「9mm Parabellum Bulletとは何か」その答え全てを体現した一夜――“TOUR OF BABEL II”
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撮影=橋本 塁[SOUND SHOOTER]
9mm Parabellum Bullet “TOUR OF BABEL Ⅱ” 2017.7.2 昭和女子大学人見記念講堂
9mm Parabellum Bulletが、ギター・滝 善充の左腕の不調でライブ活動休養という状況下で制作は行ったという、苦難の中作り上げた7thアルバム『BABEL』。作品を提げた全国ツアーも無事に大団円を迎え、残されたのは“TOUR OF BABEL II”と名付けられた、9mm MOBILE会員限定のワンマンライブのみ。少し違った立ち位置から『BABEL』と向かい合った当日は、結果として“9mmとは何か?”という問いに対して突き詰めていくような、濃度の高い1日となった。
撮影=西槇太一
ノイジーなサウンドが流れ出すと同時に怒号のような大歓声が沸き起こり、フロアの興奮を写し取ったようにステージが紅に染まり上がる。狂騒の中、次々とメンバーがオンステージ。菅原 卓郎(Vo/Gt)が優雅な仕草で一礼し「9mm Parabellum Bulletです!」と告げると、かみじょうちひろ(Dr)の気迫をそのまま叩きつけるようなドラムを呼び水に、5つの音の奔流がオーディエンスに向けて流れ出した。いよいよここから……という所で珍しく菅原が入り間違えるというハプニングはありながらも、そのお陰で程よく緊張感が溶けたフロアを前に「サクリファイス」をドロップ。レーザーのように光がホールを駆け巡る中、最早職人めいた4人の円熟のプレイに菅原の声が重なり、音の快楽指数をうなぎ登りに上昇させていく。
撮影=西槇太一
初めてのモバイル会員限定LIVEということで、演る側の気合も相当なもの。MCで一息挟んでから飛び込んだ「The Lightning」では、4人の弦楽器プレイヤーが一枚岩となってストイックながらも賑々しいプレイを魅せ、雲海のようなスモークが幻想的に立ち込めた「火の鳥」では、何度倒れても蘇る不屈の闘志を焼き付けた。
撮影=西槇太一
「Lost!!」のイントロが流れ出したかと思えば、突如舞台に登場した2人のダンサー。突然の出来事に驚きながらも、興味津々のフロアを楽曲世界へと深く導いていく。真っ黒な衣装を纏ったダンサーの数は次第に増え、最後には群舞のようなドラマチックな踊りを披露。違うジャンルのプロの目線を通して楽曲を味わえる、非常に贅沢な時間を演出した。
撮影=西槇太一
叙情性の高いメロディーが耳を惹く「キャンドルの灯を」、中村 和彦(Ba)の心の奥を突き刺すような咆哮が轟いた「バベルのこどもたち」――と、楽曲が披露されるたびに、今まで見てきた9mmはまだまだ彼らの全てなんかではなく、氷山の一角に過ぎなかったことを思い知らされる。どれだけ探っても新しい魅力が見つかるというのは、リスナーにとってどれだけ喜ばしいことだろうか。
撮影=西槇太一
ここで、そんな熱狂を更に加速すべく、本日のスペシャルゲスト兼“バベルのおともだち”・石毛 輝(the telephones/lovefilm)を紹介。弾き手のカラーが存分に反映されているせいか、それともフロアの興奮の表れだろうか。いつもより少し弾けた雰囲気で楽曲を届けると、菅原も「さすが輝…最高だね!」と笑顔を見せていた。関係性の深い彼らだからこそ、それぞれに沢山の思い出がある。次に披露された「Supernova」はそんな曲なのだという。「行ってみよっか、輝。爆発しよ」と呼び掛けた菅原に石毛が「OK!」と答えたワンシーンには、まるで親友同士が長年温めて来た悪戯を決行する、その瞬間に立ち会っているような高鳴りを覚えた。そんな素敵なゲストが最後に残していったサプライズは、石毛らしいハイトーンで「行けるか??」と呼び掛け、雪崩れ込んだ「Monkey Discooooooo」。ミラーボールが象徴的に光を散らし、まさかの展開に狂喜乱舞するホールはDISCOに早変わり。石毛に駆け寄って共に「DISCO!」を叫んだ菅原も嬉しそうで、改めて“DISCO”の持つ魔力を痛感させられた。
撮影=西槇太一
ここからは再び5人に戻り『BABEL』からの楽曲を中心に、次々と連射。狂おしい思いを声で浮き彫りにした「ホワイトアウト」を皮切りに、音を重ねる度にドープな世界へと引き込んで行く。昨年行った『TOUR 2016 “太陽が欲しいだけ”』に中止となり急遽アコースティック編成で回った土地を中心に、改めて『TOUR 2017 “BABEL on Life Line”』を開催することを発表、歓喜の嵐を巻き起こしたところで、「じゃあ……1発ぶち上がっていくか! みんな、これからも9mmをよろしく頼むぜ!」と「ガラスの街のアリス」へ。ギターフレーズが起爆剤になり、怒涛の終盤戦への火蓋が切って落とされた。ハンドマイクというレアな姿でオーディエンスと共に踊り狂った「ハートに火をつけて」など、ライブ映えするキラーチューンが惜しみなく解き放たれ、本編最後を金テープの煌めきと共に華麗に締め括ったのは、「Punishment」。全員が一列に並んでプレイを魅せたラストまで、爆速で駆け抜けるようなステージだった。
撮影=西槇太一
アンコール。ここでメンバーが再登場して……と思ったら、突如暗転、オープニングと全く同じように流れ出したSE。事前のアナウンスからこの後の展開を予測していたオーディエンスも多かっただろう。とはいえ、理解するのと体感するのは全くの別物。いつものオープニングと全く同じようにかみじょう、中村、菅原……そして最後に滝が登場すると、今日1番の、万感の思いがこめられた大歓声が響く。「9mm Parabellum Bulletです、こんばんは!」と完全体になったことを示すように菅原が叫び、そのまま「ロング・グッドバイ」、そして「もう1曲だけ一緒に歌ってください!」と「新しい光」をプレイ。水を得た魚のように、ステージの端から端まで“いつも通り”に滝が暴れ、待ち焦がれていた光景に思わず泣き崩れるオーディエンスも。最後の最後、演奏が終わると同時に降りた《9mm Parabellum Bullet》と刻まれたフラッグは、今日魅せた全てが9mm Parabellum Bulletなんだと表明しているように思えた。
撮影=西槇太一
「これからどんな形でも、俺たちは9mmを感じられるようなバンドとしてやっていきたいと思います!」と最後に菅原が叫んでいた通り、苦難の中で純度の高い作品を生み出せたことは、どんな状況でも“9mmらしさ”を失わないでいられることへの自信に繋がったに違いない。バンドに宿った強固な確信は、これからの彼らの旅路をより確かな、輝かしいものにするはずだ。
取材・文=渡辺 真綾 撮影=橋本 塁[SOUND SHOOTER]、西槇太一
撮影=西槇太一
1. サクリファイス
2. インフェルノ
3. The Revolutionary
4. Story of Glory
5. The Lightning
6. 火の鳥
7. 眠り姫
8. Lost!!
9. 光の雨が降る前に
10. キャンドルの灯を
11. バベルのこどもたち
12. I.C.R.A
13. Supernova
14. Monkey Discooooooo(the telephones)
15. ホワイトアウト
16. それから
17. カモメ
18. ガラスの街のアリス
19. Everyone is fighting on this stage of lonely
20. ハートに火をつけて
21. Talking Machine
22. Punishment