Awesome City Clubインタビュー 駆け抜けた2年間と、ベストアルバムに込めた思い
-
ポスト -
シェア - 送る
Awesome City Club 撮影=鈴木恵
Awesome City Clubがバンド初となるベストアルバム『Awesome City Club BEST』を8月23日にリリースした。過去4枚のアルバムで『Awesome City Tracks』シリーズを完結させた彼らは、新曲も収録した本作を経て、これからの活動でどのような景色を見せてくれるのだろうか。atagi(Vo/Gt)、PORIN(Vo/Syn)のフロントマン2人に、メジャーデビュー以降の2年間を振り返るとともに、現在転換期にあるバンドの未来についてもたっぷりと話を訊いた。
半分ベスト、半分1stアルバムの気分。過去のアルバムには必ず小難しい曲も入っていたけど、今作は多くの人にリーチできる曲だけを集めました。
――メジャーデビューから2年、アルバム5枚目となるこのタイミングでベスト盤を出したのにはどういう意図があったのでしょうか?
atagi:そもそも、デビューしたての若手バンドマンって、世間から忘れられるスピードがすごく早い、消費が早いというイメージがあったんです。だから、最初はできるだけ露出を増やそうと思って、7曲入りアルバムを半年に1枚というハイペースでリリースを続けていました。でも、そのペースを守りながら4枚のアルバムを出したことで、一番の目的としていた“世間から忘れられない”という課題はクリアされてきたから、もうペースを落としてもいいかな、と。なので、いわゆるベスト盤を出したかったというよりは、完結した『Awesome City Tracks』の集大成になる盤を出そうと思ったのが経緯です。
――活動ペースの早さというのもAwesome City Club (以下、ACC)の特徴だとは思いますが、ツアーもこなしながら半年毎にリリースというのは、相当ハードそうですよね。
PORIN:もう、心は何度も折れました……。
atagi:キツかったし、しんどかったです(笑)。でも、1枚のアルバムを出すのに制作猶予が2年あったからといって、たくさん曲ができるってこともないだろうし。ある程度締め切りに動かされる感じも必要だったと思います。
――ハードスケジュールをこなしてきたことで、得られたものはありましたか?
atagi:ストックがない中でひたすら曲を作っていたので、情報の入れ替わりがめちゃくちゃ早いんですよ。心に響いたものを作品にしてから、作品として世に出すまでのタイムラグも少ない。そのスピード感はすごくいいものでした。
――デビューからの2年間を振り返って、変化をどう感じていますか?
PORIN:とにかく、ずっと変化し続けてたなあと思います。歌詞も音もすごく変わりました。デビュー当時はコンセプチュアルだったし、無味無臭な楽曲が多かったけど、そこからどんどん人間臭くなっていったと思います。人生で一番濃かった2年間でした。なので、今回のベストアルバムを聴いているとだいぶおセンチになります(笑)。“こういう時もあったな……”って、卒業アルバムを見ているような感覚ですね。2年間、振り返る時間もなくずっと突っ走ってきたので、ようやくこうしてベストアルバムを出して、振り返りができるようになりました。
atagi:僕の所感としては、普通にやったら5~6年かかるところを2年でやったなっていう感じです。大変でしたけど、曲を作ってからリリースして、お客さんからのフィードバックをもらうまでにタイムラグが少なかった分、バンドの未熟な部分を有意義に育ててもらえたと思います。もう二度とあのペースでやりたくないなとは思いますけど(笑)、苦労した分、見合うものを得られたと思っています。
Awesome City Club 撮影=鈴木恵
――今回のベストでは、既存のファンと新しいリスナー、どちらを大きく意識していましたか?
atagi:どっちかといえば……というか、明らかに、まだ僕たちを知らない人にリーチするためのアルバムではあります。でも、“もうベストアルバム出すの?”っていうファンからの意見ももちろんあると思ってて。何年もずっとオリコン上位のアーティストが出すベストアルバムと、僕らのベストアルバムでは、全然意味が違うと思うんです。僕らとしては、半分ベストアルバム、半分1stアルバムの気分なんですよ。今まで出してきたアルバムをミニアルバムと仮定するならば、ここにきてようやく1stフルアルバムが出せるっていう状態が、僕らにとってはベストアルバムだった、っていう解釈です。そう考えると、今まで応援してくれてきた人にも手に取ってほしいなという思いは強いですね。
――ベスト盤を一言で表現するなら?
PORIN:一言だったら、“Awesome City Club”ですね。正にバンドの名刺代わりになったなって思います。うちらって曲によって表情がいろいろ変わるから、“ACCってどういうバンド?”って聞かれた時に、説明するのが結構難しいバンドだと思うんです。でも、その説明を1枚の作品で示せるようになったなって思います。
――多面性がこの1枚に詰まっている、ということでしょうか?
atagi:むしろ、多面性を見せたかったのは今までのアルバムですね。まっすぐなことをしたらその反動で小難しいことも織り込みたくなる、っていうのが、1stから4thまで続いていたので。だから、これまでは必ず1枚の中に小難しい曲も入っていたんです。でも、今までそういうことができていたからこそ、ベストではちゃんと多くにリーチできる曲だけを集めました。
――『Awesome City Tracks』シリーズに続く、新たなテーマはこの1枚に込められているのでしょうか?
atagi:今のところ、標語として何かがあるってわけではないんですけど、“ブレイクスルー”というか、ルネッサンス的な“破壊”も入っているかなって思ってます。そもそも、ちゃんと基盤がないと破壊行為って成り立たないんですよね。今はようやくその基礎ができて、“よし、壊そう!”となっている段階です。これからどうなっていくかは、まだちょっとわからないですね。
――ジャケットのデザインも、これまでの作品とは毛色が違ってかなりシンプルですよね。
PORIN:どストレートで潔い、これまでとは違うジャケにしたいよねっていう思いがまずありました。
atagi:これも、反動だと思うんです。ジャケットにしても、今まで出してきたものはすごくデザイン性が高くてオシャレで、それ自体はすごくいいことなんですけど、ベストを出すならお客さんに僕たちの今の意思を提示しなきゃいけない。だから、こうやってインタビューでベストを出す意義を聞いていただけるのはすごくありがたいんです。でも、仮に言葉で伝える機会がなかったとしたら、ジャケットで表現するしかないじゃないですか? なので、“新たな場所に向かうんだ”っていう強い意志をこのジャケットに込めました。
Awesome City Club 撮影=鈴木恵
――収録はMV曲がメインになっていますが、選曲する際に迷いはありましたか?
PORIN:結構バトりましたね。でも、基本的には“初めて聴く人にもちゃんと届くような楽曲を入れたい”っていう認識が全員にありました。
atagi:“小難しい曲を2、3曲は入れない?”みたいな話もあったよね(笑)。そういう小難しい部分も含めてACCだって意見もあったんですけど、その考えは断ち切りました。僕らを知らない人がこのアルバムを聴いてくれて、もし気になったらMVに飛べるようにと思って、MV曲を最優先にしたんです。ACCの魅力は音だけじゃなくって、男女がやっているっていうバランス感だったりもあると思うので、そこにどうしても辿り着いてほしかった。あとは、選曲というよりも、曲順に関しては相当揉めたよね。
PORIN:うん。
――1曲目が新曲で、そこからどんどん過去へ遡る曲順になっていますよね。
atagi:このベストアルバムを出す最低条件として、最新曲を一番響くポイントで持ってきたかったんです。ベストとはいえ、過去の寄せ集めになっちゃいけないなと思ったからこそ新曲を入れたし、自分たちがどういう方向を向いているかを提示しないと、これまでのファンは納得してくれないとも思いました。なので、1曲目で今の僕らの姿勢を見せた上で、どんどん遡っていく形にしようと。
――ほかに出ていた曲順案は、時系列関係なくミックスして、という?
PORIN:はい。でも、なんかそれは良くなかった。
atagi:思ったより良くなかったよね(笑)。古い曲の前後に最近の曲を配置してしまうと、古い曲がすごく稚拙に聴こえちゃって、自分たちが想像していたよりも溶け合わなかった。これではきっと正しく伝わらない、どうしたら届いてほしい形にピッタリ合わさるかって考えた時に、最新曲から時系列順に遡っていく形になりました。
――新曲「ASAYAKE」は、どういう思いを込めて作りましたか?
PORIN:これまでにないストレートな曲だし、とにかくACCの未来を感じさせるような、ダイナミクスのある曲にしたくて。『Awesome City Tracks』では、みんなの生活に寄り添うBGMを作ろうってコンセプトでやってきたんですけど、そこから一皮剥けて、もっと心に突き刺さるような、“ACCじゃなきゃだめだ!”っていう曲を作りたいモードに入ってきているんです。それを表現した曲になっているかなと思います。
――今までの曲は“夜”を描いたものが多かったので、ここにきて“朝”というのは対照的で、すごく新鮮だなと思いました。
atagi:みんなの中で共通していた“何かが始まりそう”っていう胎動を感じるイメージが、日の出かなってなったんですよね。ただ、人と人との駆け引きや心の繋がりが生まれるのって、夜が多いじゃないですか? だから、今までは夜がテーマになりやすかったのかなって思ってるんですけど。
PORIN:夜だとごまかせちゃうっていうのもあるかも。照明も暗いから相手の目もあんまり良く見えないし、お互い探り探りコミュニケーションを取って嘘をつくこともできる。でも、朝は明るいからお互い丸見えの状態で、直球で向き合うしかない。この曲は完全に応援歌なので、ポジティブさイコール朝かなとも思います。
――歌詞もかなり抽象的ですが、これはどういうシチュエーションでの“朝”なんでしょうか?
atagi:僕的には、サバンナをイメージしています(笑)。
PORIN:クラブみたいな街中の一部っていうよりも、枠からはみ出ちゃうような大自然のイメージだよね。
Awesome City Club 撮影=鈴木恵
――「ASAYAKE」は7インチのシングルカットにもなっていますよね。アナログ盤へのこだわりはありましたか?
atagi:7インチに対する憧れはずっとあったんです。僕はアナログでソウルミュージックをずっと聴いてきたし、自分たちもそのフォーマットで作品を残せたらって願望はありました。
――先日Airbnbとのコラボも発表されましたが、現代的なネットカルチャーを取り入れつつ、ノスタルジックなアナログにもチャレンジする。バンドの中で新旧の文化が融合していてとても面白いですよね。
PORIN:ACCは“ハイブリッドだね”って言われることがすごい多いんです。新しいものは好きだけど、歴史や情緒のあるものも大事にしている。だから、うちらとしてはすごく自然なことなんです。
atagi:僕の中では、アナログっていうのは一周まわってすごくハイソなものなんですよ。ネットよりも、むしろ新しいくらい。今のアナログには二重の文化的価値があるなって思うんです。過去に上の年代の方々が聴いていた実用的な意味でのアナログ。それと今の若い人たちが求めているアナログっていうのは全く別で、若い人からすればアナログはハイソなもので、“古い”っていうイメージはないと思うんですよね。だから、僕としてはネットとアナログが相反しているという感覚はあんまりないんです。今時、7インチリリースって珍しくもないですしね。
――ベストアルバムの中からさらに個人的ベストソングを選ぶとしたら、どの曲になりますか?
PORIN:「アウトサイダー」ですかね。一番バンドとして変わった曲だなと思うし、お客さんの反応もこれまでに見たことないもので。このバンドでこんな景色を見られるなんて思ってなかったから、その衝撃は今でも忘れられません。うちらがこういうメッセージ性のある曲をやっていいんだ、って思えた曲です。そこから、より一層人間臭さを出していくきっかけになりました。
――atagiさんは?
atagi:難しいですね……。僕は、希望的な意味も含めて「ASAYAKE」かな。バンドをやってると、“現状維持”がすごく怖くなるんですよ。音楽性もだし、セールスや動員数に関しても、現状維持し続けるのはすごく大変で強い信念がないとできない。“現状維持”を強みにしているかっこいいバンドさんももちろんいますけど、僕らは絶え間なく変化していくことが自分たちにとって美しい姿だと思っています。なので、今は最新曲がベスト、と言いたいですね。
取材・文=まにょ 撮影=鈴木恵
撮影協力=やんばる植道 http://yanbaru-shokudou.com/
SIDE A ASAYAKE / SIDE B ASAYAKE (Instrumental)
7インチシングル「ASAYAKE」
■価格:1400円(税抜)
■流通:東洋化成ディストリビューション
■発売日:2017年8月16日(水)一般発売
※本アイテムは8月11日(金)より代官山 蔦屋書店にて先行販売。
アルバム『Awesome City Club BEST』
2017年8月23日発売
初回限定盤(CD+DVD)/VIZL-1217/¥3,800+税
アルバム『Awesome City Club BEST』初回限定盤
通常盤(CD)/VICL-64824/¥2,800+税
アルバム『Awesome City Club BEST』通常盤
【収録曲】
1. ASAYAKE ※新曲
2. 青春の胸騒ぎ ※from “Awesome City Tracks 4”
3. 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる ※from “Awesome City Tracks 4”
4. Vampire ※from “Awesome City Tracks 3”
5. Don’t Think, Feel ※from “Awesome City Tracks 3”
6. pray ※from Crowdfunding Single “アウトサイダー”
7. アウトサイダー ※from “Awesome City Tracks 2”
8. GOLD ※from “Awesome City Tracks 2”
9. Lullaby for TOKYO CITY ※from “Awesome City Tracks 2”
10. 涙の上海ナイト ※from “Awesome City Tracks”
11. 4月のマーチ ※from “Awesome City Tracks”
12. Lesson ※from “Awesome City Tracks”
13. Children ※from “Awesome City Tracks”
●Awesome Talks -One Man Show 2017-
(2017. 5. 19 at Akasaka BLITZ)
Movin’ on
GOLD
Vampire
アウトサイダー
愛ゆえに深度深い
Sunriseまで
青春の胸騒ぎ
It’s So Fine
Don’t Think, Feel
今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる
涙の上海ナイト
Action!
『Awesome Talks –Oneman Show 2017Autumn/Winter-』
10/28(土)仙台MACANA
11/2(木)広島CAVE-BE
11/3(金)福岡BEAT STATION
11/5(日)金沢GOLD CREEK
11/12(日)高松DIME
11/19(日)札幌CUBE GARDEN
11/24(金)名古屋ボトムライン
11/30(木)大阪 味園ユニバース
12/6(水)東京Zepp Diver City
12/15(金)沖縄Output