フジロックに初出演するイーデン・カイにインタビュー 「テラスハウスに出演した反響は、思っていた以上に大きかった」
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イーデン・カイ
テラスハウスのハワイ編「TERRACE HOUSE ALOHA STATE」に出演(現在は卒業)した、ギタリスト、ウクレレ奏者、シンガー・ソングライターのEDEN KAI(イーデン・カイ)が、日本デビュー・アルバムとなる『Music For You』を先月リリースした。プリシラ・アーンの来日公演のサポート・アクトとして登場した際に初めてライヴを観たが、18歳とは思えない、落ち着いたステージングとテクニックの高さに驚き、表情豊かな演奏と歌に引き込まれた。フジロックフェスティバルへの初出演を控えた、今注目のアーティストに話を訊くことができた。
――本名の「鮎澤悠介(あいざわゆうすけ)さん」としてイーデンさんのことを知っている方も多いと思いますが、まずは、イーデン・カイというアーティスト・ネームについて教えてください。
「イーデン」って日本語にするとエデン、楽園、創造という意味があるので、色々な場面を想像してもらいたいと思ったのと、「カイ」っていうのは、お母さんが内モンゴル出身で、そこには7つの星というのがあるんですが、一番大きい星が「カイ」らしく、そこからつけました。鮎澤悠介ってパッとしないので……
――パッとしないことはないですよ!
やっぱり聴いて、「あ、こいつだな」って思ってもらえるような、わかりやすい名前の方が良いかなと思って。
――音楽にはいつ頃から触れていたのですか?
そうですね……音楽自体は、親が洋楽とかを好きだったので生まれてからずっと聴いていた感じではあるのですが、歌を5〜6歳の時に始めまして、ヒップホップとか、ダンスも当時は学んでいたんですけど、ハワイに引っ越すにあたって(全部)やめちゃったので、なかなか歌う機会がなくて。実は、テラスハウス内で歌った「モノガタリ」が4〜5年ぶりのヴォーカル・オリジナル曲なんです。中学の時には吹奏楽部でトロンボーンとかをやっていたんですけど、トロンボーンなり、チューバやトランペットって、口につけて音が出るじゃないですか。その時は歌をやっていたので、歌と一緒に出来る楽器があったら良いなぁと思ってYoutubeでギターの動画を色々見ていて……、それがきっかけですね。ウクレレは、ハワイに引っ越したあと、高一から始めました。
――家では常に洋楽が流れていたとのことですが、どんな曲が流れていたのですか?
お父さんはプリンスやマイケル・ジャクソンが大好きで、自分も小さい頃から憧れがありました。ステージに立つだけで勢いがあるというか、迫力がある。ステージに立っただけで観客がワーワーキャーキャー言う。その自信満ち溢れるオーラ。いつか会ってみたいという夢をもっていて、それはもう叶いませんが、マイケルやプリンスは今でもリスペクトしています。
――マイケルやプリンス以外にもハマったアーティストはいますか?
マイケルやプリンスが原点で、やはり世代的なものもありまして、基本何でも聴くんですけど、インストも好きですし、クリス・ブラウンなどのR&Bも好きです。歌に気持ちが込もっているアーティストが好きですね。ギターだと、アンディ・マッキーという演奏者がいるのですが、その方をYouTubeで見かけたのがギターを始めたきっかけです。色々と聴いています。
――いつ頃ミュージシャンになろうと思ったのですか?
5〜6歳の頃から歌手なりたいと夢見ていました。音楽が好きだということはその後もずっと変わらずでしたが、学校の成績が悪かったりすると、やっぱり大学に行った方が良いのかな、現実的ではないのかなって、その思いがブレたことはありました。一番の大きな転機はハワイに引っ越すという選択をしたことですね。言語も変わりますし、自分にとっては大きなチャレンジでしたが、引っ越したことによって、人生が180度変わりました。テラスハウスに住んでいるときも、大学に行くべきかどうかの答えを探していて、一緒に住んでいたキャストのみなさんとも話していたんですが、結局高校最後の年に、大学は行かずに自分の音楽を貫いていきたい、死ぬまでずっと音楽をやっていきたいと思うようになりましたね。
――言語が変わると順応するのも大変ですよね。
父が日系でオレゴン州出身なんですが、大半は自信の問題だと思います。大丈夫だと思う気持ちが多少あったのですが、引っ越したばかりの頃はあまり喋れなくて、英語ってコミュニケーション力が大切だと思いました。現地の子たちとどれだけ分かち合えるかというのが大きな目標だったのですが、みんな優しくて、一から色々と教えてくれて、ちょっとずつ自分に自信がつきましたね。
――日本に住んでいた時と比べて、ハワイに引っ越してから、性格的にオープンになったりしましたか?
結構なりましたね。中学の頃は空気みたいな存在で。同じ部活の吹奏楽部の仲の良かった子たちと騒いだりはしましたが、あまり目立つタイプではなかったですね。ハワイに引っ越して、テラスハウスに入る前の段階で既に、自分が変わったと思ってはいたのですが、(テラスハウスに)住んでからもっとオープンになりました。異性と喋ることに関してもです。テラスハウスのメンバーは、みんなそれぞれやりたいこと、目標とか夢とか、成し遂げたいこととかがあって、良い経験になりました。
――テラスハウスで暮らしたことは、創作活動にも影響しましたか? 本当だったら人には知られたくないような内面的な部分も見せちゃったりするのは、もしかして曲をつくることと共通するところもあるのかなぁと思ったのですが、いかがですか?
2ヶ月間住んでいてどういうことがあったかは、「モノガタリ」がそのままですね。住み始めた頃は、本編を見ていただければわかってもらえると思うのですが、人に嫌われることが怖かったんです。でも、そのような気遣いは要らなかったということですかね。素直になって自分自身を出してまわりと関わっていったほうが、お互いに良い。嫌なことがあったときにも相談できるようなルームメイトは大切だなと思いました。
――イーデンさんの作品は、ハワイの風を感じられるような心地良いサウンドですね。
色々なアーティストに影響されてはいるのですが、最終的には自分なりの音楽をつくっていきたいと思っていて、ウクレレに関しては、「こういう曲も出来るんだよ」ということを一番伝えたいです。ウクレレと言えばハワイ、ハワイといえば、トラディショナルな曲を想像する人が多いかもしれないですけど、自分が一番やりたいのは、ウクレレを出来るだけ多くの人に届けたいというのがありまして、そういう弾き方(トラディショナルな曲)だけではなく、こういうやり方があるというのも知ってもらいたいです。「ポップ」のポジティブな点というのは、誰からも好かれやすい、解りやすいジャンルの音楽であるということなので、「ポップ」を通じて、自分の音楽を届けられたらというのが今の目標ですね。
――今回、ウクレレのワークショップを開催するのはそういった思いもあるのですね。
そうですね。ウクレレを実際に体験して頂けたら、もっと身近に感じて楽しんでもらえるかなぁと思って。はい。
――ウクレレの魅力はどんなところだと思いますか?
基本はギターと同じ弦楽器なんですけど、簡単にいうとボディーの、本体のサイズが小さくて、弦も4本だけということで、ギターに比べて非常に弾きやすいですし、コードとかも数個覚えるだけで曲が弾けたり、歌ったりできます。あと、コンパクトなので、旅行される時に楽器を持っていきたいという方にもオススメです。
――全くの初心者でも頑張れば弾けるようになりますか?
いつでも遅くないと思います。進路とか、夢とかも、いつでも変えることができると思うので。
――ハワイ出身のウクレレ奏者というとジェイク・シマブクロがいますね。以前お話しを伺った時に、ウクレレの持つ可能性を最大限に引き出したいとおっしゃっていたのが印象に残っているのですが、イーデンさんはウクレレを使ってこんなことをしたいというのはありますか?
ウクレレという楽器は、ある程度までは届いていると思うのですが、自分なりのやり方でウクレレを使って、今すごく有名なジャスティン・ビーバー、アリアナ・グランデなどのレベルまで持っていきたいです。音楽には色々な可能性があると思います。音楽にルールはないし、国境もないというのが伝えられたらと思っています。
イーデン・カイ
――デビュー・アルバム『Music For You』は、以前リリースされた2作品『Touch The sky』と『Feel The Earth』の中からの楽曲と新たにレコーデイングされた曲で構成されているのですね。どんな思いを込めたアルバムですか?
日本でのデビュー・アルバムになりますけど、簡単に言うと、自分の自己紹介みたいなアルバムです。テラスハウス内で弾いた曲とか、みなさんに気に入ってもらっている曲も入っていて、インストの曲もヴォーカルの曲もあります。テラスハウスで BGMとして流れている曲をカバーしていたりもしますし、これから活動していくにあたって、「こういうものを作っています」というのを多くの人に知ってもらいたいという気持ちを込めました。
――テラスハウスの中で歌ったヴォーカル曲なども、このアルバムのために新たに入れた曲ということですね。
そうですね、「モノガタリ」も入っていますし、「I’m Home」も。実は「I’m Home」は色々意味がありまして。東日本大震災の時に、宮城県石巻市から「第2勝丸」というボートが ハワイに流れ着いて、ハワイの人が修理して送り返したという話があり、それについての曲です。「Fill The Space」は、3曲目の「Dearly」に歌詞がついたらどんな風になるんだろう……と良く人に言われていたので歌詞をつけたり、「Music For You」もオリジナルです。経験を元にした曲もあれば、ハワイの景色をみて思いついた曲もあるので、良ければぜひ聴いてください。
――どんなときにインスピレーションが降りてきたりするのですか?
突然ですね。全くない日もあれば、急に曲を作りたくなる時もあります。ギターを弾く時もそうなのですが、無理をしないことが大切かなと思います。嫌いなことを嫌々続けてても、何をやっているんだろうという気持ちになりますし、本当に好きでやっているということを自覚した上でやった方が長続きしますし、楽しいです。
――歌詞がある曲とない曲がありますが、この曲には歌詞をつけよう、これはインストにしようなど、どのように決めるのですか?
「Dearly」は(テラスハウスの)メンバーに絶対に歌詞をつけた方が良いよと言われていたし、いずれは歌詞をつけてみたいと何年か前から考えていました。インストも大好きなんですけど、最近テラスハウスがきっかけで歌詞を書いたということで、歌詞があると人にもっと届きやすいのかなと再確認したので、これからまたヴォーカル曲を増やしていけたらなと思っています。
――テラスハウスのエンディング・テーマ、スノウ・パトロールの曲も入っていますね。他のアーティストの楽曲をカバーする時に心がけていることはどんなことですか?
原曲はもちろん尊重したいのですが、自分らしさだけはなくしたくないということを意識しています。
――テラスハウスに出た反響はやはり大きかったですか?
結構……思っていた以上に大きかったですね。こんなに大きいんだな……という気持ちでした。出て良かったです。本当に。
――既に4〜5年はハワイに住んでいるとのことですが、日本からお友達が来た時に「僕はここへ連れて行く」というおすすめの場所はありますか?
「チャイナウォールズ」という場所が好きです。実家や高校から近くて、泳ぐ場所ではないのですが、景色がとても良いんです。段差があって、そこから見える海の景色が良くて、たまに曲をつくるきっかけになったりもしているので連れて行きたいです。あとは、ワイキキとかアラモアナとか普通の観光スポットが良いですかね。日本語を話せる方もたくさんいますので。
日本でハワイブームがあるように、ハワイも日本ブームがあるみたいで、おにぎりやさんとか出来ていたりします。自分が通っていた高校でも日本語を習う人が増えているみたいで、そこで日本語を教えている先生がテラスハウスを好きで授業で流していたそうなんです。高校卒業一週間前まで知らなかったんですけど、なんで他の生徒から見られるんだろうとずっと思っていて。日本語を習いたいという人が増えたり、日本のアニメとかドラマとか曲とかに興味を持ってくださる方がここ数年でまた多くなっている気がしますね。
――さて、5月にはプリシラ・アーンの来日公演のサポート・アクトとして登場されていましたね。シャイな印象を持っていたので、ステージ上で観客を惹きつけるオーラといいますか、良い意味で、18歳とは思えない貫禄というか、イメージの違いにちょっと驚きました。そのギャップにグッと来る人も多いのではないかと思います。ステージに上がる時は「よし!」と、ライヴ・モードに切り替わるのですか?
出来るだけ観ている人に楽しんで頂きたいので。自分も弾きながら楽しんでいるので、多分そういうこと(それが伝わっているの)だと思います。昔は結構恥ずかしいという気持ちもあったのですが、何回かやるにつれて、だんだん楽しめるようになってきました。
――「こんなアーティストになりたい」というヴィジョンはありますか?
楽器がやっぱり好きなので、これからも使い続けて、ポップなものも好きですし、いろんな人と共有したいのですが、違う感じの、覚えてもらえるような音楽をやりたいですね。あとは、日本も好きなので、何回も来たいのですが、最終的にはインターナショナルに活動できるアーティストになれたら良いなぁと思っています。
――最近ハマっている曲はありますか?
チャーリー・プースの「Attention」がすごく良い曲で、好きです。最近流行っている音楽はなぜかしら昔のスタイルに戻っているものが多くて、ブルーノ・マーズとかも、80〜90年代のディスコといいますか、その世代の人が喜んだりしてますよね。あと、今どきあまりない音楽では……シーアとかも。周りの人とは違う、ユニークさを持っているアーティストが注目されるんじゃないかと思います。
――「イーデン・カイ」しか出来ない音楽を作っていきたいということですね!
はい、がんばります!
――最後に、今年の夏はフジロックに出演することが決定していますね。「フジロック」のことは知っていましたか? どのような印象を持っていましたか?
名前はよく聞いていて、参加したことはなかったんですがいろいろ調べてみたら、どれだけ大きなイベントかというのを再認識して、これヤバイな、すごいなって、ビックリしました。ラインナップを見てみたら豪華な方ばかりで、その一部になれたというのがすごく光栄です。
――普段音楽フェスは行きますか?
あまり行く機会はないですね。でも、出られるというのが凄く嬉しいです。
――出演も、お客さんとしても初めてのフジロックになるわけですね。ライヴを観たいと思ったアーティストはいましたか?
もう、誰でも観たいですね。知らないアーティストでも、聴いている人に「もう一度聴きたいな」と思わせることが何かしらあると思うので、観たいですね、時間があれば。すごく楽しみにしています。
――先ほどちょっと名前が出たジェイク・シマブクロさんも同じ日に出演しますね。会ったことはありますか?
一度お会いしたことがあります。すごく優しい方で。共演とかはぜんぜんしたことがないです。同じ日に出られるということで、観られたら良いなぁと思っています。
――ご出演される木道亭というステージは、(WHITE STAGEからFIELD OF HEAVENに向かう)ボードウォークの途中、森の中にある素敵なステージで、イーデンさんのサウンドにぴったりな気がします。
写真みました。スゴイ、スゴイです! 新しい何かが始まりそうです!
――フジロックでライヴ以外に楽しみにしていることはありますか? 食べ歩きとか……
食べ歩き、出来たらしたいですね、混んでなければ。でも絶対に混んでそうですよね(笑)。
――混んでるとは思いますが(笑)......、初のフジロック、楽しんでください!
はい、楽しみます!
イーデン・カイ
音楽に対しての思いを熱く語ってくれたイーデン・カイさん。これからの更なる活躍が楽しみでならない。今週末のフジロックをはじめ、この夏は多くのイベントに出演予定なので、話題のパフォーマンスをぜひ体感してほしい。
取材・文=岡村有里子
<プロフィール>
18歳の高校生・ギタリスト & ウクレレ演奏、シンガーソングライター、作曲、俳優。
1998年日本生まれ、ハワイ州ホノルル在住。三ヶ国語が飛び交う環境で育ち: 日本語、英語、中国語がトライリンガル。 3歳の頃からリトミック・クラス、5歳から劇団に入り、演技やダンスを学び、子役として日本のTV番組、CM等にも出演。 8歳頃からESPミュージカルアカデミー(東京) に入り、ダンス、ヴォーカル、ステージ・パフォーマンス等を習い初め、若干11歳ながら 初めてのオリジナル曲「世界の友達」 をチャリティー・ソングとして制作、リリース。 13歳頃からギターを習い始め、14歳の時(2013年)ハワイの高校に入学すると同時にウクレレも習い始め、16歳の時 2015年4月ハワイの各高校の代表が出場するタレント・ショー「Brown Bags to Stardom 2015」大会で優勝。ブルーノ・マーズ、ジェイク・シマブクロ、伊藤由奈などが受賞してきた人気TVオーディション番組の2015年チャンピオンを16歳で受賞。同年 ギター・ソロ・デビュー・アルバム“Touch the Sky”を自主制作でリリース。 “Touch the Sky”は、39th Na Hoku Hanohano Awards 2016 の「 Instrumental Album of the Year」の最終選考の作品となった。 また第2回 2016ハワイ・ミュージック・アワード・ジャパン の「2016日本ハワイアン・アルバム特別賞」2016 Hawaii Music Awards Japan – Special Recognition Awardも受賞。2016年、「テラスハウス アロハステート」の初期メンバーとして出演し話題となっている。
日時:2017年7月28日(金)、29日(土)、30日(日)
会場:新潟県 湯沢町 苗場スキー場
※イーデン・カイの出演:7/29(土)16:20〜木道亭
http://www.fujirockfestival.com
■8/3(木) 『GYAO! SUMMER HOUSE SUNSET TIME ~EDEN KAI~』 @ 神奈川・江の島片瀬東浜海水浴場
https://gyao.yahoo.co.jp/special/summerhouse/
■8/5(土) 『なにわ淀川花火大会』 @ 大阪・淀川河川敷
http://www.yodohanabi.com/
■8/9(水)『Perspectives: イーデン・カイ×佐藤魁』 @ 東京・Apple 銀座
http://apple.co/2tLoUGq
■8/11(金)『ウクレレ・ワークショップ ライヴ』 @ 東京・永田町GRID
https://www.fujipacific.co.jp/after-work/vol02/
発売日:2017.06.21
品番:VICP-65449
販売価格:¥2,200+税
<トラックリスト>
01 HYPERBOLA
02 モノガタリ (Monogatari)〔アルバム・ヴァージョン〕 MONOGATARI [ALBUM VERSION]
03 DEARLY
04 MUSIC FOR YOU
05 5:00PM
06 THE GREAT UNKNOWN
07 BEAUTIFUL STARS
08 I'M HOME
09 SHE SAW ME DANCE
10 CHASING CARS
11 HONEY BABY
12 FILL THE SPACE
13 MEMORIES OF THIS PLACE