよね。


──実際に、そのギリギリの部分を声で表現されてみていかがでしたか?

津田:実は、王様と雪の玉を食べるシーン(※3)も後々響いてくるセリフがあって。特に、ニーノの「……ありがたきお言葉」というセリフには深い意味があるんですが、さらっと言わなきゃいけない。そのあたりのさじ加減が本当にギリギリで。収録時はブースの向こうにいるスタッフとやり取りしながら試行錯誤しました。

(※3)第7話。ジーンがドーワー区への視察時、妹・ロッタへの土産として「雪の玉」を買いに出かけたお店で国王様と出会い、一緒に食べる場面。

下野:わかりやすく演じたくなる瞬間はありますよね。特に、ニーノとのシーンは津田さんから伝わるものをすごく意識して表現の仕方を変えています。ジーンが巻き込まれ型であり、基本的に受け身なので、津田さんの演じるニーノの影響が強いです。

今まで、役者として自分からいろいろなことを発信してきましたが、今回は影響を受ける側なんだと強く感じます。野球で例えると、ピッチャーからキャッチャー側にまわるというような感じですかね。結構、ドキドキしますよ。津田さんがどういう方向性で来るんだろう、と(笑)。

津田:(笑)。僕の場合、ほぼ喋る相手はジーンかロッタ、グロッシュラーぐらいしかいないので、ジーンとニーノのシーンは、ふたりの空気をどれだけつくれるか、という部分を意識しています。その辺のやり取りは緊張もしますし、すごく楽しいです。会話劇をしているような、面白いシーンだと思いますね。

多くを語らない男性……になれたらいいな(笑)
──では、最後に、おふたりが感じる「理想の男性像」とは何でしょう?

下野:やっぱり多くを語らない男性……になれたらいいな(笑)。

津田:いつもしゃべってるよ!(笑)

一同:(笑)。


──おふたりは職業柄、カッコつけなければいけないときもあると思いますが、性分的にできないこともあるんですか?

下野:よくありますよ(笑)。自分は何をやっているんだろうと笑い出したくなる瞬間があります。

津田:そうそう。何カッコつけているんだと笑っちゃうときあるよね(笑)。でもね、男ならカッコつけないといけないところもあるんでしょうね。

下野:多くを語らず、いろんなものを受け入れていける感じですよね。

津田:まさにジーンじゃないですか!

下野:いやいや、褒めすぎですよ。ジーンは許容できてはいないと思うんですよ。

津田:いや、許容しているよ! ニーノはすごく怪しいのに、ジーンは待ってくれるんですよ。待っている状態でも一緒にご飯を食べたりしているし。ニーノを責めてもいい状況なのに待つという、その器の大きさに感服しますね。ジーンはすごいですよ。

──多くを語らず、何でも受け入れることが、おふたりが考える「理想の男性像」だと。

下野:それだったら、全部を笑って受け止めている国王様がすごいですよ。それでいて、押さえるべきところをきちんと押さえていますから。

津田:国王様自身はもちろん、側近のクヴァルムあっての国王様でもあるからね。

下野:そうなると、ニーノあってのジーンというところもあるのでは?

津田:そうだね。ジーンはド天然だから。

下野:そうなんですよ。本当にド天然。

津田:国王様と側近、ジーンとニーノ、共通する部分があるかもしれないですね。

 『ACCA13区監察課』について「スマートな男らしさ」をテーマに熱く語っていただいた下野さんと津田さん。ジーンとニーノが最後に出す?答え”とは一体何なのか? 最後には何が起きるのか? 最終回まで目が離せません!

[インタビュー/石橋悠]

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