開幕まもなく！ アルゼンチン発のエンタメイベント『フエルサ ブルータ』最新作の稽古場に潜入

『フエルサ ブルータ』最新作は、副題「WA！-Wonder Japan Experience」の通り、“日本”をテーマとした作品になっている。

2017年8月1日より東京で世界初演を迎える本公演は、芸術監督のディキ・ジェイムズが日本にインスパイアをうけ、「芸者や侍のコンセプトや、絵やお祭りなど、日本の伝統的な要素を紹介したい」と、構想に10年をかけたという注目作。世界500万人が熱狂している体験型エンターテインメントは2017年、“日本”を掲げて一体どんなパフォーマンスを見せてくれるのか。

その実態を探るべく、出演者たちが集まる稽古場へ向かった。

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この日、行われていたのは和太鼓の練習。ディキ芸術監督の考える「日本の伝統的な要素」には、どうやら和太鼓という日本ならではのリズム・音を奏でる楽器が含まれているようだ。

稽古場に入ると男女あわせて10人ほどの出演者たちが、大・中・小さまざまなサイズの和太鼓が並ぶ部屋で、何分後かにおこなわれる通し練習の確認をしていた。太鼓の音を口で発しながらリズムを確かめる男性陣、バチを持って叩くフォームを互いにチェックしあう女性陣、男女で叩く太鼓のサイズと形が異なるため全体のバランスはもちろん、男性陣と女性陣それぞれのバランス調整も必要なのだろう。

「WA!」のタイトルよろしく“和”太鼓か！と、和太鼓奏者を集めたチームの練習日なのだろうと思っていた筆者だが、公演関係者の方にお話しを伺ったところ、「今日練習している人たちが和太鼓を叩く人全員ではないんです。まだまだ人数がいるんですよ。指導してくださる先生の下で日々、みんな練習しています。全員が和太鼓経験者というわけではないので、時々怒号がとぶこともあります（笑）」と教えてくれた。和太鼓チームではなかった。

『フエルサ ブルータ WA！』の出演者は、様々な分野のスペシャリストでありながらも厳しいオーディションを潜り抜けたツワモノたちだ。和太鼓奏者も出演者の中にいないことはないだろうが、本公演では、個々の得意分野以外のパフォーマンスも求められると言う。世界が注目するエンターテインメントとは、世界に通用する、認められるエンターテインメントであることと同意だ。全員でつくる公演。全員でやるパフォーマンス。“どんなことにも挑戦する”その姿勢は、「BEYOND TO THE NEXT LEVEL」という公演のキャッチコピーが良く似合う。

いよいよ和太鼓が使用されるシーンの全体練習が始まる。さきほどまで笑顔で話し合っていた出演者の顔つきが変わった。

一般的な稽古スタジオで、一流のショウの一部を見た。「“日本”がテーマのイベントで和太鼓なんてありきたりだ」と考える人もいるかもしれない。筆者も正直そう思っていた。でも、高揚感がある。少しワクワクしている自分がいる。日本で生まれ育った自分にとって身近であったはずの“日本の伝統文化”に興奮していた。

初日開幕まであと少し。ショウの全貌が観られるまでもう少し。
「WA！」っと驚く、予測不可能のすごいヤツが忍者のごとく忍び寄ってきているのだ。

取材・文＝田口紫穂　動画撮影＝登坂義之