35年前の北村想の名作『ザ・シェルター』を、名古屋でperky pat presentsが上演
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左から・加藤智宏、棚瀬みつぐ、秋葉由麻、早川綾子、小熊ヒデジ
まるで劇中に入り込んだよう!? 小さな劇場ならではの臨場感を味わいながら…
名古屋駅にほど近い円頓寺地区に、全30席弱のホームグラウンド兼貸し劇場「円頓寺Le Piliers(えんどうじレピリエ)」を構えて1年。演劇プロデューサーで演出家の加藤智宏が主宰するperky pat presentsが、長年上演を夢見てきたという北村想の戯曲『ザ・シェルター』の上演に挑む。同劇場で4月15日(土)~24日(月)まで10日間に渡って催される本作は、北村想が35年前に書き、1980年代当時から現代に至るまでさまざまな団体によって上演が繰り返されてきた名作だ。
北村想 著『ザ・シェルター』(在間ジロ 著『悪魔のいるクリスマス』併録/白水社 刊)
核戦争用シェルターの性能を試すモニターとなったある家族。サラリーマンの主人と妻、小学生の娘、そして祖父の4人がシェルター内で過ごしテストを進めるうち、コンピューターが誤作動を起こす。突如停電になり、ドアは開かず、トラブルによって水も無くなってしまう。果たして一家はどうなってしまうのか…。
ちょうど1年前に上演された『DOWMA』に続き、再び北村作品の演出を手掛ける加藤は今回、この作品をどう料理するのか、稽古場に伺い話を聞いた。
── なぜ今『ザ・シェルター』を上演しようと思われたんでしょう。
昔からやりたかっただけなんですけど、かなり前に加藤健一事務所の公演(1983年と1984年に上演)をテレビで放映していて、それを観た時からシンプルで面白いなと。
── 「名演小劇場」での初演(1982年)もご覧になっているんですか?
それは観てなくて、そのあと劇座で上演されたものは観ました。
稽古風景より
── 実現するまでずいぶん時間がかかりましたね。
なかなかやる機会がなかったし、店を始めたので15年間芝居をやってないからね。で、この「円頓寺Le Piliers」を造ってperky pat presentsとしては公演してるけど僕の演出では一回もやってないから、何かやろうかなと思った時に『ザ・シェルター』だと。近未来の話だしメカニカルなイメージがあるんだけども、ここは完全に木造でロッジの中にいるようなところだから、そこで上演すると逆にどうなるのかなと思って。
── 私も1980年代にテレビ放映されたものを観ているんですが、改めて戯曲を読み返してみて、こんなに短かったかな? と思いました。
僕もそれは思いました。70分くらいで読み切れちゃうんで。演出が入っても1時間半までいかないから。
── 何か演出的な仕掛けなどは考えていらっしゃるんですか?
特にないです。ホンを読んでいくと結構出入りがあったり奥の空間とかいろいろあるんだけど、ここは狭くて空間の制限があるし目の前にお客さんがいるので、そういった上での演出は考えましたけど、基本的にはストレートにやった方がいいなと。想さんのホンを演出して思うのは、あまり演出的に何かやるよりも、そのままやっているうちに戯曲を読んだ時とはまた違うものが見えて来る気がする。今回も、最初は近未来や核とか戦争の話かなと思ったんだけど、結局家族の話なんだなと思って。
稽古風景より
── タイトルからはちょっと衝撃的な印象も受けますけど、意外とごく普通の家族の話なんですよね。
お話だけを追ってっても面白いんだけども、そこの中の家族を見ていった時に、お父さんと息子とか、孫っていうものの存在が何なんだろうなっていうことと、大家族と核家族の話で、核兵器の話で核家族か……とか思いながら、そういう繋がりみたいなものがキーワードとしてちょこちょこ見えて来ると、じゃあそれをどう使って演出しようかっていうところが面白いですね、僕は。
── 2011年に『ロストゲーム』(perky pat presents第1回公演)、2013年に『この恋や思いきるべきさくらんぼ』、2016年には『DOWMA』と、北村作品が続いていますが、今後もいろいろ上演していくご予定ですか?
ずっとやっていきたいというか、想さんのホンは面白いからね。物語が順番に進んでいくものじゃないから。確かに時間は進んでくんだけども、それだけで終わらない面白味がある。だからいつも思うのが、この台本がどういう構造なんだろうかっていうことを考えます。『DOWMA』の時もそうだったんだけど、あれもそのままやると本当によくわからないから、この物語がどういう骨格を持っているのかっていうことを探る。「あぁ、この話ってこういう建物だったんだ」っていうことがわかると、「じゃあこのシーンは窓を開けるみたいな感じにすればいいんだな」って、そういう感触でいつもやってるのね。
稽古風景より
── では、今回はそんなに凝った演出や大胆な仕掛けみたいなことはせず?
僕の中ではね。観た人がどう思うかはわからないですよ。例えば、停電で暗闇になってる時間が長いんだけれども、それはたぶん普通の芝居だったらやらない。どこかで明かりを入れたりするだろうし。
── この劇場の距離感だと、真っ暗でも観客に役者の気配は伝わりますものね。想さんは、今回の上演に関して何か仰っていますか?
この話には結末がふたつあるんだって言ってて。もう一個は教えてもらったのね、ホンに書いてないもので、たぶん想さんが何かの時に演出されたのかなと思うんだけども。今そっちで行こうかどうしようか悩んでて、クライマックスはまだどうなるかわかりません。
核ミサイルの脅威がより現実味を帯びてきた昨今、私たち観客一人ひとりはこの作品を前に、どんなことを考えるだろう。 30名も入ればいっぱいの空間で、自分自身もシェルターの中にいるような感覚を味わいながら何を思うのか、劇場に足を運んで確かめてみては?
perky pat presents『ザ・シェルター』チラシ表
取材・文:望月勝美
■作:北村想
■演出:加藤智宏
■日時:2017年4月15日(土)15:00、16日(日)14:00・19:00、17日(月)19:30、18日(火)19:30、20日(木)19:30、21日(金)19:30、22日(土)14:00・19:00、23日(日)14:00・19:00、24日(月)19:30 ※19日(水)は休演
■会場:円頓寺Le Piliers(名古屋市西区那古野1-18-2)
■料金:一般前売2,500円、一般当日2,800円 学生以下前売1,500円、学生以下当日1,800円
■アクセス:名古屋駅から地下街ユニモールを抜け、「国際センター」駅2番出口へ。地下鉄桜通線「国際センター」駅2番出口から北東へ徒歩5分
■問い合わせ:office perky pat 加藤 090-1620-4591
■公式サイト:http://officeperkypat.web.fc2.com