レイ・チェン 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル 若き名手が再びバッハに挑む
2017.3.19
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レイ・チェン
レイ・チェンの名前を私たちが知ったのは、2009年のエリザベート王妃国際音楽コンクール(ブリュッセル)で優勝した時だったと思う。しかし、それ以前から彼はメニューイン・ヴァイオリン・コンクールで優勝し、あのマキシム・ヴェンゲーロフに認められて活躍を開始するなど、すでに国際的なキャリアを築いていた。
1989年台湾生まれ。4歳の時に鈴木メソッドでヴァイオリンを始め、移住したオーストラリアで8歳にしてオーケストラと共演。2005年にはアメリカのカーティス音楽院に入学し、アーロン・ロザンドの元で研鑽を積んだ。エリザベート王妃国際コンクールで優勝したのはまだ20歳の時だったのである。
10年に来日した時の演奏会はいずれも絶賛されたが、翌11年の6月にトッパンホールでJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン曲の全曲演奏を行い、その評価をさらに高いものにした。そして今年、再びバッハの無伴奏曲全曲の演奏会を行う。会場はサントリーホール(大ホール)。ちなみにサントリーホールは2月上旬から8月一杯は改修のために休館しているので、レイ・チェンのコンサートが行われる9月には改修後の新しい響きも味わうことができるだろう。
素晴らしいテクニックの持ち主であるレイ・チェンだが、それに溺れること無く、音楽的な観察力を研ぎすませ、立体的な音楽の世界を展開して見せてくれる。見事な構築力を感じさせる彼のバッハを聴くのが楽しみである。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ 2017年3月号から)