高橋大輔が全米のトップダンサー達と再び舞台に! 『木下グループ presents LOVE ON THE FLOOR 2017』インタビュー
高橋大輔
フィギュアスケーターの元世界王者・高橋大輔が、ダンサーとして初めて舞台を踏み、喝采を浴びたダンスショー『木下グループ presents LOVE ON THE FLOOR』の再演が決定した。2017年6月16日から東急シアターオーブ(東京)にて、全13公演を予定している。
ダンサー高橋大輔が再び
『木下グループ presents LOVE ON THE FLOOR』は、高橋大輔をゲストダンサーに迎え、2016年に初演されたダンスショーだ。ときめき、情熱、とまどい、嫉妬、無償の愛といった、愛という感情の持つ様々な面を、米国のトップダンサー、トップフィギュアスケーター達の、卓抜したダンス技術を通じて表現する。構成と演出は、‘Dancing with the Stars’で2度の優勝経験を持つ、シェリル・バークが手がける。
再演となる2017年版も、作品のベースは初演とほぼ同じだという。しかし前回ゲストダンサーだった高橋が、今回はシェリルとのW主演を予定している。『木下グループ presents LOVE ON THE FLOOR 2017』という作品への、そして、高橋大輔というダンサーへの進化に期待が高まる中、都内で合同取材会が開催された。
木下グループ presents LOVE ON THE FLOOR 2017
ひさびさに試合の表情に
――昨年の『木下グループ presents LOVE ON THE FLOOR』をふり返り、手ごたえはいかがでしたか?
手ごたえを感じる前に舞台が終わってしまったと思えるくらい、いっぱいいっぱいでしたが、その分楽しく充実していました。やりがいもあって、久々に自分が(現役時代の)試合の時の表情に戻っているなって。
最終公演では立ち見の方までいらっしゃったので、びっくりもしましたが、やはりうれしかったです。共演した一流のダンサーの方々をみていて感じたのは、体だけでこんなにも表現できるんだということでした。僕をきっかけに観に来られた方からも、「シェリルやダンサーたちのファンにもなった」「このダンサーたちと一緒にステージに立つところをまた観たい」という感想もいただけて、そういう点でもよかったなと思っています。
実は、心残りなこともありまして……。千秋楽の昼公演、オープニングが終わったところで捻挫をしてしまったんです。昼公演はそのままなんとかなったんですが、夜公演は結構辛くて最後の最後には気も抜けて歩けなくなってしまったんです。最後のステージで思いきりできなくて。なので、今年は怪我のないようにがんばります(笑)!
――高橋さんの声が流れる演出もありましたね。
ありましたね、すっごい嫌でした。ソロの前に流れるので「集中できない!」って(笑)。日程の後半には、慣れてきて耳に入れないようにしましたけれど、最初のころは恥ずかしくて……。
高橋大輔
スケーターとして、ダンサーとして
――フィギュアスケートとの違いから感じる、ダンスの難しさはありますか?
“人と組む”。これがまず初めてでした。氷の上で軽くならまだしも、いきなり(スケートシューズを)脱いで舞台の上で人とがっつり呼吸を合わせる。毎日、違うんです。相手も違いますし、僕も違うし、舞台の流れや絡みも毎日違う。それに対応していくという経験は、新鮮であり難しいところでもありました。
舞台の端まで行かないといけないという時、リンクではスピード感というものを出せるのですが、舞台の場合、自分が思っている以上に体を大きく動かさないと、なかなか端までたどりつけない。けれど、大きく動きすぎると今度はバランスを崩して次の動きに影響する。スケート靴を履いている時は、エッジが倒れる分だけ体を大きく使えましたが、スケート靴を脱いでしまうと、足首だけでは角度が弱い分、反りきれないんです。僕は体が硬いので。陸で演じるには、柔軟性が必要だなと思いました。
他にも、ぴたっと止まらないといけない、つま先のことを考えないといけないとか、歩くというのも難しかったです。「きれいに滑る」は考えてきましたが、「きれいに歩く」って考えたことがなかったので。最後まで、歩くのは慣れませんでしたね。ふつうにゆっくり歩く、というのが一番難しかったかもしれません。
高橋大輔
一流の仲間を信じ、次の挑戦へ
――再演のオファーがあった時のお気持ちを伺えますでしょうか。
悩みました。やりたい気持ちはあったんですが、2回目というプレッシャーに自分が勝てるかなと。前回以上にいいものができるかな? いや、準備していない、できない、このままやっていいんだろうか、1回目の成功のまま終えた方がいいんだろうか……とか。自分のことばかりになりますが(笑)、結構悩みましたね。
――それでもご出演を決意されたきっかけ、あるいは、高橋さんの背中を押したものは?
前回メンバーにあった時、シェリルや、一流の振付師のポール(・モレンテ)、ジェリ(・スロッター)たちが「2回目をやる」と言っているのは、一流の舞台を手がけてきた経験から上手くいくという自信があるからこそ言ってくれているんだろうなと感じたんです。それならば僕がどうこうではなく、絶対成功するのだろうと思いました。
そこを信用してやれば、結果もいいものになるだろうと信じて、最終的にはそこでもう1回やってみようと決めました。
高橋大輔
――シェリルさんはどんな方ですか?
面倒見がよく、頼れる女性という印象です。稽古がはじまると、ダンサーの顔になってパフォーマンスに集中されるのですが、それでもみんなの目と声を大事にしてフレキシブルにチャレンジされる方です。あと、優しいですね。前回の稽古中、シェリルに限らずダンサーの皆さんがすごく褒めて励ましてくれて「逆に、もう言わないで!」みたいな(笑)。
――印象に残っている褒め言葉はありますか?
それが結構、毎回褒めてくれたんです(笑)。印象に残っているのは「プロフェッショナルなダンサーでないことはわかっている。けれども、表現においては素晴らしいものをもっている」と言ってくれました。スケーターの中で表現を評価してもらったことはありましたが、まったく違う世界の、世界中のトップレベルの表現者が集まるアメリカで活躍されているシェリルさんにそう言っていただけたことは、自信になりましたし、自信にしていかないといけないなと思いました。それでも僕が「大丈夫かなぁ」と言っていたから、皆さんが励まし続けてくれていたのですが(笑)。
高橋大輔
――6月の公演に向けて、なにか準備はされていますか?
ヨガをはじめました! 時間をみつけて、ホットヨガに。強引に柔軟性をつけようと思っています。あとは、リフトもあるので上半身を鍛えたいです。シングルスケーターって、背筋はよく使いますが、回転の細い軸を作るためにも上半身はそんなには鍛えないんです。ですが、ダンサーとしてシェリルを抱えた時に、カッコよさを出せるように、体幹を鍛えておこうと思います。
―ー最後に、この作品への意気込みをお聞かせください。
ダブル主演という形で出番も増えますし、ダンサーの数も増え、前回よりもパワーアップした舞台をお見せできると思います。愛をテーマにストーリーも素晴らしい作品です。もう1回みたいな、何度もみたいなという気持ちを持って帰っていただけるような舞台にできるように、前回よりも気合を入れてがんばります。一生懸命、全力で、舞台を成功させたいと思います。
インタビュー・文・撮影=塚田史香