アメリカ村DROPの深夜営業再開後初となるイベント『BOOZE』を通じて感じたこと

2017.4.22
レポート
音楽
イベント/レジャー

BOOZE 撮影=ポチりさ

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特定遊興飲食店営業を取得した大阪・アメリカ村DROPが、2017年4月7日(金)に深夜営業を再開した。リスタートに伴い、人気バンドTHE GAME SHOPとのタッグで実現した、ライブハウスとクラブの垣根を超えた計18組のアーティストが集結したイベント『BOOZE』をレポートする。

2010年から2011年にかけて、“風営法”に違反する店舗を対象にアメリカ村でクラブの一斉摘発が始まった。曖昧な基準の上で成り立っていた”風営法”によって、直接的にしろ間接的にしろ、今まで当たり前のように行っていた営業活動ができなくなったという。今回のイベント『BOOZE』の会場となるDROPも法令遵守で深夜営業を自粛していた。(ここで言う風営法とは”特定遊興飲食店営業”を指す)

2015年6月17日(水)に改正風営法が成立し、同月24日(水)に公布。そして2016年6月23日(木)に終夜営業を認める改正風俗営業法が施行され、深夜の営業が可能となった。そして、DROPがようやく”特定遊興飲食店営業”の許可を取得。深夜営業再開にあたり、「今一緒にナイトイベントを盛り上げるなら、クラブシーンを視野にいれつつも、バンド活動を精力的に行なっているTHE GAME SHOPしかいない!」ということで、DROPとTHE GAME SHOPがタッグを組んだ共同イベント『BOOZE』を開催したのだ。

DROP前の通り 撮影=ポチりさ

オープン前には朝から降り続いていた雨も上がろうとしていた。かつてはこの時間に行列をなしているクラブも多かった。それはDROPだけじゃない。DROP前のこの通りには”特定遊興飲食店営業”を取得している店舗が軒を連ねている。北から順に「CIRCUS」「TRIANGLE」「DROP」「JOULE」「GHOST(旧AZURE)」の5店舗だ。それらの店舗全てがそれぞれ特色を生かしたイベントを毎夜開催していたが、法改正前は思うように営業できなくなり、お客さんはみるみる減っていった。ライブハウスやクラブからだじゃなく“夜の”アメリカ村から離れていったお客さんも多かったように思う。法改正後の現在、どの箱も懸命に努力して徐々に客足は戻りつつある。DROPの深夜営業再開はそれを後押しする明るいニュースと言えるだろう。

Bugg Style 撮影=ポチりさ

客入れの時間はスタッフ、出演者、そしてお客さん共に、緊張感の中にも笑いの絶えない時間だった。そこにはDROPの深夜営業復活ということで5年ぶりに遊びにきたというお客さんの姿もあった。イベントスタートの22時、定刻通りCIRCUM STANCESがトップバッターとして登場し「音楽があるところに集まった人たちみんなで一緒に盛り上げよう!」と呼びかけた。続いて登場したBugg Styleはメンバーの若さ溢れるプレイの中に「何のためにここに集まっているのか考えろ」と問題提起する場面も。そして「GAME SHOPがここにお前らを集めてくれた」と敬意を表した。

KenKen 撮影=ポチりさ

そしてゲストDJのKenKen(RIZE/Dragon Ash)が登場すると女性ファンがブース前に詰めかけてきた。ザ・ブランニュー・ヘビーズの「Jump'N'Move」〜レッド・ホット・チリ・ペッパーズとLLクールJの「I Make My Own Rules」をかけて「下北沢から来たベースのケンケンです」とMCした後にサイケアウツGの「Lum'n'Bass」をスピン。その後はシャイ・チャイルドの「Technicrats」〜ザ・ニュー・マスターサウンズの「HOT DOG」〜ジュラシック5「If you only knew」〜タワーオブパワー「Only So Much Oil In The Ground」〜ファンカデリック「Standing on the Verge of Getting it On」と繋いでいった。ジャンルレスな選曲はDROPそのものだったが、流石はベーシストらしく、リズムが特徴的でベースの効いた曲をチョイスしていた。MCでは「久々に夜のDROPだ!やっぱこうじゃないと!」とDROPの深夜営業復活を祝った。またKenKenがベースで参加している80KIDZの楽曲「Gone」と「STRG」も披露してファンを喜ばせた。

カナスタ 撮影=ポチりさ

KenKenのDJの後は、カナスタが登場した。ゲスト後なのでお客さんが引いてしまうんじゃないかと勝手に心配していたがそれは杞憂に終わった。80'sディスコ感のあるエレクトロサウンドと、カナスタ自身が醸し出すキュートなポップさで会場を盛り上げ続け、またそれをファンがサポートしていた。お客さんとの掛け合いのある「スクエア」で完全にフロアを一体化させた後は、最後の曲まできっちり盛り上げ「最後まで楽しんで帰って!」とステージを後にした。

xylöz(シロ) 撮影=ポチりさ

続いてのDJ Shige-Bitch(HARVEST)のDJで会場は大盛り上がり。「盛り上がり過ぎてるからこんなんしかかけへんでー」と煽りながらアンセムを連発する辺りは実に激ロック的だ。カナスタから次のxylöz(シロ)へと最高のバトンを繋いだ。そして登場したxylöz(シロ)は男女のエレクトロ系ユニットだ。ダブステップ、トラップ、テクノポップがミックスされたサウンドは常にテンションが高く、会場をハッピーな空気感で支配していた。またMCでは「DROPの夜はまだまだこれから」と盛り上げた。

左より、NUMB’N'DUB、DJ Hmen 撮影=ポチりさ

DJ Hmenがブースに登場。今回出演しているDJの中でも最もクラブDJらしいDJをしていた。それはDJ Hmenがあくまでもクラブというフィールドで勝負しているからこそのプライドかもしれない。そこに、先月イギリスのポンティンズ・サウスポート・ホリデー・パークで開催された音楽フェスティバル『バングフェイス』のTシャツを着たNUMB’N'DUBが飛び入りし即興でリリックをのせだした。この場にいる全員で『BOOZE』を盛り上げようといういう内容のメッセージだった。それに観客も応え、DJ Hmenの紡ぎ出す音に身をまかせ続けた。最後に「朝までのパーティー! みんなでいい時間にしましょう!」と呼びかけた。そしてそんなNUMB’N'DUBの“言葉”を聞きながらこんなことを思っていた。

あの頃は朝までイベントが出来て当たり前だと思っていた。週末ともなれば街中がお祭りだった。でもそれ故に無秩序な状態に陥ることもあった。深夜に外で大声をあげたり、ゴミのポイ捨て。そういった迷惑行為から取り締まりが強化されたのだ。その反省から、ライブハウスやクラブは地元住民とのコミュニケーションを測り、地域のお祭りに参加したりゴミ拾いやマナーアップの為の啓蒙活動を展開した。かくいう私もグリーンバードという清掃活動に参加するようになったのもこの後だった。

THE GAME SHOP 撮影=ポチりさ

そんなことを考えていたらTHE GAME SHOPのライブが始まった。唯一無二な世界観で一気に観客を魅了する。音に完全にシンクロした照明スタッフによるライティングも重要なファクターだ。「ホームグラウンドはDROP。夜から生まれる“繋がり”をくれたのがDROPだ」とボーカルのKIMITO。「夜が帰って来たぜ!」と叫んで「Take the party night back」を紹介し、この曲のREMIXを担当しているNUMB’N'DUBをステージに招き入れた。この曲は風営法による取り締まりによって深夜営業をするお店がどんどん無くなっていった時期に作った曲だという。

THE GAME SHOPのLIVEに招き入れられたNUMB’N'DUB 撮影=ポチりさ

Party is held around there. Glasses with tequila and Jaeger Meister
Music play what would you do?
Ok. Let's dance& get high! Hey DJ Let's make sound louder.
Is this by government. Lights of town disapear little by little that's not collect answer.
Is bad answer we never stop having party because everything we find so peacefull

Music never stop
Party won't stop forever.

Just drink till the sunshine come.
I make the party never end.
Just drink till the sunshine come.
Till the morning come just have fun and dance.

〜引用「Take the party night back」THE GAME SHOP

Take the party night back 撮影=ポチりさ

最後にKIMITOは「明日の事は忘れて遊んで帰ろう! それがパーティーだ!」と締めくくった。圧倒的な存在感と、なんとも言えない高揚感に支配されたままのフロアに、DJ ナオミチ(KNOCK OUT MONKEY)  が登場した。「しょうもないDJでごめん」と観客を和ませつつ、90年代のJ-POP中心の選曲でどんどんお客さんを巻き込み、『夜☆スタ』的な一面も垣間見せた。

NUMB’N'DUB 撮影=ポチりさ

そしてこの日大活躍のNUMB’N'DUBのステージが始まった。「スペシャルな夜だ」「心をさらけ出して踊る日」「ジャンルなんて関係ない」「オモロイ場所で仲良くなろう!」と『BOOZE』という場を与えてくれたDROPとTHE GAME SHOPに感謝の意を表した。そして「これが3:10の楽しみ方や」と深夜営業を表現し、どんどん速くなっていくBPMと相まって、フロアの足を止めさせることはなかった。彼の言葉を聴いていると、心の底から音楽が好きで、クラブが好きで、人が好きだということが伺える。それらを象徴したような「Raving Alright!!!」が披露された。「今この場所にいたい」「時を忘れて踊りたい」という歌詞だ。それはこの日NUMB’N'DUBが一貫して表現していたことそのものだった。

NUMB'N'DUB 撮影=ポチりさ

Why don’t we rave tonight
声をあげ歌い
時を忘れて、踊り明かしたい
Just for now お願い、
ここにいていい?
明日へつながる
It’s raving alright
Close my eyes
Catchしてよ今、
時が満ちればやがて終わるだろう 
いつか大人の君が感じれる日まで
永遠につなげよう
It’s raving alright

〜引用「Raving Alright!!!」DJ Shimamura feat. Numb'n'dub & MC STONE〜

楽しい宴は続く 撮影=ポチりさ

その後も『BOOZE』終了まで笑いの絶えない楽しい時間が続いた。音に身を委ねる者、バーで乾杯する者、久々の再開に語り合う者――この日音楽を通じて一つになった沢山の人々がそれぞれ自由に一晩楽しんだ。『BOOZE』が見せてくれた風景はかつてのアメリカ村そのものだった。アメリカ村の“夜の”音楽シーンが街と共存し、文化の創造の場として活況を呈すること願うばかりだ。DROPを出るとすっかり雨は上がっていた。


取材・文=senda 撮影=ポチりさ