YUKI「函館、ただいま!」 “函館が生んだスーパースター”が地元・函館で変わらぬ笑顔を見せたツアー・ファイナル
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YUKI Photo by Yoji Kawada
YUKI concert tour“Blink Blink”2017
2017.7.22.23 函館アリーナ
広島グリーンアリーナ公演(4月29日)を皮切りにスタートした『YUKI concert tour“Blink Blink”2017』(全13公演)が、7月23日に函館アリーナ(北海道)でツアーファイナルを迎えた。
函館はYUKIが生まれ育ち、19歳まで暮らしていた街。バンド時代に何度か函館でライブを行っているが、ソロになってからは地元・函館でワンマンライブを行うのは2005年以来ということもあり、YUKIはもちろんのこと、3,800人の観客たちにも特別な高揚感をもたらしたツアーファイナル公演になった。
今回のツアーは今年3月にリリースした8thアルバム『まばたき』を携えたツアーではあったが、ソロデビュー15周年の年に行うツアーということもあり、YUKIは「15周年のお祭りをファンのみんなと一緒にお祝いしたい」という思いを込めて、新旧織り交ぜたメニューを用意。アルバム『まばたき』の1曲目を飾っていた「暴れたがっている」がライブの幕開けを告げる。“暴れている”でも“暴れたい”でもなく、“暴れたがっている”という瞬間の衝動を歌詞にしたこの曲は、ライブの始まりにとても似合っていた。歌詞に刻んだ“あなたがいたから私がいるんだ”という思いは、YUKIの中で決して変わることがないんだと、心から信じられる歌になった「プレゼント」。15年前に鮮烈な印象を残したソロデビュー曲「the end of shite」。ソロになったばかりの頃の不安と希望を刻んだ「プリズム」。(この曲を聞きながら、YUKIが『NHK紅白歌合戦』にソロとして初出場したときのことを思い出したファンもきっと多かったことだろう)。ライブに欠かせない曲へと成長した「ランデヴー」「ワンダーライン」「WAGON」。YUKIの新境地を開いてくれた「JOY」や「恋愛模様」など、イントロが流れた瞬間から曲タイトルやメロディがすぐに思い浮かび、客席にいるひとりひとりの人生や思い出と重なり合っている曲が、最新アルバム『まばたき』収録曲と共にメニューに並んだ。
YUKI Photo by Yoji Kawada
YUKIの「函館、ただいま!」の声に、すぐさま観客が「おかえり」と返してくれた場面、「めんこいっしょ?(笑)」「なまら楽しい」など、いくつもの函館弁が飛び出したMCや「言わせてもらってもいいですか? 函館が生んだスーパースター・YUKIです。これ、本当に函館で言いたかったから嬉しいです(笑)」というMCは、まさに地元ならでは。同会場で前日に行ったセミファイナル公演では「こんにちはニューワールド」で感極まり、涙を堪えながら最後まで歌いきったYUKIがいた。19歳まで暮らした函館には忘れることができないたくさんの思い出と出会いがある。今はなくなってしまった場所もあるだろうし、新しくできたものもいくつもあるけれど、ファイナル公演のMCでYUKIは函館アリーナの向いにある函館市民会館でピアノの発表会や成人式をやったことや、「全部知っている場所だから、すごく不思議で、すごく切ない感じがする」と言っていた。
自分一人で生きていると勝手に思い込んでいた10代の頃のYUKI。自分の中で膨らみすぎた感情を抑えることができなくて、いつも苛立っていたYUKIの思春期。そのもやもやした思いを毎日日記に書いていたことや、プロの歌手になりたいのに、どうしたらいいのかわからなかった自分が、この地元・函館にいたこと。YUKIは「それを思い出すのと同時に、すごく恥ずかしい記憶ばかり出てくる。(当時は)ぜんぜん上手く生きられなかった」と涙ぐんでいたけれど、「今もぜんぜん立派になんてなっていないけれど、私はここ函館にいたころとぜんぜん変わらないんだってことがわかった。私はずっと函館っ子で、函館が私を育ててくれたんだなって。私の核はここ函館でできているんです」「お父さん、お母さん、函館、私を生んでくれてありがとう」と言ったYUKIをみんなの優しい拍手が包み込んだ。
YUKIのライブはツアーごとにテーマを設け、そのつど趣向を凝らした衣装も大きな見どころのひとつ。今回は登場時に身に付けていたピンク色のふわふわもこもこの衣装から、大きなマントや羽飾りがどんどん取りはずされて、YUKIが次第に身軽になっていき、シルバーのトゲトゲがたくさんついた衣装で歌った「レディ・エレクトリック」では、大型スクリーンにリアルタイムで映し出されたYUKIの手や体から放電しているような閃光がいくつも放たれて、まるでYUKI自体がエネルギー体になっているかのようだった。後半の衣装は、これまで彼女があまり衣装では着てこなかったであろうデザインを施した、さし色の赤が効いた黒のパンタロンスーツで、新たなYUKIを感じさせてくれた。
「tonight」後のインターバルで、ウェイクボードに乗ったYUKIや風力発電の大きな羽に掴まっているYUKI、ロケットの燃料タンクにしがみ付いて月に行ったYUKIなど、クスッと笑える合成映像がスクリーンに流れる。「バスガール」ではスクリーンの中にバスガイドに扮したYUKIがいたり、この曲の最後には「はい、チーズ」の合図で、客席を背にして会場のお客さんと記念撮影をしたりと、楽しい映像演出がいくつも散りばめられていた。
YUKI Photo by Yoji Kawada
「JOY」のあとにY字型の花道の先にあるセンターステージに移動し、バンドとコーラス、トロンボーンとトランペットの2人が加わった編成で「Hello!」をアコースティックバージョンで届け、「私はいつでもなりたい自分を書いてきました。まだまだなりたい自分には遠いです。だからまだまだ歌詞を書いていくと思います」と言ったあと、アコギを弾きながら「相思相愛」を歌った彼女は「たぶん、今この会場の中で私がいちばん幸せ」と飛びきりの笑顔を見せた。“私にしか歌えない歌があるんだ”という決意と願いを、ツアーファイナルの地に選んだ地元・函館でも届けることができた「聞き間違い」。ペイントが施された白のフライングVを真っ赤なマニキュアを塗った指で力強くかき鳴らしながら歌った「鳴いてる怪獣」。コール&レスポンスが会場に華やかに広がった「WAGON」。ライブの最後に選んだのは、自分の気持ちのスタートラインを見逃さないようにと、YUKIが自分に向けて書いた手紙のような「トワイライト」だった。
地元・函館で暮らしていたころのYUKI、東京で暮らし始めたころのYUKI、そして現在のYUKIが、まるで1本の線で繋がっていているかのような「Blink Blink」のステージには、YUKIが歌い続けてこなければ生まれなかった音楽と歌と声があり、決して見ることができなかった景色があった。これからもYUKIはYUKIにしか歌えない歌を歌い続けるために、拘りと楽しさを両手に抱えて軽やかに進んでいく。この街で暮らしていた頃のYUKIも今のYUKIも未来のYUKIに繋がっているんだと思えたツアーファイナルだった。
文=松浦靖恵 撮影=Yoji Kawada
2017.7.22.23 函館アリーナ
2.プレゼント
3.ドラマチック
4.ハローグッバイ
5.名も無い小さい花
6.the end of shite
7.私は誰だ
8.こんにちはニューワールド
9.tonight
10.レディ・エレクトリック
11.プリズム
12.ひみつ
13.バスガール
14.メランコリニスタ
15.ランデヴー
16.ワンダーライン
17.JOY
18.Hello!
19.相思相愛
20.恋愛模様
21.2人のストーリー
22.聞き間違い
23.さよならバイスタンダー
24.鳴いてる怪獣
25.WAGON
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