来日直前! 日本人の血を引くダンス・ミュージック界の超新星、グリフィンとは?
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類い稀な作曲スキルに加えて、楽器まで自在に操るグリフィン(Gryffin)。マルーン5やイヤーズ&イヤーズのリミックスで注目を浴び、2016年にデビュー曲を発表。先日4枚目の最新シングル「Love In Ruins (feat. Sinead Harnett)」をリリース。初の単独来日が決まった彼の魅力に迫ります。
ダンス・ミュージック界の超新星グリフィンことダン・グリフィス。
ピアノやギター、シンセサイザーなどの楽器を自在に操るマルチプレーヤーは、マルーン5「Animals」やイヤーズ&イヤーズ「Desire」などのリミックスで、その類まれな才能を世に知らしめてきた。
リミックス作品から人気に火が付く、そのサクセス・ストーリーはカイゴ(Kygo)と同じ。近い将来にグリフィンもトップ・プロデューサーの仲間入りするのではないでしょうか?
そんな彼が最新シングル「Love In Ruins (feat. Sinead Harnett)」をリリース。絶好のタイミングで、2017年8月19日(土)にgryffin-japan-tour?event=&lang" target="_blank">初の単独来日が決定。
『ULTRA JAPAN 2016』『EDC JAPAN 2017』に続く、来日公演は盛り上がること間違いなし! というわけで、彼にこれまでの音楽遍歴などたくさん話を訊かせてもらいました。
――音楽にハマったきっかけを聞きたいんだけれど。ピアノ、ギターもできるし、バンドもやっていたんだよね?
ピアノは7歳の時から始めたんだ。クラシック音楽で、毎週レッスンをやってた。ベートーベン、モーツアルト、ショパンとかね。それで、11~12歳の時にギターをやろうと思って。そしたら親父がエレキギターを買ってくれて。クラシック・ロックが好きで、いろいろ曲を弾けるように練習したよ。
ハイスクールでは友達とバンドを組んでたね。音楽はずっと好きで、しばらくするとエレクトロニック・ミュージックを聴くようになったんだ。スクリレックスとかアヴィーチーとか、それまでそういう音楽を聴いたことがなかった。今まで聴いた音楽とは全く違ってたし、スゴく新鮮だった。それで自分でもああいう音楽をやってみたいと思ったんだよね。
――最初に衝撃を受けたエレクトロニック・ミュージックは覚えてる?
ダフト・パンクの『アラウンド・ザ・ワールド』だね。それまでどんなラジオでも聴いたことのない音楽だった。
それでスクリレックスとかスウェディッシュ・ハウス・マフィアがアメリカでも人気が出て来た時に、自分でもこういう音楽をプロデュースできたらいいなって思うようになったんだ。
音楽制作ソフトのエイブルトンをダウンロードして、音楽制作を始めたんだ。同じ頃、カレッジに通って電気工学の勉強を始めるようになった。音楽の方はそこまで追求するつもりはなかったんだ。メインは電気工学の勉強で、時間の空いた時に自分の部屋で音楽制作をやっていた。
エレクトロニック・ミュージックではあるんだけど、僕のバックグラウンドにある他の音楽からの影響も入ってる。ピアノやギターもたくさん入ってるしね。だから、僕の音楽はその二つの音楽要素のコンビネーションだと言えるね。
――電気工学の仕事をやりたかったの?
やりたかったのかなあ(笑)。 今となってはそっちに道に進まなくて良かったと思うよ。
――どこかの時点で、そっちの道じゃなく、真剣に音楽の道を行こうと思ったわけだよね?
最初は遊びで自分の音楽を発表したんだ。エリー・ゴールディングやミスター・ワイズのリミックスを作ってね。その当時はまだ趣味レベルだったんだ。
でもインターネットで発表したとたん、あちこちで取り上げられ、一気にファンがつくようになったんだ。「わあ、僕の作った音楽をこんなに気に入ってもらえるんだ!?」と思ってうれしかったね。
それでさらに音楽を作るようになって、続けて発表していたら、インタースコープ・レコードからメッセージが来たんだ。「キミの音楽をスゴく気に入ったので、リミックスをやってもらえないか?」とね。それでトーヴ・ローのリミックスとマルーン5のリミックスを引き受けた。
そこからはさらに広がって、いろんな人たちからメッセージが来るようになった。「ニューヨークでプレイしてもらえないか?」とか「ロサンゼルスでDJをやってもらえないか?」とかね。
そこで思ったんだ。これは自分の好きなことで仕事になるのかもしれないって。それで学校を卒業するタイミングで、電気工学の仕事をするのか、アーティストをやるのか、選択を迫られることになった。僕は音楽をやることに決めたんだ。音楽は子供の頃からずっと僕の情熱だったし、いま僕にはレコード・レーベルと仕事をするチャンス、ライブをやるチャンスももらえてる。これをやらない手はないなって思ったんだ。だから今やってるんだよ! 最高だね。その時の選択が違ってたら今ここにはいないだろうしね。電気工学をやってたらおそらく一生地元だったね(笑)。
――最初のライブは覚えてる?
もちろん。最初のライブはロサンゼルスのロキシーだった。緊張したね。人前でライブをやったのはハイスクールの時に友達とやってたバンド以来だから、ずいぶん久しぶりだった。
でも、最初の緊張が消え去ると、最高の楽しさが待ってるんだ。お客さんもみんな僕の音楽を楽しんでくれたしね。それで僕も最高ってわけさ。僕がヘッドライナーだったし、
――リミックス作品をいくつか発表した後、初のオリジナル曲を発表する時は、どういうアイデアがあったの?
リミックスを何曲か手がけてる時に、どんな曲でもそうなんだけど、僕はいつもボーカルだけ残して、他の音は全部外して、そこからリミックスを作り始めるんだ。
ボーカルだけにフォーカスして、そこからプログラミングを始めて、ギターを乗せたり、いろいろ声に合わせて音を構築していくんだ。オリジナル曲を作る時も、基本は同じやり方で作ってるんだ。ただ今はボーカルの歌詞とメロディ作りをもっとやってるんだけどね。
最初に発表したオリジナル曲の「Heading Home」はもともとはデモだった。ジョセフ・サルヴァトというシンガーがオルガン、ピアノをバックに歌ってるごくベーシックな曲だった。ジョセフからその曲を送られてきて、僕は一発で気に入って、彼にそれを伝えて、ボーカルのヴァースの1番だけ送ってもらったんだ。
そこから制作を始めて、ピアノ、ギターを乗せて、ボーカルもエディットした。ジョセフの方もヴァースの2番とかブリッジも作って、お互いに出来次第、曲を送り合うようになった。僕は当時ニューヨークで、ジョセフはロンドン。実際に2人が初めて会ったのは曲がリリースしてから半年後のことなんだ。
僕の2度目のライブがロサンゼルスのエル・レイ・シアターで行われた時に、彼がロンドンから飛んできて、ライブで一緒に歌ったんだ。そう考えるとインターネットの力ってスゴいよね。音楽を作る時に一緒の部屋にいなくてもいいんだから。
もちろん僕はバンドも経験してるから、メンバーみんなで作る喜びも知ってる。だけど、エレクトロニック・ミュージックっていうのは、もっと自分個人とつながってるものだから、一人で集中して制作したいっていうのはあるね。
――「Heading Home」は普通のエレクトロニック・ミュージックと比べて、温かいし、ソウルフルだし、MVを観てもそこにはストーリーがあるよね。
あの曲は今でも誇りに思うよ。最初のオリジナル曲だし、スゴく大きな意味がある。歌詞もパワフルだし、ソウルとハートを込めて作ったんだ。
――オリジナル曲の2曲目は「Whole Heart」だよね。「Heading Home」とはまた違う美しい曲なんだけど、この曲のアイデアは?
この曲は1曲目と制作スタイルを変えたんだ。ボーカル、リリックにスゴいエモーションが込められている。僕はいつもと少し違うことをやってみようと思って、アコースティック・ギターを使ったりしたよ。
基本、ギターで曲を作って、そこにエレクトロニックの音を肉付けしていった。曲が完成した時に、シンガーのバイポラー・サンシャインに歌ってもらったらいいなと思って、彼に曲を送ったら、すぐに気に入ってもらって、翌日には録音して、僕に送って来たんだ。
もうそれを聴いた時点で完璧だったよ。それを1ヶ月後にリリースしたってわけさ。スゴく楽しい制作だった。バイポラーは今では親友だしね。今はロサンゼルスに住んでるし、コーチェラ2017でも一緒で、ステージで歌ってくれたよ。
――3曲目の「Feel Good」は?
最初に、この曲のシンガーであるデイヤから曲をもらったんだ。基本「Heading Home」と同じだよ。彼女の歌とピアノだけだった。彼女の声が良くてすぐに曲を気に入ったんだ。ちょうど僕はアメリカでのツアーを終えたばかりで、コロラド州デンバーにいた。この曲のもう一人のプロデューサーであるIlleniumのニックがデンバーに住んでたから、ライブの後に彼の家に車で行って、一緒に曲を制作したんだ。それをデイヤに送ったら、超気に入ってくれて。ロサンゼルスに戻って、僕と彼女、トビーの3人ですべてを完成させたよ。ブリッジ、ヴァースの2番を書いて、曲をまとめたんだ。この曲もスゴく気に入ってるよ。
――楽曲制作についてもう少し詳しく聞きたいんだけど、アイデアを思いつくところも含めた制作プロセスはどのような感じなのかな?
曲にもよるね。大体はピアノ、ギターから始めるね。いや、ピアノがほとんどかな。ピアノは自分が一番弾いてて落ち着く楽器だから、何時間でも弾いていられるんだ。弾きながらいろいろアイデアを考えるんだけど、そこからボーカル、リリックとハマるところを見つけていくんだ。そこで曲のエモーションを間違いなく表現できるポイントを見出すわけだ。
そこにギターを乗せて、ラインやメロディを作っていく。もう基礎はできるから、エモーションをエレクトロニックで肉付けしていくんだ。常に本物の楽器で曲を作って、そこにエレクトロニックで肉付けして、より大きなサウンドにしていく。そういうプロセスになるね。
――ピアノやギターの音にエフェクトがかかって、そこから音世界が広がっていく感じがする。
まさにそうなんだ。だからエレクトロニックなんだけど、オーガニックでもある。エフェクトっていうのは、音を広げるため、音をより強く、より大きくするために使っているんだ。より3Dにするためにね。
――楽曲だけでなく、歌詞、アートワーク、映像とすべてが一つの世界観でつながっているんだけど、そこに関してのアイデアは?
アートワークに関しては、ジェームズ・ワードローというロンドンにいるアーティストにやってもらってる。アイデアはいろいろあるんだけど、すべてが同じ世界観でつながっていてほしい。曲のエモーション、アートワークのエモーション、歌詞のエモーション、そのすべてが一致していてほしいんだ。アートワークをやってもらってるジェームズには曲のビジョン、美学を理解してもらってそれを形にしてもらってるよ。
歌詞に関しても、僕は必ず作詞に関わってる。歌詞はエモーショナルで高揚させてくれるものにしたいからね。もちろん憂鬱だとか悲しみといった感情もある。だけど大筋で言えばハッピーで高揚させてくれるメッセージを入れたいんだ。そこはオリジナル曲の基本的なテーマでもあったりするね。
聴き手に音楽の中に入ってきてほしいし、エモーションのつながりを感じてほしいし、自分自身のことをもっと良い気持ちでとらえてほしいから。ポジティブなメッセージが基本なんだ。
――ライブはどういうスタイルでやってるの? ステージでギターを弾いたりしてるよね。
ライブではステージでプレイする楽器のパートを外したバックトラックを用意するんだ。例えばイヤーズ&イヤーズの「Desire」のリミックスだったら、ギターの音のキャラが立ってるから、トラックからギターの音を外して、ライブで僕がギターの音を弾く。
ライブ向けのエディットもけっこうやるね。そうすれば観ているお客さんも同じ曲でも違う体験ができるから。ステージではドラム、ピアノ、シンセサイザー、ギターをなるべくプレイするようにしているよ。ダンス・ミュージックではあるんだけど、生演奏、パフォーマンスの要素は入れている。DJが両手を宙に上げるようにね。
僕としても昔やってた演奏を今もできるのも楽しいし、お客さんにはエレクトロニック・ミュージックに何かプラスしたスペシャルなものを見せたいんだよね。せっかくショーに来てくれてるんだからさ。両手を宙に上げる以上のことを見せたいんだ。
――今のエレクトロニック・ミュージックのシーン、いわゆるEDMについてはどう思う?
良い居場所だね。面白いし、常に変化している。ヒップホップと比較するのが正しいのかどうかわからないけど、僕にとっては似たような感覚があるね。スゴい勢いで広がって、誰もが同じような音楽を作って、同じことの繰り返しだから、みんな飽きてきてる。
だけど、今また新しいフェーズに突入したような感じがするんだ。ディープ・ハウス、フューチャー・ベース、ダブステップとか、いろんなジャンルがあって、スゴく広がりを見せてるよね。みんなが今エレクトロニック・ミュージックの中でもどういうタイプの音楽が好きなのか発見している感じがするね。
だからEDMって言葉は、どういう音楽なのか言い表すには大きすぎるものになってしまった。だけど、良い居場所だよ。今や新しくてクレイジーなものじゃなくなってしまったけど、進化してるし、ひとつの人気音楽ジャンルになったんじゃないかな。それこそヒップホップのようにね。
――そう言えば、Soundcloudで「クラウド・ハウス」とタグをつけてたよね?
そう、しばらくつけてたね! 高揚させる音楽、ポジティブな音楽を目指してたから。よくぞ聞いてくれたね(笑)。
――音楽以外の趣味は?
スポーツが好きだね。あと、犬かな。小さなフレンチ・ブルドッグを飼ってるんだ。旅も好きだね。仕事じゃなくても休暇で旅に出るよ。ファッションも好きだな。
今住んでるロサンゼルスにはクリエイティブな人たちがたくさんいるから、そういう人たちが手がけてるブランドとも仕事をしてるよ。ハンドメイドの限定アイテムとかね。
日本のデザイナーとも何か仕事をしたいね。残念なことに僕は日本語を話せないんだよ。ママは日本出身の日本人なのにさ。そう言えば明日僕の日本人のいとこがライブを初めて観に来るんだ。彼らは僕のことを電気工学の学生としてしか覚えていないから、明日は驚くだろうね(笑)。
自分は半分日本人だから、もっと日本のカルチャー、日本のアーティスト、日本のデザイナーとつながっていきたいね。僕はライブでアップライト・ピアノを演奏するんだけど、そのピアノに日本のストリート・アーティストに何か描いてもらいたいな。ちょうど今アーティストを探してるところなんだ。アメリカにずっといた時は日本のカルチャーと接する機会は少なかったんだけど、今こうして世界中を旅して回れるようになったから、もっと日本とつながりたいね。
――ゆくゆくはどういうアーティストになっていきたい?
常に意味のある音楽を作っていきたい。ちゃんとしたメッセージのある音楽で、聴いた人がちゃんとエモーションのレベルでつながれるような音楽。もし自分にそれができるのであれば、僕はアーティストとして本望だね。いつかはグラミー賞も獲りたいね。
あと、他のアーティストのプロデュースもやりたい。まあ実際にはもう始まってはいるんだけど。それはグリフィン名義ではないんだ。グリフィンの新作としては、この夏、EPを発表するよ。すでに発表した3曲に新曲を加えた全6曲入りEP。それで来年頭にはアルバムを出したいね。
――ちなみに、グリフィンの名前の由来は?
本名のグリフィスにも関連してるんだけど、神話に出てくる鳥のような生き物をイメージしたんだ。「クラウド・ハウス」と同じで、高揚させる音楽、ポジティブな音楽を言い表すものさ。だから、僕一人じゃないし、僕の見てくれとかじゃない。僕は別にスターになりたいわけじゃないしね。
グリフィンの鳥がグリフィンの音楽を体現するものになればいいなと思っている。ダフト・パンクだってロボットだしね。そこにあるのは音楽だけだから。
――最後に、日本のファンにメッセージを。
もし僕の音楽を気に入ってくれたら、ありがとうと言いたいね。初めて僕の音楽に触れる人は、気に入ってもらえたらと思う。
日本のカルチャーは大好きだし、もっと知りたいし、もっと日本に来たいし、もっと日本でライブをやりたい。今回日本に来れたことには感謝しかないね。
Text by EDM MAXX編集部
オフィシャルサイト:http://gryffinofficial.com