ただ音楽をもって届けること――LILI LIMITを迎えた自主企画『gpdd』にみた最新型のodol

レポート
音楽
2017.7.12
odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

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odol×LILI LIMIT 「gpdd」 2017.7.8 青山・月見ル君想フ

普段は弾き語りや小編成のライブを観ることが多い月見ル君想フのステージに、異様なまでの機材が積載されている。odol自主企画ライブ『gpdd』の記念すべき初回は完全なるバンドセットである。そして初回に呼ぶなら是非彼らを!と切望したLILI LIMITとの競演が実現。オーディエンスも両者の競演への期待値は高く、満員のフロアに降り注ぐミラーボールの光もどこか静かなざわめきを伴っているように見える。ちなみに“gpdd”とはgrand pas de deux=バレエ用語で男女二人のステップのことを指すが、さしずめこの日は広義で「odolと踊る」というテーマと捉えていいだろう。もちろんバンド名同様、odolとは必ずしもダンスだけを指すわけではない。

撮影=今井駿介

撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

先手はLILI LIMIT。真夏は不思議と郷愁と誘う季節でもあり、そんな心象にぴったりくる「A Short Film」が、牧野純平(Vo、Gt)の小気味いい歌メロで滑り出す。黒瀬莉世(Ba)と志水美日(Key)のコーラスも風を運ぶようなイメージを生み出す。LILI LIMITの楽曲、そしてそれを立体化する演奏はアイディアに富んでいて、しかも愉快なぐらい軽やかだ。志水がエレピで“エレクトロミュージックでよく耳にするある種マシンのバグっぽい突っかかり”を表現したリフが耳に残る「Unit Bath」。牧野が書く少しシニシズムを含む歌詞を汲んだメンバー各々の解釈は、このバンドの大きな魅力だ。

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

黒瀬のブリープテクノを思わせるエフェクトが効いたベースが牽引する「Observe」。土器大洋(Gt)、丸谷誠治(Dr)の演奏も、手数よりどれだけ効果的な一打、一音を曲に差し込むか?に注力しているようで、リズムをとりながらも、バンド・アンサンブルの細かい部分に自然に注目してしまう。終盤、近作である『LAST SUPPER EP』からタイトルチューンが牧野の歌始まりでフロアに放たれると、綿々と続くジャパニーズ・ポップスのキャッチーな符割りに乗るボーカルと、ラップ・ミュージックと並行するトーキング・ボーカルのシームレスな連なりにカタルシスを覚える。ライトなファンクチューンで、まさに現在のトレンドではあるけれど、それだけでは済まされない棘を残すあたりが無二だ。ラスト1曲を前に牧野は福岡時代を思い出し、まさにこの週、北九州を襲った災害に少し言及。またodolのミゾベと森山の出身地でもあることからその縁にも思いを馳せ、今日の出会いからまた音楽が広がることを素直に喜んでいた。そして最後はドリームポップの要素も含む「LIKE A HEPBURN」。『ティファニーで朝食を』のモチーフを散りばめつつ、今の女の子のリアルな心情を綴る。まだまだ“青い”手さばきでありつつ、言葉も音もグルーヴも含めた包括的な“音楽”そのものでオーディエンスを納得させる力量。1時間近いセットで今の彼らの音楽的なレンジの広さを理解させてくれた。

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

LILI LIMIT 撮影=今井駿介

6人体制のodolへの転換は20分以上はかかっただろうか。しかしテトリスのように配置されるそれを眺めて飽きることがない。それにしても凄まじい機材の量だ。それでも月見ルおなじみのお月様のもとでライブをやるという、ここがどこなのか一瞬忘れてしまう風情は、彼らに似合う。いつもの入場SE、チリ―・ゴンザレス「Train of thought」に乗って、シャツとタイで決めた6人がステージに登場。1曲目から「飾りすぎていた」の緩やかなテンポで夜に滑り込んでいく。井上拓哉(Gt)と早川知輝(Gt)の2本のギターがエフェクトではなく演奏で作り出すディレイが降り注ぎ、センチメントの極みと言えるサビのメロディで早くも気が遠のく。

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

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6人が奏でる轟音が何らかの自然現象のようにもたらす、ライブハウスごとどこか遠くに連れ去っていくような感覚に浸っていると、早くも新曲「狭い部屋」を披露してくれた。曲調は穏やかなのに、真っ赤なライトに照らされたミゾベリョウ(Vo、Gt)が訥々と歌う言葉はどこかうっすら怒りを滲ませた内容だった。「ああ、これが今、odolが向かっている最新の表現なのだな」と直感した。9月20日リリースの1stEP『視線』から、「GREEN」「狭い部屋」「その向こう側」の3曲がすでに先行配信されているのだが、ライブで聴くと「狭い部屋」には彼らに芽生えた新たな感情、そして音源以上にジャズ/フュージョンや、ブラジルのミナス地方の若手音楽家が奏でるコード進行とシンクロする構造を散見し、そう感じるとミゾベのボーカルがチェット・ベイカーみたく聴こえたりもした。そう、そんな儚くちょっと危うい感覚を。

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

その印象を与えたまま、2ndアルバム収録の「逃げてしまおう」のコード感に繋がっていく流れの良さ。森山公稀(Pf、Syn)の現代音楽の素養を背景にした作曲方法がいよいよバンドの肉体として見事なまでに機能しだしていることに、耳も感覚も肉体も完全に囚われた。すごい。全員が曲に献身している。続く新曲「私」はまだ配信されていないが、Shaikh Sofian(Ba)が弾くシンセベースをはじめ、一瞬、新体制のダーティ・プロジェクターズを想起した。つまり、どの楽器も特定のジャンルに隷属していないというフレキシビリティにおいて。それでもodolの曲がすんなり耳に入ってくるのは、ミゾベという朴訥でまっすぐなストーリーテラーが歌っているからだと思う。

odol 撮影=今井駿介

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odol 撮影=今井駿介

再び6人が曲に献身している演奏で感銘を受けたのは「愛している」。井上のフィードバックギター、情景を描くような早川のフレーズ、雨音のような森山の単音。そして何よりミゾベの“愛している”という渾身の歌声に込められた想いと同じように、楽器の音も鳴っている。この轟音がただスキルフルなマスロックだったら決して感じることのない、言の葉と混ざった時の影響力。このカタルシスはなかなか他のバンドで得られないものだ。そして終盤、配信がスタートしている新曲の中でも、彼らの新しいモードや音楽的なチャレンジが如実に感じられる「GREEN」が配置された。周波数を合わせるために起こるようなノイズと対照的に、垣守翔真(Dr)のビートは力強くシンプル。もはや破綻寸前の世界はわかっているけれど君は君を守って欲しいと歌い、でもそんなことを言う僕は卑怯だとも歌う。

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

2017年の今、怒りを秘めつつ、ただ戦おうなどと歌えない心情がリアルタイムでフロアの隅々に届いたはずだ。音楽でなければ届かない純度の高い何らかの本当のこと。odolは今、何に属することなくそれを伝えられるバンドとして、力を蓄えている。この日、この会場を選んだこともLILI LIMITをゲストに招いたことも含めて、今の彼らの意思が反映されていた。1st EP『視線』を大いに盛り込んだ今後のライブを、より多くの人に体験して欲しいと切に願う。


取材・文=石角友香 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

odol 撮影=今井駿介

セットリスト
odol×LILI LIMIT 「gpdd」 2017.7.8 青山・月見ル君想フ

LILI LIMIT
1.A Short Film
2.Kitchen
3.Unit Bath
4.Observe
5.Girls like Chagall
6.A Few Incisive Mornings
7.LAST SUPPER
8.LIKE A HEPBURN

odol
01.飾りすぎていた
02.あの頃
03.狭い部屋
04.逃げてしまおう
05.私
06.17
07.君は、笑う
08.愛している
09.生活
10.GREEN
11.夜を抜ければ

 

リリース情報
odol『視線』
発売日:2017年9月20日(水)
『視線』

『視線』

品番:UKCD-1168
価格:¥1,600+税
レーベル:UK.PROJECT
収録曲
1.GREEN
2.狭い部屋
3.私
4.またあした
5.その向こう側
6.虹の端
※『視線』CD購入者全国共通特典:CD
(内容は後日発表)
 

 

ツアー情報
odol TOUR 2017 “視線”
2017年11月10日(金)
愛知・池下CLUB UPSET(ゲストアーティストあり)
前売 ¥2,800(+1ドリンク)
2017年11月12日(日)
福岡・graf(ワンマンライブ)
前売 ¥3,000(+1ドリンク)
2017年11月26日(日)
東京・渋谷WWW(ワンマンライブ)
前売 ¥3,000(+1ドリンク)
 
最速先行(e+)
7/8(土)21:00~7/16(日)22:00
 
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