指揮者と歌手が語る、ディズニー音楽をフルオーケストラと生歌で味わう喜び~『ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2017』

2017.7.13
インタビュー
クラシック
舞台

メラ・ジル・ハーマン(歌手)、ブラッド・ケリー(指揮者)


ディズニー音楽を、歌、フルオーケストラ、映像やダイナミックな演出とともに楽しめる、大人のための音楽会『ディズニー・オン・クラシック(DOC)』が今年、15周年を迎える。9~12月には『ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2017 Brillante ~輝きの未来へ』と題して、全国39都市を回る。2002年の初演から指揮・編曲を務めるブラッド・ケリーと、新たに参加する歌手メラ・ジル・ハーマンに話を聞いた。


--まず子供の頃のディズニーの原体験を教えてください。

ブラッド 遠い昔だから、思い出すのが大変(笑)。幼い頃、ディズニーのストーリーブックを持っていました。レコードが付いていて、本を見ながら聴くことができる。最も幼い頃の記憶としては、白黒のテレビでディズニーの『ダニエル・ブーン』や『デイビー・クロケット』をやっていました。ディズニー映画で一番古い記憶に残っているのは、『メリー・ポピンズ』です。僕の場合、ディズニー作品は日常生活の一部でした。仕事として、ディズニーに深く関わるようになったのは90年代半ばから。もともとテレビやラジオのジングルを作っていて、1986年にロサンゼルスに移住。偶然、家から歩いて行ける距離にディズニー、ユニバーサル、ワーナーブラザーズのスタジオがあったのがきっかけで、ディズニーの仕事を始めました。初めてのメディアでの仕事は、テレビシリーズ『アラジン/ ジァファーの逆襲』の音楽です。

メラ 私は『ライオン・キング』『美女と野獣』『ポカホンタス』など、あらゆるディズニー映画を見て育ちました。ニューヨーク育ちで家族が演劇好きでしたから、舞台化された作品もよく見ました。学校で『ピーター・パン』をやったことがあり、「I'm Flying」を歌いながら、舞台上をピョンピョンして飛ぶ真似をしたり(笑)。その時、観客が喜ぶ反応が楽しくて、演者になりたいと思うようになったんです。ディズニーの体験が今の私を形成したのかもしれません。

ブラッド・ケリー(指揮者)、メラ・ジル・ハーマン(歌手)

--DOCで驚くのは、指揮者もオーケストラも踊ることです!

ブラッド 本来、指揮者は同じ場所でじっとしていなければいけないと言われます。オーケストラも同じ。もっとフォーマルなコンサートでは、やってはダメですよ(笑)。音楽を楽しんでいると自然と体が動き出すもので、私たちが楽しんでいると、お客さんにもその楽しさが伝わります。オーケストラ・ジャパンは音楽を愛し、その喜びを視覚的に見せてくれるんですよ。

——ブラッドさんはもしかしたらダンサーを目指していたとか?

ブラッド あはは! 私は演奏はできますけど、ダンスは得意じゃありません。5年前、東京ディズニーランドでミニーマウスと踊ることになり、エンターテイメント・ディレクターで友人のジョン・デリックと妻が会話していて。妻が「ブラッドはミニーと踊るために今、ダンスのレッスンを受けてるのよ」と言うと、ジョンが「お金を返してもらわないと。あのダンスのレベル、ダメじゃない??」。そのくらいダンスは苦手(笑)。

ブラッド・ケリー

--オーケストラは楽器を持って演奏しながらダンスするでしょう?あの振付はどのように練習しているのですか。

ブラッド オーケストラ・ジャパンはあの踊りをものすごく一生懸命、練習しているんですよ。時折、リハーサルを止めて、振付の稽古をしています。皆さん、とても喜んで、熱中してやっています。本人たちが心から楽しんでやっているのがいいですね。クオリティを維持しながら、自分たちも楽しむ。それができています。

--歌手はオーディションで決まるそうですね。

ブラッド はい。オーディションは以前、DOCのヴォーカリストとして活躍したトニー・クレメンツが担当しています。激戦で、とても多くの人が日本に来たいと思っているんですよ。今年は1200人の応募があり、まず180人を第一次審査。そこで70人に絞られ、最終審査を経て8名が選ばれました。

--メラさんは合格した時、どんな気持ちでしたか。

メラ とても光栄だと思いました。多くの知り合いからDOCで来日した話を聞いていましたから、ドキドキしましたね。いつかは私もと思っていましたが、まさに夢が叶ったわけ。仕事でディズニー作品と関わるのは初めてですし、こうして初来日し、フルオーケストラとの共演も初めて。今までやりたかったことがひとつずつ叶っている感じです。

メラ・ジル・ハーマン

--オーディションでは何を歌われたのですか。

メラ 課題はディズニーの曲かディズニーに近い曲ということで、ミュージカル『Something Rotten!』の「Right Hand Man」を歌いました。1週間後にコールバックがきて、いろんな音源が送られて来ました。その中から、「Mother Knows Best(お母様はあなたの味方)」(『塔の上のラブンツェル』より)、また違うキャラクターの曲として「A Whole New World」(『アラジン』より)、「Reflection」(『ムーラン』より)を歌いました。

--今回のプログラムは『塔の上のラプンツェル』の音楽がメインとか。

ブラッド 私たちは常に新しいテーマをお届けし続けることが大切だと考えています。これまで、『美女と野獣』『リトル・マーメイド』『ライオン・キング』などの大作ミュージカルを度々紹介してきました。今年は15年目の記念イヤーで、次の新しいものという意味で、『塔の上のラプンツェル』が選ばれました。音楽も物語も素晴らしい作品です。

--メラさんはDOC春の音楽祭でも、ラプンツェルの育ての親ゴーテルとして「Mother Knows Best(お母様はあなたの味方)」を歌われました。

メラ 60人ものフルオーケストラと一緒に歌ったのは初めてで、感激しました。普段、ミュージカルでは大体10~15人の編成ですから、音の厚さが違います。映画の世界を本当に再現できると感じました。ゴーテルとして悪役を演じるのは、生々しくてちょっと危険で、面白かったです。

ブラッド ディズニー作品は悪役に、良い曲がたくさんあるんですよ。

メラ 確かに。ゴーテルがどんな声なのかと考えて、尊敬する女優さんドナ・マーフィーの声を参考にしたんですよ。今まで、ブロードウェイの舞台や映画をずっと見てきて、実際にお会いしたこともあるので。

メラ・ジル・ハーマン

--その他、今回のプログラムの特徴をお聞かせください。

ブラッド テーマは「Brillante(ブリランテ)」。“輝かしい”というイタリア語の音楽用語で、過去15年とこれからの未来を意識しています。ショーの冒頭、オープニング曲では、15年前に演奏した曲をひとつの組曲にしてお届けします。また、お客さんからのリクエストも演奏します。第1部のラストはフロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートのエプコットで人気のショーで使われている「Reflections of the Earth」、フルオーケストラの醍醐味を味わっていただけたら。

--ディズニー音楽とシンフォニー・オーケストラの親和性はどんな点だと思いますか。

ブラッド ディズニーは初期作品からオーケストラ音楽を使ってきました。1933年のアニメーション『三匹の子ぶた』の音楽はすべてオーケストラによるものです。オーケストラ音楽を使うことで、人々の感情を掻き立てることができる。オーケストラの表現力はディズニー作品には欠かせないんですよ。

ブラッド・ケリー

--メラさん、フルオーケストラとの共演はいかがでしたか?

メラ リハーサル初日は、圧倒されてしまいました。でも自分を信じて、何度かリハーサルを重ねたことで、次の日はもうワクワク!恐れはなくなり、オーケストラを信じて、素敵な音楽をお客さんと分かち合う準備ができました。

ブラッド ニューヨークから東京に来て、次の日のリハーサルでいきなりフルオーケストラの前で歌うというのはかなり勇気のいることだよね。そして本番にはお客さんの前で演じ切った。メラは本当に素晴らしかったです。

--お二人とも今年のクリスマスシーズンは日本で過ごされるわけですね。

メラ 楽しみですね! ホリデイシーズンの公演は大きなパーティーみたいな感じ。生の音楽を通して自分の情熱をライブでお祝いできるのは幸せなことです。

ブラッド ここ数年は日本でクリスマスを過ごしています。この仕事は他の人がパーティーをしている時に働いて、皆が1月に入って働き出すとホリデイになる。今年もそんな感じかな。

ブラッド・ケリー(指揮者)、メラ・ジル・ハーマン(歌手)

……サービス精神旺盛なお二人、ディズニーの心に通じるものがありますね。生のディズニー音楽に浸る喜び!ぜひ公演でご体験ください。

取材・文=三浦真紀 撮影=高橋定敬
Presentation made under license from Disney Concerts (c) Disney All rights reserved

公演情報
『ディズニー・オン・クラシック ~まほうの夜の音楽会 2017 Brillante ~輝きの未来へ』

■テーマ:Brillante ~輝きの未来へ
■日程:2017年9月21日(木)~12月24日(日)
■会場:全国39都市56公演
■主管:Disney Concerts
■後援:avex group /アメリカ大使館
■特別協賛: JCB
■協賛:株式会社ヤクルト本社/au
■協力:月刊「ディズニーファン」
■制作:Harmony JAPAN
 
■出演:
指揮・編曲:ブラッド・ケリー
ヴォーカリスト:メラ・ジル・ハーマンほか(8月下旬にオフィシャルサイトで発表)
オーケストラ:THE ORCHESTRA JAPAN
ナビゲーター:ささき フランチェスコ
 
■全国ツアースケジュール 
こちら→ http://www.disney.co.jp/eventlive/onclassic/onclassic2017/schedule.html