高見沢俊彦 年を重ねてさらなる挑戦へと突き進む、Takamiy王子のロック哲学を探る
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Takamiy
美旋律の王子が、自ら選んだ名曲の数々に新たな歌声で再び命を吹き込む。Takamiyこと高見沢俊彦のベストソング・コレクション、その名も『美旋律~Best Tune Takamiy~』。2007年『Kaleidoscope』以降のベストチューンを収録した通常盤には、すべてのボーカルを再録音した13曲を収録、初回限定盤には未発表曲やライブチューンを盛り込み、ソロ活動25年のヒストリーを再発見できる豪華パッケージだ。年を重ねてさらなる挑戦へと突き進む、Takamiy王子のロック哲学のすべてがここにある。
なぜソロをやるのか?というと“FOR THE ALFEE”の精神。THE ALFEEを長持ちさせたいというか、ここまで来たらコンサート3000本を目指したい。
――初ソロアルバムが91年ですから、ソロデビューから25年が過ぎました。
そうです。途中、抜けてますけどね。
――そうなんですよね(笑)。実はソロ1作目と2作目の間は、かなり開いていて。
16年ありますからね。2007年の『Kaleidoscope』から、本格的にということですね。
――91年の1st『主義-ism:』は、昨年リマスター盤が出ましたけど、今聴き直すと、かなり色合いが違いますね。
あれは、ロマンティシズムをメインに作ったアルバムなので、ちょっと今とは違うのかな。
――あの時は、どんなソロのビジョンを描いていたんですか?
ヴァージン・ジャパンというレーベルからリリースしたんですけど、時代はまだバブルだったので、「ロンドンへ行って、プロデューサーを4人立ててやりませんか?」みたいな、それに興味があったんですよね。自分でずっとやってきてたんで、プロデューサーの仕事はどういうものか、ちょっと覗きたいなというか、THE ALFEEに生かせたらいいなと思っていたので。でもまあ、プロデューサー4人と言っても、大変なのは俺でしたね。
――ですよね(笑)。
4か所行かなきゃいけないんですよ。それぞれのやり方があるから、自宅でプリプロをやる人もいるし、スタジオでやる人もいて、1日で2か所行くだけでも大変ですよね。まだ若かったから、そういうことができたと思うんですけど。そういう部分では、すごく勉強になりましたよね。スタジオワークに関して言えば。
――スティーヴ・ヒレッジ、マーティン・ラシェント等、錚々たるプロデューサー陣でしたからね。
それから2007年に『Kaleidoscope』を出すわけですけど。基本的にね、前にも言いましたけど、なぜソロをやるのか?というと、“FOR THE ALFEE”の精神なわけですよ。僕の場合は。
――はい。
僕はTHE ALFEEでクリエイターの部分を担ってますから。自分が刺激を受けることは、THE ALFEEの新しい曲を作る上で非常に役に立つので、あえて飛び出してやってるわけです。ソロをメインに考えているわけじゃないので、あくまでもTHE ALFEEを長持ちさせたいというか、ここまで来たら3000本(コンサート)を目指したいとか、そういうものもありますから。それには、一人で刺激を受けてやっていくのがいいのかなと。如実な例が、GSですよね。2年ぐらい前に、ソロでGSをやったんですけど、「これは絶対THE ALFEEでやったほうが楽しそうだな」と思って、それがTHE KanLeKeeZになった。今年のシングルの「あなたに贈る愛の歌」も、その取材の時にお話ししましたけど、クラシックの要素ですから。あれは『INNOVATION CLASSICS』(指揮者・西本智実とのクラシック・プロジェクト)のイメージで作った曲ですから、フィードバックはしてますよね。
――してますね。
それが、自分がソロをやる価値なので。普通、ソロをやる時って、バンドを休むじゃない? でも僕は休みませんからね。
――そうなんですよね。常に同時進行。
それはすごくリスキーな部分もありますけど、でもそこはね、“FOR THE ALFEE”の精神でやる以上は、休んじゃったら意味ないんで。そこは同時にやっていくしかないですよね。逆に僕も刺激を受けるし。2007年にソロ第二期が始まった時にも、まずは詞をいろんなアーティストの方に書いていただいて、それに僕が曲をつけるという、その手法は初めてだったし。みなさん、僕に興味がある人に頼んだから、僕に向かってどういう歌詞が出てくるのか?という興味があって、どう思ってるのか?というのが面白かったよね。宮藤(官九郎)くんなんか、「騒音おばさんVS高音おじさん」を書いてきて、そうか、俺は高音おじさんなんだ、と(笑)。
――というか、びっくりしませんでした? “これを俺が歌うの?”みたいな(笑)。
思った(笑)。詞先だったんで、最初に詞が来たから、“これにどう曲をつけようか?”って。でもすごくやりがいがありましたね。だったら“メタルにしちまえ!”みたいな。ほかにもいろんな人の思い方があって、リリー(・フランキー/ペンネームはELVIS WOODSTOCK)さんの「Super Star」なんて、あんなエロおやじがこんないい詞を書くんだって、びっくりしたよね(笑)。ここには入ってないですけど、みうらじゅんさんにも、阿修羅をテーマに書いてもらったりとか。そういう、違うフィルターを通して覗かれる感じが、面白かったですよね。ソロならではのものなので。自分が詞を書く上で、視点として、面白い刺激を受けましたよね。
――サウンド的には、『Kaleidoscope』以降は、ヘヴィメタルに特化していきましたよね。
そうですね。今回のこの選曲というのは、自分で歌い直したい歌を集めたんですよ。以前に話したかもしれないけど、2014年に喉を壊しちゃって、それがTHE ALFEEの40周年だったんで、かなりきつかったんですよ。大事には至らなかったんですけど、医者いわく「勤続疲労を起こしてる」ということで、がなったり、シャウトして歌うのを、それ以降は控えめにしたんですね。その前のソロは、ほとんどメタルだったので、けっこう乱暴に歌ってたんですけど、今聴くと違和感を感じるんですよ。歌い方が変わったから。
――ああ~。なるほど。
今のベストな状態で、ベストな声で歌い直したいなと思うものを集めたのが、今回の作品です。だから音程は高いですけど、シャウトしてないんです。そういう部分は一切排除しましたから。そうすると面白いのは、シャウトしたり、がなって歌っていた時には見えなかったメロディラインがはっきりわかるようになった。そういうものが感じられて、逆に新鮮でしたね。歌い直して、聴いてみて、“あ、こういう曲だったのか”みたいな、そういうものがありましたね。だから今の状態の、ベストチューンのTakamiyですよ。
――『美旋律』というタイトルは、「Fantasia~蒼穹の彼方」の歌詞の中に出てくるフレーズです。
そう、それも、がなって歌ってる時には、あんまり気がつかなかったんだけど。歌い直したら、“あれ、美旋律って歌ってるじゃん。これをタイトルにしよう”って思ったんですね。歌い直したことで、メロディがはっきりくっきり前に出て来たんで、気づいたんでしょうね。それが今回の『美旋律~Best Tune Takamiy~』につながっていったという感じですね。
――ちなみに、THE ALFEEがデビューした頃は、まだメタルという言葉はなかったですよね。
ハードロックだね、僕が聴いてた音楽は。あと、アートロックとか。メタルと言い出したのは、80年代に入ってからじゃないかな。ただ僕の場合は、メタルであっても、メロディだけはちゃんときれいにしておきたいというポリシーがあるので。どんな激しい曲でも、メロディはちゃんとあるぞ、みたいな。デスメタルではないぞと(笑)。デス声はできないからね。
――ライブでは、10年くらい一緒にやっているルーク篁(元聖飢魔Ⅱ、CANTA)、KOJI(元La’cryma Christi、Alvino)、Anchang(SEX MACHINEGUNS)を始め、CDにも、世代の違うメタル/ハードロック畑のミュージシャンがたくさん参加してます。
ギタリストとしてのソロの醍醐味は、そこだよね。ほかの人とセッションできることが。「Fantasia~蒼穹の彼方」では、間奏では僕が先に弾いて、その後がB’zの松本(孝弘)くん。「エデンの君」の間奏はマーティー・フリードマン、「月姫」の間奏はAnchangが弾いたりとか、あらゆるギタリストと一緒にやることは、ギタリストとしてすごく刺激を受けますね。やっぱりね、ギターってすごく不思議な楽器で、弾き手によって全然表情が変わるから面白いんだよね。ステージでセッションしてても、“こういう弾き方するんだ?”と思うんで。今回、未発表曲の「Night of Rouge」(初回限定盤A収録)では、鳥山雄司にジャズっぽいギターを弾いてもらって、間奏では僕がストラトで、弾き合ってますけどね。そういったギタリスト同士の会話、ギター同士のトークを、フレーズでやっているのが面白いですよね。
――「Night of Rouge」は、井上大輔さんの曲ですよね。
そう、元ブルーコメッツの。井上さんが遺した、未発表曲の一つなんですよ。権利を持ってる方がいて、それをぜひということで、僕に委ねられたので、詞をつけて、アレンジをし直して。稀代のヒットメイカー、メロディメイカーですから、遺された楽曲も素晴らしいものがあるんですよね。自分はGSファンでもありましたから、すごく光栄なことでもありますし、やるからには、ちゃんとやんなきゃいけないなと思ってました。こうやって形にできたことは、うれしかったですね。
――そして未発表曲その2は、「東京ロンリー・ナイト」。
これはベンチャーズに書いた曲ですね。それに歌詞を乗せて、藤田恵美さんが歌ってくれた。それをまたセルフカバーしているということです。モズライトの、ベンチャーズサウンド満載ですね。で、もう1曲の「ULTRA BURN」は、ウルトラマンの楽曲で、つるの剛士くんに作った曲です。自分なりに、ウルトラマンの曲はたくさん書いてきたので、ぜひ今回入れてみたいと思って、ここに入れました。
――初回限定盤Aは特に豪華で、CD2には未発表曲に加えて、ライブが8曲も入ってます。
これは去年の、ビルボード東京でやったライブの中から選んでるんですけど、比較的、『主義-ism:』の中の楽曲が多く入ってます。CD1もそうですけど、丸ごと聴いていただければ、今のベストチューンのTakamiyがわかると思います。
――あらためて、『美旋律~Best Tune Takamiy~』の中の作詞家とのコラボで、何か思い出深いエピソードがあれば。
そうだね、一番面白かったのは、やっぱり「騒音おばさんVS高音おじさん」なのかな。宮藤くんのほうから「コントやってもいいですか?」って、『Kaleidoscope』の中では、グループ魂とコントをやってるんですね。その部分は今回入ってないですけど、曲中のセリフは阿部サダヲさんだからね。そういうコラボは初めてだったし、けっこうロックだよね、そういうのって。
――それをロックと言う、高見沢さんが素敵です。
宮藤くんもロックが大好きだから。一度僕も、グループ魂のゲストでギター弾いたことあるから、ライブで。そういう部分で、なかなかいいコラボができたかなと思ってますね。
――あとはつんく♂さん、綾小路 翔さん。それぞれ、すごく個性的です。
「青空を信じているか?」は、アッキー(秋元康)だね。秋元康は、作詞家デビューはTHE ALFEEだからね。「言葉にしたくない天気」という、「通り雨」(81年)のB面だった。
――すみません、知りませんでした……。
意外とね、本人も言ってないからね(笑)。だからアッキーは、昔からよく知ってるけど、今や秋元大先生だからね。それはそれで嬉しいよ。まあ長くやっていれば、そうなるよね。いろんな人と知り合うし、そういうところが醍醐味なんじゃないかな。バンドをやるということは。今また、いろんな扉を開けつつありますからね。僕の中でも。
――これで2007年以降の第二期ソロは、一区切りという感じですか。
そうですね。これで来年、THE ALFEEの45年周年に向かって行けるという感じがしますね。あと来年は、小説を完成させて、一冊にしなきゃいけないんで。その一部が載りますけどね、今度の『オール讀物』(9月号)に。
――その話も、最後に聞いておきたかったんですよ。『音叉』という初の小説、今になって、小説を書き始めた動機というのは?
最初は、文藝春秋さんの『オール讀物』の方から「エッセイを書いてみませんか?」という依頼を受けて、書いたのがきっかけです(『オール讀物』」2016年11月号掲載『偏愛読書館』)。書けると思ってなかったんですけど、背中を押されて、という感じですね。もともと本が大好きだったし、子供の頃からずっと読んでいましたから。でも小説を書くというのは、曲を作るのとはまったく違って、自分には無理だろうなとずーっと思ってたんですよね。それが、編集の方と話している時に、音楽畑で40年以上やってきた自分なりの表現というものが、もしかしたらあるのかな?ということを、少しずつ感じてきて。書き始めたら面白くなって、春のツアー中にずっと書いてました。なんとか形になって、今回第一部を掲載することになったんですけどね。自分だけで書きたいと思っても書けないですから、やっぱりそこは、依頼があってそれに応えたということです。内容は決して実話でも自伝でもないんで、あくまでも創作としてとらえてもらうとうれしいですけどね。
――あらすじを読むと、自伝っぽい感じもするんですけどね。70年代の、ロックバンドを中心とした、青春群像の物語。
時代背景がそうなので、僕が見てきたものが、事件としては入ってますけどね。70年代の初め、僕らは高校生で、学生運動の残り火がまだあったし、洋楽ロックの初来日も多くて、時代が変わっていく瞬間でしたから、いろいろ面白いことがあったんですね。街もまだ熟成してなかったし。だって、若い人は知らないと思うけど、原宿のラフォーレってあるでしょ? あそこ、教会だったんだから。
――そうなんですか? 知らなかったです。
いいとか悪いとかじゃなくて、街の風景も全然違うし、そういう時代だったからね。お台場だってそう。THE ALFEEが86年にコンサートをやった時は、何にもなかった。それが今は、あんな状態になってるわけで。それだけ長くやってきてるわけだから、いろんな風景が頭の中にあるので、それを言葉に表して、創作していったってことかな。まだ完成してないですけど。
――楽しみです。どんどん増えますね、やりたいことが。年を経るにつれて、良い意味で幅を狭めていく方もいますけど、高見沢さんはむしろ広げている。
楽しいね。還暦を超えてから、始まることが多いですね。世のみなさんに言いたいけれど、還暦は終わりじゃないですよ。終わりは始まり。ここから始まるものがたくさんあるということを、身をもって証明していきたいですね、僕が。
取材・文=宮本英夫
Takamiy
2017年8月30日発売
≪収録曲≫※CD収録の13曲は3形態共通※
1.Fantasia ~蒼穹の彼方
2.騒音おばさんVS 高音おじさん
3.エデンの君
4.Thanks for Your Love ~PartⅡ
5.月姫
6.へびめたバケーション! ~筋トレ編
7.青空を信じているか?
8.VAMPIRE ~誘惑のBlood~
9.雷神の如く
10.禁断の果て
11.ULTRA STEEL
12.Super Star
13.誘惑の太陽
<初回限定盤A>
初回盤A
≪Special CD[未発表曲集&真夏の夜の夢Billboard Live TOKYO 2016 ベストセレクション]収録曲≫
[未発表曲集]
1. Night of Rouge
2. 東京ロンリー・ナイト
3. ULTRA BURN
[LIVE TAKE]
4. 2時間だけのHoneymoon
5. 赤い糸
6. Tokyo Lonely Night
7. ヤマトより愛をこめて
8. 千年ロマンス
9. 17のときに逢いたかった
10.ゴジラのテーマ(作曲:伊福部昭)
11. Fiance
<初回限定盤B>
初回盤B
≪Special DVD [MV Collection]収録曲≫
1. Night of Rouge
2. 誘惑の太陽
3. 雷神の如く
4. ULTRA STEEL
<通常盤>
通常盤
□商品詳細サイト
http://www.universal-music.co.jp/takamizawa-toshihiko/news/2017/07/28/