迷いと葛藤を抜け、輝きを増す4つの“微かな光”――LAMP IN TERREN、決意のツアーファイナル

レポート
音楽
2017.7.3
LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

画像を全て表示(17件)

LAMP IN TERREN ONE MAN TOUR 2017 “in fantasia” 2017.6.30 LIQUIDROOM

アルバムタイトル/ツアータイトルの“fantasia”――不思議な世界へと場内を誘うかのように、静けさと力強さを湛えたSEの中、登場するメンバー。ステージ上にいくつもランダムに置かれたアンティークデザインの照明器具のうち、4つだけがぼんやりとした光を放っている。スッと息を吸い込んだ松本大(Vo/Gt)が「涙星群の夜」の冒頭のフレーズを弾き語り、「fantasiaへようこそ!」と一言告げたところでバンドINすると、煌々と照らされたフロアからは、早速無数の手が挙がった。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

川口大喜(Dr)が繰り出す強靭なビートに乗って「ランデヴー」へ。噛み付くようなパワフルさは相変わらずだが、これまでより明らかに音の表情が豊かになっている。いつの間にかすごいアシメな髪型になっていた大屋真太郎(Gt)は、プレイにも佇まいにも余裕を感じさせてくれたし、コーラス面でもよく目立つようになった。中原健仁(Ba)はガッチリとアンサンブルのボトムを支えながら、大きな動きと満面の笑みでグイグイとオーディエンスを引っ張っていく。間髪入れずに突入した「Sleep Heroism」では、毒々しいライティングと切れ味鋭いギターサウンドでスリリングな音像を展開したかと思いきや、途中のロングブレイクで「めっちゃ緊張しています……!」という松本の突然の告白に沸くシーンもあった(この日のライブは生中継されており、「そういうのにすごく弱い」とのこと)。最初のブロックを終えた時点で、ここ1年強におけるLAMP IN TERRENのライブとは何かが決定的に違うことを、既に多くの観客が感じていたのではないだろうか。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

前作から1年9ヶ月という期間を経てリリースされたアルバム『fantasia』を携えて行われたツアーの最後を飾るのがこのLIQUIDROOM公演だ。松本曰く「辞めようかとさえ思った」ほど、バンドにとっても試練の期間となった『fantasia』の制作過程を乗り越えてこの日のステージに立った4人は、どこか突き抜けた様子であり、何よりも「変わっていくんだ」という明確な意志を感じさせてくれた。正直に白状すると、ここ最近のテレンのライブからある種の停滞感や閉塞感を少しも感じていなかったと言えば嘘になる。自らの在り方や打ち出すメッセージに対して思い悩み、迷い、もがく様子はありありと伝わってきていたし、実際、動員面だって思うようにはいかなかった。にもかかわらず、そんな状況とは裏腹にアルバムでは視界が開けるようなイメージを感じさせてくれていただけに、それをどのような表現で伝えることができるのか?という点で、この日のライブは“これからのテレン”の行く末を占う試金石になるのではないか。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

セットリストは、『fantasia』の収録曲をバランス良く配したもの。シリアスな空気をまとったサウンドとステージングで「at (liberty)」「innocence」を披露して攻めの姿勢を打ち出した後は、舞台上のアンティーク照明全てに灯がともり、4人で向き合いながら「雨中のきらめき」をあたたかみのある音に乗せ届ける。語りかけるように、松本が歌う。良いアクセントとなっていたのは「とある木洩れ陽より」。カップリング曲からのセレクトだが、人懐っこいメロディがアコースティックギターの音色とともに観客たちに寄り添っていく。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

「正直、(以前は)あまりライブは得意じゃなくて、自分の気持ちばかりでやってきた。それが皆さんのことを考えるようになって、少しずつ変わっていっている」(松本)

一方通行の投げかけから相互のコミュニケーションへ――という意識が随所に見られたのは、彼らが“変わっていっている”、もしくは“変わろうとしている”証だろう。客席に足踏みとクラップを促すことでリズム隊の一員として迎え入れ、ともに音を鳴らした「オフコース」も、楽しく弾むリズムに乗せて会場全体が掲げた手を左右に振った「不死身と七不思議」も、もっと言えば、今回のツアーから始めたという川口のMCコーナーにしても、そういった意識の表れに映った。内容自体は飲食店の「なか卯」を「なかたまご」と読んでいたとか、わりとしょうもなかったけれど、そうやって和気藹々と掛け合う3人を、ペタンとあぐらをかいた松本が見守る図式はなんだか妙に良かったし、ひとしきり語り合ったあと「基本的に俺ら、笑う数が増えたね」と川口がこぼした際には、場内の一体感も一段と増していた。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

そして何よりバンドの変化を物語っていたのは松本のMCだろう。いつも以上に多弁で、けれどいつもほどにはスラスラとは出てこない言葉。どうすれば想いをきちんと伝えきることができるのかを探し、確かめるかのように、何度も何度も繰り返し彼が伝えていたのは、ファンの存在があってはじめて自分たちの音楽は存在できるのだという感謝と、これからもそんなファンたちと共に響き合い、歌っていきたいのだという願い、そうやって自分たちは活動していくのだ、強くなるのだという決意だった。おそらく、テレンがこの先へ進んでいく上で、彼はどうしても今日そのことを宣言しておきたかった……いや、伝えずにはいられなかったのではないか。そうやって誠心誠意、自らの胸の内を伝えきった後の、己の内面を色濃く映した楽曲たち――「pellucid」「heartbeat」のなんとドラマティックだったことか。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

まるで懸命に漕いでもなかなか進んでいかないギアの軽い自転車のような、もどかしさを抱えた1年9ヶ月間にケリをつけた4人は、ライブの後半戦では見違えるほど推進力を増した鮮やかな姿で、グングンと前進していった。そしてオーディエンスもまた、それぞれのリアクションでもって彼らの背を押したのだった。バンドのテーマソングともいえる「キャラバン」、不動のライブアンセム「林檎の理」、そして「ワンダーランド」。会場を揺らすほど飛び跳ね、盛大なコールで応えてみせた観客たちに、「最高の気持ちです。すごく嬉しいです、どうもありがとう」と素直な感謝を伝えた松本が、バンド名の由来(LAMP IN TERREN=この世の微かな光の意)を引き合いに出しながら、自分たちの放つ微かな光が、そしてファン一人ひとりが放つ光が、これからもっともっと大きくなっていくことを信じていると語り、本編の最終楽曲として鳴らされたのは「地球儀」だった。曲中、フロアの中央まで突入してファンとともに跳びはねる松本の姿が伝えてくれたのは、今やテレンの鳴らす音楽が彼ら自身のためだけではなく、聴き手と共に響きあうためのものとなったことだ。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

アンコールでは、過去のライブでも重要な位置で演奏されてきた「multiverse」でフルボリュームのシンガロングを巻き起こし、「やりたいこと、やるべきこと。ライブ中にたくさん見つかりました。今までもらった“ありがとう”は、未来でちゃんと曲にして返すからな」と、いつもの松本節も復活したところで「未来がいつだって特別なものでありますように」と「eve」へ。もともとは松本がごくパーソナルな喪失をきっかけに書いたという楽曲だが、“いつだって今現在が特別な明日のイヴである”というこの曲のメッセージは、この日の会場で大きな希望のフレーズとして響いていた。

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

鳴り止まないダブル・アンコールに応じるかたちで急遽、松本の弾き語りで届けたバンドにとって最初の曲「L-R」まで、この日演奏された全19曲。それはバンドの新たな始まりを告げるものであったと言っていい。この日発表された次なる2マンツアーのタイトル “FOR TRUTH”にも、ここからが本当のLAMP IN TERRENなのだ、という決意表明が込められているのだという。単なるポーズでは決してないだろう。何しろ、この日のライブで松本はこう言ったのだ。

「この音楽で、みんなの手を引っ張っていくからついてきてください。一緒に行こう!」

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

1年半ほど前、渋谷クアトロワンマンでは「僕は『ついてこい』とは言えない、一緒に歩くことしかできないんですよ(中略)だから、みんなが僕の手を掴んでいてくれるうちは、絶対に離さない」と語っていた。「innocence/キャラバン」のリリースインタビューで話を訊いたときには「そういうリーダーシップみたいなもの、あったら良いなとは思うんです。そのうち出てくるのかもしれないし、このスタンスは変わらないのかもしれない」と、強くなろうとしていた。そんな彼がこの日、ついに口にすることができた言葉の照らす前途は、明るい。


取材・文=風間大洋 撮影=浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

LAMP IN TERREN ©浜野カズシ

セットリスト
LAMP IN TERREN ONE MAN TOUR 2017 “in fantasia” 2017.6.30 LIQUIDROOM
1. 涙星群の夜
2. ランデヴー
3. Sleep Heroism
4. at (liberty)
5. innocence
6. 雨中のきらめき
7. とある木洩れ陽より
8. オフコース
9. 不死身と七不思議
10. pellucid
11. heartbeat
12. 緑閃光
13. キャラバン
14. 林檎の理
15. ワンダーランド
16. 地球儀
[ENCORE]
17. multiverse
18. eve
[ENCORE 2]
19. L-R

 

ツアー情報
LAMP IN TERREN「TOUR “for truth” 」
2017年9月29日(金)福岡 BEAT STATION 開場18:00/開演18:30
2017年9月30日(土)広島 Cave-Be 開場17:00/開演17:30
2017年10月8日(日)長野 松本ALECX 開場17:00/開演17:30
2017年10月9日(月・祝)金沢 vanvan V4 開場17:00/開演17:30
2017年10月14日(土)神戸 太陽と虎 開場17:00/開演17:30
2017年10月15日(日)静岡 UMBER 開場17:00/開演17:30
2017年10月21日(土)新潟 GOLDEN PIGS BLACK STAGE開場17:00/開演17:30
2017年10月22日(日)宇都宮 Heaven’s Rock Utsunomiya VJ-2開場17:00/開演17:30
2017年10月9日(月・祝)金沢 vanvan V4 開場17:00/開演17:30
2017年11月3日(金・祝)仙台 M.C.N 開場17:00/開演17:30
2017年11月4日(土)盛岡 five 開場17:00/開演17:30 問:GIP 022-222-9999
2017年11月23日(木・祝)名古屋 CLUB QUATTRO 開場17:00/開演18:00
2017年11月24日(金)梅田 CLUB QUTTRO 開場18:00/開演19:00
2017年11月26日(日)渋谷 CLUB QUATTRO 開場17:00/開演18:00
※各会場GUESTあり(後日発表)
:前売り(東京・大阪・名古屋公演以外)¥3,000- (税込・ドリンク代別途) / (東京・大阪・名古屋公演)¥3,500(税込・ドリンク代別途)
当日券未定
オフィシャル先行予約:7月1日(土)12:00~7月10日(月)23:59
※抽選 ※お一人様4枚まで
一般発売日:8月5日(土)10:00~ 各種プレイガイドにて
 
シェア / 保存先を選択