ミュージカルデビュー10周年、ミュージカル・コンサートを開催する中井智彦にインタビュー
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中井智彦
劇団四季『オペラ座の怪人』『美女と野獣』などに出演し、確かな歌唱力を武器にさまざまなステージで活躍する中井智彦が4月8日、ヤマハエレクトーンシティ渋谷で『中井智彦コンサート-I Live Musical!-』を行う。2007年に『レ・ミゼラブル』でミュージカルデビューして10年。節目の年に満を持して贈るミュージカル・コンサートだ。新たな挑戦として楽曲に向き合っているという中井にとってミュージカルとは? 歌にかける熱い思いを語ってもらった。
――今回、ミュージカルナンバーだけを集めたコンサートを企画されたのはなぜですか。
ソロ活動をスタートさせた昨年は自分で創作したり、ポップスなどスタンダード曲を集めたカバーアルバムをつくるなど、挑戦の年と位置付けていました。ぼくは歌に生きてきた。「じゃあ、なぜ歌いたいか」を問いかける一年でもありました。そして、ぼくにとって今の歌の原点は何かを考えたとき、2007年に『レ・ミゼラブル』でミュージカルデビューしたのが始まりだったと思い出したのです。今年はそこから10周年。まさに、ミュージカルと一緒に歩み続けた10年でした。10周年に、自分を育ててくれたミュージカルに正面から向き合うという思いから、『I Live Musical!』と名付け、ミュージカル・コンサートをやろうと思ったんです。
――新たにミュージカルナンバーに向き合うコンサートですね。どんな楽曲を歌われるか教えていただいてもいいですか。
もうね、盛りだくさんですよ! ぼくが歌いたかった曲ばかりです。『ウエストサイド物語』に出演はしていないのですが、「Something’s Coming 」や「Maria」はとても歌いたかった曲。ソロライブではピアノ弾き語りもやらせていただいていますが、『ウエストサイド物語』の曲は弾き語りでは無理なんです。ピアノの手と歌の動きが全く違うので。今回は宮﨑誠さんに参加いただき伴奏者と歌うことにも挑戦します。女性のナンバーも歌いたくて、『マイ・フェア・レディ』から「Show Me」を選びました。舞台を観たとき、自分の声やキャラクターだとヒギンズ教授なのでしょうが、なぜか女性であるイライザの生き方にとても惹かれたんです。今回は中井が歌ったらどの様に感じてもらえるのか、そこに挑戦してみたいと思います。
中井智彦
――出演されたミュージカル作品からのナンバーはありますか?
劇団四季でのデビュー作『オペラ座の怪人』から「All I Ask Of You」をひとりで歌おうと思っています。デュエット曲ですが、ソロにアレンジします。コンサート形式のときは、物語のワンシーンを思い起こさせるような、本番から抜け出てきたような歌い方と、その一曲に全く違うアプローチで向き合う方法があると思います。「All I Ask Of You」はふたりもどかしい愛のデュエットです。曲の中ではアイ・ラブ・ユーはいわなくて、でもキスはしている(笑)。それをひとりの男性として、愛のもどかしさを歌う感じになるかなと思います。一方で『美女と野獣』の「愛せぬならば」はビーストのまま、直球で歌いますよ。
――特別ゲストは劇団四季出身の秋夢乃さんですね。四季時代には共演はありませんでしたが……。
実は、『リトルマーメイド』の稽古ではご一緒したのですが、その稽古がとても楽しかったんです。彼女はある意味天真爛漫で真っ直ぐ。そんな彼女のエネルギーを尊敬します。常に一生懸命で真正面から向き合う姿勢は見習うものがありますね。今回『リトルマーメイド』から秋さんのソロで「Part of your world」、そして僕のソロで「Her Voice」を歌う予定です。
――音楽監督の宮﨑誠さんは数々のミュージカル・コンサートでもご活躍で、エレクトーンで見事なオーケストレーションをされていますね。
俳優の息をしっかり読んでくださる方なんです。オーケストレーションも、エレクトーンならではの音を持っている。誠さんに出会って、僕はエレクトーンへのイメージが変わりました。今回はエレクトーンとピアノのセッションもやりますよ。誠さんはミュージカルナンバーをたくさん手がけていらっしゃるので、『美女と野獣』などは本家本元の方向で。僕もアイデアやリクエストをたくさん出させて頂いてまして。例えば、この曲はここから弾き語りが入るからこいういう音をこう出してほしいとか、僕が鍵盤の右手を弾くので、このタイミングで左手で入ってきてほしいとか。挑戦したいと思うことを受け止めてくださって、すごくありがたいです。
中井智彦
――昨年7月の『中井智彦 Premium Show vol.1』では構成・演出的な部分も挑戦されましたね。今回は演出的な視点はどうなりますか。
ここで踊ったり動いたりなどの演出ではなく、今回はこの曲をどう伝えたいかに特化しています。『ウエストサイド物語』で自分がトニーならこう表現したいとか、「Show me」は誠さんのエネルギーとぶつかりつつ、僕の感じる恋愛観をそのまま出して歌ってみようとか。ほかにも、『Closer Than Ever』というオフブロードウェイミュージカルの中の「If I Sing」という曲が好きでよく歌っているのですが、これも誠さんとコラボでやります。自分自身を見つめながら歌っていると芽生えてくる思いがあって、それを表現しようと思っています。
――今回の稽古でミュージカルと改めて出会い直してみて、中井さんにとってミュージカルはどういう存在になっていますか。
ミュージカルを探れば探るほど、改めて僕は古いミュージカルが好きなんだなと気づかされています。先日たまたまジーン・ケリーの映像を観る機会があって、すごく素敵だったんです。歌いあげるのではない伝え方もオシャレですよね。一方で、トニー賞の授賞式のパフォーマンスで観た『南太平洋』のリチャード・ロジャースの楽曲もすばらしい。声を聴かせるだけではない、惹きつける力があればあるほど楽曲は生きてくる。とにかく、いいミュージカルに出会いたい! 時代とともにミュージカルも変わるけれど、僕だったらどう歌うかということを、表現者としてずっと探求していきたい。ミュージカルの曲、そうではない曲、そのふたつの歌の道が今すごく面白いんです。歌と出会うたびに、新しい扉が開かれています。
中井智彦
歌の話になると、どんどん前のめりになり、瞳が輝き出す中井。古今東西、さまざまなミュージカルの話題はつきることがなく、コンサート「I Live Musical!」の話からどんどん広がっていった。音楽への愛をただ好きだけでは終わらせない探求心、その作業をとても楽しむ姿勢に、今後の幅広い活躍が楽しみになった。
取材・文:田窪桜子 写真撮影:安藤光夫
■日時:2017年4月8日(土) 15:30開場/16:00開演
■会場:ヤマハエレクトーンシティ渋谷
■出演:中井智彦/秋夢乃(特別ゲスト)/宮﨑誠(音楽監督/エレクトーン)
■プログラム(予定):
Beauty And The Beast/愛せぬならば(美女と野獣)、All I Ask of You(オペラ座の怪人)、Maria(ウェストサイド物語)、Stars(レミゼラブル)他
■公式サイト:https://www.nakaitomohiko.jp/