After the Rain(そらる×まふまふ)、刹那と永遠が交錯した初の日本武道館公演をレポート

2017.8.25
レポート
音楽

After the Rain

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After the Rain 日本武道館 2017 -Clockwise / Anti-Clockwise-
2017.8.9 日本武道館

刹那と永遠が交錯する、不可思議でいて貴重な時空間がそこには生まれていた。

そらるまふまふによるユニット・After the Rainが、初の日本武道館として8月の9日と10日にわたって開催した2デイズライブ『ーClockwise/Anti Clockwiseー』は、彼らにとって名実ともに大きな分岐点となったと言えるだろう。だがしかし、これだけ重大な慶事であるにも関わらず、この武道館公演はAfter the Rainからしてみると何も“挑戦的”な出来事ではなかったらしい。
何故なら、いきなり初日から満員御礼状態となっていたこのライブは、4月に発表された最新シングル「解読不能」(TVアニメ『アトム・ザ・ビギニング』OP)と、シングル「アンチクロックワイズ」(TVアニメ『クロックワーク・プラネット』ED)の購入者を対象とした最優先受付のみで既にがほぼ完売してしまっていたそうで、そのうえその倍率もかなりなことになっていたというから、これはもうただただ恐れ入るしかない。

After the Rain

しかも、昨今ではたとえ5000人程度の動員でも「武道館を成功させた」というテイにしてしまうケースがままあるのが音楽業界内の偽らざる実情である中、今回のAfter the Rainに限っては東西南北のスタンド席を全方位埋めてのフル動員1万3000人×2日間、という驚異的と言ってもさしつかえない快挙を見事に成し遂げたのである。

実際、オーディエンスたちがぐるりと360°を取り囲むように詰まった武道館内の光景は、まさに圧巻にして壮観の一言。また、今回のライブではその素晴らしいシチュエーションを最大限に活かすべく、大胆なステージセットが組まれていた点も特筆すべきだった。なんと、アリーナエリアの中心にAfter the Rainのロゴにもデザインされている歯車を模した巨大ステージがしつらえられ、その周囲にアリーナ席がセッティングされるという、リアルな全方位対応型の仕様が施されていたところも非常に目を引くことしきり。圧倒的な動員力を持つアーティストだけに許された特権を、彼らは演出の面でも最大限に反映させていたことになる。

After the Rain

なお、何時ものごとく今宵のライブでも開演時刻を迎えて客電が落とされると、あたりは観衆たちが手にしたLEDライトバーにより、そらるをイメージする青とまふまふをイメージする白の光で一斉に360°が埋め尽くされることになった。そんな武道館内に星の海でも出現したのか?と見まごうような景色の中で、いよいよAfter the Rainのふたりが歯車型のステージ下からせり上がるようにして登場すると、今度は場内が割れんばかりの大歓声であふれ返ったことは言うまでもない。(ただし、高所恐怖症のそらるのことを考慮してか、この際にジャッキアップされるステージの高さはある程度おさえめにしてあった模様)

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「行くぞ、武道館!!」
そらるが大きな声でそう叫ぶと同時に、この記念すべき武道館公演初日の幕開けを飾る曲として放たれたのは、前述した今春発表のシングル楽曲「解読不能」。そらるが黒、まふまふが白+フード耳&しっぽ。着物を彷彿とさせる意匠が印象的な衣装をそれぞれに纏い、せり上がったステージの上で背中合わせになって歌うというその様は、まさに“このふたり”が武道館という大空間を今この瞬間に完全支配しているという絶対的な事実を、端的に表す場面であったのではなかろうか。

かと思うと、せり上がり部分が降りてきてからの「生に縋りつく」では、そらるまふまふのふたりが歯車型舞台の上をそれこそ[Clockwise/Anti Clockwise]の名の通り、あっち周りに走ったりこっち周りに走ったりと、360°の全方位性を十二分に活かしながらのアクティブかつダイナミックなステージングを展開。

After the Rain

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「いやー。とうとうやって来てしまいました、武道館。しかも、360°! なんか、いろんなところから観られててちょっとハズかしい(笑)。ただ、意外と(距離感的には)“近い”よね?そして、今日はここに1万3000人くらいの方が来てくださっているそうなんですが、最初はこんなに入るなんて僕は思ってなかったんです。でも、こうしてふたりで頑張ってきて、こんなにたくさんのひとたちの前で武道館という場所に立てることを光栄に思います。今日は全部出し尽くすので、皆も最後まで悔いが残らないように思い切り楽しんでいってください」(そらる

「……僕は、凄く緊張してます(苦笑)。ほんとは、さっきのタイミングで上着を脱ぐはずだったのに、全然その余裕もなかったくらいなので(笑)。これを着たままだと、(着物風の)袖が引っかかって次の曲のギターが弾けないんだけどね!」(まふまふ

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というわけで、このMC明けではまふまふはもちろん、そらるまでもが「解読不能」のMV撮影のために買ったというギターを肩にかけ、ツインボーカル&ツインギターというAfter the Rain初のスタイルにて「負け犬ドライブ」を熱演する一幕も。(実質的には、サポートバンドにもギターが2人いるためクワッドギターであったとも言える)

また、「脱落人生へようこそ」ではまふまふが歌い、一方でそらるは歌わずにギターを弾くというこれまたレアな場面が拝めたほか、ライブ中盤では夏らしく浴衣姿になったふたりが「四季折々に揺蕩いて」で聴衆を酔わせたり、アコースティックスタイルでの「夢花火」を共に縁台に腰掛けながら歌う、という風流な場面が用意されていた点もなかなかに乙だった。

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そればかりか、後半戦での「彗星ハネムーン」にて、ふたりがみせたロボットダンスパフォーマンスもひとつのみどころであった。居合わせた観客たちが大合唱に至った「アイスリープウェル」や、武道館内が揺らされるサクラピンクのLEDライトの光で染められた「桜花二月夜ト袖シグレ」も、この武道館で体感するからこそより臨場感の増したものとして伝わってきたことは、もはや疑うべくもない。

「何時もは大抵「桜花~」で終わることが多いんですが、今日はもう1曲やろうと思います」(そらる
「皆が知っている曲で、まだやっていない曲があると思います。わかる?」(まふまふ

むろん、この本編最後において演奏されたのは、ライブタイトルである『ーClockwise/Anti Clockwiseー』にちなんだ「アンチクロックワイズ」にほかならない。

After the Rain

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さらに、本編からの余韻と興奮がまるで醒めやらぬままに突入したアンコールでの「すーぱーぬこになりたい」では恒例の猫耳祭りが盛大に繰り広げられたりしつつも、最後の最後はそらるとまふまふが順に今の心境を吐露したうえで、幻想的な世界観と疾走感に満ちたリリカルアッパーチューン「彗星列車のベルが鳴る」が観客たちへと贈られることとなったのだった。


「今思うと、始めた当初はけっこう噛みあわなかったりしてさ。大変なこともいろいろあったりなかったり……。でも、やっていくうちにだんだんと楽しいなと思える瞬間が増えていったんだけど、きっとそれはここにいる皆と俺のおかげだと思うよ(笑)。今度また皆で
会う時は、もっともっと楽しい時間を過ごしましょう。今日は本当にありがとうございました」(そらる

「360°にいる1万3000人の人たちと、青と白の光に囲まれて……なんか、ここからの眺めはプラネタリウムみたいです。今のこの瞬間とこの空間だけは、僕たちとここにいる方々だけの景色なんだなと思うと、たった2回でこの武道館を終えてしまうことがちょっと寂しいなと感じるくらいです。(中略)名残惜しいですが、今日は本当にありがとうございました!」(まふまふ

After the Rain

ちなみに、この夜のライブでは10月18日にまふまふが自身の誕生日にソロアルバムを発表すること。さらに、そらるも近日にソロライブを予定していることが本人たちの口から直接発表された。逆に言うと、現時点ではAfter the Rainとしての次の動向は発表されていないことになる。しかし、何もここで憂いる必要はない。After the Rainとはふたつの星からなる特殊な星座のようなもので、ひとつひとつの星が輝いていることがまずは大前提であり、根本的にはそれぞれが独立して存在しているもの、と考えるのが自然だ。本来のソロアーティストとしての活動に戻り、また一層の輝きをえることが出来れば、星座としてのAfter the Rainもより存在感を増すというもの。

After the Rain

すなわち、この夜のライブの最後に奏でられた「彗星列車のベルが鳴る」の歌詞に出てくる<あの夏の空の向こう側>になぞらえるなら。刹那のようでいて永遠のようにも感じるAfter the Rainの描くセカイは、きっと“その向こう側”へと繋がっているはずだ。


取材・文=杉江由紀 撮影=小松陽祐(ODD JOB)、岡本麻衣、小境勝巳、上西由華

After the Rain

 
セットリスト
After the Rain 日本武道館 2017 -Clockwise / Anti-Clockwise-
2017.8.9 日本武道館
1. 解読不能
2. 生に縋りつく
3. セカイシックに少年少女
4. 負け犬ドライブ
5. 脱落人生へようこそ
6. 傾国
7. 最適な人の殺めかた
8. 七夜月-ナナヨヅキ-(バンドセッション)
9. 林檎花火とソーダの海
10. わすれもの
11. 夢のまた夢
12. 四季折々に揺蕩いて
13. 夢花火(Acoustic ver)
14. シャルル
15. ECHO
16. ロメオ
17. わすれられんぼ
18. 彗星ハネムーン
19. アイスリープウェル
20. 桜花ニ月夜ト袖シグレ
21. アンチクロックワイズ
[ENCORE]
22. 脱法ロック
23. すーぱーぬこになりたい
24. 彗星列車のベルが鳴る

 

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