A9 結成13年目で挑む、いままで見たことがない“Re:BornなA9”とは?
A9 撮影=西槇太一
8月2日にニューシングル「Re:Born」をリリースしたA9(エーナイン)。結成13年目、改めてここからはルーティーンな活動はもう終わりにして、いままで見たことがないような自分たちにRe:Bornしていこうと宣言した本作。将(Vo)と表題曲を作曲した沙我(Ba)に話を聞きながら、いままで見たことがないRe:BornなA9を探った。
13年やって、しっかりやるところはやって。これぐらいのメチャクチャさがあってもいいんじゃないかな。
――SPICEの動画企画の撮影もあったそうですが。やってみていかがでしたか?
沙我:また一つ大事なものを失いました(苦笑)。でも、それで何かを得た気がします。
――ならよかったです(微笑)。ではさっそく「Re:Born」について聞いていきたいと思います。歌詞の中に“赤”という色のモチーフが出てきますけど、今回は衣装も赤じゃないですか? アイデアとしてはどちらが先だったんですか?
将:衣装ですね。今回はまず13周年ライブ(13TH ANNIVERSARY LIVE “ALICE IN WONDEЯ LAND”)というのが念頭にあって。それを祝福するようなリリースをしたいという思いから制作が始まったんです。それで、僕らは結成1年目のときに『ALICE IN WONDEЯ LAND』というミニアルバムを出したんですけど。そのジャケットが赤い世界だったので、まずライブのタイトルをその作品とをリンクさせて、色のモチーフもあのときのジャケットと同じ赤い世界を貫こうと。そこから逆算して、衣装は赤だと。祝福する曲なら楽曲はメロディアスで明るい曲か、とか。歌詞にも赤を入れ込んでいった感じですね。
――そうだったんですね。リリース前にメンバー5人が赤い衣装を着て並んだド派手なヴィジュアルが公開されたときは、12周年のときの和装に並ぶインパクトを感じました。
将:そこは、去年『PARTY ZOO~Ken Entwiness Naughty stars~』のときにKenさんに「衣装が地味」といわれたことをいまだに引きずってるんだと思います(苦笑)。でも、そうおっしゃっていただいたことでA9はどうあるべきかを考えるようになったので。他のバンドさんでも真っ赤とか真っ白(な衣装)はやられますけど、僕たちにしかできないニュアンス。A9ならではの華やかな赤い世界を感じてもらえるヴィジュアルになったと思います。
――曲作りのほうはどうでしたか?
将:最初にちょっと明るくてポップなものを作って欲しいとお願いしたんですけど、その後にバンド内から演奏がカッコいい感じも欲しいという要望も出てきて。
沙我:曲を聴いてもらったら、そのミーティングで「もうちょっとカッコいい感じで」といわれ。いじっていった結果、気づいたらAメロが最初しか出てこないぐらい曲がいろいろ変わり。気づいたら転調もしてました(笑)。
将:結果「Re:Born」はプログレッシブなポップスに仕上がりました。
――沙我さんって明るい曲を作る印象ってあまりないんですけど。
沙我:明るい曲を作るのは一番難しいです。ロックな曲やダークな曲と明るいポップスを作るときの脳みその回路は全然違いますからね。勢いだけじゃいけないとか、明るいポップスは一番大変なんですよ。だから、学校の授業に例えると、ロック系の曲作りはずっと体育やってる感じでいいんですけど、今回は延々国語とか算数をやってる感じでした。
――結果この曲は国語や算数、体育まで、6時間授業の日みたいにいろんな授業が詰まった、これまでのA9にはないプログレッブなポップスになってしまったと。ちなみに、どこの授業が楽しかったですか?
沙我:個人的にはラストのサビが一番好きですけどね。
将:実際、レコーディングした歌もそこが一番いいよね?
沙我:うん。だけどあそこはめちゃくちゃキーが高いんですよ。だから、最後の最後にこの曲の一番おいしい部分を持ってきたんです。
――そこに行くまでの授業で、例えば1番のAメロだけ聴いた人は“おしゃれなダンスチューンかな?”と思う人もいるでしょうし。
沙我:確かに。どこの授業を聴くかで全然印象が変わりますね。1番まではまだ綺麗な曲を作ろうという意識が強かったんですよ。でも、その後はだんだん別の脳みそが働きだして、どんどんなんでもアリで突っ走ってって。“早く最後のサビに戻りたいよ”と思いながら展開していきました。
――その、なんでもアリのスタンスを最も象徴しているのが2番のポエトリーリーディングのパート。
将:沙我君からは「ここはラップのパートだから」ということでメロディーのないものをもらって、いろいろ試してみたんですよ。ものすごい熱い感じでちゃんと韻を踏んでラップしてるものと、最近のJ-POPでよくある、例えば水曜日のカンパネラみたいに言葉を滑らかにラップしていくものもやってみたんですけど。どっちも自分ではしっくりこなくて。僕はこの衣装のビジュアルも前もって分かった上で制作に入っていたので、ちゃんとしたラップをのせると熱苦しすぎてこのビジュアルには合わないなと思ったので、ビート感を減らして抑揚を抜いたポエトリー気味の手法にシフトチェンジしたら、やっとしっくりきました。よくよく聴いたら昔、沙我君がやってた感じなんですよね。
――ああ~。「ハロー、ワールド」で沙我さんがやってたポエトリーリーディングですね!
沙我:でもこれ、ライブでは将さんがサンボマスターになるんで。
将:サンボマスターを求めてるの?(笑)
沙我:そう(笑)。あのまんまのテンションでライブにはいかないと思うんだ。
将:ああ、確かに。
沙我:ライブでどんどん熱くなって声を張るようになって。気づいたらサンボマスターに。
――まさにRe:BORNなA9だ! ライブでは声を張り上げて愛を叫ぶ、そんな将さんがこの曲で見られるかもしれない、と。
将:かもしれないです(微笑)。ライブではエモーショナルになっていくと思いますからね。
A9/将(Vo) 撮影=西槇太一
――歌詞はどんなテーマで書かれたんですか? 特に2番で<知らない顔をした君と終わる物語>と歌っているところがすごく気になったんですが。
将:これは、いままでの君じゃない生まれ変わった君。Re:Bornした、いままで見たことがない新しく生まれ変わった君と終わる物語。ここでいってる“終わる物語”というのは、惰性で繰り返していた生き方を一度終わらせようということです。なので、この曲の中で繰り返し<ありふれた世界から抜け出して踊ろうか>といってるのは、これまでの惰性で繰り返してきた世界は一度終わらせて、いままで見たことがないような顔をしたRe:Bornした君と一緒に行こうよ、という意味なんです。
――あー、そういうことだったんですね。ありがとうございます。ライブもこの曲が加わることでRe:Bornして新しい盛り上がりが作れる、そんな景色が想像できますね。
将:そう思ってます。あまり前例がないタイプのシングルなので“難しいかな?”と思ったんですけど、試聴を始めてみたらファンの皆さんも戸惑うことなくいいの感じで受け止めてくれてたので。それを信じてライブでも打ち出していきたいなと思います。
――虎さん監督のMVはどうでしたか?
将:スタッフィングや撮影場所、小道具は僕が手配して、虎に監督をやってもらったんですけど。MVのなかに、赤い布がたなびいている前でメンバーのイメージシーンを撮ってるところがあって。これがめっちゃカッコいいんですよ。みんなフォトジェニックで、広告のワンシーンみたいな仕上がりだったので、自分のバンドですけど“スゴイな”と思いました。
沙我:SMAPの曲がCMに使われてた(資生堂の)TSUBAKIっぽいなと俺は思った。
将:MVの在り方もイノベーションを起こしたいなという思いがあって。もっとアーティスト主導で映像って撮られるようになるべきだと思うんです。なので、“ふーん、メンバーがやってるんだ”っていうところから、もっと新しい仲間を引き込んで、度肝を抜くようなものを作っていけるように虎にはなってもらいたいと思ってます。A9は、音楽的なところは沙我君にイニシアティブを取ってもらっていて、映像は虎、グッズはヒロト、その上でそろばん弾くのはNaoに任せて。そこまでアーティストの裏側が見え隠れするのはよくないと思う人もいるかもしれないけど、その分どこまでもメンバーの血が通ったものが作れるんですよ。
――メンバーがダイレクトに関わっているとそういうメリットがある、と。
将:ええ。そういうアーティストの在り方を僕らが提示して、若いアーティストにも“こうやれば自分たちでもできるんだ”という勇気を与えたいし。野菜を買ったら“この野菜は私が作りました”と、それを作った農家の方の顔が見えるじゃないですか? そういう風に作品を作っていきたいんですよね。いまの僕らは。
――なるほど。A9が考えるバンド論が見えるいいお話でした。では続けてC/Wについても聞かせて下さい。「UNDEAD PARTY(MEMBER VOCAL VER.)」の破壊力たるや、ある意味リードを食う勢いと存在感を放っていましたが。
沙我:ある意味これは裏リードです(笑)。みんなで歌ったら面白くね?っていう悪ノリが現実になっちゃいました。
――いままで1曲の中でメンバーが次々とリードを取って歌っていく曲ってあったんですか?
沙我:ないですね。初です。
将:最新アルバム収録曲をすぐにこうしてリカットする発想は洋楽っぽくていいなと思ったんですね。でも、この曲はツアーを通してお客さんの中では“最新”バージョンに仕上がっている訳だから、どうせ出すならそれに追い打ちをかけるような収録曲にしようということでこうなりました。これこそ、他のバンドが真似できない。個々のキャラクターが立ってるからこそできるアレンジだと思うんです。そういうことから目を背けてしまうのは逆に僕たちらしくないのかなと。それは『IDEAL』のツアーで特に痛感したところだったので。これは、いまのオーディエンスと僕たちの結晶が生み出したテイクだなと僕は思ってます。
――ボーカルのディレクションは沙我さんがやられたんですか?
将:歌の振り分けは僕が決めて。
沙我:その部分を、それぞれ自宅で録ってきてもらいました。案の定、勝手にアレンジして歌ってきたメンバーもいましたが。
――これ、1番はヒロトさんと。
将:掛け合いはNaoさんと、沙我君もやった?
沙我:いや。Naoさんの声がデカすぎて“いいや”と思って(笑)。
将:それで1番のサビはNaoさん。2番は沙我さん。
沙我:デスボイスも俺です。ああいうのを出してみたかったんで。
将:そして2番のサビが虎。
沙我:虎さんは高い声が出ないんでね。
――聴いててあまりにも楽しすぎてヤバイですね、これは。
将:13年やって、しっかりやるところはやって。これぐらいのメチャクチャさがあってもいいんじゃないかなと。
――Naoさんとか、歌から生き生きしてる感じが伝わってきますもんね!
沙我:そうっすね。
将:彼は僕よりも歌いたそうですから(笑)。
――ライブでは見られるんですか? このバージョンの「UNDEAD PARTY」は。
将:ワンマンでは求められちゃいますかね?
――ええ。そうだと思いますよ。
沙我:しかもこれ、演奏が同じバージョンで歌っても面白くないから、楽器持ってないバージョンでリミックスしてもらってますからね。リミックスで全員で楽器持たずに歌ったら、完全にSMAP状態ですよ。
――歌ってない間はどうしましょうか。
将:振り付けするしかないですよね(笑)。歌って踊る曲があってもいいかな、と。
A9/沙我(B) 撮影=西槇太一
――そこもRe:Bornする価値はあると思いますけどね。そうして、通常盤には「ROYAL BLOOD」を収録。いい曲ですね、こちらは。
将:ヒロト君が作曲したものなんですけど。沙我君がデモの中からこの曲がいいんじゃないかと選んでくれたものです。
沙我:たくさん溜まったデモを探していたら、ちょうどヒロトの曲でハマりそうな曲があったんです。“タイトル曲よりも私はC/Wが好き”という捻くれた人たちも唸らせる曲だと思います。ただね、ライブのときにヒロトがまた無茶いいだしたらどうしようという心配はありますけどね。
――それはどういうことですか?
沙我:ヒロトが作った「from KURAYAMI」という曲があって。それをやるとき「場内を真っ暗にしたい」っていってきたんですよ。今度は「ROYAL BLOOD」じゃないですか、「血を流したい」とかいい出したらどうしようかなと(笑)。そういう不安はあります。
――ここに収録された曲たちのパフォーマンスは13周年のライブで見られる訳ですよね?
沙我:ええ。「Re:Born」はこの13周年に向けてのシングルですから。このステージで、いろんなものが新たに生まれるライブになると思うし。周年ライブというのはそこから始まるものがいつも多いんで、いい意味でバンドが変化していくきっかけになるライブにしたいなと思ってます。
将:周年ライブは毎年やっているんですけど。僕たちを起点に繋がってるご縁というものがいろいろあって。ファン同士もまたこの周年ライブが再会できるタイミングになったりもしているので。毎年、周年は僕たちに関わってくださる人すべての人になにかしら意味があるものにしたいと思ってるんですよ。なので、もしこのインタビューを読んでいて行こうかどうしようか迷ってる方がいたら8月26日、新木場コーストに参加してください。お待ちしてます。まだ全然分かんないですけど、新木場コーストでは新たな発表をするかもしれないですし。
――では、その後のA9としての活動は?
将:9月20日に「Re:Born」と対比になるようなニューシングルをニュービジュアルでリリースします。こちらもご期待ください。
取材・文=東條祥恵 撮影=西槇太一
ヘアメイク=井出美幸
A9 撮影=西槇太一
2017年8月2日発売
デジパック豪華ブックレット仕様
<CD収録曲>
1:Re:Born2:UNDEAD PARTY(Member Vocal Ver.) 3:Re:Born(Inst)4:UNDEAD PARTY(Member Vocal Ver Inst)
<DVD>
Re:Born MV)
<CD収録曲>
1:Re:Born2:UNDEAD PARTY(Member Vocal Ver.) 3:Re:Born(Inst)4:UNDEAD PARTY(Member Vocal Ver Inst)
<DVD>
Re:Born SPECIAL INTERVIEW MOVIE)
1:Re:Born、2:UNDEAD PARTY(Member Vocal Ver.)3:ROYAL BLOOD
2017年8月26日(土)新木場studio coast
OPEN 16:30/START 17:13
スタンディング¥6,480(税込・ドリンク別)整理番号順入場
指定席(後方&2F)¥7,480(税込・ドリンク別)
(当日券は各種席¥500UP)
※入場者全員に13周年記念LEDライトと13周年記念写真集をプレゼント
A9 TORA BIRTHDAY ONEMAN 虎祭〜 TORA MATSURI〜
2017年9月17日(日)池袋EDGE
1部 OPEN14:30 /START 15:00
2部 OPEN17:30 /START 18:00
TICKET ¥5300 DAY ¥5800
・情報は後日発表
A9×BAROQUE 2マンライブ「Singularity」
2017年9月8日(金)Zepp DiverCity
OPEN 17:45 / START 18:30
料金:前売 全席指定席¥6,300(消費税込) ドリンク代別途
出演:A9/BAROQUE
<申し込みURL>http://eplus.jp/singularity/
その他ライブ情報、詳細はオフィシャルサイトへ http://a9-project.com/