再び4人体制となったフレデリックが『恋と嘘』主題歌「かなしいうれしい」に込めた決意
フレデリック 撮影=西槇太一
やみつきになるダンス・グルーヴが人気のロックバンド・フレデリックが、2ndシングル「かなしいうれしい」をリリース。テレビアニメ『恋と嘘』のオープニングテーマとして書き下ろした表題曲を含む今回の3曲は、新たに4人編成になった彼らが初めてリリースする作品として、今後、ファンの間では記憶されることになるだろう。今回の作品について、メンバー達が語る「新たな決意」「これからが楽しみ」という言葉からは、バンドが大きな転機を迎えたことが窺える。何かが始まりそうな予感。いや、それはもうすでに始まっている!
――2ndシングル「かなしいうれしい」は、フレデリックサウンドに対するみなさんの自信と、そこに止まらずに自分達のサウンドを広げていこうという意欲が感じられ、とても聴きごたえがありました。毎回、そうだと思うんですけど、今回も自信作なのでは?
三原康司(Ba/Cho):そうですね。(高橋)武くんが正式に加わってから初めてのシングルという意味で、自分達にとっても思い入れがありますから。メンバーが4人になった自信や、さっきおっしゃっていただいたことにもつながるんですけど、本当に今までのフレデリックはありつつもちゃんと現在の目線と言うか、メッセージを込めた等身大の曲ができあがったと感じています。
三原健司(Vo/Gt):この4人でやっていくぞっていう決意表明みたいなシングルです。
赤頭隆児(Gt):タイアップの曲なので、そのイメージもちゃんと入っているけど、ちゃんと俺らの曲と言えるものになっているので、自信はあります。
高橋武(Dr):うん。康司くんが歌詞の面でいろいろ考えてたもんね。それもあって、より開けた作品になったのかなって思います。
――やはり、今年5月に高橋さんが正式に加わったことは、バンドにとって大きな転機になったようですね。高橋さんは15年11月からサポート・メンバーとしてライブのみならず、レコーディングにも参加していたわけですが、正式メンバーになってから、サポートしていた時とは気持ちや取り組み方は変わりましたか?
高橋:そんなに変わらないんじゃないかな?って思ってたんですよ。サポートの頃からアレンジに対して提案もしていたし、3人も提案してほしいって言ってくれていたので、曲作りにも3人と同じ立場で参加していたんです。でも、正式にメンバーになってからは、単に提案するだけじゃないと言うか、そこに自分の判断も加わる。そこはけっこう変わりました。他のメンバーの提案を、自分がどう思うかも大事なんだなって。サポートだから客観的に見るようにしていた部分がメンバーになってからは要らなくなる場合もある。むしろ主観が大事になるんですよ。4人の意見の違いが、それぞれの個性として曲にも出てきて、おもしろい感じになってきたと思います。
――ところで、高橋さんを正式に迎え入れようと思った理由は、どんなことだったんですか?
康司:たくさんありますよ。まず人柄かな。武くんはバンドに対してずっと、そこまで思ってくれなくても大丈夫ってところまでちゃんと思ってくれるタイプだったんですよ。サポートとして加わってもらった時から友達みたいな感覚がずっとあって、気軽に話せたし、好きなバンドの話をしていてもすごく盛り上がれた。それと真っ直ぐなドラム・プレイ。それも大きかったですね。
健司:『OTOTUNE』から1stシングルの「オンリーワンダー」、フルアルバムの『フレデリズム』と音源にもかかわってもらってきたし、ツアーも2回、全国を回って、ワンマンも計3回経験している。そういう大事な瞬間を、武ちゃんと過ごしてきた中で、フレデリックがどんどん変わっていったような感覚があるんですよ。バンドとしてできる幅も広がったし、個々のスキルも格段に上がったし、そのきっかけを与えてくれたのが武ちゃんだったという瞬間が多かった。正式に加わってもらってから、それを改めて感じています。今後、こういう取材も武ちゃんも含めたうえで、バンドのこれからについて話す機会が増えていくわけじゃないですか。そういう部分でも一緒に責任を持って、この4人で向かっていきたいと思える存在になっていったんです。
康司:うんうん。
健司:自分達の気持ちはずっと、バンドをやるならドラマーを含めた4人でやりたいというのがあったから、いつかはドラマーを入れたいと考えていたんで。そのきっかけを与えてくれたのが武ちゃんだった。絶対、この人はメンバーにしたいという確信が今年の頭にあったんです。それで誘いました。
フレデリック・三原健司 撮影=西槇太一
――そういう時って、改まってメンバーになってくださいってお願いするんですか?(笑)
高橋:まぁ、そんな感じでした(笑)。
康司:いや、そこまで大袈裟なものではなかった(笑)。
赤頭:ファミレスやったしな。
健司:場所はゆるい感じでしたね(笑)。
康司:ただ、バンドをやるって、いろいろなことを背負っていかなきゃいけないから、メンバーに迎えるのも、メンバーとして加わるのもそう簡単なことではないと思うんですけど、逆に言えば、武くんをメンバーを迎えた時の喜びや、それを発表した時の気持ちって大切な思い出になると思うし、そういう思い出がこれからもっと増えるんだと思うと、これからのフレデリックが自分達でも楽しみなんですよ。
――高橋さん、なんか責任重大ですね?
健司:責任って言い方は良くなかったかな。
高橋:でも、別バンドをやるんだったら当たり前のことなんで、そんなに重荷には感じてはいないです。
――さて、4人になって初めてのリリースということで、今回のシングルはいつも以上に力が入っていたんじゃないかと思うのですが、表題曲の「かなしいうれしい」はテレビアニメ『恋と嘘』のオープニングテーマとして書き下ろしたものだそうですね。
康司:ええ。『恋と嘘』という作品を、僕は元々知っていたので、そこから感じ取ったものと、今の自分達が抱いている気持ちを、言葉と音楽両方の面で考えながら作っていきました。
――2つの気持ちを、どんなふうにすり合わせていったんですか?
康司:すり合わせるって、折衷案ってことじゃないですか。今回は、その言葉が合わない感じにできあがったんです。作者のムサヲさんと話した時に同じ志を持っていると思ったんですよ。マンガを描いて、読者に感動を与えたり、『恋と嘘』は恋愛マンガだから読者の胸をドキドキさせたりってことに対するピュアな想いが、ムサヲさんの言葉から感じられて、自分も同じだと思ったんです。自分も曲を作るうえで、聴いてほしい人達がいるし、ライブハウスで僕達の曲を聴いて踊ってもらう時はやっぱり恋愛マンガを読んだ時と同じようにキュンキュンしてもらいたいし、想いとしてはムサヲさんも僕らも一緒だっていう。その志が一つになって、一緒に飛びたてたと思える曲になったんです。
――原作者とお話されたんですね。
康司:書き下ろしという形でガッツリかかわらせてもらうことって初めての経験だったので、ぜひお話させていただきたいと思いました。自分が子供の頃、アニメを見ていた時のことを思い返してみたら、1話2話3話と話が進むにつれ、オープニングテーマの聴こえ方も変わっていったなって。それってすごく大事なことだと思いました。アニメを見ているうちにアニメのストーリーが自分の思い出のようになるじゃないですか。大人になってからカラオケに行って、子供の頃、見ていたアニメの歌を唄うのって、そのアニメと一緒に育ってきたみたいな感覚があるからだと思うんですけど、作るならそういう作品にしたいと思ったんです。「かなしいうれしい」ってタイトルをぱっと見ても、なんでこのタイトルなのかピンと来ないと思うんですけど、そこはアニメを見ながら、ぜひ感じ取ってほしいと言うか、そこまで辿りついてほしいと思えるストーリーだったんです。たとえば、『恋と嘘』の嘘って言葉には悪いイメージがあるかもしれないけど、『恋と嘘』の中では、その嘘は人のためを思って、自分を犠牲にしてついたものだったんです。そこにとても感動して。ムサヲさんは嘘という言葉の意味を大切に思って、タイトルに持ってきたわけなんですけど、嘘という言葉をそういうふうにとらえるなんてすごい。そういうところに気づけるような楽曲を、どう作っていこうか考えました。
――だから、歌詞の中に『恋と嘘』の嘘という言葉だけが出てくるわけなんですね。
康司:僕の共感がそこだったんですよ。そこでムサヲさんと分かり合えた気がしたんです。自分が経験していないことは言葉にできないから、自分が思ったことをちゃんと形にしたかった。それがムサヲさんにとっても作品にとってもいいことなんじゃないかと考えました。嘘はつけないんで(笑)。
フレデリック・三原康司 撮影=西槇太一
――他の3人は『恋と嘘』という作品については、どんな印象がありますか?
高橋:僕も原作のマンガを読んでました。
康司:話題になってたもんな。マンガが読めるアプリの中で。
高橋:そうそう、その時。今はもう感じられなくなったようなことを、マンガのキャラクター達が感じ取っているなって。だから、「かなしいうれしい」って曲に対しても、ある意味、自分の昔を思い出すと言うか、あくまでも表現するのは今の僕らなんですけど、ちょっと心の奥底にある昔の思い出を振り返っているようなところがあるのかなって。
健司:僕はオープニングテーマのお話をいただいて、初めて知りました。ふたりがマンガを読んでいたと言っていたので、じゃあ、僕はアニメになったものを、まず見ようと思って、今(テレビの放送を)追いかけているところです。「かなしいうれしい」を作る前に第1話だけ見せてもらったんですけど、『恋と嘘』の嘘がまだそんなに出てこないんですよ。そやな?
康司:うん。
健司:だから、今、アニメを見ながら「かなしいうれしい」を聴いている人には、なぜこの曲なのかっていう本意はまだ伝わりきっていないんじゃないかと思います。
――そこは回数を重ねるうちに……。
健司:その嘘の部分がでてきてから、改めてオープニングテーマを聴いたとき、曲の印象がガラッと変わるんじゃないかな。
――隆児さんは?
赤頭:僕もタイアップが決まってから読みだしたんですけど、結婚相手を政府に決められてしまうという設定に掴まれました。
康司:うん、おもしろい。
赤頭:もし、そうだったらって考えちゃいました(笑)。
康司:曲を作る時も、実際、自分がその立場だったらどうしてたんだろうって。(結婚相手を知らせる)通知が来たらどうしようって。
健司:通知が来るのが当たり前の世界だからな。今、俺ら、自由に恋愛するのが当たり前だからその設定に惹かれるけど、その設定の中やったらどうなるんやろ?
赤頭:この話、みんなで一回したんですよ。今やったら、俺は通知来るの全然いいって思うんですけど(笑)。
康司:たぶん、(主人公と同じように)17歳とかやったらイヤやったんだろうなって話はしました。だから、曲を作っている時は、その頃の気持ちを思い出していましたね。
健司:今やったらメッチャいいシステムだもんな(笑)。
高橋:理に適っている(笑)。
――いやいやいや、みなさん、そんなことを言うにはまだ若いでしょ!(笑)
高橋:人としては成長できるのかな、物語の中みたいに葛藤があれば。ただ、通知が来て「はい、OK」ってなっちゃったらな。
健司:成長ってすごい言葉が出てきたな(笑)。
フレデリック 撮影=西槇太一
――それぞれに『恋と嘘』という作品に思い入れを持って、制作に臨んだようですね(笑)。ところで「かなしいうれしい」というタイトルにもサビのリフレインになっているフレーズは、どんなところから思いついたものなんですか? さっきアニメを見ながら、なぜこのタイトルか考えてほしいとおっしゃっていましたよね。
康司:悲しいことを経験した時にこそ、歓びに気づけると言うか、それまで気づなかった小さな歓びに辿りつけるなって。バンドが全然知られていなかった頃、悲しいとか悔しいとか、いくつもそういう経験をしてきて、積み重なったものが今のバンドにとってすごく大きな武器になっていると思うんですよ。 そういう気持ちと作品の中に感じたものを掛け合わせたとき、とても大事な言葉に感じて、これをタイトルに持ってきたいと思いました。
――曲そのものはフレデリックが得意としているダンス・ロック・ナンバーですが、サウンド面ではどんなことをアピールしたかったんですか?
康司:今までのフレデリックを知っている人達は、けっこうビートが速いというイメージを持っていると思うんですけど、今回、そんなにテンポは速くない。自分達が気持ち良く踊れるBPMなんです。ゆらゆら気持ち良く踊れる中の、かなしいうれしいっていう感情が重なったとき、僕にとってぴたっと来た言葉が“儚い”だったんです。それをコード感に出したいという気持ちがあって、特にエンディングの静まるところのフレーズは、その感情をすごく表現できたと思います。今までのフレデリックらしさを持ちつつ、エモーショナルな部分が詰まった1曲になりました。
――イントロの木琴で鳴らしているようなオリエンタルなフレーズは。
赤頭:ギターとシンセのユニゾンなんです。
――フレデリックならではですよね。
康司:病みつきになってくださいって気持ちを込めての(笑)。僕らが曲を作ると、ああいうフレーズはもう自然に出てくるものなんですよ。あそこは、かなしいうれしいという感情を象徴しているものですね。
――他には、どんなところが聴きどころだと?
赤頭:2番のAメロの後に、サビに行かんと間奏に行くところは、サビじゃないんや……っガッカリした感じにならずに、そのまま違うところに連れていって、最後にどうぞって儚さとともにサビになる展開が僕は好きですね。
康司:そこも儚さが感じ取れるところですね。
――打ち鳴らすサビのドラムも聴きどころではないですか?
高橋:そうですね。フレデリックの曲って踊れるものが多くて、この曲にも言えることなんですけど、踊れる曲で歌を聴かせる。逆に歌を聴かせる曲で踊れるって、そのバランスを取るのが実は難しくて。やっぱり、ノッている時には歌詞って入ってこないし、歌詞を聴いている時ってじっと耳を傾けてしまう。だから踊れる感じと健司君の歌がしっかり聴こえるという、そのバランスにはめちゃめちゃ気を遣いました。それはドラムのみならず、演奏全体に言えることなんですけど。
――儚さという意味では、健司さんのボーカルが担う部分も大きかったのでは?
健司:いろいろな楽曲がある中で、自分のボーカルのスタイルを、今までいろいろ自分なりに試してきたんですけど、自分らしい歌い方を、「かなしいうれしい」のメロウなメロディーに乗せて、はっきりと出すことで、ちゃんと楽曲の色が変わるような作品になったと思います。自分が悲しく歌えば、すごく悲しい曲になるし、自分が楽しそうに明るく歌えば、すごく楽しい曲になるし、ボーカルのニュアンス一つで変わる曲という印象があったんですよ。儚さって微妙な割合じゃないですか。悲しいと儚いって全然違う。そのバランスはちゃんと落とし込むことがでたきと思います。特に隆児がさっき言った2番が終わってからの<さよなら さよなら 悲しいだけの僕らの話>のところは、自分なりの儚さがけっこう出たかな。
赤頭:儚いなぁ、あそこ。“僕らの”の“ぼ”が儚い(笑)。
フレデリック・赤頭隆児 撮影=西槇太一
――カップリングの「シンクロック」と「まちがいさがしの国」は、それぞれに「かなしいうれしい」とは全然違うタイプの曲で、アニメきっかけでシングルを聴いた人はびっくりするかもしれませんね?
康司:そうですね。「シンクロック」は僕らの音楽愛が詰まっているんです。一緒に音楽を楽しめる空間の中で、楽しく聴いてもらいたいという気持ちを込めたんですけど、この曲を2曲目にしたのは、シングルがなかなか聴いてもらえない時代になってきて、カップリングの曲って寂しい思いをしていると思ったからなんですよ。そういうメッセージも込めているんです。そこに注目してもらえたら、この先何年も気持ち良く聴ける曲になるんじゃないかなって思いながら作りました。
――表題曲を差し置いて――みたいになっちゃうから、あまり大きな声では言えないですけど、「シンクロック」、かなりかっこいいと思いました。ちょっとレゲエっぽいところもありますよね?
康司:ダビーからのっていう、あの展開がやりたかったんです。
――ストレートなレゲエにならないところがやっぱりフレデリックなのかな。
康司:ああいうミクスチャー感もやりたいんですよ。けっこう新しい挑戦ではあるのかな。
――1曲の中でテンポもすごく変わりますね。
高橋:そうは言っても、倍か半分なんで、演奏的にはそんなに大変ではないですけど、それよりも最初のレゲエ/ダブっぽいところを、どれくらい跳ねるか跳ねないかは、レコーディングの時にタイトとルースの間のどこを狙うか、みんなで話しました。
康司:ルースになりすぎると、その後、けっこうスクエアな感じで曲が速くなるから。
高橋:違和感が出てしまう。
康司:気持ち良くは入れない。そこの気持ちいいところを探しました。
高橋:タイトすぎると、今度はダビーじゃなくなっちゃうんで、どの程度ルースにするか。
康司:こだわりすぎかなと思いながら、かなりこだわりました(笑)。
高橋:でも、隆児君はすんなり合わせてきたよね。そこは隆児君のすごいところだと思う。
――歌はどんなアプローチで?
健司:この曲に関しては、ミュージシャンとして素直なことを書いていると思うので、自分の声のアプローチとしては、素直な声を出そうと思ってクセはあまり入れずに。ただ、要所要所の取っ掛かりみたいなところでは入れましたけど、素直な声で歌うほうが伝わりやすいのかな。真っ直ぐ伸びることも大切だと思って、そういうアプローチで歌いました。最後の<今この日をこの瞬間を待ち望んでいた>ってところは、その言葉のまんまと言うか、これは淡々とは歌えないでしょっていうのがあったので、ずっとエモーショナルに。そのフレーズは、この曲に出会ってくれた人への想い……ありがとう、ありがとう、ほんまにありがとうという気持ちを込めて歌いました。
フレデリック・高橋武 撮影=西槇太一
――ミュージシャンとして素直な気持ちを歌った「シンクロック」に対して、「まちがいさがしの国」の歌詞は皮肉と言うか何と言うか…。
康司:一部の人達に対して、自分達が伝えたいことですね。
――こういう一面も持っているんだって、ちょっとびっくりしましたよ。
康司:昔からけっこうあったんですよ。ストレスを解消ための手段としていろいろな娯楽がある中で、音楽ってネガティヴなことを歌ったとしても、それが共感できるものなれば、すごい力になる。だからって、言葉の暴力になったらダメですけど。……今、ストレス社会って言いますけど、いろいろなことに対してお互いに、あなたが悪い、あなたが悪いって言い合っていることが大きなストレスになっている。そこにずっと疑問を感じていたんです。それはちゃんと中身があって言っているの?って。もちろん、そういう人もいると思います。それは愛情に思えると言うか、怒りだとしても、こうしたほうがよくなるよって言ってあげているんだと思うんですけど、そうではない、自分のストレスを発散するためだけに言っている人がいろいろな場所に紛れている。僕ら、音楽やりながら、お客さんの幸せそうな顔を見て、こんなに気持ちいいものがあるのに、まだこっちの世界に連れてきてあげられていないって感覚が、そういう人達に対してあって、自分達がもっとがんばらなきゃいけないとか、もっと楽しいことはあるでしょって想いを、「まちがいさがしの国」ではそのまま曲にしたんです。
――曲としては、ミクスチャー・ロックと言うか、黒っぽいところもある一方で、歌謡曲っぽいところもある面白いものになりましたね。リズムの流れも絶妙じゃないですか?
高橋:黒い感じっていう意識はあったんですけど、そうなりすぎても違うから、そのバランスは気を遣いましたね。この曲はむしろ康司君のベースがノリを作ってくれているかな。理屈っぽい言い方を敢えてすると、「シンクロック」は16ビート寄りだけど、少し跳ねている。「まちがいさがしの国」は跳ねているけど、少し16ビート寄りな感じで、お互いがお互いを中和する方向に向かっている……(この話)たぶん使われないですね?(笑)
――いやいや、今の言葉を噛みしめながら聴きなおしてみますよ。
康司:俺達は感覚でわかるけど、言葉にすると、難しい。要は気持ちいいか、気持ち良くないかなんですけど。
――ギター・ソロはけっこうギター・ソロ然としたフレーズを弾いていますね。
赤頭:さっき康司君が言ったみたいなメッセージの曲なんで、黒い感じは曲としてみんな好きだから出したんですけど、それと一緒に(拳をぐっと握って)こういうやつを表現しようと思って、荒い音を作ったり、荒い始まり方でソロを弾いてみました。
――3曲それぞれに歌詞に込めた感情が違うので、ボーカリストとしては歌い甲斐があるのでは?
健司:ありますね。楽曲によっては、喜怒哀楽をはっきり出しすぎると、ちょっとしつこく聴こえるから、匙加減が必要なんですけど、「まちがいさがしの国」に関しては、喜怒哀楽の怒をめちゃめちゃ吐ききってもいいと思いました。でも、なんとなく哀愁も含んでいるんですよね、この曲。だから、100%怒ってる曲だからって、荒々しく歌えばいいってわけではなくて、意外に調整も必要だったんですけど、3曲の中では一番(声を)出しやすくて、ボーカルの入れ甲斐がありました。
――冒頭に言ったようにフレデリックらしさを改めて印象づけながら、新しいことにも挑戦した聴きごたえある作品になりましたが、そういう作品を作り上げたいま、バンドとして、どんな局面を迎えられたと感じていますか?
康司:4人の未来がものすごく楽しみなんですよ。たぶん、これから活動がどんどん大きくなるにつれて、今までになかった辛いことや楽しいことを経験していくことになると思うんですけど、それをちゃんと受け止めて、伝えていきたいです。
――11月11日の岡山公演から『フレデリズムツアー2017~ぼくらのTOGENKYO~』がスタートしますが、最後にその意気込みを教えてください。
康司:全国ツアーになるので、そこでもいろいろな驚きを見せていきたいです。いつ見に来てもらっても、驚きがある。僕らは知ってからが奥が深いバンドなんですよ(笑)。そこに辿りついた時の楽しさや、全員がひとつになった時の楽しさを感じてもらえるようなツアーを、今回も必ず作るので、ぜひとも足を運んでいただきたいです。「TOGENKYO」と謳っているように自分達が思い描いている理想郷を作り上げるので、今まで見たことがない景色がきっと見られると思いますよ。
取材・文=山口智男 撮影=西槇太一
フレデリック 撮影=西槇太一
2017.8.16. Release
■初回限定盤
初回盤
収録曲:CD
1. かなしいうれしい
2. シンクロック
3. まちがいさがしの国
4. 峠の幽霊 Live at新木場STUDIO COAST
5. 真っ赤なCAR Live at新木場STUDIO COAST
6. ナイトステップ Live at新木場STUDIO COAST
7. CYNICALTURE Liveat新木場STUDIO COAST
8. ディスコプール Live at新木場STUDIO COAST
「フレデリズムツアー2016-17 TOUR FINAL@新木場STUDIO COAST LIVE」
1.リリリピート
2.KITAKU BEATS
3.トウメイニンゲン
4.レプリカパプリカ
5.音楽という名前の服
6.うわさのケムリの女の子
7.峠の幽霊
8.真っ赤なCAR
9.ナイトステップ
10.CYNICALTURE
11.ディスコプール
12.ふしだらフラミンゴ
13.バジルの宴
14.オワラセナイト
15.オドループ
16.オンリーワンダー
【ENCORE】
17.FUTURE ICE CREAM
18.ハローグッバイ
【ENDING】
通常盤
1. かなしいうれしい
2. シンクロック
3. まちがいさがしの国
4. リリリピート Live at新木場STUDIO COAST
5. ナイトステップ Live at新木場STUDIO COAST
※初回プレス分のみ、「恋と嘘」描き下ろしワイドキャップステッカー仕様