イケメン怪人(当社比)が心の隙間に付け入るホラー!『バイバイマン』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第三十回
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TVアニメ『デート・ア・ライブ DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス 怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。
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口裂け女やテケテケなど、いわゆる怪人が登場する類の都市伝説は、日本でも多く語られている。怖いもの大好きな私でも、子どもの頃はそんな噂を怖がっていたものである。中でも、「紫鏡」という言葉を20歳まで覚えていると死ぬ、という都市伝説にはかなりの時間怯えさせられてきた。『紫鏡』には怪人こそ登場しないが、その結末には死が待っている。ということは、“考えてはいけない”言葉にプラスして怪人まで登場したら、最悪なのではないか。そんな恐怖を具現化した作品こそが、この度紹介する『バイバイマン』だ。
舞台はアメリカのウィスコンシン州。大学生のエリオットとその恋人・サーシャ、そして友人・ジョンの3人は、古い一軒家を借りて共同生活を始める。ある日エリオットはふとしたことから、その名を知った者に死をもたらすという“バイバイマン”を呼び起こしてしまう。たびたび現れる“バイバイマン”に怯えながらも助け合う彼らだが、周囲の人間たちは命を落としてゆく。抗うエリオットたちは、はたして“バイバイマン”のもたらす死を回避することは出来るのか。
“真綿で首を絞められる”心理描写の恐ろしさ
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『バイバイマン』は短編小説集『大統領の吸血鬼:アメリカ合衆国の奇妙だが本当にあった話』の中の一篇『ボディ・アイランドへの橋』を原作としているという。『ソウ』(04)や『死霊館』(13)のジェームズ・ワン監督がお墨付きを与えたという触れ込みを聞いてはいたが、「バイバイマン」というアンパンマンの仲間のような可愛いネーミングと、“知るだけ、考えるだけでも死ぬ”という極端なキャッチコピーには、正直なところ少し不安を感じていたことを白状しておく。だがしかし、実際に観てみると非常に私の好きなテイストの作品だった……! 不安がってごめん! 私は親子が絵本の魔物に取り憑かれる『ババドック 暗闇の魔物』(14)というホラー映画が好きなのだが、それに近いものを感じた。文字通りの出血大サービスや、豪快に人が何人もバタバタ死んでゆく派手さがあるわけでもないのだが、『バイバイマン』の“真綿で首を絞められるようにじわじわと追い詰められてゆくイヤ~な感じ”は、両作品に通ずるものがある。
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また、個人的に良いと思うポイントのひとつに、主人公のエリオットが頑張り屋さんだというところを推しておく。彼はホラー映画の登場人物たちにありがちな、「なんでそこでそうするの!?馬鹿なの!?」とツッコミたくなるようなこともなく、バイバイマンの謎を解き、彼女と友だちを救うため、しっかりと奮闘するのだ。しかし、それを嘲り笑うかのように、バイバイマンはエリオットたちの精神を浸食する。信じ合おうとすればするほど彼らの心の隙間に入りこみ、ちょっとした疑いの種をもとにしたイヤな幻覚を見せてくるのだ。怪人の存在を明らかにしながらも暴力で怖がらせるのではなく、「エグい」と感じさせる心理描写で攻めてくるのが、なんとも新鮮ではないか。
クリーチャーといえばこの人!ダグ・ジョーンズ
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私がいくつかの不安を感じながらも期待せざるを得なかったのは、バイバイマンの“中の人”を知っていたからだ。バイバイマンを演じるのは、190cm超えの長身と長い手足を活かしてクリーチャー役に引っ張りだこのダグ・ジョーンズ。ギレルモ・デル・トロ監督作品の常連でもあり、『パンズ・ラビリンス』(06)では、迷宮の番人・パンと、手のひらに目の付いたクリーチャー・ペイルマンを演じていた。私は彼氏にしたいくらいペイルマンが大好きなので、バイバイマンのビジュアルにも期待していたのだが…… やはりいい! 怖がらせるような見た目ではなく、余計な装飾のないスタイリッシュさがあり、(私から見ると)イケメンである。
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ダグ・ジョーンズだけではなく、脇を固める役者陣も何かと豪華だ。1960年代から第一線を走り続けるレジェンド女優、フェイ・ダナウェイ。『ソウ』シリーズの脚本家であり、俳優としても活躍するリー・ワネル。そして、エリオットたちに関わることになる女警部役には、『マトリックス』(99)トリニティ役のキャリー=アン・モス。彼らの演じるキャラクターたちが、物語をピシッと引き締めている。
さぁ、これを読んだあなたももう“バイバイマン”の名を知ってしまった。死の運命から逃れるためには、彼を退ける方法を探すしかない。その方法は、劇場で……。
映画『バイバイマン』はヒューマントラストシネマ渋谷ほか公開中。
出演:ダグラス・スミス、ルシアン・ラヴィスカウント、クレシダ・ボナス、 ダグ・ジョーンズ、キャリー=アン・モス、フェイ・ダナウェイ、リー・ワネ ル
監督:ステイシー・タイトル
製作:トレヴァー・メイシー「オキュラス/怨霊鏡」
プロデューサー:ナンシー・カーホッファー「スペル」
音楽:ザ・ニュートン・ブラザーズ「オキュラス/怨霊鏡」
撮影:ジェームズ・クニースト「アナベル 死霊館の人形」
美術:ジェニファー・スペンス「パラノーマル・アクティビティ」「インシディア ス」シリーズ
編集:ケン・ブラックウェル「エクスペンダブルズ」
衣装:リア・バトラー「パラノーマル・アクティビティ3」「パラノーマル・アク ティビティ4」 VFX:ジョン・キャンファンズ「ソウ」シリーズ
配給:AMGエンタテインメント
公式ホームページ:http://byebyeman-movie.jp/
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