DEZERT 初のホール単独公演の抱負を語る前に話しておきたいコト

2017.9.20
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DEZERT/L⇒R:Sacchan(Ba)、Miyako(Gt)、千秋(Vo)、SORA(Dr)

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『DEZERT LIVE TOUR“千秋を救うツアー2”』と題して現在、各地を廻っているDEZERT。このインタビューは、初日の恵比寿リキッドルームでの公演が終わって間もない時期に行なわれた。初のホール単独公演でもある10月8日の中野サンプラザでのファイナルを控え、節目を迎えているDEZERTのメンバーから出てきたのは予想以上に生々しい言葉だった。付け加えておきたいのは、この記事がアップされる頃には心境がまた変化しているかもしれないこと。だが、千秋(Vo)の発言にはその時その瞬間の真実がある。という意味においてDEZERTのインタビューはまさにライブ。8月某日の4人の言葉をここに届けたい。

いまの俺らのスペックで勝負する。そこが伴ってないからシーンが廃れたって言われると思うんですよ。僕、ライブが生命だと思っているので。(千秋)

――まずは『千秋を救うツアー2』」(以下“2”)の初日、恵比寿リキッドルームを振り返っての感想、手応えを教えてください。

SORA(Dr):いいか悪いかで言ったら、あまり良くなかったんですけど。

――終演後に楽屋でミーティングしていましたよね。

SORA:楽屋でみんなで集まってああだこうだ言うのは毎回なんですけど、『千秋を救うツアー』(以下“1”)が終わって、DEZERTとしてのワンマンライブは久しぶりだったので、俺個人としては舞いあがっちゃって、すごく楽しみだったんだけど、フルスイングして空振っちゃった感じですね。

――高揚して立ったステージだったんですね。

SORA:そうですね。いつもライブに向けて身体をメンテナンスして睡眠もとるようにしているんですけど、なかなか寝つけなくて“子供か?”みたいな(笑)。ドラムのプレイ的にもちょっとやり過ぎちゃったかなって。

――冷静さを欠いていたなって?

SORA:そうですね。あの日はニコ生も入っていて、ドラムセットの前にカメラがあったので少なからず意識していたと思うんですよ。もっと、いろいろできたかなとも思ったんですけど、ライブが終わった後にお客さんから“楽しかったです”という手紙をけっこう多くもらったので少しホッとしました。ライブ自体には反省点はありましたけど、そこで思ったことをメンバー同士で話せたので、課題を持ってツアーを廻って何か掴めたらなと思っています。

――Miyakoくんはどうでしょうか?

Miyako(Gt):久しぶりのライブだったのと、新しい試みというか決め事があったので、いま思うと、4人いるのに自分の世界に入り込み過ぎていたというのはあります。いままでにないぐらいに集中できたのは良かったけれど、SORAくんが言っていたような反省点もあったし、見えていない部分があったのかなと。リキッドルームではヒヤッとすることもいろいろあったけど、後半に向かうにつれてみんなが良いライブにしようとしているのを演奏していても感じたので、“1”のツアー(『千秋を救うツアー』)があったからこそ、そうなれたのかなって思いましたね。

――ちなみに新しい試みというのは?

Miyako:ギターのチェンジが多かったのと“1”は狭いライブハウスが中心だったんですけど、“2”は広い会場が多いのでお客さんが見えないところでいろいろな人が関わっているんです。そのことによって生じる違いもありましたね。

――そしてSacchanには素朴な疑問があるんですが、なぜSaZからSacchanに名前が変わったんですか?

Sacchan(Ba):(笑)。“1”のツアー中、郡山でホテルで朝起きたときにふと“SaZって何だ!?”って思ったんですよ。たわいもないことなんですけれど、メンバーも先輩も関係者も“さっちゃん”って呼ぶので、めんどうくさいからSacchanでいいかって(笑)。なので福島からサインが変わりました。

――(笑)今日から「Sacchanです」って? 戸惑いはありませんでした?

Sacchan:賛否両論なんじゃないですかね。僕、名前にこだわりはないので特に深い意味はないです。リキッドのライブに関しては2人も言ってましたけど、小さいミスはたくさんあったんですよ。“1”はハコも小さいし、メンバーとスタッフが1~2人で廻っていて、PAさんも照明さんもライブハウスの方にお願いしてたんです。マイクスタンドが倒れたら戻してくれたり、水がなかったら補充してくれるぐらいの規模でやってたんですけど。“2”はホールに向けてのツアーでもあるので、PAさんも照明さんも連れていくし、倍以上の人数で動いているんですね。そんな中、初日は悪いライブではなかったんですけど、スタッフとの連携をミスった箇所がたくさんあったので、これから連携と信頼を強くしていかないと。だんだん、良くなっていくんじゃないかな。

(ここで遅刻していた千秋が登場)

――リキッドでは千秋くんがSacchanのベースを取り上げて弾いて、水までかけられていましたよね?

Sacchan:ああ、うっすら視界には入ってましたけど、いつものことなのでそこに関しては気にしてないんです(笑)。あのベース、借り物ですし。

――そ、そうなんですか。

Sacchan:千秋くんも「俺のじゃない」って言ってましたけど、俺も俺のじゃないのでメーカーに謝りに行こうかなって。ただ、ベースに関して言うと前半、音が出なくなっちゃったんですよね。若干、感情的になって“何で出ないんだ。このヤロー!”ってベースをバーンと投げたんですけど、そこはニコ生には映っていなかったですね(笑)。

――初日だからいろんなことが起こったんですね。千秋くんは?

千秋:そんなこと聞きたいんですか?(笑)

――聞きたいです。途中でフロアに降りて柵を引っこ抜いたのにもかなり驚きました。

千秋:あれ、後でめっちゃ怒られました。

――事前に抜くかもってスタッフに言ったりはしないんですか?

千秋:言ったら「ダメ」って言われるに決まってるじゃないですか。

Sacchan:事前に言ったら抜けないように固められますよ(笑)。

千秋:まさかあんなに簡単に抜けると思わなかったんですよ。まわりも“おっ!”ってなったのが空気でわかったので、そのまま戻すわけにもいかず。……これ、振り返りインタビューなんですか?

――振り返りつつ、中野サンプラザに繋げていく感じです。

千秋:それより来年の話をしましょうよ。

――いや、いや。シングルだってリリースされるじゃないですか。自分的に『千秋を救うツアー』と比べてどうだったんですか?

千秋:ちょっと長かったですね。曲が長いとかそういうことじゃないんですけど、空間が長かった。“2”に関しては衝動的なツアーじゃないんですよ。キャパが大きくなるとか、そういう問題ではなく、さっきSacchanが言ったことに繋がるんですけど、スタッフが多くないとできないライブ会場が多いんです。なんばHATCHにしても、舞台を作る人が必要なわけで。

SORA:スピーカーも用意しないとならないし。

千秋:“1”はすごくシンプルに、出たとこ勝負みたいなツアーだったけど、規模が大きくなるとそうもいかなくなるんですね。本来は僕らと遊びにきたヤツらだけでできるのがライブだと思うし、去年のZepp(Tokyo)にしても、いろんな人が絡んで舞台にLED付けたりして“あれってどうなの?”っていうクエスチョンマークが僕にはまだありますけどね。これ読んだら“オマエらのためにしてやってるのに”って身内は怒るでしょうけど。去年は『VISUAL JAPAN SUMMIT』だったり、いろいろ大きいイベントに出る機会がありましたけど、今年に入ってからはまた最小限の形態でやっていたので、初日は改めて考えさせられました。まわりのスタッフを否定するという意味ではなく、もっと俺たちが向き合っていかないと始まらないと痛感しました。あの日、おそらくメンバーは柵の向こうを意識する余裕がなかったんじゃないですかね。音は出てるけど、気持ちは前に向いていたのかなって。

――客席のほうに気持ちがいっていたのか、という意味ですか?

千秋:そうですね。今のような話を、次はメンバーにしようと思ってました。俺もライブ映像を見て思ったのは、落ち着きがなかったなと。音の問題だったり、モヤモヤしたものをステージ内で解決しようとしていたのかもしれない。あとはこの半年ぐらい、ずっと狭いハコでやっていたので、リキッドが案外広く感じました。去年は狭く感じたぐらいだったのに。だから、後ろのほうまで見えてたのかなっていうのは俺らの反省点です。でも、そんなことは全くお客さんには関係がないことなので、いまの気持ちはもう次の会場のことばっかりです。

DEZERT 2017.8.19 恵比寿リキッドルーム 撮影=西槇太一

――ちなみにファイナルの中野サンプラザはやってみたい会場だった?

千秋:いや、スタンディングの会場がとれなかったんですよ。座席があるところでやりたいわけじゃないです。

――“ホールに挑戦”みたいな気持ちじゃなくて?

Sacchan:それは結果論です。

千秋:サンプラが空いていたので“やる?”って聞かれて“やる”って。

――DEZERTがやるなら、サンプラザをこういう空間にしてやるっていう気持ちはないんですか?

千秋:その気持ちは初日が終わってから出てきました。最初はホールでしか出来ないことをやるって言っていたんですけど。

――例えばセットとか演出とか。

千秋:そう、そう。それをやめようかなって。

――極端に言えば、セットも演出もない素舞台みたいな?

千秋:もう素舞台でいいんじゃないの? って。メイクしているだけで十分、俺らは出来上がっているはずなので、俺らがやりたいことはセットにあるのか? って。実際にどうなるのかはわからないですけど、今の気持ちとしては自分たちがいて曲を演奏して、来てくれる人が1人でもいればって。ヴィジュアル系だから派手なライブが見たいという人がいたら、じゃあ、メイクをもっと派手にしますよっていう感じですね(笑)。

――リキッドが終わる前はそうは思ってなかったんですね。

千秋:そう。リキッドが素舞台だったので“ああ、なるほど”って。セットがあったら立ってるだけでも絵になるじゃないですか。

――セットがフォローしてくれますからね。

千秋:フォローっていうのもおかしな話で、狭いハコでやってきた“1”を活かすのが“2”なので。

――リキッドルームは良いライブだったと思いますよ。閉じているものをこじ開けるぐらいのエネルギーがあったし、演出に頼ることなく、ああいうライブを中野サンプラザの規模でやったらカッコいいと思いましたけどね。

千秋:こんなこと言っててめっちゃ当日仕込んでたら面白いですけどね。

――(笑)LEDギラギラだったりして。

千秋:もう1曲目からテープが飛んで(笑)。

Sacchan:客席にも仕込んであって、水が出てくるとか(笑)。

――虹色の照明とかね。……似合わないなあ。

全員:(笑)。

――サンプラザに向けての意気込みはどうですか?

SORA:僕はドラムに椅子を置かないです(笑)。

千秋:はははは(笑)。

SORA:ドラム持っていかないです。

Sacchan:何しに行くんだよ(笑)。

Miyako:俺は最初に話したように、リキッドは自分の殻に入っていた部分があったので、そうならないように。

――中野サンプラザのような大きな会場に立つワクワク感はないですか?

Miyako:ないですね。広い会場に立つワクワクはもうなくなっちゃったので。

千秋:カッコいい~!

Miyako:そういうんじゃなくて、しっかり地に足をつけて立ちたいです。

Sacchan:さっき千秋くんが言ったクエスチョンマークとか、いまの現実がもどかしい部分もありますけど、このツアーはサンプラザ以外にも大阪のなんばHATCHとか名古屋のダイヤモンドホールとか大きいハコがあるわけで、やらなきゃいけない事実がありますからね。スピーカーだって持ってないし。

千秋:いろんな人たちが絡むっていうことだもんね。

Sacchan:そう、そう。そういう現実を受け入れた上で、中野サンプラザに向けて一つひとつ経験を積んでいって、スタッフの人だったり、制作の方との連携を強くしていって、最終的にお客さんにいいものを見せたい。裏のことは見る人には関係ないし、来た人たちが見るのはライブなので。

――了解です。10月25日にはシングル「撲殺ヒーロー」がリリースされますが、ここに収録されている楽曲はツアーで全曲、披露するのですか?

千秋:やらないんじゃないかな。リリース前なので。

SORA:まだ「幸福のメロディー」しかやってないし。

――ツアーに先駆けてアップされたミュージックビデオの内容にしろ、「撲殺ヒーロー」というタイトルにしろ、物騒な感じがしますけど。

千秋:タイトルは関係なくなっちゃったんですよ。最初は「幸福のメロディー」じゃなくて「撲殺のメロディー」だったので。

Sacchan:レコーディングを進めていく内に、ギリギリの段階で歌詞が変わって、趣向が変わっていって「幸福のメロディー」になったんですよ。

千秋:だから「撲殺ヒーロー」には囚われなくていいです。アルバムはコンセプトがあるけど、シングルはそういうのはないので。ライブに繋げる観点で話すと「幸福のメロディー」はライブの始まりの曲のイメージなので、前半にしか演奏しないです。しばらくはこの曲を1曲目でやると思う。

――今、Sacchanがレコーディングの段階で歌詞が変わったと話してくれましたが、テーマが“幸福”に変わったんですか?

千秋:“幸福”って生きる中で当たり前にあるテーマだと思いますけど、これ、僕のことを歌った曲じゃないんですよね。俺が関わったことがある稀な生き方をした第三者を媒介にして、幸福についてちょっと考えよう、みたいな。

――モデルになった人物がいる曲なんですね。

千秋:そう。そのことを歌うことによって、1曲目にできるなって思ったので。ノリやすい曲だと思ったし。

SORA:千秋が“1曲目にやりたい”って言う前から、イントロのサウンドを聴いてそう思いましたね。

――イントロからして引き込まれるし、カッコいいですよね。

Miyako:曲の核は千秋くんのデモの中にあるので、それをさらにカッコよくするためにエンジニアの方ともいろいろ話してレコーディングしましたね。

千秋:あと3曲目の「Hello」もめっちゃいい曲です。まだデモ段階(取材時)ですけど。

――2曲目の「ヘドロママ」もいい曲ですよ。この曲で自分を救えるのは自分しかいないって、ツアータイトルに通じることを歌っているじゃないですか。

千秋:そうですね。ただ、救えるのは自分しかいないってことはバンドマン、みんなわかってますよ。そういうこと歌ってるだろうし。

――こういう視点で歌えるのはDEZERTしかいないですよ。

千秋:あざーっす(笑)。

Sacchan:さっきのツアーの話に通じるんですけど、最近はバンドの中に若干、人に任せてみようという流れがあるんですよ。自分たちだけではできないPVやライブの演出について、今まではウザいぐらいに“ウチらのバンドをわかってくれよ”って話して、ライブ見てもらってきたんですけど。自分たちだけでは手が回らなくなってきたので、例えば、衣装だったらスタイリストさんにライブを見てもらった上で軽く打ち合わせして“あなたの思うDEZERTで作ってみてください”っていう振り方をしてたり。PVにしても、僕らの意見も伝えて監督さんの思うシーンをインサートしてください、みたいな。根本的に作り方を変えているので、いい意味でも悪い意味でも難しさは感じている時期ですね。

――DEZERTというバンドが大きくなっていく中、関わる人たちも増えていくわけですからね。

千秋:去年、Zeppをやって、その後のライブをしばらく止めていたことに繋がるんですけど、人がいっぱい増えようが、何か虚しかったんですね。かと言って、200~300人のライブハウスでぎゅうぎゅうの中やっても虚しかった。“じゃあ何でやってるの?”って言われるのも困るという虚しさがいまもある中、いろいろな人が増えていくことに納得できないのであれば、俺らは人に任せるべきバンドではないんですよ。でも、じゃあ、なぜPVを作るかといえば、もっといろんな人にDEZERTを知ってほしいというのが真意なんです。

――そうですよね。

千秋:そういう気持ちの反面、さっき言ったみたいに、自分たちと客がいればいいじゃんっていうのもあるし。ただ、DEZERTのファイナルが高田馬場AREAだとしたら“コンセプトツアーなのかな”って思われてしまう6年の歴史があるんですよね。そういうことも、中野サンプラザが終わったら壊そうと思ってます。デカいハコでやったとか『VISUAL JAPAN SUMMIT』に出たとか関係なしに、いまの俺らのスペックで勝負する。そこが伴ってないからシーンが廃れたって言われると思うんですよ。

――なるほど。だから来年の話をしたがっていたんですね。

千秋:そうですね。こういうことを考えるキッカケになったのが、リキッドのライブだったんじゃないかな。まわりの人ともっと俺らは向き合うべきなんですよ。お客さんはもちろん、増えてきたスタッフとのチグハグな感じが続くとバンドが終わっちゃいますからね。だから、向き合ってこのツアーやりますよ。僕、ライブが生命だと思っているので。


取材・文=山本弘子

 
ライブ情報
DEZERT LIVE TOUR  ”千秋を救うツアー 2” 
9/30(土) 大阪 なんばHatch
10/1(日) 名古屋ダイアモンドホール
10/8(日) 東京 中野サンプラザ

【料金】前売り:¥4,000 ※税込み、D代別
(中野サンプラザ公演は全席指定、他公演はオールスタンディング)

 

 

リリース情報
シングル「撲殺ヒーロー」
2017年10月25日(水)発売
※収録曲のタイトルに変更がありました。
【初回限定盤】 SFG-006 ¥1,500+税
<CD収録内容>
1. 幸福のメロディー
2.ヘドロママ
3.「Hello」
4.「遭難」-piano ver-

【通常盤】SFG-007 ¥1,200+税
<CD収録内容>
1.幸福のメロディー
2.ヘドロママ
3.「Hello」

「撲殺ヒーロー」
予約者対象インストアイベント、アウトストアイベント

※参加方法、予約方法はHP内スケジュール欄をご確認ください。
http://www.dezert.jp/schedule/
■9/23(土)大阪ZEAL LINK(会場:BIG STEP大階段)
1部:毎年恒例!夏の終わりにみんなで楽しいビンゴ大会(大階段) 時間 15:00~
2部:サイン会(店内) 時間 17:00~
■9/24(日)名古屋ZEAL LINK(会場:RAD SEVEN) 1部:アコースティックライブ 時間 16:00~
2部:サイン会 時間 18:30~
※ご予約・発券方法は各店舗異なる場合がありますので
ご不明な点はご購入予定の店舗にお問い合わせください。
※9/24(日)名古屋地区はアウトストアイベントになります。
発券店舗は名古屋ZEAL LINKになります。 会場(RAD SEVEN)へのお問い合わせはご遠慮ください。
入場の際はドリンク代が掛かりますので予め御了承下さい。