大塚 愛 愉快でエロくてカオスで泣ける贅沢な音楽体験 新曲「日々、生きていれば」に込められた想い
今夏は【大塚 愛 LOVE TRiCKY LIVE TOUR 2015~ヘルシーミュージックで体重減るしー~】でクリエイターとしての才能を遺憾なく発揮した大塚 愛。そんな夏の終わり、9月13日に日比谷野外大音楽堂にて【大塚 愛 LOVE IS BORN ~12th Anniversary 2015~】を開催した。
<12周年の【LOVE IS BORN】オールスターバンドとお祭り騒ぎ>
東京の空の下、SEとして響き渡るハードロックアレンジの「BABASHIのテーマ」。それがエンドレスリピートで流れ続けている効果と、これまでいくつもの伝説を残してきた野音の【LOVE IS BORN】で今回は何が起きるのか? という期待感で超満員のオーディエンスはソワソワしていた。開演時間になり、そこへ現れたのは亀田誠治(b/バンマス)、西川進(g)、沼澤尚(dr)、皆川真人(key)、磯貝サイモン(key,g)といった日本の主要アーティストのレコーディングやライブを支え続けている、オールスターと言っても全く過言ではない超一流ミュージシャンたち。そしてデビュー12周年&33歳のバースデーを迎えたばかりの主役 大塚 愛は、彼らのファンキーでグルーヴィーな心地良すぎるサウンドの上で「あなたとゾッ婚したーい!!」と、冒頭からえらくゴキゲンなボーカルを真っ直ぐに響かせ、早々に会場はお祭りモードへ突入する。
「ようこそ、皆さん。また今年も【LOVE IS BORN】が出来る事が叶いました。ありがとうございます! 大塚 愛、デビューして12年。みんな一緒に歳を取ったね(笑)。今日は本当に思い残すことなくみんなと一緒に愛を交わせたらいいなと思います。最後まで楽しんで帰ってね~!」
最初の挨拶を終えて「皆さん、踊っていく? エロいほうの踊りだよ?」そう言って歌い出したのは、大塚 愛もメンバーとして参加していたスーパーバンド Rabbitのセルフカバー。好きな曲を好きなミュージシャンと好きなアレンジでナチュラルに楽しんできた【LOVE IS BORN】らしい選曲だが、ファンの皆さんは、背中丸出しの衣装でクネクネ踊りながら歌う大塚さんにとにかく釘付け状態。そうして狙い通りエロいグルーヴに観客を漂わせ、続く「drop.」ではキュートで優しいグルーヴに漂わせ、それに続く亀田誠治リアレンジの「GIRLY」では会場を揺らすほどのドラムの重低音、唸るベースとギターとキーボードと、ロックの限りを尽くしたド迫力のサウンドで圧倒してみせる。大塚 愛が生み出してきたポップミュージックの幅広さと懐の深さをこれでもかと堪能させるかのような、実にユニークで音楽を楽しみ尽くすアクトが続いていく。
そんな1曲1曲が濃いキャラクターを誇っていた同公演において、おそらく多くの人がハイライトとして受け止めたであろう17時台中盤の「クムリウタ」。虫の鳴く声、カラスの鳴く声、正しく夏の終わり、秋の始まりの様相を呈した空間の中、彼女は蒼い炎をその胸に灯したような声で、頭上に広がる空へ向かって「曇り空、泣くな」と何度も歌いかける。すると、曇り空と眼前に広がる景色、それを夕陽が少しずつオレンジ色に染め上げていった。その歌声に呼応するように美しく変化していく光景と、その光景に呼応するように深くエモーショナルになっていく歌声と音楽。そして最後に放たれるフレーズ「奇跡を信じた………」 泣くよ、こんなの。
そのまま曲は「君フェチ」へ移行し、さらに僕らはその音楽と景色の中で漂いながら溶けていく。なんて贅沢で気持ち良い音楽体験だろう。大塚 愛という音楽家がこの世界に産み落とされたこと自体にまで感謝したくなる空間。改めて彼女のことを敬愛せずにはいられない時間が流れて………いたのだが、次の瞬間、やたら淫らで艶やかな声でメンバー紹介をしながら、大塚 愛の“本気でおふざけソングコレクション”の中でも“究極形態”と称される「シヤチハタ」を歌い出し、意味不明な言葉(「ディミニッシュ」「ヴァイエル?」「ドッボルザーク」等)でのコール&レスポンスまでやり出し、終いには「はちみつをください」「はちみつをください」「はちみつをください」「はちみつをください」と野音で言い合うカオティックな世界を創造。これもまた大塚 愛である。
「(晴れて)良かったぁ。天気がよく弄ぶからさ、私たちのこと。最初は「どうなるんだ? これ」って思ってたけど、「いやいやいや、大塚さん、12周年なんでね、上がっておきますよ」と(雨が)上がってくれたぁ!!! ありがとう! ありがとう! 良い演出をありがとう! 昼から夜にかけての、一番美しいなって私が思ってるマジックタイムを皆さんと一緒に過ごせてとっても幸せです。ありがとう」と、天気とファンに感謝の言葉を告げると、いよいよライブは本編最後のブロックへ。最強バンドの演奏がファンタスティック過ぎた「LOVE FANTASTIC」、個人用トランポリンの上で飛び跳ね続ける全身タイツの人とみんなではしゃぎまくった「ポンポン」、超巨大トラメガ(拡声器)を設置して歌い放った「つくね70円」「Happy Days」、過去最高レベルでオーディエンスを鼓舞しまくった「ロケットスニーカー」、極め付けに百戦錬磨の「さくらんぼ」と、お見事なセットリストとエンターテイメントとライブパフォーマンスで、再び野音の歴史と我々の心に強烈な爪痕を残してみせた。
また、アンコールも、恒例の「Birthday Song」シンガロング、更には彼女のデビューシングル曲「桃ノ花ビラ」や“こんな悲しい世界でも 小さな愛はたくさんある”など今聴くとなおさら深く刺さる「ネコに風船」と、心揺さぶられる場面の連続だったのだが、最後に特筆しておきたいのは「日々、生きていれば」という未発表曲の初披露について。この曲をピアノの弾き語りで歌い出す前、彼女はこう語った。
「連日ね、本当に心痛む出来事がたくさんありまして。その度に……言葉を失うというか、そんなことも多くあり、私たちも日々なんやかんやで苦しみながらも、頑張りながらも、サボりながらも、揉めながらも、やっぱり生きていくことを選択して、今日を送ってると思うんですけど……。日々 生きていれば、悲しいことももちろんあるけれど、幸せなことも必ずある。そのことを想いながら書きました。タイトルは「日々、生きていれば」、ちょっと私らしくないマジメなタイトルですけど、本当にここ最近思うことです。生きていればね、何か良いことがきっとあると思う」
藻掻いて 藻掻いて 藻掻いて
それでも今日を生き抜き 息抜き
生きてみたら ちょっとは笑える
人生の教訓を説教臭く歌うわけでもなく、ただただ真っ直ぐに大好きな人への想いを届けるように、目の前にいる人たちがいつでも生きていくことを選択してほしいと、またこうして大好きな人たちと同じ時間を過ごせるようにと、そっと告げるように彼女はこの曲を歌っていた。そして、その歌の後に聴く「桃ノ花ビラ」と「ネコに風船」はいつもより愛おしく、愛らしく夜の野音に響き渡る。
すべてを歌い終えた彼女は、この贅沢な音楽体験を共に創造したオールスターバンドと横一列に並び、マイクレスで最後こう叫んだ。「愛してるよぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
<【AIO PIANO vol.3】開催決定>
なお、大塚 愛は、12月に台北と東京と大阪で【AIO PIANO vol.3】を開催する。彼女の想いが濃縮された全編弾き語りライブを堪能できる公演となっているので、ぜひとも足を運んでみてほしい。
取材&テキスト:平賀哲雄
撮影:田中聖太郎
◎ライブ【大塚 愛 LOVE IS BORN ~12th Anniversary 2015~】
09月13日(日)日比谷野外大音楽堂 セットリスト:
OP.OPENING SE(BAND Session)
01.ゾッ婚ディション
02.モアモア
03.Mackerel's canned food
04.Creamy & Spicy
05.バイバイ
06.半熟たまご
07.drop.
08.GIRLY
09.クムリウタ
10.君フェチ
11.シヤチハタ
12.黒毛和牛上塩タン焼680円
13.LOVE FANTASTIC
14.ポンポン
15.つくね70円
16.Happy Days
17.ロケットスニーカー
18.さくらんぼ
En1.Birthday Song
En2.日々、生きていれば (未発表曲)
En3.桃ノ花ビラ
En4.ネコに風船
◎ライブ【AIO PIANO vol.3】
12月12日(土)台北・SHOWBOX文創立方
12月18日(金)東京・めぐろパーシモンホール・大ホール
12月22日(火)大阪・サンケイホールブリーゼ
http://avex.jp/ai/live/tour.php?id=1000483G