串田和美が、なんと野外劇を含む松本市内3会場で『スカパン』公演
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『スカパン』
ライフワーク『スカパン』がシビウ公演を経て、新たな進化。
串田和美まつもと市民芸術館芸術監督が、オンシアター自由劇場時代からライフワークとしている代表作『スカパン』。この夏、欧州三大演劇祭でもあるシビウ国際演劇祭から招へいされ公演を行ってきたが、その凱旋公演が実に痛快なことになっている。というのも、まつもと市民芸術館を飛び出すばかりか、1週間のうちに野外劇を含めた3会場で公演を行うという破天荒な企画だからだ。なんだか、シビウ公演から引き続いて松本市内をツアー公演するよう。
その会場を紹介すると、もっともユニークなのは、信濃毎日新聞社という地元の大手新聞社がこれから本社を建てようとしている広場。実は信濃毎日新聞社は、松本本社を市内の中心部に移転するにあたり、文化・情報の発信地であり賑わいを創出する場所を目指して市民の声を設計に反映させようという狙いから、“まちなかプロジェクト” と銘打って伊東豊雄設計事務所、山崎亮率いるstudio-Lと協同で約100人にインタビューしたり、新本社にほしい機能を検討するワークショップなどメディアとしては画期的な試みを実施した。その広場では現在、折しも発掘調査を行っており、しばらくすれば穴は埋められ、杭が打ち込まれてビルが建てられるその場所に“文化の種”を蒔くようなものなのだ。「Flying Theatre 空中劇場」という名の、簡単なステージを組んで公演が行われる。
ピカデリーホールは、閉館した映画館をリニューアルして地元の劇団の本拠地となっている場所。まつもと市民芸術館がオープンする前に、串田監督が演劇についてのシンポジウムも行っている。オーナーがまつもと市民芸術館が開館に合わせて取り壊しを匂わせていたものを、串田監督が「いつかここでやりたいから」と伝えていた場所でもある。
そして、松本市美術館は、あの草間彌生(松本市出身)の初期の作品を多く収蔵している。中庭で、まつもと市民芸術館を拠点に活動する若手カンパニー、TCアルプとグリム童話の3本立て『グリム・グリム・グリム』を3回公演してきた。まつもと市民芸術館とは通りを隔てた斜向かいで、松本の文化の発信地なのだ。ここも「Flying Theatre 空中劇場」での公演になる。「Flying Theatre 空中劇場」は雨天の場合は、まつもと市民芸術館小ホールでの公演となる。
串田監督はオンシアター自由劇場時代に、決して使い勝手がよいとは言えない地下劇場で試行錯誤してきた経験から、難しい空間をどう徹底的に工夫することを楽しむところがある。そこに持ってきて、松本と同規模のルーマニアの地方都市シビウが演劇によって変わってきたこと、演劇祭では劇場ではなく街のあらゆるところで公演を行っていることに刺激を受けて、今回の凱旋“チャレンジ”公演と相成った。これも開館から10年を経て、市民が演劇を気軽に楽しんでくれるようになったこと、舞台スタッフが成熟してきたことによる。串田監督は、「年に一回はFlying Theatre 空中劇場で公演できたらいいなあ」とニコッとつぶやいていたが、まずは『スカパン』大成功を願おう。
『スカパン』2013年より
■日時:2015年9月20日(日)・21日(月・祝)17:00、23日(水・祝)14:00、24日(金)19:00、26日(土)17:30
■会場:20・21日:信濃毎日新聞社新松本本社建設地/Flying Theatre 空中劇場、23・24日:ピカデリーホール、26日:松本市美術館/Flying Theatre 空中劇場
■作:モリエール(「スカパンの悪巧み」) 訳:内藤俊人 潤色+美術+演出:串田和美
■出演:串田和美 高岡奏輔 馬渕英俚可 太田緑ロランス 内田紳一郎 坂本慶介 近藤隼 佐藤卓 細川貴司 下地尚子・池田六之助 北嶌学
■料金:【全席自由・税込】一般4,000円/U-25(要年齢確認証提示)2,500円
■お問合せ:まつもと市民芸術館 Tel.0263-33-3800
■公式サイト:http://www.mpac.jp/event/drama/2963.html