『悪魔城ドラキュラ』アディ・シャンカル氏インタビュー アニメから実写『パニッシャー』まで異端の製作者が求めるヒーロー像とは
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『悪魔城ドラキュラーキャッスルヴァニアー』プロデューサーのアディ・シャンカル氏
『悪魔城ドラキュラ』は、1986年にディスクシステムのアクションゲームとして第一作が発売されて以来、30年に渡ってさまざまなプラットフォームで、多数のタイトルが発売されてきた。欧米でも『キャッスルヴァニア』として知られる同作の、初となるアニメ化作品『悪魔城ドラキュラーキャッスルヴァニアー』のシーズン1が、Netflixにて配信されている。中世ヨーロッパのトランシルヴァニア地方に伝わるドラキュラ伝説をモチーフとし、吸血鬼ハンターであるベルモント一族の戦いを描いた同シリーズは、ゴシックホラーを基調とした独特の世界観を築き上げてきた。 今回アニメ化されたのは、シリーズとしては2番目に古い時代の『悪魔城伝説』のトレバー・ベルモント(日本ではラルフ・ベルモント)を主人公とした物語。没落したベルモント家の生き残りであるトレバーと、修道女・サイファ、そしてドラキュラの息子・アルカードの3人が、ドラキュラと彼の召喚した悪魔たちに立ち向かっていくアクション・ドラマである。
勧善懲悪的な原作とはやや異なり、『悪魔城ドラキュラーキャッスルヴァニアー』はドラキュラが葛藤し、トレバーも人間から疎外される複雑な環境に身を置いた人物として描かれている。アニメ化独自の工夫を施しつつ、日本を意識した作画などが印象的な同作は、プロデューサーのアディ・シャンカル氏がかねてから取り組みたかったプロジェクトだったという。SPICEでは、『ジャッジ・ドレッド』(2012年)や短編版『パニッシャー』『パワーレンジャー』など実写映画も手掛ける異端のプロデューサー・シャンカル氏に、作品に込めた想いや、アニメ・映画製作における指針などを語ってもらった。
日本文化の影響とアニメへの想い
――『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』(以下『悪魔城ドラキュラ』)のアニメ化は今回が初めてです。なぜこの作品を選ばれたのでしょう?また、なぜ今なのですか?
私はいま32歳なのですが、これまでは(プロデューサーとしては)若すぎて製作できなかったというのが、理由です。2008年頃から、90年代の日本でも盛んだった2Dの手描きのアニメーション作品を作りたい、とずっと思っていたんです。
――『悪魔城ドラキュラ』の作画は日本のアニメーションっぽいと思っていたのですが、やはり意識してそうされたんでしょうか?
ええ。私は香港とシンガポールで育ったのですが、日本の文化にすごく影響を受けているんです。そういうことがあるので、何をやっても日本の文化の影響が出ていると思います。これは、意識しているときと、意識していないときがあるんですが。
――日本のカルチャーでは、アニメから一番影響を受けられたんでしょうか?それとも、他になにか?
ゲームとアニメ、それから、ヘアスタイルですね。
――ヘアスタイル?どういうことでしょう?
GATSBY (ギャツビー)のコマーシャルがすごく好きで、香港にいたときにすごく見ていたんです。学校でもみんなGATSBYを持ってきていて、休み時間にトイレで髪を整えていました。アメリカに16歳で移り住んだんですが、そこではみんなに「何をやってるんだ?」という目で見られましたが(笑)。アメリカでは、男性はあまり整髪剤を使わないんです。
――(笑) 少し話がそれましたが、今回はなぜ、『悪魔城ドラキュラ』の中でもトレバー・ベルモントの物語をアニメ化されたのでしょうか? 沢山のシリーズがありますが。
トレバーの話は、『悪魔城ドラキュラ』の中でも初期の物語ですよね。私は、『悪魔城ドラキュラ』をベルモント家の一族の話だと捉えています。そして、ある世代が次の世代に影響を及ぼしてく物語だと思っているんです。なので、シリーズ初期のものを選びました。
――世代の移り変わりを描きたかった?
そうです。ある世代が社会に何らかの影響を与える。そして、その社会で次の世代が生まれますよね。私は人々に、今自分のやっていることが世界を変えたりする力があると知ってほしいのです。そして、その世界は次の世代が受け継ぐものなので、自分にはそれだけの影響力がある、ということも皆さんに考えて欲しいんです。
――そういう題材だったから、選んだというのもあるんですか?
それもあります。でも、やっぱりアニメーションが好きだから、というのが一番の理由です。アメリカでは、アニメは子ども向け、という風潮があるので、なかなか理解されにくいのですが。
――今回の『悪魔城ドラキュラ』にしても、ほかの実写作品にしても、シャンカルさんのプロデュースされる作品は、少し皮肉めいていて、大人向けだと思います。
ええ。それは、私はプロデューサーとしては若いですが。色んな場所に移り住んでいる、ということが影響しているんだと思います。基本的に、私は大人のための作品を作っています。
――『悪魔城ドラキュラ』で、原作のゲームを特に意識したところはどこですか?
ストーリーは、とてもゲームに忠実に作っていると思います。ただ、私たちが子どもの頃にプレイした原作ゲームは、とても情報量が少なかったと思います。大枠の物語があって、その中にゲームがある、という非常にシンプルなものでした。ですから、自分でプレイしたときに、自分でストーリーを想像することが重要だったと思うんです。そのおかげで、自分が想像的な人間になったんだと思います。そういう考え方は、今の作品づくりにとても影響を与えているんですよ。ゲームの中の、戦いと戦いの間のストーリーを埋めていく、作っていくのが、私たちの作業なんです。
ヒーローというものは、つねにアンチヒーロー的であるべき
――脚本を『アイアンマン:エクストリミス』(編注:映画『アイアンマン3』の原案となったコミック)のウォーレン・エリスさんが担当されています。なぜ彼に依頼したのでしょうか?
それはもちろん、彼が私のヒーローだからです。私の興味のある作品と、彼のコミックには非常に共通点が多いんですよ。彼は、非常に面白いストーリーを作ると同時に、社会批評的な視点も持っている。そういうところが大好きなんです。私は、TV番組であれ、映画であれ、いいものは必ず社会批評的であったり、メッセージを持っていると信じているので。私がガンダムが好きなのも、同じ理由からです。
――主人公のトレバーには、お二人の作風がすごく表れているのではないかと思いました。酒場に入り浸って、トラブルを避けようとする、いわゆるアンチヒーローですよね。
私は製作する映画でも、アンチヒーローを主人公にすることが多いです。
――アンチヒーローにしよう、というのは、エリスさんと話し合った結果なのでしょうか?
いえいえ。話し合うというよりも、自然と二人が求めていたヒーロー像だったんです。私、またはウォーレン・エリスを起用すれば、主人公はアンチヒーローになると思います。それくらい、私たちのイメージするものは似ているんです。
――なぜ、アンチヒーローを求めるんでしょうか?
私は、ヒーローというものは、つねにアンチヒーロー的であるべきだと思っているんです。もしそうでなければ、それは何か情報が欠けているキャラクターなんだと思います。歴史を勉強していく中で、いわゆる偉人と呼ばれる人々のことを読みますよね。そこで色々と深く調べていくと、彼らが欠点を持っていたり、悪いこともしてきた人間だということがわかるんです。すべての人間は、基本的に善にも悪にもなり得ると思うんです。だから、その二面性を描いていない物語というのは、真実を語っていないんだと思います。そういうものは、社会批評的な視点やメッセージ性が失っていくと思うんです。なぜならそれは、キャラクターがリアルではないからです。
――英語版では、そのアンチヒーローであるトレバーを、『ホビット』のトーリン・オーケンシールド役などで知られるリチャード・アーミティッジさんが演じてらっしゃいます。非常にぴったりだと思ったのですが、なぜ彼を起用したのですか?
彼は、トレバーのセリフのニュアンスをすごく上手く表現できる人だったんです。ああいうキャラクターは、滑稽になりすぎたり、シリアスになりすぎるという難しい役柄なんです。トレバーは、自分の問題から逃げようとしている人物ですよね。そのバランスを上手く表現できる俳優だったんです。
――アーミティッジさんを初めて知った作品はなんですか?
特にはありません。オーディションに来てくれたので、そこで声を聴いて決めました。実は、最初はアルカード役のジェームズ・カリス(『ブリジッド・ジョーンズの日記』シリーズのゲイの友人役など)さんがトレバー役のオーディションを受けにきたんです。ただ、彼はトレバーには合わなくて、アルカードにはぴったりだったので配役を変えました。
The Punisher Bootleg Film『DIRTY LAUNDRY』
――他のプロデュース作についても聞かせてください。『ジャッジ・ドレッド』だったり、ジョセフ・カーン監督の短編『パワーレンジャー』や『パニッシャー』を製作されていますね。
ジョセフは私の親友です。『パワーレンジャー』と『パニッシャー』があったから、今回の『悪魔城ドラキュラ』を作ることができたんですよ。
――それはどういうことです?
『パニッシャー』も、『パワーレンジャー』も、『ジャッジ・ドレッド』も、私がファンだから作った作品です。原作をきちんと語れば、ファンに受け入れられるということを、この3本を通して知ったんです。だから、『悪魔城ドラキュラ』も私が大ファンで、ファンのために作ろう、そういう意識で作った作品なんです。これまで色んな作品のオファーがありましたが、自分がファンでないものは、誠心誠意取り組むことが出来ないので、どんなに有名な作品でも断ってきました。
『POWER/RANGERS UNAUTHORIZED』
――なるほど。どの作品からも、その愛はひしひしと感じます。ジョセフ・カーン監督とは最近では何か一緒に作品を作られているんでしょうか?
ちょうど今、彼と一緒に新しい作品を作っています。『Bodied』という長編映画で、社会を風刺するラップ・バトル映画です。私とエミネムが共同プロデュースした作品です。二人ともジョセフのことが大好きなので、チームとして集まりした。トロント国際映画祭の初日(9月7日)に、オープニング作品としてワールドプレミア上映されますよ。
『Bodied』予告
――それは朗報ですね。ちょうど日本でもラップ・バトルが盛り上がっているので、日本でも上映されることを願っています。最後に、Netflixで作品を製作されてよかった点を教えていただけますか?
Netflixは、芸術にとって最高の贈り物だと思います。私と両親は別々の国に住んでいます。友達も別の国にいますし、私の両親の親もそうですね。でも、そんな風にバラバラにいる人たちが、みんな、同時に同じ作品を観られるわけです。同時に観られるというのは、素晴らしいことだと思います。
『悪魔城ドラキュラーキャッスルヴァニアー』プロデューサーのアディ・シャンカル氏
『悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-』シーズン1はNetflixにて配信中。シーズン2は2018年全世界配信。
悪魔城ドラキュラ -キャッスルヴァニア-
■シーズン1
Netflixにて全世界独占配信中
約23分/全4話(シーズン1)
■シーズン2:2018年全世界配信
全8話(シーズン2)
Netflix:https://www.netflix.com/