「爆笑体験をしに来てください」山寺宏一&水島裕インタビュー~ラフィングライブ『Cash on Delivery』
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(左から)水島裕・山寺宏一
声優、俳優、タレントと、幅広い活躍で知られる⼭寺宏⼀と⽔島裕、そして演出家の野坂実の3人による演劇ユニット「ラフィングライブ」は、2015年の旗揚げ以来、ステージファン、声優ファンの枠をこえ大爆笑&大絶賛の公演を重ねている。そして2017年11月29日より5日間、第3回公演『Cash on Delivery(キャッシュ・オン・デリバリー)』を上演する。
…ということで、SPICEは山寺宏一と水島裕から話を聞いた。ふたりの対照的な稽古スタイルやエピソードをうかがい知ることができた。同時に、説明不要のレジェンドでありながら取材陣さえも爆笑×笑顔にさせてくれるサービス精神、コメディの真摯な姿勢に、“ラフィングライブ魂”を感じずにはいられないインタビューとなった。
客席の笑顔が好きなんです
――はじめに、演劇ユニット「ラフィングライブ」について教えてください。
山寺 全部話すと長くなりますから手短に……水島さん、お願いします!
水島 はい!(笑) 「楽しいことをやりたい」というのがそもそもの思いです。重いテーマや大事なことも必要だとは思いますが、山ちゃんと僕は「楽しいことをやりたい」。それでコメディの演劇ユニットを結成しました。詳しい結成の経緯は……山寺さん、お願いします!
山寺 はい!(笑) もともと水島裕と演出家の野坂実が『パパ、アイ・ラブ・ユー』という作品をやろうという話になり、その出演者に僕を指名していただいたのがきっかけです。「せっかくだから、この3人でユニットにしようよ、そして、いい感じだったらまたやろうよ」という話になり、コメディをやるユニットとして「ラフィングライブ」と名づけました。意外とゆるく決めて始めたので、今でも決まっていることといえば「裕さんと僕がでて野坂実が演出して、コメディをやる」ということだけです。でも、旗揚げ公演からすごく強力な共演陣とスタッフの方々に恵まれて、手ごたえを感じることができました。昨年2回目の公演もさせていただき、今年3回目を迎えることができました。
――「コメディ」にこだわる理由はありますか? 水島さんは、ご自身がプロデュースされている朗読劇でも、笑いをテーマにされていますが。
水島 ステージから見える客席が、笑顔の方が好きなんです。いい悪いではなく、僕らはその方が好き。なので、これからもコメディをやっていこうと思っています。
――旗揚げ公演『パパ、アイ・ラブ・ユー』、第2回公演『Run for Your Wife』は、ともにレイ・クーニーの脚本でした。今回の『Cash on Delivery』は、意表を突いてマイケル・クーニーの作品ですね。
山寺 マイケル・クーニーは、レイ・クーニーの息子なんです! 野坂実はもともとユニット結成の時から、何作かやってみたい作品を抱えていたようで、前回の公演が終わってから「次はこれがいい」という脚本をいくつかもってきました。皆で読んだ中から、我々に向いているのはこういう本だなとなったんです。それがまた、結局クーニー家の作品だった(笑)。
水島 僕らの肌に合っているんだよね。
山寺 レイ・クーニーの作品をやってみて分かったのは、読んでいてももちろん面白いんですが、実際にやってみるともっと面白くなるということ。息子のマイケルは、父親のいいとこどりをして、テイストを汲んでいますよね。シチュエーションこそ違いますが、ある男がいて、そいつが嘘をついて、友だちを巻き込んで、しっちゃかめっちゃか(笑)。
水島 テイストは、前回、前々回とほぼ一緒だね。「この台詞、前にもあったな」というのもあると思います。でも話は違いますので、前作をご覧くださった皆さんにも充分楽しんでいただけると思います。
本当にもう、わがままなんですよ!
――「ある男が嘘をついて、友だちを巻き込んで」というお話が出ましたが、役どころはやはり……。
山寺 僕が嘘をつく方。
水島 そして僕が振り回される方。定番です!
――水島さんは、振り回されるのがお好きなのですか?
水島 好きか! そんなもん!!(笑) でもキャラ的には振り回すより、振り回される方ですね。
――毎回、豪華な共演者にも注目が集まりますね。高垣彩陽さんは今回も……?
水島 山ちゃんの奥さん役です!
山寺 ありがたいです。
水島 共演者の方々には、自分たち3人から直接、電話をしてお願いして集まっていただくんですよ。俳優としての実力ももちろんですが、それだけじゃなくて……ね?
山寺 そうなんです。僕らは劇団ではないので、公演ごとに、その時々に集まるわけです。だから、やりたくない人とはやりたくないんです。好きな人たちとやりたい。「この人そんなに好きじゃないけど、上手だからなあ……」とか、そういうのはしたくないんです。実力があって、一緒にやりたい人にご協力いただいて、無理を聞いていただいて。本当にわがままなんですよ(笑)。我々3人だけじゃ、本当に何もできなくて、思いがあるだけなんです。キャストの方々、スタッフの方々に、無理を言ってわがままを聞いていただいて、その分楽しくやりましょうという感じです。
――今回共演の役者さんをご紹介ください。
山寺 旗揚げ公演以来、2度目の出演となるのが、斎藤こず恵さん、折笠富美⼦さん。前回の公演に続いて出演されるのが、高垣彩陽さん、岩崎ひろしさん、⾼橋広樹さん。横島亘さん、⼩形満、越川詩織さんには、今回初めて出演いただくことになりました。
――初登場3名の方々の、キャスティング理由は?
水島 基本的には、毎回、台本を読んでその役にあった方々を探すんです。
山寺 横島さんは、僕のおじさん役をつとめてくださいます。もともと劇団民藝でずっと演劇をされていた方で、野坂さんが演出した舞台に、以前出演されていたこともきっかけになっています。小形満さんは、声の仕事で何度もご一緒させて頂いたし舞台も何度か拝見していて、今回ぴったりの役があったので是非お願いしたいということになりました。詩織ちゃんは、お父さん(越川大介さん、「D.K.HOLLYWOOD」主宰)もお母さん(島本須美さん、声優)も知り合いで、生まれたときから知っているんです。素晴らしい才能をもった女優さんなんですが、僕らの前回の公演を観にきてくれたのをきっかけに「どうしても出たい!オーディションでもなんでも受けます!」と言ってくださいまして。なんと、裕さんの婚約者役で出てくださることになりました。演劇もコメディも大好きという、実力ある方々ばかりで、強力な布陣になっています!
山寺と水島は真逆の性格
――演出の野坂さんからは、今回のお芝居についてお二人にリクエストはありましたか?
山寺 これから稽古が始まりましたら、たっぷりいただきます。彼は普段本当に穏やかな人間なんですが、演出に関しては厳しくて細かいんです。もちろん稽古場で我々の演技を観ながらの軌道修正もありますが、彼の頭の中にはまず「こうやったらお客さんが笑う」という計算が全部できていて、コンマ何秒の間(ま)にも緻密にこだわって、稽古初日から千秋楽まで、細かいダメ出しが雨のように降り注ぎます。
水島 それこそ、稽古中にカチーンとくることも言われるんです(笑)。けれど、過去2回のうち「なるほど!」ということがほとんどでしたので。
――ほとんど?(笑)
水島 全部かどうかわかりませんが、ほとんどね!なので今は、素直に聞けています。
山寺 こんなことを言っていますけれどね、水島先輩は、どれだけダメ出しされてもメモもしないんですよ!
水島 性格だね~(笑)。
山寺 最初は俺も「書きとめるほどではないかな?」と思ったんですが、野坂さんからのあまりのダメ出しの多さに、全部細かくメモって「すみません、今のところもう一度お願いします」って書きとめたのを、家に帰ってまた見直したりして……と、やって。裕さんは何か言われても、「あ、オッケー」「ふんふんふん」「あ、はーい」みたいな。つうか、ちゃんと分ってるのかよ!って(一同、爆笑!)。
水島 舞台を一緒にやってみてわかったんですが、山ちゃんと僕はほぼ真逆なんですよ。
山寺 本当にメモしないのは全出演者中、裕さん一人だけですからね? 全員書き留めていますからね? 書くフリだけかもしれませんけれど!
水島 フリだよ、きっと(笑)。
――本当に対照的ですね。他にもタイプの違いを感じることはありますか?
水島 山ちゃんは台詞をなるべく早く覚えるタイプ。僕はなるべくゆっくり覚えるタイプ。
山寺 わざとゆっくりなんですか!?(一同、再び爆笑!)
水島 まあ、舞台の稽古は積み重ねですからね。
山寺 さすが芸歴が長い!
――おふたりともアニメや映画、ナレーションなど声のお仕事にこだわらず、舞台やテレビでも幅広く活躍されています。その経験からみて、舞台の現場はいかがですか?
水島 かける時間が違いますね。舞台には、本番まで時間をかけて作りあげる面白さがあります。
山寺 ドラマも映画も声のお仕事も、それぞれで台本を読んで練習をして、あとは現場で作っていく。その瞬発力の面白さがあるものですから、あえていうなら舞台が特別です。
水島 本番が始まってからでも、毎日変わっていきますし、その日のお客さんによっても変わります。もしかしたら天候によっても違うかもしれない。そこが舞台の面白いところですよね。ただ僕にとって「ラフィングライブ」は仕事じゃありませんから。
――仕事ではないのですか?
水島 言われてやっている仕事じゃありませんから。ある意味、仕事以上に大事なものでもあるってことです。
客席が揺れるほどの笑い
――旗揚げ公演、そして第2回公演ともに、大変好評でした。劇場に頻繁に足を運ぶ方も大絶賛、あまり舞台をご覧にならない方からも「最高に笑った」「舞台って面白いんだ」という声を耳にしました。今回も期待が高まります。
山寺 毎回ものすごい緊張するんです。野坂実は「絶対大丈夫だ!」と言っていたんですが、僕は、幕が開くまで全然信じてなかったんです。「大丈夫ですよね? 大丈夫ですよね? 面白いですよね?」って励ましあいながら、頭のどこかで「ほんと?」って(笑)。けれど幕が開いたらお客さんが、ドッカンドッカン笑ってくださるのをステージで感じることができました。そんな風に旗揚げが上手くいっても、第2回公演の時にはまた「大丈夫か? 旗揚げ公演はうまくいったけど、今度は会場も違うし、ダメなんじゃないか? みんな笑ってくれるのか? 大丈夫か?」と、ものすごい不安で。
水島 (深く頷く)
山寺 けれど2回目も、「本当に客席が揺れるくらい笑った!」という感想を、お客さんからも頂いたくらい、皆さんが本当にたくさん笑って楽しんでくださって、すごく幸せな思いをさせていただきました。今回の博品館劇場は、舞台と客席の距離が近いです。コメディにはぴったりの距離感ですよ。
水島 コメディにはいいですよね。伝わるものがありますよ。
山寺 でもまあ、(急に渋い顔で)第3回公演も上手くいくとは限りませんからね。ダメだった時は、野坂実のせいですから。
水島 ハハハ!
――山寺宏一さんをして、「笑ってもらえるか」を心配なさることがあるんですね。
山寺 しますよ!
水島 もちろんしますよ!
――水島さんもですか?
水島 いや、しないけど(笑)。ただ、本当に一生懸命やらないと笑ってもらえないということは分っています。なので1回1回、本っ当に一生懸命やっています!
ノンストップどたばたコメディの舞台裏
――過去2作、そして今作も含め、イギリス発の典型的なドタバタコメディです。動きも多く、テンポも早く、走りまわる舞台ですね。
山寺 本当に大変なんです。情けない話ですが旗揚げ公演の時、僕は本番2週間前に肉離れを起こしてしまったんです。第2回公演では、裕さんがぎりぎりで。
水島 楽日に、肉離れの一歩手前までいってしまいました。
山寺 裕さんは打ち上げに来られませんでしたからね。一度家に帰ったら、痛くて動けなくなったと連絡があったので「いいですよ。もう終わったから。最後までがんばってくれてありがとうございました。楽しく飲むので大丈夫ですよ!」と。
一同 (笑)
山寺 そんな舞台なので、体力作りはしないといけませんね。裕さんは、だいぶ鍛えてらっしゃるんですよね? 1日に、かなりの歩数を歩かれるとか。
水島 歩くのは鍛えるためじゃなく、好きで歩いているだけなんですよ。あとは、台本。山ちゃんは台本をどうやって覚えてますか?
山寺 台本ですか? ……一生懸命、覚える。
水島 いやいやいや(笑)、家でどうやって覚えます? 座って覚えます?
山寺 色んなパターンはありますけれど、前回は、歩きながら覚えましたね。
水島 同じ。僕、歩きながらじゃないと覚えられないんですよ。台本をちょっとみては覚え、見ては覚えながら歩くんです。赤坂から巣鴨まで歩いたこともありました(一同、どよめき)。ぶつぶつ言いながら歩いているので、怪しいですよ(笑)。
山寺 怪しいオヤジですけれど、通りすがる人には一瞬すれ違うだけですからね。
水島 確かに!
山寺 あとは公演期間中、2人で(声の)病院に行ったことがありました。舞台は全力でやりますし、テンション高く喋る台詞もいっぱいあるものですから、身体も声もギリギリになるんです。完全に声が出なくなったら恐いので、そうなる前にケアにいったんです。
――ご一緒に?
水島・山寺 たまたま!!
水島 病院に行ってみたら、偶然隣にいたんです。「えー?! なんで山ちゃんが隣りにいるの??」って。よりによって担当の先生も同じで、順番も前後の並びだったので、隣り同士で点滴を受けることになりまして。
山寺 カーテン越しに「大丈夫―?」「あと何分―?」って。稽古場も本番も一緒で、病院も一緒で、あれだけ患者もいっぱいいるのに、何で前後なんだ?って。
――舞台裏さえ、コメディのワンシーンのようです。
水島 でも、そうやって作っているところが見えちゃいけないのが、コメディですからね。なので、全然そうは見えないように一生懸命準備していきます。
山寺 舞台でみなさんを笑顔にできるように、声も体も鍛えておきます!
――11月の公演が楽しみです!最後に、読者の皆さんにお誘いのメッセージをいただけますか?
水島 とにかく憂さ晴らしに、大笑いしに来てください。笑わせる自信はあります。笑顔で帰らせる自信があります!
山寺 おかげさまで1回目、2回目と好評をいただき、こんなにたくさんの方が笑顔になる状況を人生で初めて体験したといってもいいくらい、幸せな経験をしました。3回目もそうなるべく、がんばります。ぜひ爆笑体験をしに、博品館劇場にきていただきたいと思います!
演劇ユニット「ラフィングライブ」の第3回公演「Cash on Delivery(キャッシュ・オン・デリバリー)」は、2017年11月29日(水)より5日間7公演、博品館劇場にて上演。
取材・文=塚田史香 撮影=安藤光夫
■公演期間:2017年11月29日(水)〜12月3日(日)
■劇場:博品館劇場
■作:マイケル・クーニー
■翻訳:小田島恒志
■演出:野坂 実
■出演:
⼭寺宏⼀/
⾼垣彩陽、岩崎ひろし、横島亘、斎藤こず恵、折笠富美⼦、
⼩形満、⾼橋広樹、越川詩織/
⽔島 裕
■公式サイト:http://www.nelke.co.jp/stage/laughinglive3/