後輩たちの躍動にリミッター全解除で応えたcinema staff! 2度目の『シネマのキネマ』を詳細レポート
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cinema staff 撮影=ヤオタケシ
シネマのキネマ 2017.5.19 東京キネマ倶楽部
cinema staffが自身のファンに向けてオススメしたい後輩バンドを招いて行う自主企画『シネマのキネマ』。その2回目が5月19日、東京キネマ倶楽部にて開催された。ゲストの顔ぶれは、PELICAN FANCLUB、SHE’S、Age Factoryと、いずれもそれぞれの方法論に則ってライブで輝きを放つバンドながら、互いの音楽性自体はだいぶ異なっている。おそらくファン層の被りも多くはないだけに、一発勝負のステージでどれだけオーディエンスの耳目をかっさらうことができるのか?という、やる方も観る方もスリリングでワクワクするような1日となった。
PELICAN FANCLUB 撮影=ヤオタケシ
先陣を切ったPELICAN FANCLUBは、バルコニーから一人ずつ登場して所定の位置につくと、一瞬の静寂をフィードバックノイズと強烈な逆光で吹き飛ばし、「深呼吸」へ。冒頭から音や動きの端々に充実ぶりと自信が伺える。間髪入れずに投下された「Night Diver」では、エンドウアンリ(Vo/Gt)が掲げたギターを振り下ろした拍子にバランスを崩すも、そのままマイクスタンドを引っ掴んで熱唱。そんなアクシデントも演出に見えてしまったほどキレキレだ。より多くのリスナーに届けようという明確な意志が表れた最新作『Home Electronics』からの3曲が初見の人も含むであろうフロアをしっかりと惹きつけたのはある意味狙い通りの収穫といえそうだが、既存曲の「Dali」「記憶について」でも同様に大きなリアクションを得たことは、このバンドが元々もつ地力の表れであり、それをしっかりと打ち出せた要因は精神面や技術面での成長だろう。「cinema staffに心からの愛と、心からのリスペクトを込めて」(エンドウ)と、シネマの「奇跡」をカバーする心憎い演出も織り込みつつ、執拗に煽るわけでも器用なMCをするわけでもなく、ただその音をもって語りかけ、つながっていくステージだった。
SHE'S 撮影=ヤオタケシ
ペリカンと同じくSEにのせてバルコニーからステージに降り立ったSHE’Sは軽やかにイントロが刻む「Un-science」からライブをスタートさせた。時折メンバー同士が目を合わせながら奏でるドラマチックなバンドサウンドは、一瞬にしてその場所を華やかなムードで包み込んでくれる。反骨のパンク精神を引き継いだ「Freedom」も、闇に彷徨う心を翳り帯びた音像で表現する「Ghost」も、SHE’Sが鳴らす楽曲は、まるで目の前に様々な景色を描き出すように表情豊かだ。6月21日にリリースされるミニアルバム『Awakening』からの新曲として披露された「Over You」はストリングスを大胆に加えたバンドの新境地。その楽曲には“いまの自分を超えていく”というポジティブなエネルギーが満ち溢れていた。最後のMCでは1年前に初めてシネマと対バンしたことを振り返ると、再び同じステージに立てた喜びを告げて、特大のシンガロングを巻き起こした「遠くまで」でライブを締めくくったSHE’S。彼らの音楽はいつも曇り空の心に優しい光を注ぎ込んでくれる。
Age Factory 撮影=ヤオタケシ
暗く落とした照明のなか、エレキギターと清水エイスケ(Vo/Gt)のハスキーな歌声だけでAge Factoryのライブは幕を開けた。そこへ破壊と狂気を孕んだバンドサウンドが加わり、冒頭の「Yellow」と「金木犀」の2曲で、彼らは直前にSHE’Sが作り上げた多幸感に満ちたフロアの空気を一変させた。西口直人(Ba)が長髪を振り乱せば、増子央人(Dr)も激しく頭を振り、荒ぶるスリーピースが集まったオーディエンスたちに容赦なく揺さぶりをかけていく。MCで「次回、キネマ倶楽部に出るときはバルコニーから出たいです。まだ格式が違いました」と、清水が素朴な一面を覗かせて会場を和ませたあとは、7月26日にリリースするアルバム『RIVER』から「left in march」を披露した。この曲が軽快なビートにのせた爽やかなナンバーだったことは、新たなAge Factoryを知るという意味で特筆すべき点であった。変則的に変わるバンドの呼吸に惹き込まれるようなロックバラード「ロードショー」まで、およそ30分のステージにもかかわらず、清水の額から落ちる汗の量がそのライブの激しさを物語っていた。
cinema staff 撮影=ヤオタケシ
すでにオープニングから2時間以上が経過したころ、いよいよcinema staffがステージに現れた。「俺たちがcinema staffだ!」。飯田瑞規(Vo/Gt)の叫びから爆音を轟かせた1曲目は彼らの始まりの楽曲「AMK HOLLIC」だった。久野洋平(Dr)のカウントを合図に4人がまるで衝動の塊のように激しくオーディエンスを揺さぶっていく。続く「西南西の虹」での辻友貴(Gt)はストラップが外れるほどの過剰なパフォーマンスだ。そのままリリースされたばかりの最新アルバム『熱源』から「返して」を投下。これまでも作品をリリースするたびに試行錯誤を繰り返してきたcinema staffだったが、今作で再び自分たちの原点がライブバンドであるという矜持を取り戻した4人は、自分のなかにあるリミッターを全解除するように、とても生き生きとステージを暴れまわっていた。MCではこの日出演した後輩3バンドへの感謝の気持ちを伝えながら、「僕らも先輩の貫禄を見せつけさせていただきますよ」と、三島想平(Ba)。ライブ終盤、最新アルバムのなかで最も生命力溢れる「pulse」をもって最高のクライマックスを作りあげたcinema staffは、紛れもなくいまが彼らのバンド史上最もかっこいい季節であることを、そのパフォーマンスで証明してくれた。
PELICAN FANCLUB/SHE'S/Age Factory/cinema staff 撮影=ヤオタケシ
アンコールでは「今日を締めくくるに相応しい曲を」と紹介して「僕たち」が披露された。アルバム『熱源』のラストを飾るバラードだ。激情が美しく渦巻く圧巻の演奏のあとも、お客さんは誰ひとりその場所を離れようとせずに拍手を送り続けていた。それを受けてひとりステージに戻ってきた三島は「ありがとうございます。ただ、アレのあとはやれんよな(笑)」。直前の演奏で全てを出し切ったことを伝え、ゲストバンドも交えての記念撮影をダブル・アンコール代わりに、ライブは幕を閉じた。
cinema staffは10月14日に初めて日比谷野外音楽堂での単独ライブを開催することが決まっている。「すごく良い作品ができて、このタイミングで野音に立てるということは、キテるんじゃないかと思ってます」と、三島。それは、おそらく過信ではないと思う。いま、ようやくバンド本来のかたちを取り戻して進み出したcinema staffに怖いものはない。
取材・文=秦理絵(SHE’S、Age Factory、cinema staff)、風間大洋(PELICAN FANCLUB) 撮影=ヤオタケシ
cinema staff 撮影=ヤオタケシ
PELICAN FANCLUB
1. 深呼吸
2. Night Diver
3. Dali
4. 奇跡(cinema staffカバー)
5. 記憶について
6. 花束
SHE’S
1. Un-Science
2. Freedom
3. Over You
4. Ghost
5. 遠くまで
Age Factory
1. Yellow
2. 金木犀
3. Puke
4. Night Bloomer
5. left in march
6. ロードショー
cinema staff
1. AMK HOLLIC
2. 西南西の虹
3. 返して
4. warszawa
5. pulse
6. エゴ
7. theme of us
[ENCORE]
8. 僕たち
出演者:cinema staff
公演日:2017年10月14日(土曜日)
会場名:日比谷野外大音楽堂
OPEN/16:45 START/17:30
指定席(高機動熱源体TOURドキュメンタリーDVD特典付き):¥4,800(税込)
URL:http://cinemastaff.net/