ゴスペラーズの最新アルバム『Soul Renaissance』にみる5人の現在と原点
-
ポスト -
シェア - 送る
ゴスペラーズ
およそ2年半ぶりとなるゴスペラーズの最新アルバム『Soul Renaissance』が届けられた。J-POPシーンに足場を置きながら、彼らの原点であるソウル・ミュージックを歌う本作では、2017年現在の彼ら自身とこれまでの歩みとが絶妙に溶け合っている。“再生・復活”と冠されたアルバムはいかにして生まれたのか。5人に聞いた。
――デビュー20周年時に発表した『The Gospellers Now』以来、約2年半ぶりのオリジナル・アルバム『Soul Renaissance』からは、自分たちの原点であるソウル・ミュージックを、今の自分たちのモードで思う存分5人が楽しんでいる姿が見えてきました。
村上てつや:今の自分たちはこういう感じだよって、いろんな世代の人に差し出せるアルバムになりましたね。2017年のJ-POPシーンの中でも、このアルバムは結構変わったものになるんじゃないかと思います。
酒井雄二:ま、2017年はまだ始まったばかりですけどね(笑)。
村上:いや、早くもそう言っちゃいたくなるくらいの自信作ができたぞっていう、ね。
北山陽一:今回のアルバムは、作る前からいろんなことにチャレンジしようという話をしていて。それは20周年ツアーをやったとき、自分たちが思った以上に、「こんなにハモれるんだ」「こんなに歌えるんだ」って実感する場面が多かったからなんです。そこでまたグループとしての壁をまたひとつ越えることができたことで、次はどういうアルバムを作るんだろう、次はどういうハードルを設けて、それを自分たちが越えていくんだろうっていう、ワクワクしている自分たちがこのアルバムのスタート時点にいましたね。
黒沢 薫:考え抜いた結果、今までと違うところに行ってみよう、違うステップに踏み出してみようっていう感じは、自分たちとしてはまったくなかったよね。
村上:僕らのようなグループって、実はJ-POPシーンになかなかいないんですよ。男5人のボーカルグループスタイルで、20年以上も続けていて、しかもメジャーシーンという山を登り続けてきたという自負も自分たちにも多少はあって。いままで自分たちがやってきた僕ららしさというものも、その時々の自分たちの音楽的なモードが反映させてきた中で、自分たちの原点でもあるソウル・ミュージックを今の自分たちのモードで、いい意味で上書きしてみようっていう感じで作ってみました。
安岡 優:これまで蓄積してきた僕らならではの雰囲気、このグループならではの空気感を持ったやりとりを含めて、気負いなくいろんなことにチャレンジできましたね。
北山:何曲かで自分たちより年下の作家さんと組んだんですけど、僕らの音楽を聞いてくれていて、このグループ感に刺さってくれていた人たちと一緒にやってみたことによって、新しい血が入ったし、もっと自分たちもいろんなことができるなって。
黒沢:自分たちでは投げない球を投げられたので、グループの拡張がもっとできるんじゃないかという手ごたえがありましたね。
村上:若い世代がゴスペラーズで遊んでくれたのが、僕らもすごく嬉しかったし。
安岡:でもね、最初の曲出しの時は作家陣の曲が優勢だったんですよ。これは俺らも頑張らないと!ってけしかけられた気がしたよね?
村上:こりゃ俺らも相当イイ曲を書かないとまずいと思った(笑)。そこで、酒井が「5人それぞれが書くのもいいんだけど、共作で書くのもいいんじゃない?」って提案してきて。
黒沢:5人が束になって、若い作家さんに挑んでいったわけです(笑)。
北山:僕らは最大公約数じゃなくて、最小公倍数的というか。自分が今持っているワクワクにどれだけ他のメンバーを巻き込んで、グループ自体を広げていくか?というところを最初からやってきたので、今作で共作した楽曲ではまた広げることができたと思ってます。
――懐古的になることは決して悪いことではないけれど、今回のアルバムはどの部分にも懐古的にならないスキルと空気感がちゃんと注入されています。
村上:象徴的なのは6曲目の「Recycle Love」かな。もともと多くの人たちは“アカペラ”“ハーモニー”“コーラス”という言葉に静的なイメージを持っていたと思うんですけど、僕らはデビューした時からアカペラを静的なものから動的なものにして、躍動感のあるものとして世に送り出すというトライをしてきたんです。この楽曲では今の時代だからできるやり方としてルーパー(声や楽器の音をループさせる機材)を使って、こんな伝え方もできるのかと感じてもらえると思いますね。作った酒井はかなり大変だったと思うけど。
黒沢:プレイヤーとしてのスキルも必要な楽曲だからね。
酒井:大変ではあったけど、楽しかったですね。自分たちの思いもテクニックも再構築できたと思いますし。
村上:うん。今の自分たちを捉えて遊ぶことができた曲になったと思う。
ゴスペラーズ・安岡 優
――打ち込みやEDMをやっても、ゴスペラーズの歌詞は決して英語に逃げていないといいますか。
安岡:歌う以上、メロディに歌詞を乗せるわけで。そこで日本語を大事にしたいというのは、デビュー当時から大事にしてきたところですね。なるべく英語に逃げないというところをずっと守ってきたことが、この歌詞にも繋がっていると思います。
――5曲目「Hide and Seek feat. RHYMESTER」はRHYMESTERとのコラボナンバーです。
酒井:RHYMESTERとは、15年前に出した僕らのアルバム『FRENZY』に収録されている「ポーカーフェイス」で共演していて。そもそも僕らを佐藤善雄さんに紹介してくれたのが、RHYMESTERの宇多丸さんなんですよ。
安岡:RHYMESTERは大学の先輩であり、盟友であり。
黒沢:僕らがRHYMESTERのアルバムで1曲参加している曲もあるんですけど、イベントなどでRHYMESTERとセッションをやる時は、その曲か「ポーカーフェイス」をやるかしかなかった状況が続いていたので、そろそろ新しい曲を作らなきゃねっていう話もずっとしていて。このアルバムでようやく実現することができました。
――お互いに今も活動をしているからこそ、また次のタイミングが訪れたと言っていいでしょうね。
黒沢:そうですね。長くやっている人にしか訪れないチャンスっていうのは確かにあると思います。
安岡:彼らは日本のHIP-HOPシーンにずっとあのポジションでい続けているし、クラブに行ったことのない世代にも影響を与えている。
村上:HIP-HOPは音楽のジャンルだけじゃなくカルチャーなんだというのをずっと体現できている。HIP-HOPゲームの中から飛び出ている存在ですから。
黒沢:このコラボのすごいところは、聴く人の世代を限定せず、全世代を捕まえているところじゃないかな。ドンピシャで全方位にハマった!と自負しています。
安岡:これまでいろんな音楽をやって来た中で、いろんな手法や引き出しが自分たちの中に増えてきたんですけど、僕らの原点であるソウル・ミュージックという窓口を通過することで、僕らにとっては常套句でも、若い世代の方には初めて聴くスタイルだったりする。それは単純にトラックの音色だったり、音楽のジャンルというだけじゃなく、日本語でここまで愛を濃く言っちゃっていいんだとか、歌でこんなエッチなことを言うのもありなんだとか(笑)。そういうところから興味を持っていただけても全然OKなんで(笑)。
酒井:どんなにエッチな歌詞でも、下品にはならないっていうところも、僕ららしさなんじゃないでしょうか。
安岡:僕らが聴いていたリアルタイムのアメリカのソウル・ミュージックを、日本語でカッコいい音楽としてやるにはどうしたらいいんだろう、日本語が持っているソウルのムードってなんだろうと探してきたことが、ここにきてまた結実したと思ってます。
――アルバムの1曲目にイントロ、中盤にインターを入れることで、アナログ・アルバムのような雰囲気も感じられます。
村上:僕らとしてはアナログ・アルバムを意識したわけではなくて。今回の「イントロ'17」「インター'17」もそうですけど、昔、僕らはタイトルに数字を付けるのをよくやっていたんです。90年代の特にR&B系の洋楽アルバムには、曲と曲の間に挟みこまれるイントロやインタールードが入っているものが多かったので、ソウル・ミュージック好きの素の自分たちを、そういう部分でも見せたくて。
安岡:「90年代で遊ぶ」というテーマもあったので、それをやるなら、アルバムというパッケージに必要なピースとして、イントロやインターは入れないとね~なんて、早い段階からみんなで言ってたし。
村上:とか言いながら、できたのはいちばん最後なんですけどね(笑)。
安岡:90年代ソウルミュージックのマナーみたいなものは、楽曲として捉えるというよりも、セクシーとかゴージャスとか、そういうシーンを音として入れることによって、アルバムを通し聞きしたときのムードが伝わるんですよね。アルバムは通して聞いて楽しむものだっていう時代のアルバムでは、よくやっていたことなんですよ。
――リアルタイムでその時代の音楽を聴いていたからこそ、自分たちのルーツをいい意味でおもしろがっている。
村上:ただ、とにかく懐古主義にならないようには気をつけました。
黒沢:まず、僕らがおもしろがりたかったっていうね。
酒井:楽しむことがいちばん大事ですから。
安岡:ホント、楽しかったな~。こんなのやってみようぜ!って感じで、サークルの部室にそれぞれが好きな音楽を持ち寄って騒いでいた時代の自分たちのように、レコーディング・スタジオに入ってましたもん。
ゴスペラーズ・黒沢 薫
――アルバムタイトルを『Soul Renaissance』にしようと決めた最大の理由は何ですか?
安岡:ソウルというワードを入れようっていうのは、みんなの中で共通意識としてあって。
北山:うん。ルネッサンスと付けたのも、ただ“再生・復活”するっていう言葉の意味だけを単純に捉える感じじゃなく、ね。
安岡:音楽や歌って、それこそ譜面通りに綺麗にまとめることもできてしまうけれど、人間が歌っている時って、譜面には書いてないものが体や声から、歌詞の間からあふれ出てくるような感じがあるんです。言葉として書かれている歌詞以上の歌が溢れているアルバムにしたかった――という思いを、ルネッサンス(再生・復活)という言葉に重ねています。
――4月22日からは千葉・松戸の森ホールを皮切りに7月末まで続く全国ツアーがスタートします。
安岡:あ、最初に言っておきますけど、RHYMESTERは付いてきません(笑)。
村上:彼らも忙しいしね。何十本も呼べないでしょ(笑)。
安岡:今回のアルバムはいろんな手法でやってますけど、基本的にライブで再現はできます。再現できるものCDで作るというスタンスを崩さずに、23年間やってきましたから。
黒沢:僕らの5つの口さえ揃ってれば、基本的に再現できます(笑)。
村上:バンドメンバーがちょっと今までと変わるので、若くて活きのいいバンドメンバーに刺激をどんどんもらおうと追ってますし、より躍動感を増した感じを楽しみにしてます。
安岡:このアルバムをきっかけにして、初めてゴスペラーズのライブに行ってみようと思ってくれる人にも今の僕らを見せたいし、今までの23年間の僕らも届けたい。いろんなゴスペラーズを知ってもらえるようなライブにしたいですね。
――ところで長いツアーを乗り切るためにしていることや、ツアー中に楽しみにしていることは?
安岡:さすがに5人一緒ではないんですけど、訪れた街をそれぞれが結構歩き回るんですよ。
黒沢:うん。結構うろうろしてるよね。昼に出る人あり夜に出かける人ありで(笑)。
安岡:東京や大阪のような大都市では、毎日どこかで誰かがライブをやってますけど、プロの歌手がライブをやるのは年10公演あるかないかくらいの街に行くと、街中の人が今日はこの街にゴスペラーズが来てるってことを知っていてくれるんですよ。お仕事でライブには行けないけど、今日は私の街で歌っているんだな~って思いながら過ごしてくれたりするのって、とても嬉しいことだなって思いますね。
酒井:僕、そういう話をしている人たちの背後で中華定食を食べていたことがあったんですよ(笑)。自分の背後で、ゴスペラーズが来てるらしいよ~って。それ、俺だから~って(笑)。
安岡:なんかね、そういう出来事も含めて、自分たちにまつわる話がこの街のあちこちで交わされているんだなって思うと、この街に来れてよかったな~って思うんですよね。
黒沢:体力維持のために各々やっていることはありますけど、今回は春夏のツアーなので、喉的には楽ですね。真冬だと寒いし乾燥してるしで、喉を暖めるまでが大変なので。今回の曲はキーが高いところを攻める曲が多いので、喉的にはいい時期のツアーです。
――北山さんは療養期間がありましたから、今こうして歌える喜び、ライブができる喜びを感じていらっしゃると思いますが。
北山:そうですね。嬉しくてきっと羽が生えるんじゃないかな(笑)。でも、ライブに来て下さる方に、あんなことがあったなんて、忘れてもらえるっていうのがいちばんというか。1曲目から、そんなこと忘れてた!って思ってもらうのが僕の目標ですね。
酒井:僕個人としては、持ち歩いて良し、備え付けて良しの新しいゲーム機が出ましたので、旅が苦痛じゃなくなりますね(笑)。
安岡:そうか、酒井さんは旅が苦痛なんですね(笑)。
酒井:いや、違うって! 移動という意味で旅って言ったの。日本語って難しいなぁ(苦笑)。
村上:ファンの方から、何月何日にゴスペラーズのライブに行く予定があることが、日々のモチベーションになるんですっていう話を聞くたびに、エンターテインメントに携わる人間として、ツアーに出かける上での喜びになっているんですよね。僕らの音楽と僕らの音楽を聞いてくれる人たちの間に、それにまつわることで楽しんでもらえる日々があるって、とても素敵だなって思います。
取材・文=松浦靖恵
発売中
デジパック仕様
特典映像:「私がゴスペラーズじゃなかったら~黒沢 薫 編~」
KSCL-2878~9 ¥3,500+税
【通常盤】(CD) KSCL-2880 ¥3,000+税
M1「イントロ’17」
M2「GOSWING」
M3「Dream Girl」
M4「All night & every night」
M5「Hide and Seek feat. RHYMESTER」
M6「Recycle Love」
M7「暁」
M8「インター’17」
M9「Deja Vu」
M10「Silent Blue」
M11「Let it shine」
M12「angel tree」
※森永製菓「小枝」 45周年企画コラボレーションソング
M13「Liquid Sky」
M14「Fly me to the disco ball」
※「よみうりランド ジュエルミネーション」 イメージソング
4/22(土)千葉・松戸森のホール OPEN 16:45 START 17:30
4/24(月)東京・オリンパスホール八王子 OPEN 17:45 START 18:30
4/26(水)神奈川県民ホール 大ホール OPEN 17:45 START 18:30
4/29(土・祝)福島・南相馬市民文化会館 ゆめはっと OPEN 16:45 START 17:30
4/30(日)山形・南陽市文化会館 OPEN 16:45 START 17:30
5/3(水・祝) なら100年会館 大ホール OPEN 16:45 START 17:30
5/4(木・祝)ロームシアター京都 メインホール OPEN 16:45 START 17:30
5/6(土)広島・上野学園ホール OPEN 16:45 START 17:30
5/7(日)兵庫・姫路市文化センター 大ホール OPEN 16:45 START 17:30
5/13(土)三重・伊勢市観光文化会館 OPEN 16:45 START 17:30
5/14(日)静岡市清水文化会館 マリナート 大ホール OPEN 16:45 START 17:30
5/18(木)埼玉・川口総合文化センター リリア(メインホール) OPEN 17:45 START 18:30
5/20(土)群馬・桐生市市民文化会館 シルクホール OPEN 16:45 START 17:30
5/21(日)茨城県立県民文化センター OPEN 16:45 START 17:30
5/27(土)石川・輪島市文化会館 OPEN 16:45 START 17:30
5/28(日)富山・オーバード・ホール OPEN 16:45 START 17:30
6/2(金)北海道・ニトリ文化ホール(さっぽろ芸術文化の館) OPEN 17:45 START 18:30
6/3(土)北海道・旭川市民文化会館 大ホール OPEN 16:45 START 17:30
6/10(土)岩手・大船渡市民文化会館 リアスホール OPEN 16:45 START 17:30
6/11(日)宮城・仙台サンプラザホール OPEN 16:45 START 17:30
6/17(土)愛媛・西条市総合文化会館 大ホール OPEN 16:45 START 17:30
6/18(日)レクザムホール(香川県県民ホール)・大ホール OPEN 16:45 START 17:30
6/24(土)鹿児島市民文化ホール 第一 OPEN 16:45 START 17:30 全席指定
6/25(日)宮崎市民文化ホール OPEN 16:45 START 17:30
7/1(土)大阪国際会議場(グランキューブ大阪) メインホール OPEN 16:45 START 17:30
7/2(日)大阪国際会議場(グランキューブ大阪) メインホール OPEN 15:45 START 16:30
7/8(土)東京国際フォーラム ホールA OPEN 16:30 START 17:30
7/9(日)東京国際フォーラム ホールA OPEN 15:30 START 16:30
7/15(土)名古屋国際会議場 センチュリーホール OPEN 16:45 START 17:30
7/16(日)名古屋国際会議場 センチュリーホール OPEN 15:45 START 16:30
7/22(土)長崎ブリックホール OPEN 16:45 START 17:30
7/23(日)福岡サンパレスホテル&ホール OPEN 16:45 START 17:30
7/29(土)島根・出雲市民会館 OPEN 16:45 START 17:30
7/30(日)岡山・倉敷市民会館 OPEN 16:45 START 17:30