LUNA SEAが新しいモンスターになった夜 5.29 日本武道館ライブレポート
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LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
LUNA SEA The Anniversary 2017
2017.5.29 日本武道館
LUNA SEAが結成記念日である5月29日(月)、日本武道館にて『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29』を開催した。1989年5月29日、RYUICHI(Vo)、SUGIZO(Gt/Violin)、INORAN(Gt)、J(Ba)、真矢(Dr)の5人は町田プレイハウスで初めてライブを行なった。あれから28年。2000年に1度は終幕したものの、再始動を遂げた彼らは、今年5月にメジャーデビュー25周年を迎えた。そんな彼らが、日本武道館という特別な場所で開催した一夜限りのプレミアムライブの模様をお届けしよう。
「今夜、みんなが見せてくれた星空に向かって、もっともっとスリリングなバンドの道を歩んでいきたいと思います」。熱気に満ちたオーディエンスを見渡しながらそう宣言したRYUICHI。結成28年目を迎え、いまなお刺激的な進化を求める彼らは、5人各々の表現をより際立たせることでLUNA SEAのクオリティーアップに成功。個々がステージで緻密に絡み合って生み出されていくこのバンドのスケール、ダイナミズム……。LUNA SEAが、新しいモンスターになった夜だった。
場内に入ると、むき出しのステージを360度全方向から囲む客席が目に飛び込んでくる。このステージは、LUNA SEAが『LIVE TOUR 2012-2013 The End of the Dream』を締めくくった日本武道館6days公演のときにも行なったスタイルだ。
RYUICHI / LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
SEの「月光」がいきなり途切れ、聴こえてきたのはまさかの「Metamorphosis」。しかも、この予想外のオープニングは途中で終わり、すぐさまものすごい爆発音とともに次の「PRECIOUS...」を不敵の笑みを浮かべながらプレイするメンバーたち。一夜限りの記念日のために、冒頭からファンの度肝を抜く攻めの演出を組み込んできたにも関わらず、この日のLUNA SEAは余裕さえ感じるほどの仕上がり具合。さっそくセンターではRYUICHIとSUGIZOが軽く顔をあわせるシーンを提供して、ファンを喜ばせる。
この後、RYUICHIが記念日らしく「我々の結成記念日をみんなと盛り上がれて幸せです」と挨拶。各々の“未来、過去、今”をつないでいく「Dejavu」、アウトロでJが<Jesus, don't you love me?>を繰り返す「JESUS」、真矢のドラミング、INORANのアルペジオ、RYUICHIの低音で囁く声……歌と楽器陣のアンサンブル全てが立体的に融和していく「Image」。もう何度も何度もライブで聴いてきた初期曲を続けて披露していったパートで、いきなり驚愕した。
メンバー同士もアンサンブルもヒリヒリした関係性で、その緊迫感がLUNA SEAというモンスターを生み出していた復活前。お互いを認め合い、気づかうことで5人一体となったフォームを丁寧に整えていったのが復活後のLUNA SEAだとしたら、それとは違うなにかが、確実にいまこのステージには生まれている。
SUGIZO / LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
これだけボリュームを出しても音の中に埋まることのないRYUICHIの歌と楽器陣の音。その1本1本の音がクリアに分離しながら独立したプレイヤーとして5色の輝きをしっかりと放ちながら、曲の輪郭を描き、それらが緻密なアレンジの元で混ざり合い、重なり合い、離れたりしながらバンドサウンドになっていくのが手にとるように見えてくるのだ。ステージでパフォーマンスする5人を見ながらも、彼らが放つ各々の音像の波形を見ている。そんな錯覚を起こすほど、アンサンブルがクリアな立体物として浮かび上がってくるアクトは、見れば見るほど衝撃的だった。
「年々歳はとっていくけど、クオリティーは上げていかないとね」。結成日を迎えた心境をそう伝えたRYUICHIの言葉にハッとした。LUNA SEA復活前と復活後で、圧倒的になにが違うのかといったら、LUNA SEAと並行して各々がいまもソロワークを続けているということだろう。各々を認め合う信頼関係。その上で、5人はいまソロで身につけたスキル、センスをLUNA SEAに遠慮なくフィードバックしはじめていた。そうすることでLUNA SEAのクオリティーは格段にアップ。バンドは5色のカラーをプリズムのように発光する、進化したモンスターになっていったのだ。
INORAN / LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
「The End of the Dream」以降はさらにそれが明らかになる。ダークでヘヴィなミッドグルーヴチューン「HURT」では、その新しいモンスターがいきなり牙をむいて姿を現わす。混沌の中にどんどん埋まっていくような真矢の重厚なリズム。INORANのシンプルなリフ、<3,2,1,BREAK!>とカウントするJに続いて、サビでさらに深みへと誘うRYUICHIの低音ボーカル。SUGIZOの歪んだギターソロ。彼らの真骨頂でもあるダークで重たいこの曲で、5人はこんなサウンドの位置関係でこんな風に音を鳴らし、それが小節ごとにどう絡み合ってこの曲のかっこよさを生み出していたんだというのがクリアに分かった。続く「NO PAIN」ではステージ上層にあった透過性LEDが降下してメンバーを囲んで、曲のメッセージを増幅させる映像もプラス。<赤い世界へ>とRYUICHIが歌うと同時にモノクロだったLEDが真っ赤になるなど、5人のプレイヤーが放つ音に加え、演出でも魅せていくと、客席からは大きな拍手が送られた。
SUGIZOがヴァイオリン、RYUICHIがアコースティックギターという新たな編成でプレイしていった「I’ll Stay With You」を挟んで、LUNA SEAのライブには欠かせない真矢のドラムソロ、続いてJのベースソロが始まると場内はヒートアップ。最後に「いけるかー!」とJが叫んで始まった「BLUE TRANSPARENCY」では、前回の武道館と同じようにSUGIZOが床下からものすごい勢いで吹き上がるスモークと風を体に浴びながらギターを弾き、場内を沸かせた。
28年前にライブを行なったとき、頂点をとることは想像していても、同じバンドを28年もやり続けることは「想像してなかった」と話したRYUICHI。そのあとは「みんなに感謝の気持ちを込めて歌います」といって、彼らの人気を決定づけたバラード「I for You」で、集まったオーディエンスの心に光を灯していった。
J / LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
「武道館、このままじゃ“いい子ちゃん”すぎだから、怪我しなきゃ何してもいい! いけるかー? NEXT SONG」というRYUICHIの言葉で真矢の4カウント、「STORM」とRYUICHIがタイトルをコールして“ドン”を合図にギターリフ。それらタイミング、緩急を利かせた音のキレがいちいちカッコいい。「TIME IS DEAD」ではSUGIZOが下手サイドで再びCO2と爆風を受けながら、背中をのけぞらせてソロを弾く。その後INORANと向かい合うと、INORANが愛おしそうにSUGIZOのほっぺたを指でツンと触った。そしてJのマイク投げが炸裂する「ROSIER」では、センターでギターソロを弾くSUGIZOの横でRYUICHIがシャウトを重ね、息つく暇もなくAメロへと突入して客席を沸かし、最後に「Metamorphosis ~Ending part」の残りのパートを演奏し、最後にまたファンを驚かせて本編は終了した。
真矢 / LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
アンコールはSLAVE(ファンの呼称)たちの愛溢れるサプライズから始まった。この日は、開演前にSLAVE有志が客席に自らの手で配ったブルーのポンポン(終演後もSLAVEが回収していた)を振りながらスマホのライトを照らし、バースデーソングを合唱した。メンバーが出てきて、青白く発光する客席を見て感激したINORANは、ステージ後方の客席に向かってすぐさまタオルを投げ込んだ。「どうもありがとう」とRYUICHIがいい、アンコールは「Anthem of Light」で始まった。躍動感を刻み続ける真矢のリズムに導かれ、ブライトネスな空間が武道館に広がっていったところに、INORANのリフから「TONIGHT」が始まると客電がつき、RYUICHIが歌う<君だけの夜に>という歌詞でLUNA SEAからの愛をそれぞれの胸に届けていった。
このあとメンバー紹介が始まり、そこではINORANが「28年前にライブをやったとき……これ、(話が)長くなっていいですか?」と尋ねると、Jは巻くようにと合図しながらも「ドーナツの話絡めて」とオーダー。この後はRYUICHIが加入前、LUNACY(当時のバンドの表記)のライブに差し入れとして持ってきた“ドーナツ事件”の話題へ。INORANは「1つしか入ってませんでした」と主張するも「俺は5個入れたはずなのに。真ちゃんが食べたんじゃない?」とRYUICHIは否定。しかし「2個しか入ってなかった記憶がある」というSUGIZOもいて、いまだに真相は不明。だが「そのときのRYUちゃんは眉毛がなく、髪が緑だった。その頃の気合いを忘れちゃいけないと思って、俺は今日のドラムセットを緑にした」と真矢が最後は綺麗にこの話題をまとめてみせた。
LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
そしてRYUICHIの口から、LUNA SEAの新作についての話題が飛び出したのはその直後だった。「ニューアルバムのテーマを“愛”に決めました。いま世界はこんな時代だからこそ愛や愛情が必要なんじゃないかと。サディスティックな愛もあれば、温かいバラードみたいな愛もあったり。俺ららしい愛を形にして届けるから楽しみにしてて」とアルバムの内容について触れた後は、このニューアルバムを年内に発表すること。さらに、アルバム発売後となる2017年12月23日(土)、24日(日)にさいたまスーパーアリーナで『LUNA SEA The Holy Night 2017』を開催することを発表し、ファンを喜ばせた。そしてRYUICHIの決め台詞「かかってこいよ!」から、アンコールラストはもちろん「WISH」だ。銀テープが飛び出し、ステージからも客席からも愛溢れる空間を作ってライブはフィニッシュ。それでもアンコールを求めるファンを見て、メンバーは舞台で円陣を作って相談。「俺たちもまだステージ降りたくなかったからみんなの気持ちがうれしいです」とRYUICHIが伝えて、演奏が始まった曲。それは「MOTHER」だった。何度となく重要なライブの幕引きを飾ってきたこの曲が、神がかったスケール感ではなく、こんなにも人間的な温もりややさしさを内包し、慈愛に満ちたナンバーとして届いてきたのは今回が初めてのことだったと感じる。ライティングまでもこの日は真っ白だった「MOTHER」に、初めてレインボーカラーの照明が加わっていた。
こうして、アンコール全編を通して来るべき新作のテーマである“愛”へとつないで、未来のLUNA SEAのカケラまでをみせた今回のライブ。この先完成するニューアルバム、さいたまスーパーアリーナで、ぜひともこの進化したモンスターが蠢き始めたLUNA SEAを体感してほしい。
取材・文=東條祥恵
LUNA SEA『LUNA SEA The Anniversary 2017 5.29 日本武道館』
2017.5.29 日本武道館
02. PRECIOUS...
03. Dejavu
04. JESUS
05. Image
06. The End of the Dream
07. HURT
08. NO PAIN
09. I’ll Stay With You
10. Dr. Solo ~ Bass Solo
11. BLUE TRANSPARENCY
12. I for You
13. STORM
14. TIME IS DEAD
15. ROSIER
16. Metamorphosis ~Ending part
17. Anthem of Light
18. TONIGHT
19. WISH
20. MOTHER
2017年12月23日(土・祝)、24日(日)
さいたまスーパーアリーナ 2days
5/30(火)正午より、オフィシャルファンクラブSLAVEにて
会員先行受付スタート!
http://www.lunasea-slave.jp
※受付期間:5/30(火)12:00~7/5(水)18:00
(6/29(木)23:59までに新規WEB入会された方までお申し込み可能です)
問合せ:キョードー東京 TEL:0570-550-799(平日11~18時/土日祝10~18時)
LUNA SEA オフィシャルサイト:http://www.lunasea.jp/