開幕ラッシュのブロードウェイ、何を観る?

2015.9.18
コラム
舞台

「Playbill.com」新作PLAYBILLギャラリーより

英語を読まなくても評価と人気が分かる二つのお手軽ソース

今月8日に話題作『Spring Awakening(春のめざめ)』のプレビュー公演がスタートし、秋の開幕ラッシュがいよいよ始まろうとしているブロードウェイ。9月15日、演劇情報サイト「Playbill.com」上に、以下に列挙する新作14本分のPLAYBILL(無料パンフレット)表紙画像が一挙掲載された。※(M)はミュージカル、(P)は芝居

(M)Dames at Sea(1968年オフ初演のヒット作が初めてオン・ブロードウェイに)
(P)Fool For Love(サム・シェパードの人気戯曲をニーナ・アリアンダ主演で)
(M)Allegiance(日系人俳優ジョージ・タケイの自伝的作品にレア・サロンガが出演)
(M)Amazing Grace(同名の讃美歌の誕生秘話…が、10月25日での閉幕が早くも決定)
(P)China Doll(デヴィッド・マメットの新作をアル・パチーノ主演で)
(P)Old Times(ハロルド・ピンターの代表作「昔の日々」をダグラス・ホッジが演出)
(M)On Your Feet!(グロリア・エステファン題材のジュークボックスもの)
(P)King Charles Ⅲ(オリヴィエ賞を制したイギリスの新作がブロードウェイ入り)
(M)Hamilton(『イン・ザ・ハイツ』のリン=マニュエル・ミランダ作・主演の超話題作)
(P)The Gin Game(ピューリッツァー賞受賞コメディのリバイバル)
(P)Therese Raquin(ゾラの「テレーズ・ラカン」をキーラ・ナイトレイ主演で)
(P)Sylvia(A.R.ガーニーの人気戯曲をマシュー・ブロデリック主演で)
(M)Spring Awakening(2007年のトニー賞受賞作を手話を交えてリバイバル)
(P)Miseryブルース・ウィリスがブロードウェイ・デビュー)

このほかにも、人気映画がアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲で舞台化される『School of Rock』、ジェニファー・ハドソン出演の『The Color Purple』リバイバル、『屋根の上のヴァイオリン弾き』5度目のリバイバルなど、続々と新作の幕が開く。秋から冬にかけてニューヨークを訪れる演劇ファンにとっては、この評価の定まっていない作品群のなかから何をどうやって選ぶかが悩みどころだろう。王道はもちろん、劇評や口コミを一つひとつあたることなのだろうが、英語でそれをするのは面倒だし、ネタバレも避けたいし…という時、大いに役立つ二つの情報ソースを紹介したい。

「DID HE LIKE IT?」『ハミルトン』ページより

一つ目は、ニューヨークの大手新聞、雑誌、ウェブに掲載された劇評がまとめて読めるサイト、「DID HE LIKE IT?」。単なる転載やリンク集ではなく、その劇評が要するに「良かった」と言っているのか、それとも「普通」「良くなかった」と言っているのかを3段階のイラストで伝えてしまうという、失礼なほどに分かりやすいサイトである(しかもそのイラストはNYタイムズの名物演劇評論家、ベン・ブラントレー氏の似顔絵だ)。

もちろん全文へのリンクも貼られているので飛んで読んでもいいのだが、劇評というのはとかく分かりづらいものなので、まあなんというか、とりあえずイラストだけでもいいのではないか。上記14作品では、既に『ハミルトン』と『アメイジング・グレース』がアップされており、前者には“良かったベン”が5つ、後者には“良くなかったベン”が5つ並ぶという対照的なエヅラとなっている。

「Playbill.com」9月3~9日のグロス表より

劇評は基本的に本公演初日に書かれるものなので、「DID HE LIKE IT?」にプレビュー中の作品は掲載されない。何が人気を集めているのか、本公演開幕前に知りたい時に便利なのが、Playbill.com内の「Broadway Grosses」というページだ。その名の通り、全作品の週ごとの興行収入が羅列されているのだが、最後の2項目が何しろありがたい。

まず「% Cap.」を見ると、劇場キャパの何パーセントが埋まっているかが分かる。そして「Avg. Paid Admission」(平均入場料)を確認することで、正規料金で購入した本気の層と、tktsで何の気なしに半額を買ったであろう層の割合もなんとなく掴める。この2項目の組み合わせで、例えばキャプチャーで一部を示した先週なら、平均145ドルで100パー超えとはやはり『ハミルトン』強しだなかとか、『春のめざめ』は意外とtktsを駆使して80パー止まりなのか、などと人気度を推し量れるというわけだ。

評価や人気が高い作品と、自分が楽しめる作品は、必ずしも一致しない。だがせっかく開幕直後のタイミングで観るのであればやはり、願わくばトニー賞レースに絡むような作品を選んで、あとあと自慢したりもしたいもの。二つのお手軽ソースが、開幕ラッシュ中のニューヨークを訪れる方の参考になれば嬉しいし、筆者自身は訪れる予定がないので、イラストと数字を都度チェックしながら新作たちの寿命を勝手に占おうと思う。