“ウソツキの日”=エイプリルフールのLIQUIDROOMワンマンは、まさしく新章のプロローグだった
-
ポスト -
シェア - 送る
ウソツキ 撮影=山野浩司
USOTSUKA NIGHT 創世記 -ジェネシス- ~ウソツキが生まれた日~ 2017.4.1 LIQUIDROOM
毎年エイプリルフールの4月1日を“ウソツキの日”とし、ワンマンライブを行なっているウソツキ。昨年は渋谷プレジャープレジャーで『劇場版USOTSUKANIGHT』と題し、映画上映仕立てのライブを見せたものだったが、今年の“USOTSUKANIGHT”は恵比寿リキッドルームにて開催。タイトルは『USOTSUKA NIGHT 創世記 -ジェネシス- ~ウソツキが生まれた日~』という長いものだ。“創世記-ジェネシス-”って、まるで『猿の惑星』のようだなとボンヤリ考えながら、そうか、“惑星”か、そういえばウソツキの新作のタイトルは『惑星TOKYO』だ。ってことはつまり、その作品から始まる新章の、これはプロローグ的な意味を持つライブということなんだなと思いあたる。なるほどなるほど。
荘厳な雰囲気を醸し出すクラシックの曲が響くなかでライトが落ちると、まずはステージ向かって左横のスクリーンに映像が映し出される。メンバー4人の赤ちゃんの頃から幼少期、学生時代と、その成長を追った映像で、それぞれのあどけない顔が映される度に女性客から「かわいい~」という声があがって笑いも漏れる。ライブのサブタイトルに「ウソツキが生まれた日」とあったが、つまりこの映像はそのことを表してもいたわけだ。
ウソツキ 撮影=山野浩司
ひとりずつステージに出てきて位置につき、最後にボーカルの竹田昌和が登場。先頃公開された新作からのリード曲「惑星TOKYO」のMVと同じように、この日は全員が上下黒で揃えている。オープナーは約3年前の1stミニアルバムの表題曲「金星人に恋をした」で、観客たちは早くも手を挙げて前後に振りだした。続く2曲目はというと、なんといきなり次のアルバムに収録される新曲「夢のレシピ」で、その大胆さにちょっと驚きもしたが、しかしこのアップナンバーは手早くライブを加速させるのにもってこいだ。とりわけ林山拓斗のドラミングがスゴい。歌い終わると竹田は「早速新曲をやって、おいていくバンド、ウソツキです。ついてきてください」。そして一呼吸おき、「今日はエイプリルフールです。ウソをつける日なので、今日くらい言わせてください。“ひとつになろうぜ!”」と、いかにも彼らしい言い回しのなかに本心を潜り込ませ、続けて次の曲「ネガチブ」の一節を使ってコール&レスポンスも。「ネ・ガ・チブ、ネガチブ、ハイ!」とフッてレスポンスを要求しながら「そうでしょ、みなさんネガティブでしょ?!」と煽る。そこで繰り出した「ネガチブ」は、「夢のレシピ」からの流れにも相応しいスピード感とヒリヒリ感を有していて、まだ3曲目だというのに会場の温度はグっとあがっていったのだった。
「今日はあなたも、あなたも、全員ウソツキになって帰ってもらいたいと思います」と言い、「愛をこめて歌います。“一生分のラブレター”」と次の曲を紹介する竹田。「一生分のラブソングを書いた」と以前彼が言っていた去年発表のミニアルバムの表題曲と、同アルバムに収録の「ボーイミーツガール」、この2曲のウソツキ流ラブソングを続けて演奏すると、あたたかさと切なさの入り混じったような独特の空気が会場に広がる。そして切なさのほうの成分は、この季節に相応しいミディアムテンポの名曲「春風と風鈴」にも引き継がれていった。
ウソツキ 撮影=山野浩司
さて、ウソツキのライブにおいて、もっともわかりやすく観客とバンドとが一体になるのが、次に演奏された「旗揚げ運動」という曲。ギターの吉田健二が観客たちに振りのレクチャーをするのも毎度恒例だが、この日は「今日限定のニュー・バージョンを考えてきました」と彼が言い、まずは自ら手本を見せる。「右手。左手。両手。フリフリフリフリ。気をつけ。笑顔!」。これまで最後の動きは「肩!」だったが、そこを「笑顔」に変えたバージョンだ。そしてその「笑顔」の部分をベースの藤井浩太にむちゃぶり。藤井の満面の笑顔に大きな笑いが起こり、それに倣って今度は観客全員がメンバーたちに笑顔を返すという、なんともシュール……もとい、和やかな光景がそこに。こんなふうにみんなで楽しめる時間を必ず作るあたり、ライブは決して一方通行であってはならないという彼らなりの信条が感じられ、頼もしくも思えるのだった。
続いてはニューアルバムから、ウソツキ史上最高にファンキーな楽曲「人生イージーモード」を披露。そして疾走感を持ったバンドの代表曲のひとつ「水の中からソラ見てる」へ。この曲の終盤ではフリー・セッション的な展開となり、とりわけ吉田は最も得意とするブルージーなギター・ソロを弾きまくった。ライブはそれから「綿飴とりんご飴」「恋学者」と続き、スケール感を有したバラード「ピースする」へ。いつものように曲終わりで観客全員がピースした手を高く挙げる。壮観だ。
ウソツキ 撮影=山野浩司
そして、「全てのエイリアンたちに」と竹田が言い、ニューアルバムの表題曲にもなった新曲「惑星TOKYO」をここで。この曲はウソツキ史上、初めてエレクトロ・サウンドを取り入れたものなのだが、ライブにおいてはプリセット音と同期させつつ彼らの生演奏を強く前に押し出していく。ビートに乗せて、切迫した思い、祈りにも似た思いを歌にする竹田。その必死さが表れた声(ときどきそれは泣いているような声にもなる)と形相に、自分も観客の多くも引き込まれ、そして揺さぶられる。ダブっぽい音で空間が歪むようになる間奏部分では林山のドラムが重たく響き、竹田は「応答どうぞ」「聞こえていますか」と問いかけた。誰に? あの頃の自分に、だ。この新曲、思いの強さがまさしく4人の演奏にそのまま反映されていたという意味で、この日のハイライトのひとつとも言えるものであった。
ライブも終盤に突入し、疾走感ありの「過去から届いた光の手紙」では観客全員が手を挙げて前後に。そして本編最終曲「新木場発、銀河鉄道」終盤の演奏の爆発力たるや、それはもう凄まじいものだった。汽笛の音を何度も再現しながら前に出る吉田。かつてのギター・ヒーローのように背中にベースをまわして弾いたりもする藤井。重みとスピードのバランスを保たせながらもさらに熱が増していく林山のドラム。竹田もギターでそれに応え、4人の呼吸が完全にひとつになっていた。ウソツキは“歌もの”のバンドだと言われることが多く、もちろんそれも間違いではないのだが、しかしこうして4人が一塊となって演奏している様はどう見てもロックバンドとしか言いようのないものだ。しかも(意外に思う方もいるかもしれないが)相当男くさい。前作から新作の間に個々の演奏力が確実にアップしたこともあり、そうしたロック的表現の強度もまたグンと増したわけだ。
ウソツキ 撮影=山野浩司
鳴りやまない拍手に応え、この日から発売になったエイリアンTシャツに着替えたメンバーがステージに再登場。素の会話で場を和ませ&笑わせ、ワンマン・ツアーの東京公演の会場も発表したところで、そこからアンコールへ。「これはみんなに聴かれたくないなと思って作った曲なんですけど」と竹田が言い、その言葉に少し戸惑っている様子の観客たちに対してどこまでも正直になりながら、彼はアコギを弾いて歌い出した。新作『惑星TOKYO』の最後に収められた、とても重要なバラード「本当のこと」だ。観客たちに対しての自分。その関係性について書いたこの曲を歌い出したとき、確かに会場全体の空気が変わったのを感じた。そして彼の真摯で思いのこもった歌唱に、言葉に、みんなが耳を傾け、引き込まれていた。ウソツキの曲はライブで演奏されても言葉がはっきり聞き取れるのがよいところだが、とりわけこの曲の言葉は直接心の奥に響いてきた。そこにいた観客全員の胸に、その言葉は深く入っていったはずだ。
そして「最後はみんなで歌って終えようよ」「一緒に歌おう」。竹田のその言葉と共に始まった最後の最後はお馴染みの「ダル・セニョールの憂鬱」で、コーラス部分をみんなでシンガロング。あたたかな雰囲気に包まれながら、この日のライブは終了した。
ウソツキ 撮影=山野浩司
それにしてもワンマンを観るたびに思うことだが、やはりこのバンドはライブ全体の作り方がとてもうまい。物語的な流れがあり、楽しませどころと聞かせどころをバランスよく盛り込み、曲と曲との繋がりからもいろんな意味が読み取れる。とりわけこの日は2ndアルバム『惑星TOKYO』から披露された4曲がそれぞれの場所で強い印象を残し、それが挿み込まれることでライブ全体がよりドラマチックに感じられた、というのもある。
誰もが彼らの進化を感じることになるであろう素晴らしい新作『惑星TOKYO』がまもなく発売になり、それを携えたツアーがまた始まる。今から楽しみでしょうがない。
取材・文=内本順一 撮影=山野浩司
ウソツキ 撮影=山野浩司
4月12日リリース
『惑星TOKYO』
価格:¥2,500(+税)
<収録曲>
01.惑星TOKYO
02.人生イージーモード
03.一生分のラブレター
04.コンプレクスにキスをして
05.どうかremember me
06.地下鉄タイムトラベル
07.ハローヒーロー
08.心入居
09.夢のレシピ
10.夢屋敷
11.本当のこと