MONSTER大陸×ザ・スロットル、女性ドラマーを擁する両バンドがイベント共演前に激突!?
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L⇒R:ザ・スロットル 成田アリサ、高岩遼/MONSTER大陸 藤倉嗣久、cheeta 撮影=鈴木 恵
MONSTER大陸が立ち上げた、渋谷La.mamaとの共同イベント『BLUES MONSTER』。ブルースやソウル、深い音楽ルーツ、そして音楽への情熱を持ったアーティストたちと共に新しいシーンを生み出そうとしているこのイベントの第3回目が、ザ・スロットルとLee&Small Mountainsを迎えて5月19日(金)に開催される。そこで、MONSTER大陸から藤倉嗣久(Vo,G)とcheeta(Dr)、ザ・スロットルから高岩遼(Vo)と成田アリサ(Dr)を招き、同じ“女性ドラマー”をメンバーに擁した両バンドの出会いのエピソードからイベントへの意気込みを語り合ってもらった。
似たようなルーツでバンドをやってても、衝撃を受けることはほとんどない。でもザ・スロットルは衝撃で、遼君の身体のキレの良さったら。(藤倉)
――MONSTER大陸とザ・スロットルは旧知の間柄なんですか?
藤倉嗣久(MONSTER大陸/Vo,G):遼君と初めて会ったときは、ザ・スロットルとは違うバンドだったんだけど、すごく印象的でよく覚えてて。オーバーオールを着てハンチング帽をかぶって、ローウェル・ジョージみたいな格好をしてて(笑)。すごくこだわりを感じました。それが2年くらい前の冬で、そのときに少し話をしたら、ザ・スロットルというバンドもやってるからって。で、初めて対バンしたのは下北沢シェルター?
高岩遼(ザ・スロットル/Vo):はい。シェルターでした。
藤倉:ライブを初めて見たのは、下北沢ベースメントバーだったんだけど。
高岩:ああ、それは去年の年末ですね。
藤倉:そのときのパフォーマンスが衝撃的で。動きがキレッキレだし、いつもリーゼントなのに、そのときは丸坊主で。お客さんも“え?”って驚いてて。それでで、後ろを向いたら後頭部に“ザ・スロットル”って書いてあってね。ロックンロール魂バリバリで最後まで突っ走ろうぜ! みたいなライブで。何て言うか、ロックンロールというルーツがありながら、そこからはみ出しまくってる感じで、それがすごく良いなと思ったんだよね。そのときから『BLUES MONSTER』の構想はあったから、タイミングが合えばザ・スロットルともやりたいなと思っていたんです。
高岩:ありがとうございます!
――シェルターで対バンしたときは?
成田アリサ(ザ・スロットル/Dr):あのときは、たぶんライブサーキットみたいな感じだったんじゃないかな? ろくにリハもないまま、いきなりやってくださいみたいなやつだった気がします。
高岩:実は、僕らはその前に、La.mamaのエライ人に薦められて、MONSTER大陸さんのライブを見てるんです。
藤倉:え!? 普通にお客さんとして? 知らなかった!(笑)
高岩:(笑)。僕はこの中でいちばんのペーペーだけど、これくらいの世代で、ロックンロールやブルースを守ってる人って、いないと思って。で、シーン全体として盛り上げないといけないなって思って、対バンを探してるときにMONSTER大陸さんを薦められて。「超かっこよくね?」って、みんなで言ってて。実際に見に行ったら、スーパープレイだし、とりあえず歌が上手いしギターも上手いし、ブルースハープもいるしって、すごい衝撃を受けたんです。
成田:ロックンロールやブルースをやってるバンドさんって本当に少ないから、正直、対バン探しで困ってたんですよ。そんなときMONSTER大陸さんの存在を知って、“ようやく見つけた!”っていう感じでした。私も初めて見たときは、すごい衝撃でした。
――同じ匂い、ルーツを感じる人は稀なんですね。
成田:だから、すごく嬉しかったんですよ。
藤倉:でも、似たようなルーツでバンドをやってても、衝撃を受けることはほとんどなくて。でもザ・スロットルは衝撃で。遼君の身体の動き、キレの良さったらなくて。あんなのは、俺には出来ないんで。さすが元ラグビー部だなって(笑)。
高岩:中学は柔道で高校はラグビーなんで(笑)。
MONSTER大陸×ザ・スロットル 撮影=鈴木 恵
矢沢永吉さんとフランク・シナトラ、ビートたけしさんを越えたい。スターになるために東京に来たので、そのくらいは言っておかないと(笑)。(高岩)
――ザ・スロットルは、ロックンロールをやっているけど、もともとは大学でジャズを学んでいたとかで。
高岩:大学でジャズをやってて。メンバーは全員そこ出身の先輩と同期です。俺は、最初はジャズボーカリストとして銀座や六本木で武者修行していたんです。そもそも、矢沢永吉さんとフランク・シナトラを足して、プラス、ビートたけしさんを越えたいと思ってて。そういう世界観で東京を潰したいと思って来たんですけど、ジャズの界隈って世界が狭いから、これでは絶対に俺がイメージするスターダムへはのし上がれないなと思って。それで、大学を卒業する頃に、何となくロックンロールとジャズを混ぜようかなって思ったんです。スターダムへの第一歩として、ちゃんとメジャーって言うか、チャートに昇るにはっていうところも含めて。それで、仲良くしていた仲間に「やろうよ」って声をかけて。
――永ちゃん、シナトラ、そこにたけしさんって(笑)。
高岩:そこに、レイ・チャールズとかも。スターになるために俺は東京に来たので、そのくらいは言っておかないと(笑)。
成田:私、その話って後から聞いて。最初はだまされてバンドに入ったんです(笑)。最初は、月に1~2回集まってブルースのセッションをするからって言われたので。しかもお酒を飲みながらセッション出来るなんて“すごい楽しそう!”と思ってたんです。それで、行ったら話と違ってて。
高岩:最初に集まったときは、すでにライブが決まってて、酒飲んでやってる場合じゃないって感じだったんで。
成田:私は“はぁ?”って感じでしたけど(笑)。
藤倉:でもメンバー集めには、多少のだましも必要なんです。俺も高校のときの友だちは、最初はジミヘンをやるからって誘って、そこからちょっとずつブルースに寄せていったという。
高岩:俺もちょっとずつでしたよ。
成田:ちょっとどころじゃないよ。
――でも、今も一緒にやってるということは、共感する部分があったからなんですよね。
成田:結局は、そういうことですよね。実は、誘われたときは、もう1~2年くらいドラムから離れてて“こんな日々でいいのかな?”ってくすぶってて。そんなときに誘われたものだから、“やっぱりこれがやりたい!”って思って。何だかんだでついて来ましたよ。路上ライブとかもやったりしてね。
高岩:うちのメンバーでいちばんおっかないのは、姉さん(成田)ですから。
成田:最初に始めた4人のとき、私がいちばん歳上だったんで。
高岩 :今ではバンドを引っ張ってるバイブスモンスターですよ。
成田:裏ボスみたいな(笑)。
藤倉:うちも、cheeta(ちいた)が裏ボスかも(笑)。cheetaに会うまでは、女性ドラマーに対して偏見を持ってて。“本当に大丈夫?”って。でもいざ一緒にやってみると、ビートがものすごくて、バリバリ男気ある音が鳴ってて、今やメンバーの中でいちばんロック魂が強いかも(笑)って感じます。
cheeta(MONSTER大陸/Dr):自分では、ロック魂があるとか思ったことないですけど、だんだん年齢を重ねるうちに、細かいことが気にならなくなったと言うか。やることやって、かっこいいと思えれば、それでいいっていう。あまり他のことは考えないですね。
――女性アーティストが男性バンドに誘われて一緒にやるときは、躊躇があったり?
cheeta:ああ、若いときは少しありましたよ。20歳くらいのときは、女性ドラマー自体少なかったし、“どうせ出来ないでしょ?”って偏見を持たれてしまっていたから。
藤倉:大変失礼しました!!(笑)
cheeta:でも私、なにくそ精神が旺盛だったので、ナメられないようにと思って。あまり女に見られないように、坊主にしていたこともあって。今は逆に“見た目女ですけど、やるときはやりますよ!”っていうほうが、面白いかなと思ってやってます。
藤倉:レコーディングのときでも、けっこうはみ出したことをやってくれて、ドラムのフィルとか“おお~!”って思いますよ。俺らがブルースの枠からはみ出そうとする原動力には、もしかするとcheetaがいるからかもしれないです。
――どっちのバンドも女性メンバーが歳上で強いというのは、面白いですね。
藤倉:現代社会を表していると思います(笑)。
高岩:分かります。女性がいちばん強いです!
成田:何てこと(笑)!
藤倉:俺ら男も負けてられねえなって思いますが(笑)。
高岩遼:間違いないです。
MONSTER大陸×ザ・スロットル 撮影=鈴木 恵
ナメられないようにと思って坊主にしていたこともありましたけど、今は逆に“見た目女ですけど、やるときはやりますよ!”っていう。(cheeta)
――お二人は、どうしてドラムをやろうと?
cheeta:私は、PRINCESS PRINCESSを見て憧れて、富田京子さんがかっこいいと思ったので。それでガールズバンドもたくさん関わってきたし。でも結局、ガツンとやれるものが好きなので。
成田:私は、ピアノは習ってて、中学校のときに吹奏楽部で打楽器をやってて。そこで、かっこいい女性像を考えたとき“ドラマーだ!”って。
cheeta:私の勝手な持論で、ピアノをやってた人はドラムが上手いっていうのがあります。
成田:それ、私の先輩も言ってました。
cheeta:ピアノをやっててドラムが出来ない人って、見たことなくて。
藤倉:あ~、ピアノも左右手足で違う動きだよね!
成田:なるほど。
――『BLUES MONSTER 01』と『~02』の反響は?
藤倉:MONSTER大陸に対しての反響で言うと「変わったね~」って。cheetaが入ってくれた影響もあるし。もともと踊れる音楽としてのブルースを伝えたいと思って始めたけど、フェスに出て思ったのは、かたくなにブルースのカバーをやってても、今のリズムや今のお客さんのノリとはうまくシンクロしないのかもって。自分たちから変わっていかないとなって。それで去年、いろいろあって。指の骨も折ったりして(笑)。曲も歌詞も変わったし。俺が言われて嬉しかったのは「歌詞が分かりやすくなったね」とか「すげえ共感した」と言われたのは、嬉しい。
――ルーツも大事だけど、今を生きるお客さんのことを考えるのも大事。そこでどう折り合いを付けるかっていう。
高岩:それは、すごく分かります。僕らもそうですからね。
――『BLUES MONSTER 02』では、ボーカル対決みたいな感じがありましたが、『~03』では?
藤倉:遼くんとは、スタイルは違うんだけど、同じフロントマンとして対決したいですね。
高岩 :イェー! 超楽しみっす。何て言うか、今の時代って、ヌケて良い感じで、歌とか技術じゃないところで見せて聴かせる人が多いけど。先輩は、技術も申し分ないし。そこで、フロントマンとして、歌手としてやるっていうところで。ロックバンドのスターみたいな人って、今はあまりいないと思うので、そういうところで戦えたらいいなって思いますね。
――過去2回の『BLUES MONSTER』は振り返ると、どんな印象?
藤倉:女性はすげえな!って(笑)。『~01』は、全員女性のファンクバンドでBimBamBoomが出てくれて、すごく勢いがあって。ニューオリンズファンクからはみ出したビート感がハンパなかったし『~02』では玉手初美さんのあのボーカルがすごく強烈で、いろんな人から「すごかった!」って言われたし。やっぱり女性というのは、強い!だからこそ男も気合い入れなきゃ!って。
――そういう意味では、今回のお二人の活躍は見どころになるわけですね。
成田:何か……お手柔らかにお願いします。
cheeta:じゃあ、ステージにドラムセットを2台は置けないから、1台のドラムを二人で叩くっていうのは? スネアとハットはどっちかで、バスドラはどっちでみたいな。
成田:逆に難しそうですけど(笑)。
藤倉:あと、もう一つの対バンのLee&Small Mountainsというバンドは、R&Bとかソウル系を現代的なポップ感じでやっていて、歌もすごく良いので、そのガチンコもすごく楽しみですね。
――それぞれ新曲もやったり?
藤倉:ザ・スロットルは、新曲をやる予定は?
高岩:やりますよ。ロックンロールからさらにはみ出したものになってるので、絶対にウケると思います。MONSTER大陸も新曲やるんですよね?
藤倉:うん。俺らは、4月に「進行性バカ」っていう新曲を配信で出したばっかなんで。まあタイトルからも分かる通り、ギタリストのくせに指の骨を折っちゃうようなバカな俺のことを書きました。バカでも、進むこと、突き抜けることが大事だなっていう。でもこの曲を演奏しているとき、お客さんから“この人たち、バカが進行している……”と思われてる気がしてます(笑)。
――骨を折ったとき、メンバーから相当怒られましたよね?
藤倉:はい。完全に呆れられました。
MONSTER大陸×ザ・スロットル 撮影=鈴木 恵
何か……お手柔らかにお願いします。(成田)
――では、それぞれの中でロックンロールとかブルースって、今の自分にはどんな存在ですか?
藤倉:俺の中でブルースは、上手く言えないけど“家”なんです。基本、家にはいるけど、外にも出るし。いつでも変わらずそこにある。たまには家出もしたりするけど、帰ったら帰ったで温かく迎えてくれる。そういう場所かなって。
cheeta:私は、あまりジャンルを分けて考えてないから、そういうのはちょっと分からないかな。メンバーが作って来た曲を聴いて、それに対してどういうアプローチをすれば、みんなのテンションが上がるか考えるだけで。だからブルースはなんぞやみたいなことは、曲を作る藤倉くんが考えればいいわけで。
成田:私は、ジャズというものを大学に入ってからちゃんと勉強したんです。それまではロックとかポップスを聴いてて。高校でバンドをやるとき、誘ってくれた友だちが好きだったのがSHAKALABBITSさんで、それで私も聴くようになって。あとGO!GO!7188さんとか。で、大学で初めてジャズを学んだとき、今あるロックやポップスも、全部遡るとジャズやブルースに行き着くことを知って、すごく面白いと思って。卒業してからザ・スロットルに誘われたわけですけど、ザ・スロットルは、ジャズでもブルースでもなく、ロックンロールなんだよって。それで“あ、なるほど”と思ったんです。ロックンロールって、ジャズをやっていた黒人さんが、ダンスホールでお客さんをもっと踊らせたいと思って作った音楽で。そう考えると、ちゃんと時系列に沿ってて、すごく良いなと思って。ただ、普通にロックンロールをやってるだけではダメで。はみ出すにはどうしたら良いか? って考えたとき、いろんなジャンルを聴いたり演奏したりするようになって。で、最近は、ヒップホップのビートを耳コピしてます。ロックにはないリズムパターンが多くて、すごく面白くて。今は、それがザ・スロットルにも活かせたらいいなと思ってやってます。
藤倉:ザ・ルーツのクエストラブみたいですね。
高岩:女クエストラブ。髭生やさないと!(笑) 俺は、黒人よりも俺のほうがよほど黒人だと思ってるんで!
――と言うと?
高岩:黒人音楽のことは、黒人よりも知ってるぞ! くらいのテンションでいたいんです。そもそも俺は、ガキの頃からむしろ日本の音楽を知らなくて。家庭がごたごたしてたとき、そばにあったのがブラックミュージックのレコードだったんです。リズム&ブルース、ロックンロール、ブルース、ジャズ、ヒップホップ。まあ俺もそこは、ジャンルで分けて考えたことがないけど。つまりロックンロールは、僕ですね。僕の魂です。だから、特に考える必要もなくて。
藤倉:うん。あえて考えてみたら、俺にとってのブルースは家。遼君にとってのロックンロールは、自分自身だったっていうことですね。
取材・文=榑林史章 撮影=鈴木 恵
撮影協力=Klala http://www.klala.net
MONSTER大陸×ザ・スロットル 撮影=鈴木 恵
OPEN/START:18:30 / 19:00
会場:渋谷La.mama
出演:THE THROTTLE / Lee&Small Mountains / MONSTER大陸
2017/5/5(金)下北沢GARAGE
LIVE SCHEDULE〜ROCKER ROOM Vol.5〜
2017/5/31(水) 六本木VARIT.
※ほか最新情報はオフィシャルサイトへ http://www.thethrottleweb.com/