高橋優 『映画 クレヨンしんちゃん』主題歌「ロードムービー」はアルバムやツアーともリンクしている!?
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高橋 優 撮影=北岡一浩
目下、最新アルバム『来し方行く末』に伴う全国ツアー中の高橋 優。リリース前には“全曲、遺作でもいい”というほどの熱量を注ぎ込んだと話していた彼のニューシングルは、そこから少し肩の力が抜けた、繋がりの物語を描いた「ロードムービー」。なんと自身もジャストな世代だというアニメ『クレヨンしんちゃん』の今春公開『映画 クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』の主題歌として4月15日から全国でロードショーが始まる。奇しくもツアーの終盤にこのシングルのリリースも重なるというわけで、続行中のツアー、そしてニューシングルがいかに作用しているのか? についても訊いてみた。
ほんの少しだけ歌い続けさせてもらったおかげで、ほんの少しだけですけど、“怒り”ではない表現も選択できるようになって来てます。
――『来し方行く末』リリースタイミングの取材のときは、作品が出来立てでまだ俯瞰で話せる状態じゃなかったと思うので。改めて『来し方行く末』はどういうアルバムになったか聞かせてもらえますか?
歌うのが大変な曲ばかり作ったなと思いましたね(笑)。ハイトーンが多いんですよ。これ完全に技術的なお話なんですけど、何か表現をする上でハイトーンが必要だったんだと思うんですけど、どの曲も本当に高くて。結果、いま『来し方行く末』のツアー中、禁酒してるんですよ。おかげでフィジカル面は非常に健康になりましたし、痩せました(笑)。
――じゃあ制作中はキーが高いなとか思ってなかったと?
いつになく葛藤してたんですよね。音程どうこうの問題を考えりゃよかったのに、そこにまで考えが及ばないぐらい、メッセージとかどんな歌詞を書くかってことの方が重要になってたので。結果、ライブのことまで考えないで作っちゃったんです。でもそれぐらい心の叫びというか、自分のいま思ってることをアルバムの中で素直に叫んだんだなと思ったんですよ。でもなんか、今まで歩いたきた道と、これから歩いて行く道という意味合いのタイトルのアルバムを出せたということは、多分、自分の精神状態的にはすごくいいことだったんだろうなとは思ってます。
高橋 優 撮影=北岡一浩
――そんな中、映画『クレヨンしんちゃん 襲来!! 宇宙人シリリ』の主題歌でもあるニューシングルがリリースされます。これはどういう経緯で制作されたんですか?
最初は、25周年記念でクレヨンしんちゃんの映画を作るので、その主題歌をやっていただけませんか?というお話をいただいて、僕的にはすごく嬉しいお話で。監督やクレヨンしんちゃんサイドの方とお話しさせてもらって、今回は「ロードムービーを作ろうと思ってます。しんちゃんと宇宙人のシリリが日本縦断するお話なんですよ」というのをお聞きして。そこで一つ“ロードムービー”というキーワードが出てたんですね。その後、台本をすぐ読ませてもらったら結構、異文化交流じゃないけど、全くもって姿形の違う存在としんちゃんが会話をする、コミュニケーションをとるっていう。その、全く姿形が違う存在を、例えば黒人とかアラブ系の人にしたら一気に生々しい話になっちゃって、子供向けじゃなくなると、監督がおっしゃってて。そこをあえてポップにする意味で、宇宙人っていうものにしてファニーな感じにしたいっていうお話しをされてたのがすごく僕の中で印象的で。台本の中で、飛んでいる鳥を見ながらしんちゃんが、隣にいるシリリに対して「シリリの星でも鳥は飛ぶの?」って聞くシーンがあるんですけど、僕、そのシーンが一番好きなんですね。姿形が違う時点で、もう偏見とかが始まるし、気持ちも何もかもが違うみたいなイメージがあるけど、夕日を見たら綺麗って思う感情とか、根本のところで思ってる気持ちっていうのは似てるんじゃないかな? みたいなことを台本の中に垣間見させてもらったような気がしていて。その、自分ではない誰かとのつながりのお話と、そういう人たちへ向けてなのか、そういう人たちと共になのか、歩める旅っていうことが二つ大きなテーマになって、曲作りに入っていきました。
――“ロードムービー”というところに素直に書いてらっしゃるんですね。
ええ。今回は映画の内容と、僕自身が『来し方行く末』っていうアルバムを携えてのツアー中、旅の途中だったということもあって、ツアーのステージに向かうまでの道のりとかとリンクしたんですね。だいたい週末なんですよね、ツアーがあるのが。ということは、平日は割と家にいたりして。よく、土日が一週間の中の楽しみなんだけど、月曜日から金曜日まではちょっと死人みたいなね……死人は言い過ぎですけど、“頑張らなきゃな……”みたいな価値観が一般的じゃないですか? そういう中で、僕はどっちの方を歌いたいかっていうと月~金の方で。平坦な道のりなのか、辛い日々という風に例えられる日々なのか。その時間帯にも一緒に戦ってる仲間がいたりとか、共に歩んでる誰かがいたり、会えないけど思ってる人がいる時間っていうのはすごく価値があるものなんじゃないかな?っていうようなことを今回は歌いたいなと思いました。
――月~金はどうしても“しんどいのは自分だけ”みたいな気持ちなりがちだし、電車に乗ってても、他の人のことは見てないですし。
今はね。どんどん便利なツールが増えてますから。他の人のことを見なくてもよくなってると思うんですよ。でもそういう中でイヤホンをとったり、ケータイをバッグの中にしまったり、電源を切ったりしている時間に、誰のことを思い浮かべるか、誰と会いたい、誰とご飯を食べようかと思う時間って、結構尊いし、それは昔から尊いままなんですよね。そこを変に埋めてしまってる方が不自然なような気はしてるんですよね。ケータイとかで。
――じゃあ、しんちゃんから派生して、現代的な問題まで?
(笑)。それ、ちょっと僕の悪い癖なんですよね。なんでも自分の日常生活に照らし合せちゃうというか。僕自身がそういう弱い部分を持ってる人間なので、何かっていうとすぐケータイ見ちゃったりとか、ツイッター開いてエゴサ始めちゃったりとかして、勝手に一人で傷ついたり、寂しい気持ちになったり、都合のいい言葉を見つけて救われたような気持ちになったりしてるっていう、まさに現代っぽい日々を僕自身も生きてる実感を持つ日があるんです。でも、その実感を持った直後にそのまんま放っとくことは簡単なんだけど、あえてそこで“いや、ちょっと待てよ”と思って、急に電車を乗り継いで田舎の方に行っちゃうとか、友達に急にアポ取って会いに行ったりすると、そこに新しい風が吹くんですよね。“自分、自分”てならずに。なんかその繋がりの方に注目していきたいな、1回きりの人生では。
高橋 優 撮影=北岡一浩
ツアーのない日はルーティンワークのように、ジョギングして、スーパーで買い物して、鍋作って食べて。デザートに最中の匂いを30分嗅ぐ、みたいな。
――ところで高橋さんは、しんちゃんジャストな世代ということで。どの主題歌が思い出深いですか?
やっぱり僕は一番最初のオープニングテーマですね。あれのサウンドトラックというか、“しんちゃんアルバム”みたいのを買って、それをずっと聴いてました(笑)。あと、そのアルバムの中に「北埼玉ブルース」っていう野原ひろしがワンコーラスまるまる一人で歌ってる曲があるんですけど、野原ひろしって僕と同じ秋田県出身なんですよ。だからすごいシンパシーを感じて、ずっとその歌を聴いてました。
――じゃあ結構、音楽の原体験の一つですか?
原体験になってると思います。多分、B’zとかと並んで、しんちゃんのアルバムは実家にあると思います。
――素晴らしい。そういう作品の仕事ができるって、アーティスト冥利ですね。
そうなんですよね。そういう嬉しい気持ちを映画館までとっておこうと思ってます。テンションは高いんですけど、あんまり自分の音楽活動に私情を挟んじゃうと良くなった試しがなくて。だから、曲を作るときはあくまでも台本の内容と自分の『来し方行く末』の次なる一歩、みたいなことをすごく考えながら書いたんです。映画が無事に上映されて、“見たよー”なんていう感想聞き始めてから、“あ~、俺、しんちゃんの主題歌やったんだ”って喜べる日が来ると思って、いまはまだ冷静な気持ちでいます。
――そして、高橋さんのシングルは毎回、いろんな趣向が凝らされているわけで。まずカップリングの「life song」はタイトルそのまんまって感じですね。
そうなんですよ。「ロードムービー」を書く少し前に書いた曲なんですけど。……時々やるんですけど、もうほんとにそのとき思ったことをそのとき歌うっていう、デビュー当時の自分のやり方っていうか、半ば即興のように歌うという。なんか特別なことが起こったから歌うっていうのもなんか違うなと思い始めてて。なんてことない日々の中に価値を見出すっていうのが、音楽のいいとこの一つだなって思ってて。で、僕のライブっていうのはまさしく、さっきもちょっと話しましたけど、月曜日から金曜日のツアーのない日はほんと一人で、もうルーティンワークのように、何時から何時までジョギングして、何時から何時までスーパーで買い物して、鍋の具材を買ってきて、一人で鍋作ってそれを一人で食べて。あとはデザートに最中の匂いを30分嗅ぐ、みたいな。
――(笑)。
甘いものの匂いが好きなんですよ。食べたらなくなっちゃうから、なくなるまでの匂いを嗅いでるのが至福の時なんです(笑)。側から見たら地味とか、ちょっと変とか言われるかもしれないんですけど、なんてことない自分の日々をこうやって話してみても、ちょっとクスってなったりとか“何それ?”っていうのは、多分、みんなにあると思うんですよ。何時に起きて、これやってこれやって、って言ったら“え? いま何やってるって言った?”っていうようなことが。それは、そこに別にラブがなくても面白いものになるんじゃないかと思って。自分のありのままを歌ってみようと思って書いたのが「life song」なんです。
――これから歌を歌っていくっていうことに対する長期展望ですよね。どんなことでも歌うぞっていう気持ちの現れというか。
まさしく、その通りです。はい。
高橋 優 撮影=北岡一浩
―― 一転、「BLUE」はすごくソリッドな曲で。
この曲はメジャーデビューさせてもらう前のインディーズで『無言の暴力』っていうものすごい暗いアルバムを自主制作で作ってたんですけど、その自主制作CDの中に入ってた楽曲なんです。リスナーの方から「『無言の暴力』という音源の再音源化はないのですか?」という問い合わせが割ときていて、中でも「BLUE」っていう曲をまた聴きたいですっていうような話がありつつ。またそれとは別に「BLUE」はスタッフの間でも人気楽曲だったようで、何かどこかでシングルとかにできないものかという話がありまして。で、今まで2回ぐらいバンドアレンジにチャレンジしたんですけど、しっくりこなかったんです。でもなんか、いま一周したのかなというか。メジャーデビューして5周年記念のベスト盤も出して、いままたツアーも回っているけれども、7年目の段階で「BLUE」っていう曲を書いてからもう10年以上経ってますし、何かが一周したような感じがあるから、逆にもうなんも変えずに『無言の暴力』の時と同じ状況、一発録りみたいにやったやつがシングルの中に入ってるっていうのも、意外と「BLUE」の答えだったんじゃないかな? っていうことになっていって。僕もそのアイデアはすごく賛成で、“あ、それいいっすね”って、今回弾き語りをやって。セルフカバーみたいな気持ちでやらせてもらいました。
――『無言の暴力』の時と気持ちで違うところはありましたか?
それはもうだいぶ違いましたね。作った時や、『無言の暴力』を携えて路上で歌ってた頃は、怒り、悲しみ、疑いとかそういう負の感情が渦巻いてるような気持ちだったんです。歌ってちょっと晴れるみたいな。でもいまは、そういう自分と対峙してるような感じでした。“うわ、怒ってるねー!”みたいな。
――俯瞰で見ている?
ほんの少しだけ歌い続けさせてもらったおかげで、ほんの少しだけですけど、今おっしゃられたように俯瞰というか、“怒り”ではない表現も選択できるようになって来てます。例えば“熱い”の言い方も、あえて怒らない歌い方とか、悲しみとか何個かの表情の声で表現できそうっていうのがあったので。歌ってて面白かったです。
――そして亀田誠治さんとの恒例“メガネツインズ”は、「ドライアイ」という曲で。メガネというか、目、ですね。
もう“目まわり”全般ということで。メガネツインズって必ずラブソングなんですね、今のところ。今回の「ドライアイ」は<君とデートして君を見たいんだけど、ドライアイだからあくびしてるんだよ><デートがつまんないからあくびしてるんじゃないんだよ>っていう、男の切ない気持ちを歌にしたんです。
――いいコンビですよ。
亀田さんが僕のとてつもなく低い視線に合わせてくださってるんです。あの人はなんでも許容してアウトプットできる方なので。僕とやるときだけは歌を歌ってくださるんですよ。ベースを置いてくださるというか(笑)。ベーシスト亀田誠治はすごいっていうのはわかりつつ、僕は亀田さんにセリフまで言ってもらうんですよ(笑)。
――(笑)。そこは確かに聴きどころだと思います。盛りだくさんなシングルもリリースされ、ツアーも後半に突入ですね。
4月はもうアリーナ編に突入していくので。このツアーを横浜アリーナなどで表現した時にどういった感じになるのかもとても楽しみです。
取材・文=石角友香 撮影=北岡一浩
2017年4月12日発売
高橋優
◆通常盤 4曲入りCD品番:WPCL-12609 価格:1,200円(税抜)
1.ロードムービー
2.life song
3.BLUE(弾き語り)
4.ドライアイ/メガネツインズ(高橋 優&亀田誠治)
*M4はクレヨンしんちゃん盤には未収録
◆クレヨンしんちゃん盤 3曲入りCD 品番:WPCL-12608 価格:1,000円(税抜)
※生産限定 7インチジャケット+しんちゃんコラボステッカー封入
1.ロードムービー
2.life song
3.BLUE(弾き語り)
◆期間生産限定盤 4曲入りCD+DVD 品番:WPZL-31280/1 価格:2,000円(税抜)
1.ロードムービー
2.life song
3.BLUE(弾き語り)
4.ドライアイ/メガネツインズ(高橋 優&亀田誠治)
*M4はクレヨンしんちゃん盤には未収録
<特典DVD>
1. 「ロードムービー」MV+メイキング
2. 高橋 優×林卓スペシャルBIG対談
・ハヤタクどっきりマル秘報告
・高橋どっきりマル秘報告その2?
3. 林卓デビュー曲「オレオレオーレ」MV+爆笑メイキング
<配信情報>
「ロードムービー」
2017年3月24日配信
※特典:iTunesでしか入手できないスペシャル映像【「ロードムービー」独占インタビュー(特典映像)】
4/16(日)大阪・大阪城ホール(SOLD OUT)
https://www.takahashiyu.com/live_cat/tour/
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6,500円(税込)
※
※全席指定 / 4歳以上
原作:臼井儀人(らくだ社)「月刊まんがタウン」(双葉社)連載中 テレビ朝日系列で放送中
監督/脚本:橋本 昌和
製作:シンエイ動画・テレビ朝日・ADK・双葉社
配給:東宝
2017年4月15日(土)全国東宝系にてロードショー